転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1138話

 目の前に現れたのは、キャスター。

 正直、この展開は十分に予想済みだった。

 あるいは、ここにキャスターとアサシンのマスターがいるかもしれないという可能性もあったが、今俺の目の前で広がっている光景はそれよりも尚最悪と表現してもいいような光景だった。

 何故なら、キャスターの腕の中には意識を失った綾子が抱かれていたのだから。

 

「キャスター、一体何のつもりだ?」

「あら? 全部言わなくても分かってるでしょう?」

「降伏しろ、と?」

「そう、ね。確かにこれ以上こちらの戦力を減らされては困るのは事実だけど、それだけじゃないわよ?」

 

 フードを被っているせいで、目は見えない。

 だが、露わになっている口元には見間違えようがない笑みが浮かんでいる。

 くそっ、確かに今の綾子は俺達の弱点と言ってもいい。

 けど、凛の家は強力な結界があるって話だったが……いや、相手がキャスターである以上、それをどうにかするのは難しい話じゃないんだろう。

 

『凛、どうにか出来るか?』

『難しいわね。アークエネミーの方こそ、スライムでどうにか出来ない?』

『どうだろうな。確かに攻撃が届くかどうかって言われれば、届くんだが……ただ、問題は既にスライムを見せてるって事なんだよな』

 

 つい先程アサシンの右手首を切断したのだ。当然それを見ていた筈だろう。

 寧ろ、それを見ていてこのままでは負けると思ったからこそ、キャスターはここに姿を現したんだろうし。

 まぁ、綾子を確保しているというのは完全に予想外だったが。

 本来であれば、アサシンが有利になったところで駄目押しとして綾子を用意していたとか、そういう事だと思う。

 けど、このままだとアサシンが死んで自分達の戦力が大幅にダウンする。

 そう思ったからこそ、こういう手段に出たんだろう。

 

「で、要求は何だ?」

「あら、随分と聞き分けがいいのね」

「人質を取っておいて何を言ってるんだ? 全く、人質を取るというそのやり口は、正にキャスターに相応しいな。……いや、お前は女のようだし、どちらかと言えばキャスター……魔術師というより、魔女か?」

 

 そう口にしたのは、特に何か意味があってのものではない。

 話の流れでふと思いつき、口にしただけだったのだが……

 

「……」

 

 ヒュッ、と。

 軽く手を振るうと拳程の魔力の塊が放たれ、俺の足下の石畳を砕く。

 その攻撃をしたキャスターは、見て分かる程に機嫌が悪くなっている。

 つい先程まで浮かべていた、勝利の確信を得た笑みも既にその口元には存在しない。

 苛立たしげに歪んでいるその口元は、間違いなく今の魔女という言葉を聞いたキャスターの怒りを表している。

 魔女という言葉に反応したのか? となると、恐らく魔女という言葉と何らかの関係があるサーヴァントなのは間違いないんだろうが……さて、何なんだろうな。

 キャスターというクラスを得たサーヴァントなんだから、それは当然魔女とか呼ばれていてもおかしくはない。

 この辺から相手の真名を探り出すというのは、かなり難しそうだ。

 なら、もう少し情報を集める意味でも挑発してみるか。

 

「どうしたんだ? 魔女って呼び方が相当嫌いらしいけど、お前がやっているのはそういう風に言われても当然の出来事だぞ?」

 

 いや、人を誘拐して人質にするのが魔女のやりそうな事かと言われれば、俺も首を傾げざるを得ないけど。今はとにかく勢いに乗って相手の真名を探る方が大事だろう。

 

「……その忌々しい名前で呼ぶのは止めて頂戴」

「へぇ? どうやら魔女呼ばわりが余程気にくわなかったらしいが……やってる事は間違いなく魔女と呼ばれるのに相応しい行為だと思うが? それを自分で理解出来ていないのか、魔女?」

「黙りなさい」

 

 底冷えするかのような、まさに絶対零度とも表現出来る声で告げてくるキャスター。

 こちらとしても挑発するつもりで『魔女』という言葉を連発したんだが、寧ろ逆効果になってしまったらしい。

 

「おっと、気を悪くしてしまったか? 悪いな、魔女」

「……この子がどうなっても構わない。そういうことなのかしら?」

「まさか。綾子は俺にとっても大事な存在であるのは変わりないさ」

「なら、黙ってこっちの指示に従いなさい。……アサシン、貴方もいつまでそうやってるの? 唯一の取り柄がなくなった今の貴方は役立たずでしかないんだから、少しでも私の役に立つように動きなさい」

 

 右手首の先を消滅させ、派手に血を流しているアサシンに指を向け、短く呪文を唱える。

 すると次の瞬間には、まるで今まで血を流していたのが夢だったのではないかと思う程に、アサシンから流れていた血は止まっていた。

 

「そんな……」

 

 今の魔術を見た凛が驚愕の声を発しているのが分かるが、多分魔術的な理由なんだろう。

 記憶を失っている今の俺に、その辺の話は分からない。

 だがそれでも、本来であればいずれ消滅したであろうアサシンが回復したのは明らかだった。

 ……まぁ、右手首から先は消滅し、唯一にして最大の武器でもある長刀も離れた場所に転がっているのだが。

 

「全く、人使いが荒い事だ。そんな事では、いずれマスターにも愛想を尽かされるのではないか?」

「黙りなさい」

 

 アサシンの言葉に、先程の魔女呼ばわりの時よりも厳しい声音で言い放つキャスター。

 このやり取りからすると、どうやらキャスターとマスターの間はかなり上手くいってるらしい。

 

「いい? これから私が地上に降りるけど、変な真似はしないように。特にそっちのお嬢ちゃん。貴方が何らかの魔術を使おうとした瞬間、こっちの子がどんな目に遭うのか。それをしっかりと理解しなさい?」

「くっ!」

 

 凛が今いるのは、踊り場から少し下った階段の上。

 もしキャスターに何かしようにも、足場が悪すぎる。

 そうなると何かをしようとしても魔術を使うしかなく、その魔術を封じ込められてしまってはどうしようもない。

 更にアサシンは俺の方を警戒しており……まさに手出しが出来ない状況へと陥っていた。

 そんな俺と凛を見て満足げに口元で笑みを浮かべると、そのまま地上へと……山門前の踊り場へと向かって下りてくる。

 

「そのスライムとか言ったかしら? それをピクリとでも動かしたら、この子がどうなるのか……分かっているわよね?」

「……ああ」

 

 これ見よがしに綾子をこちらへと見せつけてくるキャスターへ、苛立たしげに返事をする。

 ちっ、綾子が起きてくれれば、まだ何とでも対応出来るものを……いや、それを理解しているからこそ、気を失わせているのか。

 

「ふふふ。あのバーサーカーですら一蹴した力を持つイレギュラー、正直、貴方達に対してどう対処すればいいのか迷っていたのだけど……こんな幸運に恵まれると思わなかったわ。絶対的な強者であるアークエネミーだからこそ、それを手駒とすれば絶大なる武器となる。アサシンが使えなくなったのは痛かったけど、ここで貴方を手に入れる事が出来れば、この聖杯戦争での勝利は確定する」

「……幾ら綾子を人質に取られているとしても、俺がそう簡単に凛との契約を破棄して、お前に従うと思っているのか?」

 

 自分でも分かる程に声に苛立ちが混じる。

 だが、そんな俺を前にしてキャスターは、全く動じた様子もなく笑みを浮かべたままだ。

 

「そうね、確かに貴方達の絆は深い。正直、羨ましい程よ。けど、その辺はこっちで何とかするから、安心しなさい」

「……何とか?」

 

 綾子を抱いたまま俺のすぐ近くに着地したキャスターは、相変わらず俺の周囲に存在するスライムへと視線を向けると、口を開く。

 

「まず、このスライムをどうにかしなさい」

「それを俺が聞くと?」

「あら、じゃあこの子がどうなってもいいの?」

 

 キャスターと無言で睨み合う。

 ただ、現状では人質を取られているこっちが圧倒的に不利な訳で。

 

『アークエネミー』

 

 更には、凛から念話が入ればそれに従わざるを得ない。

 スライムを、出てきている空間の穴へと戻す。

 正直、本当にこのスライムがどんな存在なのかが分からないんだよな。

 使い方は分かるのに、どうやって俺がこんなものを使えるようになったのかが全く不明だ。

 

「これでいいんだろう?」

「ええ。ただし、またそれを出したりしたら……どうなるか、分かっているわね?」

「ああ、魔女がやりそうな事くらいは普通に理解出来るよ」

「っ!? ……まぁ、いいわ。そのままこっちに近づいて来なさい。くれぐれも変な真似をしないようにね。幾ら貴方が強くても、こうして触れている状態からならこっちの方が速いわよ」

 

 魔女という言葉に一瞬苛立ちを見せたキャスターだったが、それが自分を怒らせて冷静な判断をさせないようにしているのだと理解したのだろう。

 これ以上は何を言っても無駄だと判断し、そのままキャスターの方へと近寄っていく。

 勿論、こっちとしても大人しくキャスターにどうにかされるつもりはない。

 既にアサシンの戦闘力の根幹でもある長刀を奪い、それを操る右手首を切断した以上、危険度は大幅に下がっている。

 キャスターとアサシンのマスターがまだ姿を現さないのが疑問だが、向こうが圧倒的に有利なこの状況でも姿を現さないとなると、多分出て来る事が出来ない何らかの理由があるのだろう。

 つまり、キャスターをどうにかする事さえ出来れば、今日でサーヴァント2人を一気に片付ける事が出来る訳だ。

 確かに現在はキャスター達の方が有利だが、それは紙一重の有利さに過ぎない。

 

「……で? こうして近づいたけど、それでどうするつもりなんだ?」

「一応最後にもう一度聞くけど、私の側に付く気はない?」

 

 念の為とばかりに聞いてくるキャスターに、言葉を返す。

 

「それは凛を裏切って、か?」

「ええ。あのお嬢ちゃんがそれなりの魔術師だというのは分かるけど、残念ながら私の計画には邪魔なのよ。だから、あのお嬢ちゃんを私の仲間に入れる訳にはいかないわ」

「そうか、なら俺もお前達の仲間に入るつもりはないな」

 

 ピクリ、とフードの下で頬を引き攣らせるキャスター。

 

「何でそこまであのお嬢ちゃんに対して義理立てをしてるの? 貴方もサーヴァントでしょう? つまり、聖杯に望む願いがある筈。私と組めば、それはすぐにでも手に入るのよ?」

「確かにお前と組めば、聖杯を手に入れる事は難しくないだろうな。俺が前衛でキャスターのお前が後衛、遊撃としてアサシンもいるし。マスターの数も全部で3人となれば、一大勢力と言ってもいい」

 

 ピクリ、と再びフードの下で頬を引き攣らせるキャスター。

 うん? 何でだ? 今のどこにキャスターに動揺を誘うようなところがあった?

 いや、まぁ、いい。今はとにかく目の前の事態をなんとかする必要がある。

 

「なら、文句はないと思うのだけど? 何故私と組めないの?」

「そうだな、幾つか理由があるが……例えば俺は、さっきお前が言っていた聖杯に対する願いってのは持っていない」

「……え?」

 

 意表を突かれたかのような声を漏らすキャスター。

 うん、気持ちは分かる。

 多分、俺だって記憶を失う前であれば、聖杯に対する何らかの願いは持っていたんだろう。

 でなければ、サーヴァントとして聖杯戦争に参加する事はないのだから。

 けど、残念ながら今の俺はうっか凛の召喚儀式のミスにより、記憶を失っている。

 つまり、聖杯に対する願いすらも失っている状態なのだ。

 俺が今やるべき事といえば、精々聖杯戦争が終わった後でも凛や綾子と共に過ごしたいというくらいだ。

 

「そして次に、一般人を巻き込むような真似をするお前と組むというのは、どうにも面白くない。……お前なんだろう? 今冬木で起きている、連続ガス漏れ事件の犯人は。一般人を容赦なく巻き込むような奴と一緒に行動すれば、最後の最後であっさりと裏切られるのは目に見えているしな」

「……そう。じゃあ、しょうがないわね。アサシン! 令呪を以て命じる! 今すぐここに来て、アークエネミーの身体を押さえて動けないようにしなさい!」

 

 その言葉を聞き一瞬動きが止まる。

 何て言った? 令呪? つまりアサシンのマスターはキャスター? キャスターは魔術師、不可能じゃない?

 そんな風に考えていると、いつの間にか近くにやって来ていたアサシンが残った片手を使って俺の動きを止めるべく抱きついてくる。

 男に抱きつかれる趣味はないんだが……いや、何だってこんな真似をする?

 動きを止めたくらいで俺をどうにか出来ると本気で思っているのか?

 そんな風に考えている間に、キャスターは綾子を抱いたままこっちに近づいてくる。

 ちっ、もう少し油断してくればこっちとしても動きやすかったものを。

 

『アークエネミー、今助けるわ』

『待て。この状況でもこっちはこっちで何とか出来る。俺を助けるよりも、綾子を助け出す方に集中してくれ』

 

 凛と念話で会話をしていると、俺の近くまでやって来たキャスターが懐から先端が歪に曲がった短剣を取り出す。

 何だ? 儀礼用の短剣か何かか? いや、違う。キャスターはあの短剣に絶対の自信を持っている!?

 

「ふふふ、これで貴方は私のもの、よ! 破戒すべき全ての符!」

 

 そう告げ、自分の勝利は確定したと判断したのだろう。

 あるいは、その短剣を使うのに綾子が邪魔だったのか……とにかく、綾子を手放すとそのまま短剣を俺の方へと向かって振りかぶり……

 

「させるかよ!」

 

 確かに今の俺は身体を動かす事が出来ない。

 宝具のスライムを使うにしても、一瞬のタイムロスはある。

 けど、スキルの念動力は別だ!

 振り被っていたキャスターの右手を、念動力で殴りつける。

 完全に予想外の展開だったのか、キャスターの手から短剣が飛び……

 

「自分で喰らえ!」

 

 念動力を使って空中で短剣の動きを止め、刃の向いている方向を変え、そのままキャスターへと突き刺すのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:375
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1184

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