転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1145話

 衛宮とセイバーを送ってきたタクシーが去って行くのを確認すると、凛が口を開く。

 

「あら、お久しぶりね。衛宮君もセイバーも、こんな所で会うとは思ってもいなかったわ。それで、こんな辺鄙な場所に何をしに来たのかしら?」

 

 あからさまな挑発と牽制。

 それに早速とばかりに反応したのは、セイバー。

 その辺で売っている服を買って着ているのだろう。ぱっと見ではセイバーのサーヴァントには見えないが、すぐに俺も知っている鎧を身に纏う。

 ……当然鎧を着た瞬間に、今まで着ていた服は吹き飛ばしているんだが。

 なんつーか、セイバーって戦闘の度に服を破いているのか? 色々と金が掛かりそうなサーヴァントだな。

 いや、食費で遠坂家に負担を掛けている俺が言うべき事じゃないだろうけど。

 

「シロウ! 下がって下さい!」

 

 こちらもまた、いつものように見えない剣を構えるセイバー。

 そうなれば、当然俺も前に出て臨戦態勢に入る訳で……

 

「待ってくれ、セイバー! 遠坂も、アークもだ! 何も、ここで俺達が戦う必要は無いだろう!?」

「そうか? 聖杯戦争に参加している者同士が会った。それで戦うには十分だと思うが? そもそも、俺達とお前達は別に停戦をしている訳でも同盟を結んでいる訳でもないんだからな」

「……待って、アークエネミー」

「凛?」

 

 まさか、ここで戦うなとでも言うつもりなのか?

 そんな思いと共に凛へと視線を向けると、念話が届く。

 

『落ち着いて、アークエネミー。そもそも、私達はセイバーと戦う為にここに来たんじゃなくて、バーサーカーと戦う為に来たんでしょ? ここでセイバーと戦って無駄に消耗はしたくないわ。それに……ここは既にアインツベルンの森の近くよ。間違いなくイリヤスフィールは私達の状況を見ている筈』

『……了解』

 

 さすがにセイバーと戦った後でバーサーカーと戦うというのは色々と厳しい。

 いや、やってやれない事はないと思うが、間違いなくこっちもかなり疲労するだろう。

 そこにランサーやライダーが手を出してくれば……

 

「さて、じゃあ改めて聞かせて貰おうかしら。衛宮君は何をしにここに? 当然、ここがどんな場所かは分かっているのよね?」

 

 凛の言葉に、衛宮は特に迷う様子もなく頷く。

 

「ああ、イリヤが住んでるんだろ?」

「正解、よく出来ました。……で、改めて聞くけど、ここに何をしに来たのかしら? ああ、ちなみに私とアークエネミーはバーサーカーと戦いによ」

「待ってくれ、遠坂! 何も、イリヤと殺し合う必要はないだろ!」

 

 ……イリヤ、ね。どうやら俺達が動き回っている間に、衛宮達も黙って遊んでいたって訳じゃなさそうだな。

 衛宮の性格を考えると、恐らくイリヤとも殺し合わないように何とかしようとしていたんだろう。

 それとも、既に何とかしたのか?

 それは十分に可能性はある。

 

「話し合い、ね。……ねぇ、衛宮君。貴方のその無駄な正義感のせいで、綾子が人間を辞めたんだけど。その辺は理解してる? そもそも、あの時に衛宮君があの男を殺すのを邪魔しなければ、綾子は人間のままでいられたのに。……そう言えば、あの件も結局責任を取るとか言って、取ってなかったわね」

 

 凛にしては冷酷とすら表現出来るような視線を衛宮に向ける。

 普段の凛らしくないが、それだけ自分の日常生活における親友だった綾子が半サーヴァントになった原因を作ったワカメを……そして何より、ワカメを殺せる機会がありながら止めた衛宮を許せないんだろう。

 

「死になさい。……とまでは言わないけど、今すぐにセイバーとの契約を解除して、聖杯戦争をリタイアしなさい。衛宮君みたいな人が聖杯戦争に関わっていれば、まだまだ無駄な犠牲者を……それこそ、本来であれば出さなくてもいい余計な犠牲者を出していく事になるわよ?」

「それは……それは、出来ない」

「何故? 衛宮君の独り善がりな行動のせいで、学校の皆も入院するような被害が出たのよ? 幸い重傷者は殆どいなかったけど、あの件の責任はどうするつもりなのかしら? 確か慎二の行動の責任は衛宮君が取るのよね?」

「……確かに俺の行動で出た被害には何て言っていいのか分からない。それこそ、この聖杯戦争が終わったら出来る限りの償いはするつもりだ。それが慎二の友人で、行動を止める事が出来なかった俺の責任だと思う。けど、聖杯戦争を下りる事だけは出来ない」

 

 うん? 何だか以前と違うな? 前は聖杯戦争で無駄な人死にが出るのを止めたいって話だったけど、今は聖杯自体を求めているような?

 俺と同じ疑問を抱いたのだろう。凛もまた訝しげに口を開く。

 

「何か聖杯が必要になる事でもあったの?」

「……そうだ。何かというのは言えないけど、聖杯が必要になったのは事実なんだ。だから、例え遠坂が相手でも聖杯を譲る事は出来ない」

 

 なるほど。確かに聖杯を欲するのであれば、この態度もしょうがないだろう。

 しかし……

 

「まさかお前達がバーサーカーに戦いを挑みに来るとは、ちょっと意外だな。そもそも、お前達でバーサーカーに勝てると思っているのか?」

「そうね。バーサーカーの能力は、アークエネミー程じゃないにしても凄く高い。今のセイバーが1人で勝てる相手だとは思えないのだけど」

「……別に俺はバーサーカーやイリヤと戦う為にここに来た訳じゃない」

 

 呟く衛宮。

 そもそも、衛宮がこの場所を知っているというのも疑問だ。

 凛の場合は遠坂家とアインツベルン家という魔術師としての大家だから、お互いに相手の事は幾らかでも知ってたんだろう。

 けど、衛宮は違う。

 モグリの魔術師である以上、アインツベルンに関しては殆ど知らない筈だ。

 ……ああ、いや。違うか。

 以前教会の帰りにイリヤと会った時、何だか衛宮に執着しているように感じられた。

 多分、その辺に何かあったんだろう。

 

「聖杯戦争で負けられないというのは、こちらも同じよ。自分達だけだとは思わないでね」

「……イリヤを殺させる訳にはいかないんだ。頼む、ここで退いてくれ遠坂」

「……イリヤスフィールを?」

 

 うん? てっきりバーサーカーと戦いに来たんだと思ってたけど、違うのか?

 

『何だか訳ありみたいだけど……どうする?』

『どうするって言われてもね。私達だって、ここであっさりと引き下がる訳にはいかないでしょ?』

『まぁ、それは確かに』

 

 こっちとしても聖杯を欲しているのは事実だ。

 もしかしたら……本当にもしかしたらだけど、綾子の半サーヴァント化を元に戻す事が出来るかもしれないし。

 

「悪いけど、こっちとしても退く訳にはいかないのよ。衛宮君達に退く気がないのなら、ここで白黒付けるしかないでしょうね」

 

 出来ればセイバーとバーサーカーとの連戦は避けたい。

 それは事実だが、向こうが退かない以上は戦いになってもしょうがないだろう。

 最悪、ここでセイバーを倒して今日は一旦帰って、明日再び……という方法もあるのだから。

 セイバーとしても同じ思いなのか、構えている見えない剣をいつでも振るえるように準備している。

 

「待て! 待ってくれ! ここで俺達が戦っても意味はないだろ!?」

「何故? 私と衛宮君が聖杯戦争の参加者である以上、この戦いには大きな意味があるわ。聖杯戦争という真っ当にして、最大の意味がね」

「だから! 頼むから少し話を聞いてくれ! ……遠坂、頼む。ここは俺に任せて退いてくれないか? 今は理由を説明出来ないけど、後で絶対説明するから」

 

 必死の形相で告げてくる衛宮だったが、凛は懐から出した宝石を構えて首を横に振る。

 

「答えは否、よ。私達は今日バーサーカーを倒す為にここに来た。そうである以上、ここで退く訳にはいかないわ」

「ふーん……私のバーサーカーを倒すつもりなんだ。もしかして、この前の戦いで調子に乗らせちゃったのかしら?」

 

 不意に森の中から聞こえてくる声。

 その声が誰の声なのかというのは、1度会っただけの俺でも分かった。

 そして、事実姿を現したのは俺が予想した通りの人物。

 即ち、イリヤスフィール。

 優雅に微笑んでいる……つもりなんだろうが、まだ子供という事もあって子供が無理して背伸びしているようにしか見えない。

 こういうのを何て言うんだったか。おしゃま?

 

「あら、そっちから出迎えを受けるとは思ってもいなかったわ。随分と礼儀正しいのね」

「ええ、何せアインツベルンは歴史のある家ですからね。どこぞの遠……いえ、浅い歴史しか持たない成り上がりとは違いますの」

 

 ピキリ、と。凛の笑顔が一瞬固まったのが分かった。

 常に優雅である事を心掛けている凛がここまで露骨に態度に出るのだから、今の一言にどれだけ苛立ったのかは明らかだろう。

 

「へぇ、なるほど。やっぱりアインツベルンとはきちんと白黒を付ける必要があるわね。まぁ、この前の戦いでどちらの方が優秀なのかは明らかだけど。実力のない、家柄だけしか自慢出来ることがないというのは哀れよね」

 

 ピキリ、と。今度はイリヤの笑顔にヒビが入る。

 薄々思ってたけど、この2人ってつくづく相性が悪いよな。

 さっきまで俺といつ戦闘になってもいいと判断して見えない剣を持っていたセイバーですら、少し戸惑っているように見えるし。

 うん? いや、違う? 何だか戸惑っているのは戸惑っているようだけど、どちらかと言えば何か違うのに戸惑っているような……

 

「遠坂、止めてくれ! イリヤ、ちょっと話を聞いて欲しい」

 

 結局この混沌とした現状を何とかしようとして、最初に口を開いたのは衛宮だった。

 ……うん、正直俺としては衛宮は色々と許せないところもあるし、絶対に性格が合わないというのは理解しているけど、こういうところだけは素直に凄いと思う。

 

「あら、お兄ちゃん。私の家に来てくれて嬉しいわ。レディとしてしっかりお持て成しはする必要があるんでしょうけど……色々と邪魔な人達がいるわね」

 

 天使の笑顔とでも表現すべき無垢な笑みを浮かべ、そう告げるイリヤ。

 けど、その無垢な笑みをそのままに……

 

「丁度いいから、この前のお礼もここでしちゃいましょうか。ねぇ、バーサーカー?」

「■■■■■■■■■■■ーー!」

 

 イリヤの台詞に答えるように、霊体化した状態から実体化するバーサーカー。

 相変わらずその身体から受ける迫力はかなりのものがあり、実力で唯一俺にとっても警戒すべき相手なのは変わりない。

 それは、スライムや念動力といった宝具やスキルが解禁された今の状態でも同様であり、迂闊にこの場で戦いになれば1対1対1という、バトルロイヤルになるのは間違いない。

 いや、イリヤの台詞を考えると、寧ろ俺対バーサーカー&セイバーってところか?

 それでも負けない戦いは出来ると思うが……

 

『どうする?』

『……正直、参ったわね。まさかこんな展開になるとは思ってなかったけど……やれる?』

『どうだろうな。バーサーカーとセイバーなら何とか負けない戦いは可能だと思う。けど、マスター2人をどうする? 正直、そっちにまでは多分手が回らないぞ?』

 

 俺の戦闘方法が格闘なのは、以前と変わっていない。

 違うところと言えば、その格闘に念動力を組み合わせる事が出来るようになったくらいだ。

 そして、スライムという攻撃手段を追加として得た事か。

 つまり、俺がバーサーカーの相手をしながら、スライムにセイバーの相手をさせる。

 勿論そんな簡単にはいかないだろうが、それでも何とか出来るだけの自負はある。

 だが、イリヤはともかく衛宮がどんな風になるか。

 正直、凛だけでその2人を相手に出来るかと言われれば……さて、どうだろうな。

 

『けど、やらない訳にはいかないんだろ?』

『そうね。折角ここまで来たんだし、大人しく帰るという選択はないわ』

『だろうな。それに、お礼の件もある。ここで大人しく帰ったら、今夜は独り寝になるしな』

「アークエネミーッ!」

 

 殆ど反射的なものだったのだろう。凛が顔を真っ赤に染めながらそう叫ぶ。……念話ではなく、肉声で。

 そうなれば当然他の連中にも聞こえる訳で、衛宮とイリヤ、セイバーが何事かと凛の方へと視線を向けている。

 バーサーカーですら、表情を変えてはいないが凛の方へと顔を向けていた。

 

「と、遠坂?」

 

 恐る恐るといった風に訪ねてきた衛宮を無視し、小さく咳払いをする。

 

「とにかく、こうやってここに人が集まった以上は戦わないという選択肢はないわよね?」

 

 その言葉に最初に反応したのは、当然の如くセイバーだった。

 まぁ、それも当然だろう。

 セイバーと衛宮のペアは、イリヤとバーサーカーよりも戦力的に低く、そして当然ながら俺と凛よりも下だ。

 つまり、戦闘になれば一番不利なのはセイバーと衛宮なのだ。

 ……そう、思っていたのだが。

 

「止めてくれ、遠坂。俺はイリヤに用事がある。その為には危害を加えられる訳にはいかない。もしどうしてもここで戦うというのなら……俺はイリヤに味方せざるを得ない」

 

 不思議そうな表情を浮かべているイリヤの横へと並んだ衛宮は、そう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:380
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1185

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