転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1190話

 夜、2月らしく、いつ雪が降ってもおかしくないだろう気温の中で、俺は影のゲートから出る。

 同時に、凛、綾子、セイバー、衛宮、ライダー、桜、イリヤ、セラ、リズといった者達も次々に影から姿を現す。

 

「1秒前までは衛宮の家にいたのに、次の瞬間にはもう柳洞寺にいるって……相変わらずアークは便利だよな」

 

 これまでに何度も影のゲートを使っているにも関わらず、綾子が感心したように告げる。

 その言葉通り、ここは柳洞寺。より正確には柳洞寺の境内。

 ……あれ? 何でサーヴァントである俺がそのまま結界を無視して入ってこれたんだ?

 もしかして、あれか? この世界の魔術じゃなくて、ネギま世界の魔法だからか?

 

「……結界は?」

 

 凛も俺と同じ事に気が付いたのだろう。不思議そうに周囲を見回している。

 言葉には出さないが、イリヤも同様だ。

 当然のようにこの季節のこの時間帯には誰の姿もなく、夜空に浮かんでいる月と星のみが自己主張をしている。

 冬で空気が澄んでいる為か、月も星もしっかりと見えていた。

 

「アークエネミーというイレギュラークラスだからな。それより、そっちの方は準備を頼む」

 

 取りあえずそう誤魔化す。

 微妙に不審そうな表情を浮かべている者もいたが、今はそんな事を話している時じゃないというのは理解しているのだろう。話を続ける。

 ああ、凛や綾子なら俺が異世界の存在だと知っているから、その辺を理解したのかもしれないが。

 

「任せて。綺礼が大聖杯をどうにかしようとして来たら、ボッコボコにさせて貰うわ。アークの方も頑張ってね」

「ああ。まぁ、今夜一晩意識を取り戻させない程度の事はどうにでも出来るさ。衛宮、場所は夕方に行った場所でいいんだな?」

 

 俺の言葉に無言で頷く衛宮。

 柳洞寺にいる坊さんやら何やらを全員気絶させて運ぶにしても、当然その気絶した者達を寝かせておくべき場所が必要だ。

 その為、衛宮が藤村の家に電話して場所を確保して貰った訳だ。

 尚、俺が柳洞寺の者達を連れ出している間に凛達が何をするのかと言えば、凛が今言っていたように大聖杯の警備というか、言峰が来るのを待ち構えるというか、まぁ、そんな感じだ。

 元々凛の使い魔を放って見張ってはいたんだけど、今日は重要な日だ。

 俺が大聖杯を破壊するまでの間に言峰が乱入してきて妙な事をしないとも限らない。

 俺達が大聖杯その物を破壊しようとしているのを言峰が知っているのかどうかは分からないが、それでも言峰であれば最悪の状況を考えてもおかしくはない。

 まぁ、そんな言峰でもセイバー、ライダーの2人に、半サーヴァントである綾子、魔術師としての才能は非常に高い凛にイリヤ、ハルバードを自由に操るリズといった面々がいる状態であれば、姿を現すとは思えないが。

 姿を現せば、その瞬間にフルボッコだろう。

 尚、衛宮、桜、セラの3人は戦力不足という事で、今回は戦力に数えていない。

 俺が柳洞寺の住人全てを移動させた後で、大聖杯のある場所に到着すれば、その時点で聖杯戦争という名の茶番が終わる。

 

「じゃあ、頼んだ」

 

 誰に共なく呟き、そのまま凛達が去って行くのを見送る。

 境内の中からその姿が消えたのを確認すると、まずは念の為にスライムを出し、0.1mm程度の細さにして柳洞寺の中に這わせていく。

 既に時刻は午前1時過ぎ。

 基本的に寺は早寝早起きの筈だから、この時間になればもう殆どが夢の中なのは間違いないだろう。

 勿論全員が全員とは限らない。

 そう思っていたんだが……スライムで柳洞寺の中を探した感じだと、全員が寝てるな。

 確か一成の兄は藤村の友人でかなりハッチャけた性格をしていたと思うんだが、この様子だと普段は結構真面目なのか?

 いやまぁ、藤村だって基本的には真面目でタイガーになるのは滅多に……多分、それなりに……なのを思えば、そんなに不思議って訳じゃないと思うんだが。

 ともあれ、現状は俺にとって有利な状況なのは確かだ。

 である以上、ここでこうしていても意味はないので、早速動くとしようか。

 スライムを空間倉庫に収納し、影のゲートに身体を沈めていく。

 正直、気配遮断を使ってもいいんだろうが、あれだと防犯カメラとかには普通に映るからな。

 昨今だと寺とかでも防犯カメラを備えている場所はかなり多くなっているって話だし、念には念を入れさせて貰おう。

 そうして影のゲートを使って最初に出た場所は……柳洞の部屋。

 ベッドじゃなくて布団を敷いて寝ている辺り、イメージ通りだった。

 部屋の中も基本的に質素……いや、シンプルな感じだ。

 これで、実はゲームとかアニメとか漫画とかあったら意外性があったんだが。

 

「う、ん……」

 

 まぁ、このまま男の寝顔を見ていても誰得だって話だし、さっさと行動に移させて貰おう。

 布団を剥ぎ取り、胴体に向けて一撃を入れる。

 

「ぐっ!」

 

 そんな声を上げ、そのまま気絶する一成。

 悪いな、このままここに置いておけば、大聖堂の破壊に巻き込んでしまう可能性が高いんでな。

 暫く……具体的には、明日の朝くらいまで眠っていてくれ。

 そのままスライムで気絶している柳洞を布団から取り出し、俺の足下に。

 影のゲートを使い、次の瞬間には藤村組の方で用意して貰った場所へと到着する。

 一応意識を取り戻した時に不便をしないよう、トイレとか飲み物、食べ物、暇潰し用にTVやゲーム、漫画といった物まで用意されている。

 これは別に俺が用意した物ではなく、衛宮が頼んで用意して貰った物だ。

 部屋の中も十分に暖かいし、風邪を引くような事はないだろう。

 布団に入れ……あ、眼鏡忘れたな。

 再び柳洞の部屋へと戻り、布団の近くにあった眼鏡を持って再度監禁部屋へ。

 枕元に眼鏡の入ったケースを置き、これで1人目の監禁が完了した。

 

「ま、事が終わるまではゆっくりと、ぐっすりと、しっかりと眠っていてくれ。出来るだけ柳洞寺は壊れないように頑張ってみるからな」

 

 柳洞にそう告げ、影のゲートを使って再び柳洞寺の方へと戻る。

 柳洞寺自体は結構大きい寺なので、当然そこに住んでいる者の数もそれなり以上にいる。

 今夜中に大聖杯の件をどうにかするとなると、少し急いだ方がいいだろう。

 柳洞の部屋の近くをスライムで探し、その部屋へと向かって首や鳩尾といった場所へと一撃を加えて気絶させ、そのまま影のゲートを使って運んでいくという行為を何度となく繰り返す。

 気絶させているだけなので、朝になる前に気が付く者も出てくるだろう。

 だが、それでもあの部屋にいて貰い、事が終わるまでは出す予定はない。

 だからこそ、部屋の中にトイレやら、食べ物やら、暇潰し用の物やらと用意したのだから。……衛宮が、だが。

 

「っと!」

 

 何度目になるのか分からない、柳洞寺に対する侵入。

 そのまま今までと同じように眠っている者の場所へと向かおうとすると、不意に廊下を歩く気配がしてきた。

 まさか、気が付かれたと思えないが……と、気配遮断を使用する。

 防犯カメラとかがあれば使えない能力だけど、こうして咄嗟の時には便利だよな。

 まぁ、攻撃体勢に入れば気配遮断の効果が切れるんだが、こうしてじっとしている分には全く何の問題もない。

 近づいてくる気配を確認していると、やがて廊下を曲がって1人の男が現れる。

 頭が剃られているのを見ると、坊さんの1人だろう。

 特に周囲を警戒するでもなく進んでいくその姿は、目を見ると半分眠っているような状態だ。

 半ば寝ぼけているその様子を見る限り、別に俺の気配に気が付いて出て来た……って訳でもないんだろう。

 まぁ、この世界の住人ならそういう風な事も普通に有り得たりしそうだが、それでもサーヴァントでも魔術師でもない普通の人間が、そう簡単に気配を察知出来たりは……しない、よな?

 藤村辺りなら、野生のタイガーの勘で何となく気配を察知出来たりしそうだけど。

 そんな風に思っている間にも、坊さんは俺の前を通り過ぎ……その向かった方向にあるのはトイレだった。

 うん、向こうに運ぶのは今すぐじゃなくて、トイレを済ませてからにしよう。

 今この状況であの坊さんを気絶させたりしたら、下手をすれば成人した大人として色々と悲惨な目に遭う可能性もある。……いや、かなり高い。

 そんな風に考え、取りあえずトイレに入っていくのを見送る。

 そして数分程して、先程よりは少しだけすっきしりた様子の坊さんがトイレから出てきて……その後ろに移動し、首の後ろへと手刀を叩きつける。

 攻撃をした瞬間に気配遮断の効果が切れたが、一介の坊さんにその状態が気配を察知出来る筈もなく、そのまま意識を失って地面へと崩れ落ちる……のを身体を寸前で掴んで大きな音を立てるのを防ぐ。

 そのまま意識を失った坊さんを影のゲートに沈ませ、移動を済ませる。

 ……結構面倒だな。

 そんな風に思いながらも、同じような事を更に何度か繰り返し……ようやく最後の1人までの対処を完了する。 

 最後に残っているのは、柳洞一成の兄でもある柳洞零観。

 一般人ではあるが、あの葛木と曲がりなりにも渡り合えるだけに実力があるって話なのを考えれば、ここにいる者の中ではかなり厄介な相手だろう。

 まぁ、だからこそ最後まで残していたのだが……

 

「……なるほどね。何だか妙な気配がすると思ったら……君は物の怪か何かかな?」

 

 柳洞……いや、この呼び方だと一成の方と間違えやすいから、零観と呼んだ方がいいか。

 その零観の部屋へと入ると、まるで待ち構えていたかのように目を開けて口を開く。

 いや、待ち構えていたかのようにじゃなくて、実際に待ち構えていたのだろう。

 にしても、自分の寺でこうして俺みたいなのが動き回っているのに、警察の類にも連絡をしないっては……どういう訳だ?

 

「何で警察なりなんなりに連絡をしなかった?」

 

 その問いに、零観は布団から起き上がって口を開く。

 

「そうだね、邪なものを感じなかったから……かな?」

「……なるほど」

 

 俺自身に邪なものがあるのかないのかと言われれば、俺は間違いなくあると答えるだろう。

 俺の両手は、それこそ大量の人の血で穢れているのだから。

 だが、それでも零観は俺を前にして邪なものを感じなかったという。

 確かに俺はこの寺の住人に対して悪意を持ってはいない。

 それどころか、今やっているのも強制的に避難させているようなものなのだから、それで邪なものをないと感じているのか。

 

「ただ、一応聞かせて貰うけど、うちの者に危害は加えてないよね?」

「ああ。ただし、こことは別の場所に移動して貰っている」

「何故、と聞いてもいいのかな?」

 

 随分とこの状況でも落ち着いているな。

 まぁ、藤村と同級生だってのを考えれば、それ程不思議な事でもないのか?

 ……タイガーに付き合わされて慣れている、とか。

 微妙に零観に対して哀れみを抱きつつ、口を開く。

 

「この柳洞寺のある山……円蔵山の内部に大きな空洞がある。それは知っているか?」

「龍洞と言われている場所だね」

「そうだ。それを知ってるのなら、話は早い。現在その龍洞の中にはちょっと……いや、それどころじゃない程に危険な代物が存在している。それこそ、下手をすれば冬木が壊滅するなんて話じゃ済まないくらいに危険な代物だ」

 

 俺の口から出た言葉を信じたのか、それとも何らかのカモフラージュだと思ったのかは分からない。

 だがそれでも、零観は特に動揺した様子もなく口を開く。

 

「もしかして、君がそれを欲してる……とか言うのかな?」

「あんな厄介な代物はいらないな。寧ろ消滅させたいと思っている」

 

 キャスターがいれば、あんな大聖杯でもまだ何とか出来たかもしれない。

 だが、今ではそれも不可能だ。

 

「じゃあ、その為にこんな真似を?」

「ああ。その危険な代物を消去した場合、柳洞寺にも悪影響が出る可能性がある。それこそ建物は崩壊したりとかな。それで被害を出さないように、多少手荒だが避難させて貰っている」

「……君の言ってる事が本当だという理由はないよね?」

「そうだな。ただ、嘘だという証拠もないだろ? 出来れば俺としては、大人しくこっちの指示に従ってくれると助かるんだが」

「何か証拠、のようなものはあるのかな?」

 

 その言葉に少し考え、右手を白炎と化して子犬の炎獣を作り出す。

 子犬の炎獣は、真っ暗な部屋の中を自分の身体を構成している白炎で照らしながら走り回る。

 勿論白炎は周囲に燃え広がらないようにきちんと調整してある。

 

「これは……」

 

 零観にしても、まさか炎獣のような存在を見るとは思わなかったのか、驚いている様子がありありと分かった。

 

「オカルト的な何かがある、というのはこれで分かって貰えたと思う。こういう力を持つ俺が手を出さないといけない何かが、ここにはある。……悪いが、こっちとしても時間がないからな。これ以上手こずらせるようなら、力尽くでとなるが……」

「いや、分かった。君の言う事を信じよう」

 

 あっさりと告げてきた零観の言葉に、次は俺が驚きの表情を浮かべる。

 

「やけにあっさりと信じるんだな」

「ああ。君……そんな見掛けに寄らず、強いだろ? それこそ人の域を超える程に。君が本気になれば、わざわざ事情を説明するような事をしなくても問題はない筈だ。なのにこうしてわざわざ事情を話してくれている。それを信じようと思ったんだよ」

「……悪いな」

 

 呟き、炎獣を消してから空間倉庫の中から幾つかの宝石を取り出し、零観へと渡す。

 凛が見たら色々と言いたくなるかもしれないが、迷惑を掛けるんだしこのくらいはいいだろう。

 そもそも、俺が苦労して買ったものじゃないし。

 

「これは?」

「迷惑料だと考えてくれ。もし柳洞寺の方に被害が出たら、改めて支払いがあると思う。ただし、魔術は秘匿が大前提だ。下手に誰かに話せば、色々と面倒な事になると思って欲しい」

 

 そう告げ、影のゲートへと零観を沈めていく。

 その感触に多少驚いた表情を浮かべる零観だったが、それでも特に声を出す様子もなく、俺と一緒に影のゲートに沈んでいく。

 そうして、気が付けば他の坊さんが眠っている部屋へと到着する。

 

「ここで暫く待っててくれ。明日の朝には出せると思う。それと、重要な書類とかがある場所を教えて貰えれば回収しておくけど、どうする? どうしても俺を信用出来ないなら、別にそれでもいいが」

「……分かりました、お願いするよ」

 

 どうして俺を信じる事にしたのかは分からないが、零観から金庫のある場所の話を聞くと、俺は再び影のゲートへと身体を沈めるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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