転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1152話

 間桐桜。

 その名前が出た瞬間、明らかに凛の醸し出す雰囲気が変わった。

 綾子から何度か聞いた覚えがある人物だな。

 確か、弓道部の後輩だったか。

 

「……そう、あの子がライダーのマスターだった……半ば予想はしてたけど、信じたくなかったわね」

「凛?」

「いえ、今はいいわ。それより今の話の流れから考えると、桜は衛宮君と組んでるの?」

 

 まぁ、その辺はしょうがないだろう。

 ライダー単独では、俺は勿論バーサーカーにも勝てなかった。

 そうである以上、誰か他のマスターと組むより他に道はない。

 けど、アサシンとキャスターを俺達が倒してしまった以上、残るのはどこにいるのか分からないランサーと、凶悪な戦闘力を持っているバーサーカーと、サーヴァントの中でも最強である俺、そしてセイバー。

 特にセイバーのマスターである衛宮と顔見知りだったというのも大きいだろう。

 そんな俺の予想を裏付けるかのように、衛宮は頷く。

 

「ああ。ただ、組んでるというか……今は家で預かってる状態だな」

「なっ!?」

 

 何故か焦る凛。

 ただ……衛宮の家で預かって貰ってるってのは、つまり自分の家がなくなったからな訳で、その理由が俺達にある以上は何かを言えた義理じゃない。

 これが、家に泊めているのを笠に着て無茶な要求を突きつけたりしていれば話は別だろうけど、衛宮に限ってそんな事は絶対にしないだろうし。

 根本的に性格の合わない俺と衛宮だけど、その律儀なところだけは信用出来ると思っている。

 

「ええ。私も桜も現在は士郎の家でお世話になっています。……何せ、どこかの誰かが桜の家を綺麗さっぱり消してしまいましたから」

 

 冷静な分だけ毒の籠もった言葉を放つライダーに、凛もまた一瞬眉をピクリとさせてから口を開く。

 

「そもそも、私達が間桐家に仕掛ける原因になったのは、どこぞの露出狂が学校で妙な結界を発動させたからなのだけど……その辺はどう思っているのかしら?」

「……露出狂ですか。まぁ、露出しても喜んで貰えないような貧相な身体をしている者にしてみれば、羨ましいのは分かりますが」

 

 ピクリ、と。

 ライダーの言葉を聞いた瞬間、何故か凛だけじゃなくてセイバーやイリヤまでもが反応する。

 ……まぁ、うん。何が理由で反応したのかってのは考えない方がいいだろ。

 

「あら、そう? アークエネミーは私の身体に十分満足してくれてるわよ?」

 

 そんな風に思った俺だったが、いきなり凛の口から出て来た言葉に思わず凍り付く。

 おい、凛。幾ら何でもそれをこんな所で言うなよ……

 チラリと確認すると、今の言葉の意味を理解したんだろう。衛宮が俺の方を愕然とした表情を浮かべて眺めている。

 今はどうか知らないけど、以前は衛宮が凛の事を好き……と明確な感情を抱いていたのかどうかは分からないが、憧れていたのは事実だ。

 実際、凛もまた自分を見る衛宮の視線でそれを理解していたって言ってたし。

 そんな、かつて憧れていた人物が、自分の前で俺に抱かれたと匂わせるとか……抱いた俺が言うのも何だけど、少しは男の純情を思いやって欲しい。

 根本的に衛宮とは合わない俺だが、それでも今の凛の仕打ちには少し同情してしまう。

 

「おや、そうですか。どうやらアークエネミーは特殊な趣味をしているようで」

「何よ、アークエネミーは別に胸の大きさで女をどうこうなんかしないわ。だから綾子だってアークエネミーに抱かれ……」

「はい、そこまでだ」

 

 とんでもない事まで言いそうになった凛の口を塞ぐ。

 いや、それはちょっと手遅れだったかもしれないけど。

 実際、衛宮が先程とは違った意味で目を大きく見開いて俺の方へと視線を向けていてるし。

 そこに驚き以外にも怒りの色が若干混じっているのは……まぁ、衛宮は綾子とも友人関係だったらしいから、二股がどうとか考えればしょうがないんだろう。

 凛も自分が何を言いそうになったのかに気が付いたのだろう。頬を赤く染めて俯いている。

 そんな凛の方へと顔を向けたライダーは、次の瞬間には再び俺の方へと顔を向けてくる。……多分。

 

「なるほど、見かけによらず夜も強いのですね」

 

 取りあえずその言葉は流し、紅茶を口に含んでから改めて口を開く。

 

「それで、間桐桜とかいう女が衛宮の家で預かっているのはいいとしてだ。まさか、それが理由で衛宮とライダーが手を組んだ訳ではないだろう?」

「そうですね。勿論桜が士郎に対して好意を抱いているというのも理由の1つではありますが」

「っ!?」

 

 ライダーの言葉に、小さく息を呑む凛。 

 その桜ってのがどんな奴なのかは分からないが、凛とは少なからず関係があるようだな。

 

「だからと言って、当然それだけでこのような成り行きにはなりません。まぁ、桜の場合は聖杯自体には興味がないので、手を組んでもおかしくないのですが……当然私が士郎達と手を組んだ、正確には助けを求めたのには理由があります」

 

 つい先程までの態度は何だったのかと言いたげに真面目な表情――目は眼帯で覆われている為に、真面目な口調でと表現すべきか――で話すライダー。

 俺の隣に座っている凛が何を聞いても驚かないようにと緊張している様子や、衛宮達に協力を求められているイリヤが面白そうな表情を浮かべている中で、ライダーは口を開く。

 

「間桐臓硯。この人物の名前に聞き覚えはありますか?」

「慎二の祖父……だったかしら。既に隠居してこっちの世界には関わっていないと思ってたけど」

「その間桐臓硯ですが、今はどこでどうしているのか分かりますか?」

 

 ライダーの言葉に首を横に振る凛。

 まぁ、ワカメみたいに自分から毎日のように絡んできていたならともかく、殆ど面識がないのであれば、その動向を完全に把握しろってのは無理か。

 一応使い魔って手段があるけど、凛の魔術は宝石を使う魔術で、ぶっちゃけコストパフォーマンスが悪すぎる。

 それに、間桐の魔術ってのは地下室で見たように蟲を使う代物なんだとすれば、当然凛が放った使い魔を見つけるのもそう難しい話ではないだろう。

 

「そうでしょうね。……もしも貴方が使い魔の類を使ったとしても、本物の間桐臓硯の行方を見つける事は出来なかったでしょう」

「……本物?」

 

 ライダーの言葉に、違和感を覚える。 

 今の言い方だと、まるで偽物がいるかのような話し方だ。

 そう思っていると、ギリッと歯を食いしばる音が聞こえてくる。

 音がしたのは衛宮のいる方で、その衛宮が唇を噛み切って血を一筋垂らしていた。

 

「シロウ」

 

 セイバーが衛宮に声を掛ける。

 心の底からその身を案じているようなその態度は、セイバーというよりは女としての態度にすら感じられた。

 これってもしかして、そういう事か?

 疑問に抱く俺の前で、ライダーは再び口を開く。

 

「ええ。何せ本物の間桐臓硯は……桜の心臓に寄生しているのですから」

「っ!? ど、どういう事!? 何だってそんな事になってるのよ!」

 

 ガチャンッ、と周囲に響く食器の音。

 凛が手をテーブルに叩きつけた音だ。

 だが、衛宮はそれに答えず、セイバーは怒りを押し殺したかのように沈黙を守り、ライダーは表情を動かさず、イリヤはその年齢に見合わぬ冷静さで話の成り行きを見守っている。

 

「凛、落ち着け」

「落ち着けって……落ち着ける訳がないでしょ!? 大体……」

「落ち着け。お前が頭に血を上らせてどうする。常に優雅に。それが遠坂家の家訓なんだろ?」

 

 そう告げ、テーブルに叩きつけられた凛の拳を上から握ってやると、ようやく少しは落ち着いたのだろう。やがて考えを纏めるように深呼吸をする。

 

「それで……ライダー、臓硯が桜に寄生しているというのは、具体的にはどういう事なの?」

「その言葉通りの意味です。現在の間桐臓硯は、既に人の姿をしておりません。身体を人のそれから蟲へと代え、間桐の後継者を産む為の胎盤となる桜を監視する意味があるのか、その心臓の内部に寄生している状況です」

 

 言葉程に冷静という訳ではないのだろう。ライダーの身体からユラリとした怒気が放たれる。

 これまでの話の流れからも理解していたが、ライダーにしても桜という人物は大事な存在なのか。

 

「蟲にって……そんな真似……いえ、間桐の魔術は使い魔に深い造詣を持つらしいから、それを考えれば……でも、幾ら何でも無理がある筈よ?」

「その辺に関しては分かりません。ただ、この場合重要なのは桜が臓硯の支配下にあるという事です。その上で、臓硯は桜の体内から魔力を使って蟲を操り、好き勝手に動く事が出来る。文字通りの意味で獅子身中の虫と言ってもいいでしょう。私は、それをどうにかしたくて士郎やセイバーと手を組む事を決断しました」

「……待って。それじゃあ、もしかして桜はライダーが衛宮君達と一緒に動いているという事は知らないの?」

「ええ。桜の知っている事は、基本的に臓硯も知っていると考えてもいいでしょう。そうであるのなら、私が士郎やセイバーと共に行動しているのはともかく、その狙いまでは知らせるわけにも行きませんから」

「それが、桜を間桐臓硯の支配下からどうにかするって事?」

「はい。正直、どうすればいいのか最初は迷っていたのですが、その時にセイバーからアインツベルンの魔術ならどうにか出来るかもしれない、という話を聞き……」

「こうして今日来たところに、私達と遭遇したって訳ね」

 

 ライダーと凛の間で話が進んでいくか、それを聞いている俺には幾つか疑問があった。

 それは凛も同様だったのだろう。紅茶を飲んでから、改めてセイバーの方へと視線を向ける。

 ……コクコクと頷きながらお茶菓子を食べているセイバーに。

 って、おい。

 

「あの、セイバー? ちょっといいかしら?」

 

 凛にしても、セイバーの様子は予想外だったのだろう。恐る恐るといた様子で声を掛ける。

 

「……ええ、問題ありません。しっかりと聞いています。それで、何でしょう?」

 

 今まで一心不乱に食べていたのを、なかったかのようにしながら口を開くセイバー。

 こうして見ると、頑固というか堅物な奴だとばかり思ってたけど、意外とお茶目なところもあるんだな。

 

「何で桜を助けるのに、アインツベルンの魔術が使えると思ったのかしら? いえ、そもそも、なんでアインツベルンの城がこの郊外の森にあると知っていたの? 私の場合はこの地のセカンドオーナーとして、この城の件は知ってたんだけど」

「……その、それは……」

 

 余程言いにくい事なのだろう。凛の質問にセイバーが口籠もる。

 衛宮の方は何か言いたげにしているが、それ以上口を挟む様子はない。

 多分、事情は知ってるけど自分が話してもいいのかどうか分からない。そんなところか?

 だが、そんなどことなく居心地の悪い沈黙を破ったのは、これまでは黙って話の成り行きを見守っていたイリヤだった。

 

「前回の聖杯戦争でセイバーはこの城を拠点にしていたんだから、知っていて当然でしょ。それに、アインツベルンの魔術について詳しいというのも、同じ理由ね」

「なっ!?」

 

 再び凛の口から出た驚愕の声。

 それは俺も同様だった。

 前回の聖杯戦争で召喚されて、今回の聖杯戦争でも召喚された?

 確かに可能性がないとは言わないが、それは殆ど天文学的な確率と言ってもいい。

 これまでの歴史で生み出された英霊の数を考えれば、まず有り得ない。

 それこそ、何らかの人為的な干渉がなければ。

 

「そんな、2回連続で同じサーヴァントが呼ばれるなんて……有り得るの?」

 

 呆然と呟く凛。

 俺もその意見には賛成だけど、既にいるものはどうしようもないだろう。

 

「それはそれとして……」

 

 あっさりとそう呟いたのが信じられなかったのか、その場にいた者達の全員が俺へと驚きの視線を向けてくる。

 割り切りすぎか?

 ただ、これ以上ここでセイバーの特殊性について話したとしても、何か意味がある訳じゃない。であれば、今は話を進めた方がいいだろう。

 そんな思いからだったんだが。

 イリヤは一瞬俺の方を見てから、セイバーを見て、次に衛宮へと視線を向けて口を開く。

 

「お兄ちゃん、セイバーの件を聞いたって事は、当然私の事も聞いたのよね?」

「ああ」

「……そ。じゃあ、その辺は後で2人でゆっくりと話すとして、今はアークエネミーの言う通り、そっちに関して話しましょうか。けど、これは意地悪で言うんじゃないけど、多分お兄ちゃんが考えているような真似は出来ないと思うわ。確かにアインツベルンの魔術はホムンクルスを得意としている。けど、だからってその桜って子の意識をホムンクスルに移せるかどうかって言われれば……難しいでしょうね。噂ではどこぞの封印指定の魔術師がそんな真似を出来るって話だけど、当然伝手なんてないし」

「……そんな……」

 

 唖然とする衛宮と、何故かこちらもショックを受けている凛。

 何とかしてやりたい。……そう思っていたんだが、ふと思い浮かぶ事があった。

 ヒントは、凛の家で見たTV。

 

「もしかしたら、何とか出来るかもしれない」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:385
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1186

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