転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1150話

 復活したバーサーカーは、当然のように手に持っていた岩の斧剣を振るう。

 唸りを上げながら迫ってくるその岩の斧剣を回避するのは難しくはない。

 だが、俺は敢えて左手を前に突き出す。

 俺が普通の人間であればまだしも、サーヴァント……それも、本来は存在しないイレギュラーサーヴァントだ。

 ステータスの全てがバーサーカーを上回っており、同時にバーサーカーは対英雄の効果によってそのステータスを低下させている。

 ……正直、ここまでであれば、俺としても素手で岩の斧剣を受け止めるような真似をしようなどとは思わなかっただろう。

 だが、今俺には混沌精霊というスキルがある。

 俺自身、このスキルがどういうスキルなのかは大体理解出来るが、記憶を失っているせいか完全に使いこなせているとは言えない。

 である以上、これからの戦いに備えてきちんとこの混沌精霊というスキルを使いこなせるようになっておく必要があるだろう。

 念動力の方は、最初から使い方を分かっていたのを思うと、恐らくこの混沌精霊というのはより俺の失われた記憶に深く関わっているスキルだったのかもしれない。

 ともあれ、まずは俺自身の筋力に魔力放出を使っての実験だ。

 俺の頭部目掛けて振り下ろされた斧の岩剣を受け止め、それと同時に魔力放出。

 俺の身体から放出された魔力は、あっさりとバーサーカーの振るった岩の斧剣を受け止める事に成功する。

 

「■■■■■■■■■■■ー!」

 

 俺が受け止めたその武器を手元に引き戻そうとするバーサーカー。

 その動きには特に逆らうことなく手を離してやり、魔眼を使用。

 ……が、バーサーカーは特に堪えた様子もなく、再び俺目掛けて岩の斧剣を振り下ろしてくる。

 その一撃を回避しながら、バーサーカーの腕を蹴って後方へと跳躍。

 再び魔眼を使用する。

 だが、相変わらず効果なし。

 どうなっている? 一瞬疑問に思ったが、魔眼のランクはCであり、決して高くないという事を思い出すと納得してしまう。

 なるほど、抵抗されている訳か。

 となると、魔眼を試すとしても、もっと弱い相手……と思いきや、既に残っているのは俺よりも強力な魔眼を持っているライダーに、クラス的に高い魔力抵抗力を持っているセイバー、それと神出鬼没としか言えないランサーのみだ。

 ぶっちゃけ、ランサーに効果がなければ使いようがない死にスキルだな、これ。

 

「何をやってるの、バーサーカー! そんな奴なんかさっさと倒しちゃって!」

「■■■■■■■■■■■ー!」

 

 イリヤの命令に雄叫びを上げながら、あの巨体とは思えない程の素早さでこっちに向かってくるバーサーカー。

 まぁ、炎獣の使用を考えていない今なら、特にその辺は気にしなくてもいいと判断したんだろう。

 こちらも魔力放出を使い、バーサーカーを迎え撃つべく前に出る。

 俺を叩き潰さんとして振るわれる岩の斧剣。

 これまでと同じように俺目掛けて振り下ろされたその攻撃を、今度は受け止める事なく当たる直前で回避しながら間合いの内側に入る。

 バーサーカーの鍛え上げられたその身体に再び手を触れ……

 

「ふっ!」

 

 魔力放出のスキルを応用し、手を触れた状態から一気に指をバーサーカーの身体へと突き立てる。

 白炎を纏った俺の指先は、魔力放出の効果もあってあっさりとバーサーカーの皮膚を突き破り、肉を鷲掴みにしたままに引き千切るっ!

 

「■■■■■■■■■■■ー!」

 

 痛みに呻くバーサーカー。

 それも当然だろう。生きたまま脇腹の肉を毟り取られたのだから。

 しかも、それだけでは終わらない。

 

「スライムッ!」

 

 俺の宝具でもあるスライムを取り出す。

 空間に空いた穴から伸びてきた銀色の液体金属のような身体を持っているスライムは、そのまま真っ直ぐにバーサーカーの脇腹の傷から身体の中へと潜り込んでいく。

 内部から攻撃するという形では、先程行われた影槍による体内からの破壊に近い。だが、影槍とスライムではその殺傷能力は比べものにならない。

 内部から身体を斬り裂かれる激痛というのは、予想以上なのだろう。声に出せないような雄叫びを上げて、そのまま上半身……どころか、下半身までもが肉片となって四散する。

 肉や心臓といった、柔らかい――普通の人間に比べると非常に頑強だが――部位だけではなく、骨までもが一瞬にして微塵になるまで砕かれる。

 挽肉とでも表現すべき状態になったバーサーカーだが、これでもまだ蘇生魔術に関してはストックがあったらしい。

 時間を巻き戻すかのように、見る間に肉片や骨片、血といったものが集まって身体を形作っていく。

 

「凄いな」

 

 思わず呟く。

 実際、ここまで身体が破壊されていても元に戻るというのは、正直驚き以外のなにものでもない。

 もしも俺が普通の英霊であったのなら、一度食らった攻撃には耐性を得るというバーサーカーの能力もあって、とてもではないが殺しきれなかった筈だ。

 けど、向こうにとっては残念ながら……そしてこっちにとっては幸いな事に、俺は普通のサーヴァントとは違う、イレギュラークラスのサーヴァントだ。

 スキルや宝具が自由に使えるようになった今の俺は、攻撃手段には困らない。

 そして何より、混沌精霊の中にある魔術EX。これに含まれるとある魔術は、例えバーサーカーが攻撃に対する耐性を得たとしても全く無意味になるような能力。

 まぁ、それを使うのは最後になると思うんだが。

 時間が巻き戻されるように復元されていくバーサーカーだが、それでもあそこまで念入りに殺されれば、復活するのにある程度の時間が掛かるらしい。

 それを待ちながら、信じられないと声も出ない様子のイリヤを一瞥し、次に視線をグリフィンドラゴンの方へと向ける。

 動きの鈍いセイバーが振るう見えない剣だが、グリフィンドラゴンは第六感的な何かでその辺りの攻撃を見切っているらしい。

 振るわれる前足の一撃が、長剣とぶつかりあっては甲高い金属音を立てている。

 ライダーはと言えば、あの相手の能力を下げる魔眼を使うでもなく、その素早さを活かしてヒット&アウェイで巨大釘を投げていた。

 近くに森があるというのも、グリフィンドラゴンを相手にするライダーとしては丁度良かったのだろう。

 ……まぁカマイタチブレスを使えばそんな有利は消えそうだが、殺さないようにと命令してあるので、殺傷能力の高い広範囲攻撃でもあるカマイタチブレスは使っていないんだと思う。

 衛宮の方はと言えば、セイバーの後ろで待機しているだけだ。

 ただし、あの表情を見る限りだと何かあった時にはすぐに前に飛び出そうな様子ではあるが。

 いや、遠距離攻撃の手段がある訳でもなく、サーヴァントと渡り合えるだけの戦闘技量がある訳でもないお前に何が出来るんだ?

 そうも思うが、衛宮が前に出て来るというのは、寧ろこっちにとっては都合がいい。

 何しろ、もしも衛宮が出てくれば、セイバーは自らのマスターでもある衛宮を守らざるを得ないのだから。

 そうなればグリフィンドラゴンに対する攻撃はどうしても減る事になる。

 今はセイバーや衛宮と手を組んでいるように見えるライダーがどう動くのかは、正直俺にも分からない。

 セイバーと衛宮のフォローをするのか、それともそこまでは付き合っていられないとしてさっさと離脱していくのか。

 個人的にはさっさと離脱してくれれば、こっちとしても楽が出来ていいと思うんだけど……

 

「なぁ、どう思う?」

「■■■■■■■■■■■ー!」

 

 そんな風に尋ねた俺に戻ってきたのは、雄叫びと同時に振るわれる岩の斧剣。

 その一撃を回避して岩の斧剣を握っているバーサーカーの右手首を掴み、力を受け流しながら軽く捻る。

 すると、次の瞬間には2.5m程もあるバーサーカーの巨体がひっくり返りって頭が地面へとぶつかり、自らの攻撃の強さ故に強力な衝撃が頭部へと掛かって……

 

「ついでだ、食らえ」

 

 頭が地面へとぶつかった瞬間に魔力放出で勢いを増した蹴りを放ち、周囲にはベキリという聞き苦しい音が響く。

 そのまま首の骨が折れた状態のまま地面へと倒れ込んだバーサーカーだったが、数秒程で再び起き上がってくる。

 今の首の骨が折れたのでも1回死んだと見なされるのか……それとも、きちんと心臓を潰すとかのような致命傷を与えないといけないのかは分からないが、それでもある程度のダメージを与える事には成功したらしい。

 

「ううううううっ、何よ、何よ、何よ。私のバーサーカーはあんたなんかに絶対に負けないんだから!」

 

 その様子を見て悔しそうに叫ぶイリヤ。

 一応バーサーカーは死んでるんだが、それでも全く気にしていない辺り事情をきちんと理解しているのか? いや、してるんだろうな。生粋の魔術師だから、バーサーカーを捨て駒として扱っているのか、それとも単純に最終的にはバーサーカーが勝つと信じ切っているのか。

 ……こうして見る限りだと、後者っぽいな。

 

「いいわ、さっきと同じ展開にして上げる」

 

 やがて落ち着いたイリヤが、再び先程の……狂化を使った時と同じ雰囲気になって、口を開く。

 俺の希望通りに。

 

「狂いなさい、バーサーカーッ!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーー!!!!」

 

 先程同様、今までの雄叫びとは全く違う叫び。

 こうなると分かっていた……というか、希望していた俺でも、一瞬気圧される程の叫び。

 当然グリフィンドラゴンやセイバー、ライダー、衛宮といった面々は思わず動きを止めており、それよりも近い場所でまともに今の雄叫びを聞いた凛は、数歩後退っていた。

 それでいながら、凛の目には俺が負けると思っているような揺らぎの類は一切ない。

 信じているのだ。最後には俺が勝つと。

 それこそ、イリヤがバーサーカーが勝つと信じているように。

 

「……そう来なくちゃな。さっきは今のお前に思い切りやられた。けど、だからこそ、狂化したお前に勝たなくちゃいけないんだよ」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーー!!!!」

 

 そんな俺の言葉など関係ないと、手に持っている岩の斧剣を大きく振り回してくる。

 その速度は、先程までの一撃とは大きく違う。

 技の類は捨て、完全に力任せに振るうようになった一撃。

 技ではなく、暴力。

 まさにそんな感じの一撃だったが、それでもこれ程の威力を出せるのであれば、こちらを選択してもおかしくはないだろう。

 けど……

 

「今の俺に、そんな攻撃が当たるとでも思ってるのか?」

 

 連続して振るわれる岩の斧剣の一撃を、俺は尽く回避し続けていた。

 ただし、行っているのは回避だけであり、攻撃の類は一切していない。

 今のバーサーカーに生半可な攻撃が通用するとは思えないし、迂闊に攻撃をすればそれに対する耐性を覚えるというのもある。

 だが……俺がこうして回避に専念をしているのは、もっと単純な問題だった。

 明確な格付け。それを行い、誰の目にも分かるようにして誇示しておく必要があったからだ。

 この第5次聖杯戦争の中で俺こそが最強のサーヴァントであり、俺と凛が最後まで勝ち残る存在だと誇示する為に。

 ……同時に、最初に戦ってから全く姿を見せないランサーに対する挑発の意味もある。

 真上から叩きつける攻撃を身体を半身にして回避し、袈裟懸けに振るわれた一撃は後ろへ下がって回避し、横薙ぎの一撃はしゃがんで回避する。

 暴風としか表現出来ないような、バーサーカーの連続攻撃。

 そこで振るわれる一撃を回避し続ける事、約10分。

 それだけの間、延々と攻撃を回避し続けているとやがて焦れてきたのだろう。イリヤが苛立たしげに叫ぶ。

 

「バーサーカー、とっととその攻撃を回避するしか能のない虫を潰しちゃいなさい!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーー!!!!」

 

 イリヤの言葉と共に、更に振るわれる攻撃の速度が増す。

 普通のサーヴァントであれば、まず回避し続けるのは不可能なその一撃は、しかし相変わらず俺に命中するようなことはなかった。

 正真正銘の全力。

 バーサーカーにはこれ以上の上はないと判断し、俺が混沌精霊のスキルを思い出した中で最大の恩恵とも言える存在を口にする。

 

「直撃、愛」

 

 その言葉を口にした瞬間、俺の身体には不思議な……それこそ、信じられないような不思議な力が漲る。

 同時に、バーサーカーの攻撃を回避し続けながら右手に生み出した炎を圧縮し、圧縮し、圧縮し、更に圧縮する。

 そうして極限まで圧縮された炎はプラズマと化し……

 

「終わりだ」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーー!!!!」

 

 雄叫びと共に振るわれた岩の斧剣を回避して、その胸へと叩きつける。

 瞬間、俺の手の中にあったプラズマが解放され、バーサーカーそのものを飲み込むかのような眩い光となり……それが消えた時、そこには既に何も存在していなかった。

 それこそ、バーサーカーを構成している魔力も、岩の斧剣の破片も、血も、肉も……何もかもが。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:385
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1186

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