転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1197話

 視線の先にあるのは、念動フィールドによって行動範囲を狭められている黒い獣。

 それは、言い換えれば念動フィールドの檻に閉じ込められた大聖杯と黒い獣でもある。

 そんな状況であるが故に、既に向こうは詰みに等しいと言ってもいい。

 大聖杯に自ら飛び込んだ言峰の意識がまだあるのかどうかは分からないが、それでも……もしあったとしても、現状では既にどうしようもないと判断しているだろう。

 この状況をどうにかする方法は、ニーズヘッグにも2つある。

 まず第1に、金ぴかとの戦いでも使ったラグナロク。

 ニーズヘッグ最強の攻撃であり、ニーズヘッグを対界宝具としているだろう攻撃の1つ。難点としては、最大の攻撃であるが故に放つのに時間が掛かる事。

 威力に関しては、大聖杯だろうが何だろうが、確実に消滅出来るだけのものがあるのは間違いないが……

 第2に、こちらもまた恐らくニーズヘッグが対界宝具として認識されたのだろうフレイヤ。

 空間その物を消滅させるという効果を持つこのフレイヤもまた、大聖杯をそのまま消滅させる事が出来るのは間違いない。

 ただし、勿論こっちにも難点が1つある。

 空間を消滅させた後に、その消滅した空間に向かって空気が流れ込むという現象だ。

 この空洞の中で使用した場合、下手をすれば空洞そのものが消滅してしまいかねない。

 どっちを使っても色々と難点があるんだが……この2つで向いていないのは、やっぱりラグナロクだろう。

 あの攻撃は、正真正銘ニーズヘッグの全ての能力を使って行う為、ラグナロクの準備をしながら念動フィールドを展開するという事が出来ない。

 それに比べると、ランツェ・カノーネの砲身に備え付けられているフレイヤは、こちらで効果範囲を設定出来るし、ラグナロクのように準備に時間を掛ける必要もない。

 つまり、時間と周辺被害の可能性のどちらが大聖杯の破壊に向いているかと言われれば、圧倒的に後者だ。

 更に、ラグナロクでは念動フィールドを展開して使用する事が出来ないのに対し、フレイヤは普通に念動フィールドと同時使用が可能だ。

 つまりフレイヤで一番心配される二次災害の空気の流入に関しても、念動フィールドを使って一気にではなく、少しずつ行う事が出来る。

 勿論、普段は敵の攻撃を防ぐ為に使っている念動フィールドを、空気の流入が可能な限り周囲に影響が出ないようにする必要があるのだから、T-LINKシステムを使ったかなり精密なコントロールが必要になる。

 ただ、上手くいけばこれがベストの選択だし、失敗してもこの空洞は破壊される可能性が高いが、少なくても大聖杯の破壊は確実だ。

 つまり、これが一番ベストの方法だろう。

 ただしこの空洞が崩壊する可能性がある以上、この場に凛達がいる必要はない。

 ぶっちゃけ、黒い獣が念動フィールドの向こう側に閉じ込められており、同時に洞窟に突入した時にまだ残っていた黒い獣も、既に凛達の手で全て消滅させられている以上、凛達がここでやるべき事はもうないのだ。

 ……まぁ、正確にはフレイヤを撃ち込む時に念動フィールドを少し解除する必要があって、その時に解除した場所から黒い獣が出てくる可能性があるから、それへの対処というのはあるんだが……それはこっちでも何とか対処可能だ。

 少なくても、危険を承知で無理にここに残ってまでやる必要はない。

 

「凛、綾子、それに他の奴等も。見ての通り、現在黒い獣と大聖杯は完全に閉じ込めている。これからこいつらを纏めて消滅させるから、お前達は外に出ていてくれ」

『ちょっと待ってくれ! 何でわざわざ外に出る必要があるんだ!?』

 

 衛宮の叫びが聞こえてくる。

 ちっ、随分と勘がいい。

 だが説明しておいた方がいいのも事実か。

 小さく溜息を吐いてから口を開く。

 

「これから大聖杯を消滅させる為に使う方法は、効果範囲の設定が可能だ。だが、その二次被害をあそこに張っている念動フィールド……まぁ、バリアだな。そのバリアによって押さえる事が出来るんだが、それには精密なコントロールが必要になる。それに失敗した場合、多分この空洞は崩れる可能性が高い」

『それじゃあ、アークはどうするんだよ!?』

 

 アクセルよりもアークの方が呼びやすい為か、未だにアークと呼んでくる衛宮に苦笑を浮かべて、口を開く。

 

「心配するな。これは俺の宝具、ニーズヘッグ。正真正銘最強の宝具と呼んでもいい存在だ。この空洞が崩れた程度でどうにかなる程にチャチな代物じゃない」

 

 実際、PS装甲がある以上、一定以下の物理攻撃は無効化する事が出来る。

 他にも、ニーズヘッグには念動フィールド以外にも幾つものバリアが存在している。

 ただ空洞が崩落してくる程度で、その何重ものバリアを突破出来るとは思わないけどな。

 

『……本当か?』

「当然だ。俺は別に自己犠牲の心とかは持っていないからな。それに……」

 

 チラリ、と映像モニタに映し出された、凛と綾子の顔へと視線を向ける。

 俺を信用していながら、それでもやはり心配そうな表情を浮かべている2人の顔を見ながら、言葉を続ける。

 

「凛と綾子を置いて俺が死ぬ訳がないだろ? 聖杯戦争が終わったら、爛れた生活ってのを体験してみたいし」

『アクセル!? あんたこんな時にいきなり何言ってるのよ!』

 

 凛の焦った声。

 今のやり取りで、他の奴等も別に俺が自殺覚悟だという訳じゃないというのは理解したのだろう。

 若干不承不承ではあるが、凛と綾子に引っ張られるようにして洞窟の外へと向かって退避を始める。

 避難完了の報せが来るまでに俺がやっておくべき事は、フレイヤの効果範囲の設定だろう。

 普通の効果範囲だとPTとかを相手にするのを前提としているし、特にここ最近フレイヤを使う相手というのはBETAだった。

 黒い獣と同じように数で勝負してくるBETAを相手にするには、数百m、数km、下手をすれば十数kmや数十kmを纏めて消滅させる必要がある。

 ……その結果ハイヴ周辺には不自然に半球状の穴が出来てたりしたんだが、BETAの消滅と引き替えなんだから、その辺は勘弁して欲しいと思う。

 ともあれ、まさかそれだけの効果範囲のフレイヤをここで使用する訳にもいかない。

 そんな真似をしたら、この山だけじゃなくて冬木そのものが消滅してしまう。

 それこそ、コードギアスの原作でブリタニアの首都ペンドラゴンが消滅してしまったように。

 そうならないように、きちんと今のうちにフレイヤの効果範囲を調整する。

 大聖杯を中心として……半径約7mってところでいいか?

 ……うん。このくらいならここが崩落する恐れがないし、黒い獣が生き残ったとしてもフレイヤの二次被害で念動力フィールドに強制的に集められるだろうから、そっちも問題ないな。

 一応シミュレートしてみるが、問題ないという結果が出た。

 さて、そうなると後の問題は念動フィールドをこっちの予想通りに調整出来るかどうかだな。

 空気の流入を急ぎ過ぎればここが崩落するだろうから、極度に時間を掛けすぎない感じに周辺と慣らして……そう、この場合は慣らすって表現が正しいように思えるが、慣らす事が出来れば最善の選択だろう。

 大聖杯を覆っている念動フィールドの、上の部分。

 半球状に展開している念動フィールドの天井部分を意図的に薄くしてみる。

 正直、ニーズヘッグ以外を中心にして念動フィールドを展開するっていうのは、ラグナロクで何度か経験しているので特に問題なく出来るんだが……意図的に念動フィールドの一部を薄くするとか、そういう風にするのはちょっと試した事がない。

 この辺をぶっつけでやる訳にはいかない以上、少しでも時間があるうちに練習しておいた方がいいだろう。

 T-LINKシステムを使った念動力の操作で、天井の部分を薄くするようにイメージする。

 すると、俺の心配は何だったのかと言いたくなるくらい簡単に、念動フィールドの天井部分が薄くなったのをT-LINKシステムを通して感じ取る事が出来た。

 これは俺の念動力がレベル10という高レベルだからか、それともレモン率いる技術班の作ったT-LINKシステムが高性能だからか。

 いや、多分両方だな。

 となると……なるほど、上手い具合に行動すれば、多分向こうの対応次第では……なら。

 

 どうやってフレイヤを叩き込むのかを計算し、フレイヤの効果範囲を確認する。

 フレイヤの効果範囲は、念動フィールドで作られた半球状のドームの内側に収まる位置。

 着弾地点の事を考えると多少の余裕は持たせる必要はあるが、それでも最低限の効果範囲というものはある。

 そして、丁度それを確認し終わった時……

 

『アクセル、こっちは全員避難したわよ』

 

 凛から念話を使った報告が入る。

 こういう時に念話って便利だよな。……まぁ、通信機の類を持たせても、凛は使いこなせないだろうし。

 

『分かった。じゃあ、こっちも最後の仕上げに入らせて貰う。一応確認しておくけど、洞窟からある程度の距離は取っていると思っていいんだな?』

『ええ、そっちは問題ないわ。……それより、本当に自己犠牲とかは考えてないんでしょうね?』

『当然だ。お前と綾子を置いてどうにかなる訳がないだろ。それに、レモン達に対してお前達を紹介もしていないしな』

『アクセル、こういう時にあたしと遠坂以外の女の名前を出すのはマナー違反だぞ』

 

 俺と凛の念話を聞いていた綾子の言葉に、小さく苦笑を浮かべる。

 

『そうかもしれないな。ただ、レモン達との関係を考えれば、そうおかしな話でもないだろ?』

『……全く、本当にどこまで女好きなのよ。感謝しなさい? アクセルみたいな相手に理解のある女なんかそんなに多くないんだから』

 

 呆れたような凛の声。

 まぁ、確かに普通ならこういう関係を認めるような人物というのはそんなに多くはないだろう。

 人間誰しも独占欲ってのはあるものだし。

 それでも上手くいっているのは……まぁ、正直俺の人外な夜の体力のおかげと言ってもいい。

 それだけじゃないけど。

 

『そうだな、だから……レモン達にお前達を紹介して、全員で夜を楽しむのを期待してるよ』

『……馬鹿』

 

 見ないでも分かる。恐らく今の凛はそういう行為を想像して顔を真っ赤に染めているだろう。

 何だかんだで、凛はそっち関係には弱いんだよな。純情と言ってもいい。

 そんなんだから、俺と綾子の2人掛かりで責められるとあっという間に……うん、いや、今そういうのを考えるのは止めておこう。雑念で狙いが外れたりしたら洒落にならないしな。

 フラグとかはごめんだ。

 

『アクセル』

 

 そんな風に考えた俺に、再び凛からの念話。

 

『うん?』

『無事に帰ってきなさい。そうしたら、あんたの言う事の1つや2つきちんと聞いてあげるから。アクセルが向こうの世界に残してきた恋人とそういう行為をする時にもきちんと参加して上げるわよ』

『ふふっ、そうか。それなら少し頑張らないとな』

 

 凛が俺を励ますためにそういう風に言っているというのは明らかであり、恐らく隣では綾子が頬を赤く染めている凛を見つめてニヤニヤと笑みを浮かべているのだろう。

 

『さて、じゃあそろそろ大聖杯を始末するから、一旦念話を切るぞ』

『ええ。……アクセル、死なないで。大好きよ』

『遠坂に続くようでなんだけど、気をつけてくれ。愛してる』

『ああ、俺もお前達2人を愛してるよ』

 

 短く言葉を交わし、念話を切る。

 ……結局死亡フラグを建てたような気もするが、今更か。

 今まで俺が壊してきた死亡フラグの数を思えば、この程度のフラグはどうということはない。

 

「さて……なら、行くぞ。『火精召喚1999柱!』」

 

 グレートグランドマスターキーを使って槍を持った火蜥蜴を1999匹召喚する。

 本来なら炎獣が相応しいんだが、炎獣は俺の身体を白炎にしてそこから生み出す存在だ。

 ニーズヘッグに乗っている状況では、残念ながら炎獣を生み出す事は出来ず、ある程度の誘導性と独自の判断力という事で火精の召喚となった。

 そうして、呼び出された火精は真っ直ぐに念動フィールドへと向かって突っ込んで行く。

 念動フィールドに接触する直前に念動フィールドの一部を解除し、そこから黒い獣が突っ込んで来る前に速度に乗った火精が突っ込んで行く。

 纏まって突っ込んで一瞬は隙間を生み出すが、その隙間も次から次に生み出されていく黒い獣に塗り替えられ……

 そこに向かってランツェ・カノーネの砲身についているフレイヤを発射する。

 

「覚醒」

 

 同時に精神コマンドの覚醒を使用し、ビームバルカンを発射。

 フレイヤ弾頭に命中しないようにしてビームバルカンで念動フィールドの向こう側にいる黒い獣を消滅させていく。

 同時に、まだ存在していた火精がフレイヤ弾頭を守るようにして動き、次々にその身体を消滅させていき……だが、それでもフレイヤ弾頭は守り、次の瞬間には大聖杯のすぐ側まで到着し、念動フィールドの開いている隙間を閉じると同時にフレイヤ弾頭は起動する。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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