転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1181話

 2月の空気は、午後になっても冷たいままだ。

 特にここはアインツベルンの森であり、それもあってより寒く感じるんだろう。

 金ぴかを吸収した事により、レベルが上がったのは良かったのだが、結局スキルの類は何も得られなかった。

 スキル覧が満杯になっている以上はしょうがないんだが、それでも惜しいという気持ちはある。

 まぁ、気配遮断A+も俺が単独行動をすると考えればそう悪い選択肢じゃないんだけど。

 あー……でも確率的には俺が転移する世界って魔力云々よりもロボットとかの方が多いんだよな。気配遮断はA+まできても、あくまでも気配を遮断するスキルでしかない。

 機械的な警報装置の類には普通に引っ掛かる。

 まぁ、その辺を理解した上で使えば、それなりに問題はないんだけど。

 それでもやっぱり、金ぴかの持っていた黄金律は欲しかった。

 ……そう言えば、今はサーヴァントとして黄金律とか持ってるけど、これって俺がこの世界から消えても残ってるのか? それともサーヴァントとなっているこの世界特有の問題?

 この世界、か。正直記憶を失ったのは色々とアレだけど、俺自身は現在の境遇に特に憤りを覚えたりはしていない。

 このFate世界ではゲイ・ボルクやルールブレイカーを始めとして、金ぴかから無数の宝具を入手出来たし、技術的という意味では明らかに収支はプラスだ。

 更に言えば、凛と綾子という新しい恋人を2人も得られた。

 これで文句を言うのは贅沢過ぎる。

 

「……それはそれとして、だ」

 

 頭を切り換える。

 俺が現在気になっているのは、やっぱり金ぴかから奪った各種の宝具。

 いや、正確には違うんだが……それを確認する前に入手した宝具を確認していくか。

 空間倉庫のリストを脳裏へと映し出す。

 メロダック、グラム、デュランダル、ハルペー、ヴァジュラ、ダインスレイブ、方天戟、カラドボルグ……ここまではいい。

 いや、他にも色々とあるんだが、取りあえず目に付くのはこんな感じだ。

 ZEROで使っていた空飛ぶ黄金の船とかがないのは残念だが、それよりも大変な事に気が付く。

 視線を、俺が右手で握っている赤い槍、ランサーから譲られたゲイ・ボルクへと向ける。

 そう、ゲイ・ボルクは今俺の右手に握られているのだ。それにも関わらず、空間倉庫の中にはゲイ・ボルクと表示されている。

 ……どうなってるんだ?

 一瞬そう思うも、すぐに思い出す。

 そう言えば金ぴかの持っている宝具は、全ての宝具の原典という扱いだった、と。

 だとすれば、その中にゲイ・ボルクの原典があってもおかしくはないし、場合によってはルールブレイカーの原典がある可能性もある、のか? いや、ルールブレイカーはキャスターの逸話を元にして宝具化したものだから、原典はないと考えた方がいいか。

 とにかく大体の件は確認出来た。

 当然脳裏のリストの中には、乖離剣エアの姿もある。……王律鍵バヴ=イル? ってのは、多分鍵って名前からして王の財宝を使う時に持っていた、鍵の形をした剣っぽいものだと思う。

 ふむ、やっぱりまずはこれからか。

 ゲイ・ボルクを空間倉庫に収納してから、脳裏のリストから乖離剣エアを選択。

 見るからに思わず目を奪われるような、怪しげな迫力を持っている。

 なるほど、ランクEXってのは伊達じゃないな。

 ただ……問題は、だ。

 教会で金ぴかが放った宝具を奪った時の違和感。

 あの違和感が俺の予想通りだとすれば……ちょっと洒落にならない事態になるかもしれない。

 気のせいであって欲しい。そう思いながら、魔力を込めつつ乖離剣エアを握る。だが、そこにはやはりどこか違和感があった。

 あの時と同じ違和感。

 直接乖離剣エアを握っているのではなく、何枚かの布越しに握っていると表現すればいいのか。

 ともあれ、そんな不思議な感触だ。

 それが何を意味するのかというのは、こうして握っていれば本能的に理解する。

 ……そう、真名解放は出来ないのだ。

 

「何でだ?」

 

 思わず呟く。

 俺のアークエネミーというクラスの能力は、他人の宝具を使えるという事……じゃないのか?

 もしかしてその能力がなくなった?

 最悪の予想をしながら乖離剣エアと入れ違いに、先程空間倉庫に収納したゲイ・ボルクを取り出す。

 ちなみに、ランサーから形見として貰ったゲイ・ボルクの方は、ゲイ・ボルク(真)とか脳裏のリストに表記されていた。

 かと言って、金ぴかから奪った方のゲイ・ボルクは別に(偽)と表記されている訳ではないのだが。

 ともあれ取り出したゲイ・ボルクを握ると、その瞬間に真名解放出来るというのを本能的に理解出来る。

 そのままゲイ・ボルクを収納し、ルールブレイカーを取り出す。

 こちらも同様に真名解放出来ると本能的に理解出来た。

 ……ちょっと待て。となると……

 先程よりも壮絶な嫌な予感を胸に、王律鍵バヴ=イルを取り出す。

 射出が可能で、一度に複数の中身を取り出せるという能力を持つ、王の財宝。

 持ち主の金ぴか自身、中に何が入ってるのかを把握出来ないってくらいだから、空間倉庫のようにリストを表示する機能はないのだろう。

 一長一短。

 だが、宝具を大量に保有しているとなれば、それは当然価値がある。

 それこそ、金ぴかの命よりも価値があると思ってもいい。

 しかし……王律鍵バヴ=イルを握っても、魔力を流しても、王の財宝が発動する気配はない。

 

「……最悪だ……」

 

 何だって俺は、あんなに手加減をしながらあの金ぴかと戦ったんだ?

 それも、こっちの思うように動かす為に挑発をしながら……まぁ、あの挑発は結構ノリノリでやったから別に苦労はしなかったが。

それでも、俺は金ぴかの宝具を奪う為にここまで頑張ってきたというのに……

 

「ええいっ、くそ! 開け! ……開け!」

 

 バヴ=イルを手に、振ってみたり、魔力を流してみたりと色々試す。

 だが結局王の財宝が発動する事はないまま、ただ時間だけが無駄に過ぎていく。

 このままだと、本気で金ぴかと戦った意味がなくなる。

 そんな風にも思うが、だからといってバヴ=イルに幾ら魔力を流しても発動する気配はない。

 そのまま10分程が過ぎ……これ以上やっても無意味だと悟り、バヴ=イルを手にしたまま近くに生えている木へともたれかかる。

 これが宝具であるのは間違いない。実際、空間倉庫にもそれがきちんと表示されてるんだし。

 だとすれば、何故これを俺が使えない?

 俺のアークエネミーとしての能力は、他のサーヴァントが使っている宝具を使う……真名解放出来る事だと思ってたけど、違うのか?

 いや、実際にゲイ・ボルクとルールブレイカーの真名解放が出来ている事を思えば、決してそれは間違いじゃない筈。

 だとすれば、何故金ぴかの宝具だけが例外なんだ?

 ……ランサーとキャスターに比べて、金ぴかが例外な理由?

 そう考え、次の瞬間には理解する。

 即ち、金ぴかが現れたのは前回の聖杯戦争であり、聖杯の泥をその身で浴びていると。

 パッと考えつく限り、俺が金ぴかの宝具を使えない理由というのは、これしか思いつかない。

 だとすれば、俺のアークエネミーというクラスの他人の宝具を使えるという能力は、もしかしてこの聖杯戦争で召喚されたサーヴァント限定なのか?

 

「そうなると、あれだけ必死に集めた宝具の数々も全てが無意味?」

 

 そう思うとうんざりとした気分に包まれる。

 ただ、口にした瞬間にそれが事実であるかのように思えたのだから、きっと間違ってはいないのだろう。

 それに、確かに真名解放は出来ないかもしれない。けど、金ぴかの持っていたのが宝具であるというのは間違いない事実。

 だとすれば色々と貴重なのは変わりないのだから、決して無意味という訳ではないだろう。

 この世界に残るのであれば凛が飛び上がらんばかりに喜ぶだろうし、ホワイトスターに戻るにしても、レモンを始めとした技術班が狂喜乱舞するのは間違いない。

 エヴァ辺りも多分喜ぶだろうし。

 うん、そういう意味では決して宝具を集めたのは無意味だった訳じゃないな。

 自分に言い聞かせるようにしてバヴ=イルを空間倉庫に収納し、次に再びエアを取り出す。

 真名解放しようとしても、全く動く様子はない。

 このエアはランクEXの対界宝具として、宝具の頂点に位置している物の1つだ。

 だというのに、こうして真名解放が出来なくなるとただの置物にしか過ぎないな。

 これが、例えばちゃんとした剣なら話は別だった。

 宝具として使えないとしても、普通に武器としては使えるのだから。

 だが、このエアの場合は刃とかが存在しない歪な剣であり、無理やり使うとすれば……棍棒代わりか?

 宝具の頂点を棍棒ってのは、色々な意味で情けなくなってくるな。

 

「あー……くそ。物凄く損した気分だ。いや、実際気分とかじゃなくて損したってのに変わりはないのか」

 

 溜息を吐き、周囲を見回す。

 2月の寒空ですごく冷えてはいるが、それでもこうして見る限りでは雪が降っている様子はない。

 少し離れた場所に見えるアインツベルンの城を眺めていると、やがて苛立っていた気分も落ち着いてくる。

 そうなんだよな、よく考えてみれば決して損だけって訳じゃない。

 実際、金ぴかは俺以外だとセイバーが自分の消滅を覚悟してしかどうにか出来なかったんだから、その辺を思えば決して悪い結果じゃないだろう。

 それに、サーヴァントの魂3つ分の金ぴかを小聖杯に入れる事なく消滅させたんだから、イリヤや桜にとっては寧ろ幸運だと言える筈だ。

 ……まぁ、桜はともかくイリヤは俺に対して決して礼を言っては来ないと思うけど。

 

「そうだな、帰るか」

 

 呟き、ふと凛達の方でどうなっているのかが気になって念話を送る。

 

『凛、綾子、こっちは片付いたが、そっちはどうだ?』

『……え? アクセル? もう片付いたの? さっき、何だか物凄い魔力を感じたんだけど……思ったよりも時間が掛からなかったみたいね』

『ああ、あの金ぴかは消滅したよ。魔力に関してはまた後でな。それでそっちは?』

『アクセルの予想通りよ。綺礼が攻めて来たわ。……ただ、ライダーとセイバーがいたし、イリヤとかそのメイド、それに私や綾子もいたから撃退に成功したけど』

 

 は? 本当に攻めて来たのか?

 いや、確かに凛にはその可能性を臭わせていたが、この状況で本当に襲ってくるとは思わなかった。

 実際、戦力的に考えても向こうに勝ち目はないのは、言峰程の実力の持ち主なら普通に分かっている筈だと思うんだが。

 色々と性格に難はあれど、言峰が腕利きだというのは変わらない事実なのだから。

 

『何だってそんな馬鹿な真似をしたんだ?』

『さぁ? 私に聞かれても知らないわ。ただ、予想するとすれば……あのサーヴァント、アーチャーだったっけ? そのアーチャーがアクセルに勝って援軍に来ると思ってたとか?』

『性格的に、そんな殊勝な奴じゃなかったぞ? 散々人を雑種呼ばわりしてたし』

 

 雑種雑種言ってるが、寧ろ金ぴか自身が神と人間のハーフ……雑種だよな。

 ……ただ、正直俺に対して雑種というのは微妙に分からないでもない。

 俺はリョウメンスクナノカミと悪魔、多種多様な精霊と人間が混ぜ合わさったものなのだから。

 それこそ、雑種なんて言葉じゃ言い表せない程に混ざり合ってるのは事実だ。

 

『ふーん。まぁ、とにかくそっちの用件が終わったら……あ、ちょっと待って。イリヤスフィールが、城を壊してないでしょうねって言ってるけど……どう? アインツベルンの結界越しでも物凄い魔力を感じたから、無理もないけど』

 

 凛からの念話に、改めて周囲を見回す。

 こうして見る限りでは、俺がやって来た当初と殆ど変わりはない。

 いや、金ぴかと戦った余波とかで周囲に幾つかひび割れとかしてるのは事実だが、それ以外は特に何があるという訳でもない。

 少なくても、ラグナロクとエアがぶつかり合った影響はない。

 エアが起こした時空断層はラグナロクで消滅させて、その際に出たエネルギーも結界で周囲に全く放たれなかったからな。

 その辺は完璧に近い。

 

『ああ、問題はない』

『そ。じゃあそう伝えておくわ』

『アクセル、無事なんだよな? 怪我はないんだよな?』

 

 凛に続いて尋ねてくる綾子の念話。

 パスで繋がっているからこそ、心から俺を心配しているというのが分かる。

 

『凛にも言ったけど、問題はない。あいつは強さ自体はそれ程でもなかったし』

 

 正確には、個人としての強さって意味でだが。

 

『……そう、良かった。アクセルが戻ってくるのを楽しみにしてるよ』

 

 それを最後に、念話が切れる。

 色々と心配を掛けたみたいだな。

 セイバーに聞いたとか? 前回の聖杯戦争ではかなり苦戦した筈だし。

 個人で戦争を行うとなれば、金ぴかほどの存在はそうそういなかっただろうしな。

 そう考え、まだ持っていたエアを空間倉庫の中に収納すると、そのまま影のゲートを展開して、そこに身体を沈ませていく。

 ……ともあれ、この聖杯戦争で最大の難敵だった金ぴかは倒した。

 残るのはサーヴァントをなくした言峰と、大聖杯のみだ。

 聖杯戦争もいよいよ終盤。

 俺がFate世界でどうなるのか……それが確かめられる時まで、もう少し。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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