転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1179話

 眼下に見えるアインツベルンの城を横目に、地上へと降り立った俺が見たのは、顔を憤怒の色に染め上げた金ぴかの姿だった。

 俺が顔面を鷲掴みにした影響なのだろう。金ぴかの顔には指5本分の青痣がついている。

 更にはさっき地面に叩きつけた時の衝撃で付いた傷なのか、頬の辺りには切り傷のようなものがあり、そこから薄らとではあるが血が流れていた。

 それに気が付いたのだろう。金ぴかはその傷を指で拭い、血が流れているのに気が付くと更に強烈な怒気をその身体から噴出する。

 そのまま王の財宝から瓶に入った飲み物を取り出して飲むと、血の流れている傷だけではなく指の跡すらも消え去った。

 へぇ、便利な物を持っているな。

 エリクシールが使えない俺としては、かなり羨ましい代物だ。

 

「いい物を持ってるな。おい、それも寄越せ」

「……」

 

 挑発の言葉を発するが、戻ってきたのは無言。

 ただ、その身から感じられる怒気が更に強まっただけだ。

 そのまま飲み干した瓶をその辺へと放り投げると、金ぴかは静かに口を開く。

 

「王の中の王たるこの我を、ここまで馬鹿にする者がいるとはな。最早貴様は我と同じ空気を吸っている事すら許されん。自害などと生温い事は言わん。貴様はこの世に存在したという事を呪いながら、永遠の苦しみを味わえ」

 

 その言葉と共に、金ぴかの背後の空間が無数の波紋を生み出し、その波紋からは同じ数だけ武器が姿を現す。

 そして金ぴかが手を振り下ろすと、次の瞬間には無数の武器が俺の方へと飛んでくる。

 この時、金ぴかは間違いなく自分の勝利を確信していただろう。

 宝具を雨霰と射出してくるのだから、それはある意味当然とも言える。

 だが……まさか、この状況こそが俺の狙いだとは気が付かなかったらしい。

 俺の方へと向かって飛んでくる宝具を回避していく。

 同時に、こちらに向かって飛んでくる宝具……剣、短剣、槍、ハルバード、大鎌、斧、ポールアクス等々、それらの武器に触れては、次から次に空間倉庫へと収納していく。

 俺が触れる端から消える宝具の数々には、金ぴかも当然気が付いたのだろう。怒声を浴びせてくる。

 

「この痴れ者がぁっ! 1度だけではなく2度も3度も我の財を盗むかぁっ!」

 

 その怒声と共に、宝具の射出が止まり、俺が奪えず地面に突き刺さっていた無数の宝具が消え失せた。

 ちっ、こっちに渡さないようにか。

 

「はっ、良く言う。そもそもお前が集めた財宝って言うが、それだって人から奪った代物が殆どだろう? それで俺を盗人とか言うのなら……うん? 俺の前で口だけは達者で、実力は全く備わっていない弱者な盗人の王だな。お前にとってはこれ以上ない程似合ってる称号だぞ」

「痴れ者がぁっ! 王たる我を侮辱するか! その不敬、既に死を以てすら許されぬぞ!」

「くくく……ははは……あーはっはっはっはっはっは! 王!? 王だって!? 高々一つの世界の中東の一部、それも今では一国の一地方でしかない場所を支配したに過ぎないお前がか!? 俺に言わせれば、お前が築いたのは王どころか一領主に過ぎないってところだけどな。それが、王? 駄目だ、笑わせる……もしかして、俺を笑い殺させるのがお前の奥の手か!? くっくっく……駄目だ、確かにお前のその攻撃は今までの中で最強の攻撃だぞ! 宝具の射出なんかよりも、余程俺にダメージを与えている」

「っ!? 貴様、我の真名を!」

「ああ、知っているさ。お前程度の雑魚は今まで幾らでも見てきた。その中でも、お前はとびっきりの道化だよ。まさにピエロと言ってもいい。そうだろう? 古代メソポタミア、シュメール初期王朝時代のウルク第1王朝の王、ギルガメッシュ」

 

 何とか笑い声を押さえて、そう告げる。

 そう、世界を統一したとか何とか言っているが、実際には俺の目の前にいる金ぴかは、今で言うイラク……それもイラク全てではなく、その一地方を支配したに過ぎない男だ。

 王と言うよりは、領主……いや、ギルガメッシュの支配していたのがウルクという都市国家だったとすれば、市長でしかない。

 多少規模は違えど、市長がこんな傲岸不遜な態度を取っている訳だ。

 腹が痛くなる程に笑ってしまうのも当然だろう。

 

「きっ、貴様……度重なる無礼、既に貴様の姿すら視界に映すのも不愉快だ!」

 

 うん? よし、いい具合に頭に血が上ってくれたな。これなら上手くいけるか?

 この金ぴかと戦う上で欲した、主目的のうちの1つ。

 

「種類は違えど、お前に俺と同じ神の血が流れているとはとても信じられないな。いや、寧ろ気色悪くすらある」

「……ほう。ならばその無礼、己が身で償え!」

 

 パチンッ、と指を鳴らしたその瞬間。俺を中心にして空間の波紋が幾つも現れ……次の瞬間には、その波紋から鎖が伸びて俺の身体へと絡みつく。

 鎖の触れた場所から何だか不愉快な感覚が伝わってくる。

 なるほど、これが対神兵装の天の鎖か。

 神性が高ければ高い程に脱出が困難になる宝具で、原作のヘラクレスはこれにより敗北の原因となったと言ってもいい。

 俺が欲していた主目的のうちの1つ。

 確かに俺には混沌精霊の特性として、神性が宿っている。

 だがその神性の由来は、ネギま世界の関西呪術協会に封じられていたリョウメンスクナノカミの……しかも頭部を吸収したからに過ぎない。

 その結果が、神性D。

 つまり、天の鎖は確かに効果を発揮するが、その特性である対神兵装としての役割は殆ど果たせず、ただちょっと丈夫な鎖でしかなかった。

 ここまでは俺の予定通りだ。ただ、最後の問題は……果たして、俺を縛っているこの天の鎖をどこまで奪う事が出来るかだな。

 出来れば王の財宝からこちらの世界に出ている部分だけではなく、王の財宝の中にあるものも奪えればいいんだが……

 

「ふんっ、哀れなものよ。いや、我の財を盗んだ者の末路としては相応しいと言うべきか。その天の鎖は神性に反応して魔力による痛みを与える。盗人に相応しい死に様よな」

「そうか。一都市国家の市長から贈られた献上品だ。貰ってやるとしよう」

 

 一都市国家、市長、献上品。

 これらの言葉を聞いた金ぴかはその額に血管を浮かび上がらせる。

 

「何だ? どうした、市長。自分の身の程を知ったのが、そんなに我慢出来なかったのか? そうだな、お前のような身の程知らずにはこの言葉を贈ろう」

 

 縛られてはいるが、それはつまり俺の手にも天の鎖が絡みついているという事となる訳で……

 

「己の分をわきまえろ」

 

 その言葉と共に、天の鎖を空間倉庫の中へと収納する。

 瞬間、俺の身体を縛っていた天の鎖は消滅した。

 

「なっ!? ……貴様ぁっ! 我の友をどうしたぁっ!」

 

 ああ、そう言えば天の鎖は金ぴかの唯一の親友が元ネタだったか。

 

「さてな。お前のような愚物を相手にするのが嫌になって俺に跪いたんじゃないか? 唯一の親友にも見捨てられる辺り、お前に相応しい最後だな」

「ふざけるなぁっ!」

 

 やはり親友というのはこの金ぴかにとって大事なものなのだろう。

 先程までは俺に対して怒りを抱いてはいても、ここまで怒鳴ったりはしていなかったのだが。

 その親友を俺に奪われてしまったのは絶対に許せないらしい。

 

「そら、そんなに怒っていていいのか? お前の器の小ささを示しているぞ? まぁ、王どころか市長なんだから当然かもしれないが……な」

 

 挑発するように呟き、瞬動と魔力放出を使って一気に金ぴかへと向かって接近する。

 それに対抗するように王の財宝を開こうとする金ぴかだったが、身体を動かそうとした瞬間に念動力を使ってその動きを固定。

 身体を動かせないでただ突っ立っているだけの金ぴかへと向かって拳を叩き込む。

 がっ、という衝撃と共に手に伝わる感触。

 吹き飛んでいく金ぴかの顔を見れば、そこには鼻の骨が折れてそこから大量の鼻血を流しながら吹き飛んでいく。

 そんな金ぴかの後を再び瞬動で追い、まだ吹き飛ばされて空中にいる金ぴかに追いつくと、そのまま背中を蹴り上げる。

 上へと吹き飛んだ金ぴかに対して地を蹴って跳び、追い越して両手を組んで叩きつけるようにして金ぴかへと振り下ろす。

 強い衝撃と共に地上へと向かって吹き飛ばされた金ぴかは、ここがアインツベルンの森……即ち、下が地面だった事も影響したのだろう。地面に数cm程も埋まりながらようやく動きを止める。

 もしもここが街中であれば、土ではなくコンクリートに叩きつけられ、より大きなダメージを負っていただろう。

 いや、サーヴァントは基本的に魔力を伴わない物理攻撃は効果がないのを考えると、身体を土で汚した分だけこっちの方が精神的なダメージは大きかったのか? 

 ともあれ、仰向けの状態で地面に身体の半分近くが埋まっている状況の金ぴかだったが、ダメージ自体はそれ程大きくはないらしかった。

 その為、憎悪に満ちた目で空中にいる俺を睨み付ける金ぴか。

 ただ……俺の攻撃はまだここでは終わらない。

 空中にいる俺と、地面に半ば埋まりながらも仰向けで俺の方を睨み付けている金ぴか。

 この状況で俺がやるべきことは……そう、より金ぴかに対して大きな精神的なダメージを与える事。

 混沌精霊の能力で空中を飛んでいる俺が、そのまま金ぴかの真上に来て飛ぶのを止める。

 するとどうなるか。

 当然自然落下している事になり……

 俺がどのような行動をしようとしているのかが分かったのだろう。金ぴかは目を大きく見開き、俺に向かって怒声を発しかけ……次の瞬間、その顔面の上に俺の足が落ちる。

 そう、金ぴかの顔面を踏み躙るという形で。

 

「ぐうっ!」

 

 気位の高い金ぴかがそんな事に我慢出来る筈がなく、足下で大きく呻く。

 ……もっとも、顔面を踏み躙られている以上、まともな声にはならないが。

 向こうもそれは理解したのだろう。言葉ではなく行動で俺をどうにかしようとして、土の中に半分埋まっていた両手を俺の足に伸ばすが、そもそも基本的なステータスが違う。更には勇猛による格闘補正――これが格闘と認識されているのにも驚いたが――や、アクセル・アルマーとしてのスキルであるインファイト、PPで底上げされている格闘の数値といったものを、金ぴかの筋力でどうにか出来る筈もない。

 

「うん? 何をしたいんだ、お前は? ほら、もう少し俺に分かるようにはっきりと言ってみろよ」

 

 金ぴかの顔を踏み躙っている右足をグリグリと動かしながら尋ねる。

 それでも尚どうにかしようとしていた金ぴかだったが、やがて身体能力で俺をどうにかする事は出来ないと悟ったのか、俺を中心にして空間が波紋のように揺れ……

 

「そう来ると思ったよ。ごちそうさん」

 

 俺を目掛けて飛んできた宝具の数本に触れながら空間倉庫の中へと収納しつつ、最後に金ぴかの顔面を思い切り踏み躙ってから、跳躍してその場から離れる。

 そのまま空中を飛びながら金ぴかと距離を取り……やがて視線の先で金ぴかが起き上がる。

 

「貴様……貴様ぁっ!」

「ふんっ、もう既に格付けは完了した。お前は俺には到底及ばない。それははっきりしたな。大体、さっきも言ったが、この世界の一国家の、一地域にあった都市国家如きの市長が何を以て俺に挑む? 俺はこう見えて、平行世界も含めれば幾つもの世界を支配している身だぞ?」

 

 まぁ、正確には支配とはとても呼べない状況だが。

 SEED世界、ギアス世界はそれぞれその世界の勢力に協力して世界を支配していると言ってもいいのか?

 いや、ギアス世界はともかくSEED世界はオーブ以外にも大西洋連邦を始めとして幾つもの国があるから、支配しているとは言えないか。

 他の世界にしても、どちらかと言えば友好的な関係ではあるが……国としての立場で言えば、どの世界もシャドウミラーよりも下という扱いにはなる。

 それを考えれば、支配しているというのも間違いじゃないか?

 

「……何?」

 

 俺の言っている意味が分かったのか、金ぴかがポツリと呟く。

 

「分からなかったのか? そもそも支配者としての格そのものが俺とお前とじゃ違うんだよ」

「……貴様、何者だ?」

「今更か? さて、俺に聞きたいのなら、上位者に対する口の利き方があるだろう? 地に手を付けて土下座してみせろ。そうすれば教えてやらない事もないかもしれないな」

「ふざけるなぁっ! 王たる我が聞いているのだ。疾く答えよ!」

「はぁ、だから言っただろ? お前は王なんて立派なものじゃなくて、良くて都市国家の市長でしかないって。……そこまでして自分を認めたくないか。まぁ、いい。お前の道化ぶりには散々笑わせて貰ったし、献上品も色々と貰ったからな。それに免じて教えてやるよ」

 

 小さく肩を竦め、口を開く。

 

「さっきも言ったが、幾つもの平行世界を支配するシャドウミラーを支配する者。お前と違って、正真正銘の王と言ってもいいかもしれないな」

「平行世界だと? ……認めん、認めるかぁっ!」

 

 その言葉と共に金ぴかは王の財宝の中から1本の剣を引き抜く。

 剣と呼ぶよりは、見た目では槍にすら見えるような、そんな妙な武器。

 今回金ぴかと戦うにあたって俺が欲していた幾つかの狙いの1つ。

 

「こい、エア!」

 

 乖離剣エア。ランクEXの対界宝具が、ようやく姿を現した。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:390
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1407
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1187

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