転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1160話

 全てを思い出した。……そう、忘れ去っていた俺の名前は、アークでもアークエネミーでもなく、アクセル。アクセル・アルマー。

 呟き、周囲を見回しながら、俺が今までこの世界……Fate世界で体験してきた事を思い出す。

 色々と……そう、色々と思うところはあるのだが、今はそれどころではない。

 視線の先に、さっきの髑髏の仮面……真アサシンによって心臓を握り潰されたランサーの姿を見つけると、こっちを心配そうに見ている凛に、今は大丈夫だと小さく頷きながらランサーの方へと向かう。

 

「げっ、げふっ、……ちっ、し、しくじっちまったぜ。まさか、この俺がこんなところでやられる、とはな」

 

 血を吐き出しながらそう告げるランサーに、空間倉庫のリストを脳裏に表示しつつ口を開く。

 

「何を言ってるんだ。心臓を破壊された程度で死ぬようなら、英霊なんかになれないだろうが」

「はっ、ははっ、確かにな……けど、残念ながら、このザマだ。くそっ、バゼットを弔ったら、お前さんと酒を飲もうと思ってたんだけど……なぁ」

「残念ながら俺はアルコールは苦手でな……あった!」

 

 脳裏に浮かべていた空間倉庫のリストから、ネギま世界の魔法界で入手したエリクシールを発見。

 あらゆる病や傷を癒やすというこのエリクシールなら、真アサシンの宝具で心臓をやられたランサーでも……そう思って、そのリストからエリクシールを選択するのだが……

 

「馬鹿なっ!」

 

 思わず叫ぶ。

 脳裏のリストから、幾らエリクシールを選択しても空間倉庫から出てこないのだ。

 空間倉庫のリストは白文字で表示されているのに、何故かエリクシールは灰色になっている。

 どうなっている? 今までこんな事はなかった筈だが……くそっ、これがあればランサーは助かるってのにっ!

 

「はっ、ははっ……ど、どうしたんだ? いきなり叫んで……」

「くそっ、待ってろ。すぐにお前の傷を治してやる」

「無理を……言うなよ。ただ、まぁ……そうだな。このままただで死ぬのも……癪って奴だ。アークエネミー……確か、お前は、何故か宝具の真名解放が、出来たよな。なら、せめてもの土産だ。これを、くれてやる……よ」

 

 そう告げ、ランサーはどこからともなく出した2mを超える長さを持つ赤い槍を俺へと手渡す。

 ゲイ・ボルク。クー・フーリンの象徴たる宝具で、少量の魔力――衛宮はそれでも貪欲なまでに魔力を集中していると感じたらしいが――で、敵の心臓を抉り、更には多少ではあるが治癒を阻害するという効果すら持つ。

 ずしりと受け取った槍の重さを感じつつ、脳裏に浮かんでいる空間倉庫のリストに表示されているエリクシールを何度となく選択するが、一向に出てくる気配はない。

 

「嬢ちゃん……」

 

 既に限界なのだろう、ランサーの足から既に光となって消えていっているのだが、本人はそれを感じさせる様子もなく、言葉を紡ぐ。

 

「……何?」

「悪いけど、よ。出来ればバゼットの弔いを……頼むわ」

「ええ、任せて。すぐにとはいかないけど、それでもこの聖杯戦争が終わったら必ず」

「悪い、な。……そっちの嬢ちゃんも……また、な」

「……ああ」

 

 凛と綾子にそれぞれ言葉を残し、最後に再び上を見る。

 2月という真冬の空だからか、雲は殆どなく、澄んだ空気で星が良く見える。

 

「ああ……もうちっと時間があれば、な。けど、まぁ……色々と最悪な聖杯戦争だったが、それでも最後は……悪く……ない」

 

 その言葉を最後に、ランサーは身体の全てが光と化して消えていく。

 ……そう、俺が以前倒したキャスターのように。

 

『……』

 

 光と化して消えていったランサーの残骸を眺めつつ、俺と凛と綾子は暫くの間黙る。

 俺もようやく記憶を取り戻したとはいえ、今は何かを言う気にはなれない。

 色々と……それこそ、色々と話をする必要があるだろうが、今はただ本来であれば戦友になった筈のランサーの最後を見送るだけだ。

 ランサーか。正直、記憶の戻った今なら、かなり俺と性格の合う奴だったと思うんだよな。

 シャドウミラーに所属している面々とも、性格的にかなりあっただろうし。

 ムラタ辺りはいい鍛錬相手が出来たと喜んだ筈だ。

 それに……早いところゲートを設置して向こうに連絡を取らないとな。

 特にレモンと恭子は俺が消える光景をその目にしていた分、心配は大きいだろう。

 

「……帰りましょうか」

 

 ポツリ、と。凛の声が周囲に響く。

 冬の夜空の寒さが、俺達の間を通り抜ける。

 確かにずっとここにいても意味はない、か。

 

「そうだな。ここで長居をして風邪を引いたりしたら、それこそランサーに笑われるだろうし。……いっそ苦笑をするか?」

「ふふっ、確かに。色々と奔放な性格をしていたようだし」

 

 綾子が俺の言葉に同意するように呟く。

 凛もそれに同意するように頷くのを見つつ、俺は持っていたゲイ・ボルクとルールブレイカーを空間倉庫の中へと収納する。

 

「ちょっ、ちょっと、アークエネミー!? あんたゲイ・ボルクとルールブレイカーをどうしたのよ!」

 

 俺が空間倉庫へと収納するのを見ていた凛が、何が起きたのか信じられないといった様子で呟く。

 まぁ、そうだよな。普通なら空間倉庫がどうとか分からないか。

 

「色々と話したいところだけど、それこそここにいたままだと風邪を引くからな。詳しい話は家に戻ってからにするよ。凛も綾子も、俺の方に近づいてくれ」

 

 俺の言葉に、色々と首を傾げながらも凛は近づいてくる。

 綾子のほうは、物干し竿を手にしたままで、今の俺の様子を不思議そうに眺めながら。

 そんな2人が俺の側に近づいてきたのを確認し、一応逃げないように2人の肩を抱く。

 

「ちょっ、ア、アークエネミー!? あんた、ランサーが死んだばっかりだってのに、いきなり何発情してるのよ!」

「……色々と人聞きが悪いことは言わないで欲しいんだがな。使い魔の類がまだ残っている可能性もあるし」

 

 溜息を吐き、足下に影のゲートを展開する。

 いきなり足下に現れた影に……そして何より、その影に身体が沈んでいく感触に驚いたのだろう。凛は……そして綾子もまた俺に抱きつく。

 2人の柔らかい身体と、甘い匂いを感じながらも、俺の中にあるのは色々と言いがたい思いだ。

 俺、この2人の身体を思い切り貪ったんだよな。

 それこそ、この2人が限界を超えそうになるくらいまで、思う存分。

 一応俺がそういう行為をするのは、18歳以上という一線を持っていた筈だった。

 だが……俺がこのFate世界にやって来た時は、どういう訳か身体は10代半ばのものへと変わっていた。

 更には記憶を失っていた事もあって、俺の意識は完全に10台半ばのものへと変わっていた。

 そんな俺にしてみれば、年上でもある凛や綾子にそういう魅力を感じないかと言われれば、胸を張って否と答える。

 勿論記憶を取り戻した今でもそういう魅力は感じているが。

 また、最初に凛や綾子と結ばれた時は、綾子が死ぬかもしれない状態で、それをどうにかする為には儀式として抱くしかなかったというのもある。

 ……けど、この件がレモンとかに知られたら、面白く笑われそうだよな。

 あやか達に知られると、自分達は高校卒業まで待ったのに……とか言われそうだし。

 寧ろ、凛にしろ綾子にしろ、気が強いからレモン達と会った時にはどうなる事やら。

 そんな風に考えている間に、俺達の姿は既に凛の家の前へと存在していた。

 

「転移魔術……」

 

 自分の体験した事が信じられないと呟く凛。

 まぁ、転移魔術は魔法の1歩手前であり、キャスターくらいしか使えなかったからな。

 

「正確には影のゲートを使った転移魔法って言うんだが、まぁ、この世界の認識だとすれば転移魔術で間違ってないか」

 

 魔法という言葉に反応したのか、凛は俺に抱きつきながらも鋭い視線を向けてくる。

 ぶっちゃけ、俺の存在は異世界や平行世界から来た存在な訳で、遠坂の魔術を継ぐ者としては決して安易に流せない要素が大量にあるしな。

 

「話、聞かせて貰えるのよね?」

「ああ、勿論だ。俺が知ってる事は話させて貰うよ。ただ、ここで話す訳にもいかないし、居間で話すとしよう」

 

 その言葉に頷き、俺達は家の中に入っていく。

 ……にしても、キャスターか。

 ぶっちゃけ、もしFate世界に来たら一番仲間にしたいと思っていた人材なんだよな。

 純粋に魔術師としての能力が高いから、シャドウミラーの技術で大きく発展出来る可能性もあった。

 それに道具作成のスキルがあるから、これを使えばマジックアイテムの類を大量に作れるし、陣地作成でホワイトスターを神殿にする事も可能だった。金羊の皮があれば、キャスターは竜を召喚出来ないかもしれないけど、召喚魔法を使える俺なら可能性もあった。

 竜を自由に操れないとしても召喚出来るだけで十分であり、その後は力を見せる事で従える事も可能だっただろう。

 Fate世界の竜は門世界の竜とは大分違うが、アークエネミーとしての俺ではなく、アクセル・アルマーとしての俺なら、そんな竜を従えるのも出来た筈だ。

 アサシンの佐々木小次郎も、純粋な剣士としての力量はセイバーに勝る存在だった。

 ムラタ辺りなら、絶好の練習相手が出来たと喜んだだろう。

 シャドウミラーの……というか、エヴァ辺りに力を借りれば、門に対する縛りってのもなくす事は出来たかもしれないし、もしそれが無理でも、転移区画にあるリュケイオスを守って貰えば最強の守護者となっただろうに。

 葛木に関しても、生身での戦いの純粋な技量は非常に高いし、殺人鬼であったとしても、一応のモラルはある。……倫理の教師だったし、生徒にも慕われていたのだから。

 その蛇の暗殺拳は非常に強力で、原作ではセイバーの初撃をキャスターの援護なしで純粋に討ち破った程の実力の持ち主だ。実働班の戦闘訓練の相手としても考えられたし、量産型Wのバージョンアップにも役だった筈だ。

 柳洞寺から……そして冬木から追い出してしまった以上、見つけることは無理とは言わないが、かなり難しいだろう。

 少なくても、こっちにまだ地盤のない俺では無理だ。

 こうして考えると、つくづく惜しい事をした。

 出来るなら過去に戻ってやり直したい程だ。

 ……時流エンジンを使って何とか出来ないか? 無理か。

 あれだけの宝の山でもあるキャスター一行を倒して、結局入手したのがキャスターのルールブレイカーと、アサシンの物干し竿のみ。

 まぁ、何もないよりはいいんだけどな。

 特にルールブレイカーは魔術的な契約の類を完全に無効化出来るし。

 ……俺が真名解放を出来るというのは未だに謎だが、これはやっぱりアークエネミーってイレギュラークラスのクラス特性か何かなんだろう。

 それに……俺がもっと早く記憶を取り戻していれば、ランサーを助ける事が出来たかもしれない。

 

「アークエネミー、何してるの? さっさと入りなさいよ。あんたには、色々と聞きたい事があるんだからね!」

 

 家の中から聞こえてきた凛の声に考えを中断し、家の中へと入るのだった。

 

 

 

 

 

「……さて、色々と聞いておきたい事があるんだけど、何から聞いた方がいいかしら?」

 

 居間のテーブルに座り、凛が自分で入れた紅茶を飲みながらそう告げる。

 俺と綾子もそれぞれ椅子に座っており、凛の淹れてくれた紅茶が目の前にある。

 その紅茶を一口飲み、口を開く。

 

「そうだな、まずは何から話したらいいんだろうな。正直、色々とありすぎて何から話したらいいのかすら迷う」

「何でまた急にそんな事になったんだ? ランサーと戦っていて思い出したとか?」

 

 綾子がお茶請けのクッキーを手に尋ねてくるが、首を横に振る。

 

「ランサーとの戦いで思い出したんじゃない。正確には、その戦いの後だ。ランサーを殺した奴を俺がスライムで殺しただろ? あの時に……うん? そう言えば。ちょっと待ってくれ」

 

 凛と綾子に断り、ステータスを脳裏に表示する。

 そこに表示されているのを見て、ああやっぱり……と思ってしまった。

 俺のステータスに多くあるスキル覧。そこに1つだけ空きがあったのだが、その1つがアサシン……真アサシンを吸収した事によって埋まっている。

 入手したスキルは、気配遮断A+。

 このスキルがどんな効果を持つのかは、半ば本能的に理解した。

 アサシンのクラス特性の能力で、気配を消せばまず発見は不可能になるという能力を持つ。

 これだけを聞けばかなり強力な技能なのだが、攻撃体勢に移ると大きくランクが下がるらしい。

 つまり、何もしていない普通の時にこれを使えば他人に気が付かれずに行動出来るが、殴ろうとすれば見つかりやすくなるって訳だ。

 また、魔術以外の警備装置……監視カメラやサーモグラフィみたいなのには普通に反応するし、直接目で見るのではなく双眼鏡のような類で何かを通しても効果は発揮しない。

 ……正直、微妙。

 そもそも俺個人としての能力で気配を殺すという能力は使える。

 確かにここまで強力な気配を殺せる訳ではなかったが、それでも十分に使えた能力だからだ。

 本音を言えば、空いている最後のスキルにはそれこそキャスターのスキルのどれかや、バーサーカーの十二の試練が欲しかった。

 まだ倒していない相手だとすれば、金ぴかのカリスマか黄金律辺りか。

 アークエネミーとしての俺のスキルにも同じのはあるが、両方ともスキルのランクは低いし。

 

「……悪い、時間を取らせた。ともあれ、俺のスライムがあの時に吸収した影響で俺の記憶が戻った」

「っ!? やっぱりね。だと思ったのよ。今まで使えなかった能力をああも使ってればね。それで、アークエネミーってどこの英雄だったのよ?」

 

 凛の言葉には綾子も興味があるのか、こちらを見ている。

 

「まず、名前……真名からだな。クラス名はアークエネミーだったが、真名はアクセル。アクセル・アルマーだ」

「アクセル・アルマー? 聞いた事がない名前だけど……」

「だろうな。俺の名前はこの世界には存在しない筈だ」

「……世界?」

 

 訝しげに呟く凛に、笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ああ。遠坂の魔術を継いでいる凛には、こう言えば分かりやすいだろう。俺は異世界、平行世界、そんな場所からこの世界にやって来た存在だ、と」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:390
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1407
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1187

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