大聖杯が存在する空洞から出た場所。そこで俺達は、尽きる事なく溢れてくる黒い獣を相手にして戦っていた。
黒い獣自体はそれ程強くはなく、それこそ兵士級BETAの方が余程に強いと思われる程度の力しかない。
だがBETAに負けず劣らず数で押してくる様子は、正直こっちの攻撃手段が限定されているからこそ戦いにくい相手だった。
「行け、炎獣！」
右手でゲイ・ボルクを振るいながら左手を白炎に変え、無数の炎獣を生み出す。
獅子、虎、狼といった風に地上で動き回る炎獣が殆どだ。
黒い獣が出て来ているのが洞窟の奥にある空洞の中である以上、空を飛ぶような炎獣では不利なのはしょうがない。
『GYAAAAAAAAAAAAAAAA！』
炎獣が一斉に吠え、黒い獣へと向かって突撃していく。
その数は数十……いや、百をも超えているだろう。
当然それだけの数の炎獣が一気に洞窟の中に入れる筈もなく、洞窟の入り口付近は外側からは炎獣、内側からは黒い獣といった風に正面からぶつかり合って、詰まっている状態になっていた。
そこまでやって、ようやく皆が一息吐く。
外に出ている黒い獣もいたが、所詮個体としては雑魚に等しい相手だ。あっという間に消滅し、一段落する。
「それで……今はいいけど、洞窟の中はどうするの？」
凛のその言葉に、皆が考える。
「倒すべき方法や手段は幾つでもあるけど、問題はそれをやると周囲にも被害が大きい事なんだよな」
「アクセルの心配も分かるけど、今のこの状況ではどうしようもないだろう？ 下手にここで奴等を外に出そうものなら、それこそ柳洞寺がどうこうなんて被害では済まないぞ？」
綾子の言葉に否と放つ者はいない。
実際それは事実であり、ここであの黒い獣を仕留めきれない場合は冬木中に奴等が溢れ出る恐れがある。
その辺を考えると、どうにかした方がいいのは事実だが……
「私の宝具を使えばどうとでもなると思いますが、シロウの方の魔力が……」
「う、ご、ごめん」
セイバーと衛宮の言葉を聞くが、誰も衛宮を責める者はいない。
そもそも衛宮は原作でも凛とパスを繋いでようやく固有結界とかを発動させていたのだ。その凛が俺とくっついてしまったこの世界では、衛宮に十分な魔力を提供する事は不可能だろう。
いや、意外と桜ならいけるか？
桜……ライダーが、ふむ、だとすれば……行ける。そうして動きを止めて、一気に中に向かえば可能、か？
「アクセル、一体どうしました？」
眼帯越しでも俺が視線を向けているのに気が付いたのだろう。ライダーが不思議そうな声で尋ねてくる。
その声に不安の色や焦燥の色が浮かんでいないのは、柳洞寺に配慮しなければ最終的にはどうとでも出来ると判断している為だろう。
「1つ、いい手を思いついた。今ここにいる奴等を一気に蹴散らして、洞窟の中に突入して大聖杯のある空洞に戻れる手段が」
「一応聞いておくけど、周辺の被害は？」
「……多分大丈夫だとは思う」
凛の言葉にそう返すと、凛は炎獣と黒い獣で渋滞している方を見て、やがて口を開く。
「それで、具体的には？」
「まず、ここから今あそこの洞窟の中にいる黒い獣を一掃する。方法は……」
チラリとライダーの方へと視線を向け、言葉を続ける。
「ライダー、お前の魔眼と俺の攻撃でだ」
「待って下さい。私の魔眼はいいとしても、アクセルの攻撃というのは？」
「俺にも、お前の魔眼と同じく相手を石化させる能力を持つ攻撃があるんだよ」
「っ！？」
俺の言葉に息を呑むライダー。
……ああ、そうか。そう言えばライダーが魔眼を使ったのは俺に向けてだけであり、俺も対魔力が高かったおかげで石化はしてなかったな。
つまり、本来なら俺が知らない筈の情報を知っていたから驚いたのか。
ただ残念ながら、その驚きはまだ終わらない。
「とにかく、現在洞窟の中にいる黒い獣を全て石化させたら、そこにお前のペガサスで突っ込んでくれ。本来なら俺のグリを使っても良かったんだけど、グリはあの洞窟の中に入れる程に小さくないからな」
「何故……何故、桜以外には知らない筈の私の宝具や、あの子の事を知っているのです？」
「さて、何でだろうな。いい事を教えてやるよ。世の中には知らない筈の情報を知っている者がいるってな。……さて、ライダーの秘密だけを皆に教えるってのもなんだし、俺の秘密も1つ教えてやろう」
呟き、パチンッと指を鳴らす。
同時に俺の身体全体が白炎と化し、次の瞬間には俺の額と側頭部から3本の角が上に伸び、後頭部からは側頭部の角の下を通って前へと角が伸び、背中からは悪魔の如き羽根が生え、腰からは竜尾が生える。
同時に、俺の身長も10代半ばの状態だったものから、いつもの20代半ばのものへと戻る。
「……ふぅ、久しぶりにこの姿になった気がするな」
確認の意味を込めて両手を何度か握ってみるが、サーヴァントになったからといって特に異常は存在しない。
それを確認してから視線を他の者達へと向けるが、そこにあったのは驚愕としかいえない表情を浮かべた者達だった。
それは凛や綾子も同様で、目を見開いて俺の方へと視線を向けている。
「ちょっ……ちょっと、アクセル。あんたその姿、一体どうなってるのよ！？」
凛の言葉に軽く肩を竦め……その際に羽根が軽く動いたりして驚かれたが、ともかく話を続ける。
「俺のスキルに混沌精霊ってのがあっただろ？ この姿が、本来の意味での混沌精霊だ。ま、あのままでも良かったんだが、折角最後の戦いなんだ。変身くらいはしておいた方がいいだろ？」
「……アクセル、最後の戦いで変身してパワーアップするのは、味方もだけど敵の方が多いんだぞ。最終段階とか。今のアクセルの姿を見ると、絶対にそっちの方が思い浮かぶ」
綾子の言葉にその通りだと頷きを返す俺以外の全員。
……何か毎回この姿に変身する度に驚かれて、恐れられてるような気がするけど……
「アクセルのクラス名がアークエネミー……大敵だって理由が、今はっきりと分かったわ。確かにこの姿を知ってれば、あのクラス名には納得する人が多いでしょうね」
しみじみと呟く凛。
「そうか？ まぁ、それは置いといてだ」
「いいの？ 置いておいて」
「いいんだよ。それより、ライダー」
「はいっ！」
俺の呼びかけに、何故か怯えたような声で返事をするライダー。
……何もそんなに怯えなくてもいいと思うんだけど。
ライダーの正体でもあるメデューサとしては、反英霊的な存在で俺とどこか共通点があるが故に怯えているって可能性は十分あるけど。
「お前の目と俺の攻撃で洞窟にいる黒い獣を石化。その後、お前がペガサスで突貫していく。ただし、洞窟や空洞を崩すような真似はするなよ。いいな？」
「構いませんか、桜？」
「うん、ライダーの思う通りにして」
こうして話は決まる。
「よし。なら始めようか。ライダーが突貫したら、俺達もそれに続くから遅れるなよ」
出来ればニーズヘッグを使ったままで突っ込みたいところだが、洞窟の大きさを考えるとそれは無理だ。
大聖杯がある場所なら余裕でニーズヘッグを動かすだけの空間的余裕があるんだが。
「……分かりました。では、準備はよろしいですか？」
ライダーのその言葉に、全員が頷きを返す。
こうして準備が整えられ……俺は炎獣をそのまま消滅させる。
次の瞬間には洞窟に群がっていた炎獣の全てが消滅し、同時にそれを待っていましたと態度で示すかのように洞窟から黒い獣が飛び出し……
「がああああああああああああああああっ！」
その瞬間、俺の口から放たれた永久石化光線が洞窟から飛び出てきた黒い獣へと向かって放たれる。
その光に触れた者から順に石化していく黒い獣。
勿論1匹や2匹石化しただけで永久石化光線が止まる筈もなく、ただひたすら真っ直ぐにその光線は洞窟の中へと突き進む。
触れた端から黒い獣を石化して。
また、石化しているのはそれだけではない。俺の隣で眼帯を外したライダーがその魔眼を発揮し、黒い獣を端から石化させていく。
効果的には同じだが、Fate世界の魔術とネギま世界の魔法……魔法か？ いや、悪魔から奪った能力なのだから、微妙に魔法でもないような気がするが、ともかく異なる世界の2つの攻撃が、黒い獣を次々に石化させていく。
特徴としては、俺の永久石化光線は極めて強い貫通力を持っているが、その代わり口から出す光線なので持続力や面制圧に向かない。
それに比べると、ライダーの魔眼は見た端から石化していくので面制圧には効果があるが、あくまでも魔眼である以上は視線の通らない場所にいる相手には効果がない。
……ただし、俺とライダー2人の石化攻撃で石と化した黒い獣は後続の増援に対する壁となってその動きを止めていた。
「ライダー！」
「分かっています！」
俺の言葉ですぐに眼帯を掛け直し、後方へと大きく跳躍し……次の瞬間には天馬を呼び出す。
うん？ 宝具の騎英の手綱を使わないのか？
一瞬そう思ったが、よく考えてみれば騎英の手綱を使った突撃をしようものなら、大聖杯のある空洞に繋がっている洞窟その物が崩れかねない。
大聖杯が中にある以上、天馬だけの突撃で十分なのだろう……と思っていたのだが、ライダーが呼び出した天馬を撫でながら何かを言い聞かせるようにして告げているのが見えた。
数秒そんなやり取りをし、ようやく天馬がやる気になったのか翼を羽ばたかせ、空中を蹄で蹴るような動きをしてから洞窟の入り口へと向かって突っ込んで行く。
その速度は、馬が走るよりも鳥が飛ぶと表現した方がいい。
それも、ただの鳥ではなく燕のような速度を出す鳥。
更には天馬の能力か何かなのか、身体の前に障壁のようなものを展開していた。
その障壁により、当たるを幸いとばかりに石化した黒い獣を破壊しながら真っ直ぐに進んでいく。
「行くぞ！ ライダーに続け！」
叫ぶと同時に一気に駆け出し、他の面々もついてきているのを確認する。
本来なら戦闘能力がない桜とかはここに残っているのがいいんだろうが……大聖杯と融合した言峰が何をするか分からない以上、それも出来ない。
安全の為とここに置いて行った結果、何らかの手段で人質に取るとかの手段に出てくる可能性は十分にある。
まぁ、まだ言峰の意識が残っているのかどうかは分からないが。
何だかんだで言峰の意思は強いんだし、まだ意識が残っていてもおかしくはない。
そのまま先行しているライダーの後を追って、俺達も洞窟の中を進んでいく。
俺の放った永久石化光線はここまで届いていたのだろう。周辺には天馬の障壁で破壊されたと思しき黒い獣の石化した残骸や、運良く天馬の進行ルートにいなかったのか、石化したままの黒い獣の姿もある。
背中の羽を羽ばたかせ、洞窟の中を進みながら竜尾を軽く振って後ろから来る連中の邪魔になるだろう位置にある石像を破壊してやる。
だが、ちょっと竜尾の勢いが強すぎたのだろう。後ろから悲鳴が聞こえてきた。
『ちょっとアクセル！ 危ないでしょ！』
念話を使って凛のクレーム。
『ああ、悪い。ちょっとお前達が走ってくる時に邪魔になる位置にあったからな』
『……とにかく、もう少し注意して頂戴』
短いやり取りを交わし、それに返事をするよりも前に右手を振るう。
同時に放たれる白炎により、俺の隙を突いて襲い掛かろうとしていた黒い獣を瞬時に燃やしつくす。
ちっ、洞窟の中の随分奥まで来たけど、この辺には俺の永久石化光線も届いていなかったのか。
しかもこうして攻撃を仕掛けてきたって事は、ライダーの乗っていた天馬の突撃からも上手い具合に回避したって事だ。
「注意しろ！ この辺から黒い獣がまた襲ってくるぞ！」
背後に叫びつつ、空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出して斜め前へと突き出す。
そこにあったのは、石化した黒い獣。
ゲイ・ボルクの刃は容易く石像を貫き、同時にその背後でこっちに襲い掛かろうとしていた黒い獣をも貫く。
そして頭上に気配を感じ、頭を軽く動かして天井から降ってきた黒い獣の攻撃を回避し、側頭部と額から生えている角で黒い獣の身体を貫く。
更には左手で放った白炎により、数匹の黒い獣が燃やしつくされた。
ちっ、この辺からは随分と多くなってきているな。
ゲイ・ボルクの穂先に黒い獣を突き刺したまま、大きく横薙ぎに振るう。
その勢いで穂先から抜け出た黒い獣が、今にもこちらに襲い掛かろうとしていた別の黒い獣へとぶつかる。
「ついでだ、食らえ！」
炎獣を生み出し、一気に黒い獣を屠る。
そうしているうちに背後から凛達が追いついてくるのを感じ、そのまま全員で一気に洞窟の奥へと突き進む。
そこから100m程も進むと、やがて大聖杯の存在する空洞へと出た。
そこで見たのは、天馬を操って空洞の中を縦横無尽に飛び回りながら、黒い獣を片っ端から撥ね飛ばしているライダーの姿だった。
アクセル・アルマー
LV：43
PP：405
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1415
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル：EXPアップ
SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法（炎）
魔法（影）
魔法（召喚）
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数：1188