転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1258話

「まず最初に……そうね、これは明日か明後日には他の人達にも説明されると思うけど、ナデシコが何の為に作られたのかを話しましょうか」

 

 椅子に座り、足を組んで黒いストッキングに包まれた肉感的な太股を見せつけるようにしながらエリナが話す。

 これ、意図的にやってる……訳じゃないよな?

 そもそも、色恋沙汰に疎いだろうエリナだ。それがこうやって男を誘うような真似をするとは思えない。

 となると、これは自然な行動か。

 ……つくづく無防備だよな。

 ここで俺が妙な気分になって襲い掛かったら、どうするつもりなんだ?

 いや、勿論そんな事をする気はないけど。

 自分だけがナデシコの作られた理由を知っているという優越感からか、薄らと笑みを浮かべているエリナに俺は口を開く。

 

「何の為にって……それは勿論木星蜥蜴を倒す為だろ?」

「そうね、それも正解。最終的にはそこに辿り着くのは間違いないけど、それだと正解は半分……いえ、3割くらいね」

「随分と低い点数だな。いや、全く何の情報もない状態でその点数なら頑張ったというべきか?」

「あのね。まぁ、いいわ。ともかく、現在のナデシコの目標は……」

 

 一旦言葉を切り、勿体ぶるエリナ。

 微妙にこういうところを可愛いと思うのは、俺だけだろうか。

 

「火星よ」

「火星?」

「そう、スキャパレリプロジェクト。火星にはネルガルの研究所とかがあるの。そこには色々と重要な機密があるのよ。もっとも、表向きには火星に生き残っているかもしれない人を助けるってのもあるんだけど」

「表向き、ね。随分とあからさまなんだな」

「世の中の人は皆綺麗事が好きでしょ? ネルガルも企業として、そのくらいの事はするわよ」

「……その辺をあっさりとそう言えるって事は、それ以外にも色々と後ろ暗いところがありそうに思えるが?」

「どうかしらね。ただ、ネルガルは世界で屈指の大企業だと覚えて貰えればいいわ」

 

 なるほど。やっぱり一筋縄ではいかないか。

 まぁ、それも面白い。そういう連中を相手にしてこそ、こっちも相応の成果が得られるというものだ。

 寧ろ後ろ暗いところのある者達だからこそ、力のある者との約束はきちんと守る。

 自分達がやっている事を理解しているからこそ、その約束を破った時にどのような被害を受けるかを十分に理解している為だ。

 ……もっとも、それはあくまでも俺が力ある存在だと向こうが理解してこそだが。

 思ったよりも力のない存在だと知れば、これ幸いと約束を破りかねない。

 つまり、俺は力を示す必要がある訳だ。

 サセボシティを襲撃していた木星蜥蜴を俺がほぼ1人で殲滅したのを見れば、十分な力を示せたとは思うが……ここは念には念を入れておく必要があるな。

 

「つまり、俺に求めているのは火星に向かうまでの戦力か?」

「そうね、それは否定しないわ。実際、あのミロンガ改とか言ったかしら。あの機体の戦闘を見た技術者達は目を疑っていたわよ? ジョロやバッタを一撃で倒す事が出来るだけの威力を持つ武器に、本来戦闘機より高い機動性や運動性を持つバッタを更に上回る機動性と運動性。バッタのミサイルを無効化するジャマーもあったわね。他にも色々とあったけど、とにかく私達にとってミロンガ改というのは非常に魅力的な機体なのよ。でも、それを強引に奪おうとすればこちらの被害も甚大。だとすれば、友好的に接して火星に向かうまでの間に行われる戦闘データを少しでも得たい。そう思うのは当然でしょ?」

「その為に、会長秘書がわざわざ危険を冒してまで火星に行くと?」

「そうよ」

 

 へぇ。躊躇なく頷いたな。

 今のを見る限り、上から無理矢理命令されてナデシコに乗ってきた訳ではなく、自分から乗り込んできたって事か。

 多少の危険はあっても、そこに利益が多ければ躊躇しない。ハイリスク、ハイリターンか。

 人にやらせるのならともかく、自分からそれを行うというのは好感を抱く。

 しかもそんな行動を行うという事は、大きな成果を求めているという事。

 ここまで話したエリナの性格から考えて、会社のために自分が危険を冒す滅私奉公とでも呼ぶべき気質があるとは思えない。

 だとすれば、自分の為……ネルガルという大企業なのを考えれば、より上に行く為の手柄にしたいといったところか?

 上昇志向だけが強い無能……な訳ではなく、有能で上昇志向も強いタイプか。

 

「ま、いいだろ。取りあえず俺としては機体に妙な手を出さず、俺との契約もきちんと守ってくれるのなら、それでいい」

「そう? じゃあ正式にネルガル所属という事になるけど、いいのね?」

「問題ない」

 

 その言葉に頷くと、エリナは持っていたバッグから何枚かの書類を取り出す。

 雇用契約書とか、その手の書類らしい。

 

「なら、これにサインをお願い。一応よく読んでね」

「よく読んでって割りには、随分と細かく書かれているけどな」

 

 この手の書類を見ていつも思うんだが、本当に相手に理解させようとしているのか?

 その辺を疑問に思う。

 面倒臭そうだから、取りあえず読まないでサインする……って奴も相当多そうだし。

 そんな風に考えながら、一応書類を流し読みしていく。

 基本的にシャドウミラーの政治はエザリア率いる政治班に任せている俺だが、腐っても士官学校首席卒業者だ。この手の書類を読むのは好きではないが、出来ない訳じゃない。

 基本的には俺の要望が受けいれられている。

 ナデシコ所属の戦力として行動するが、自分の正体を探ろうとしてくる者に対しての自衛や、ミロンガ改の整備以外の接触に関しては行わない、それとナデシコ所属ということで、ミロンガ改の使用する武器に関しての補充はナデシコの経費で行う事。

 まぁ、ミロンガの武器で補充が必要なのは肩のミサイルだけだが。

 S-11ミサイルを使うわけにはいかない以上、間違いなく威力は下がる。

 だがそれでも、元々攻撃手段の少ないミロンガ改だ。ミサイルというのも重要な攻撃手段なのは間違いない。

 ……いや、それでもミサイル以外にはビームサーベル、ビームマシンガン、エナジーウィングの3つの攻撃手段があるんだけどな。

 ただ、ニーズヘッグは例外として、サラマンダーに比べても攻撃手段はそんなに多くない。

 移動目的のサラマンダーより攻撃手段が少ないってのはどうかと思うんだが、そもそもミロンガ改は俺が素性を隠して使う機体として改修されたものだし、贅沢は言えない。まさか、素性を隠しているのに、T-LINKシステムとかを使う訳にもいかないし。

 ただ……ナデシコの目的が火星となると……

 俺が契約書を見ていたエリナへと視線を向け、その疑問を口にする。

 

「ナデシコの目的地が火星となると、ミロンガ改で使うミサイルはそう簡単に補充できないんじゃないのか?」

「地球上にいる時よりも補給が難しくなるのは事実だけど、それなりの量はナデシコに積み込んでいくわよ」

 

 そうだよな、普通はこうやって武器をどうにかやりくりするんだよな。

 シャドウミラーの機体は基本的にビーム兵器が主体で補給を必要としない機体が揃っているし、推進剤やエネルギーが不足するという事もないから、その辺の感覚が鈍っている。

 

「それでも火星まで向かうなら、当然時間が掛かる訳で……そうなると、ミサイルの使用はなるべく避けた方がいいか」

「それは当然ね。そもそも、ミサイルは1発でも結構高額なんだから。ミロンガ改だったわよね。あの機体にはビーム兵器が積まれているし、そっちならエネルギーが切れない限りは弾切れがないでしょ?」

「エネルギーが切れる? ……ああ」

 

 そうか、そう言えばミロンガ改についての調査をさせないって事になれば、ブラックホールエンジンについても黙っている事になるのか?

 けど、整備をするんだから、いずれエネルギーの供給とかそっち関係についての話はしなければいけない訳で……しょうがない、か。

 

「エネルギー切れはない」

「は? どういう事?」

 

 キョトンとした顔で俺の方へと視線を向けてくるエリナ。

 普段がキツイ顔立ちだけに、こういう表情はちょっと珍しい。

 いや、そこまで長い間エリナと一緒にいる訳じゃないんだけど。

 実際、まだ1時間かそこらだし。

 それでもエリナの性格は大体理解出来ている。

 まぁ、エリナの全てを理解しているとはとても言えないけどな。精々表面的なところだけだし。

 

「聞いての通りだ。俺の機体……ミロンガ改にエネルギー切れはない。あの機体の動力炉はブラックホールエンジン……一種の永久機関だからな」

 

 その言葉を聞き、エリナの表情が唖然としたものに変わる。

 

「……え? 今、何て?」

 

 そして口に出たのは、何か信じられないとでも言いたげな、そんな言葉。

 何だ? 確かに驚かせるつもりではあったけど、ここまで驚くような事か?

 それこそ、まるで幽霊にでも会ったかのような……そんな表情。

 どうなっている?

 だが、次の瞬間にはエリナの視線は今まで以上に厳しいものになっている。

 

「どういう事!?」

 

 そして、次の瞬間には椅子から立ち上がって、ベッドに座っている俺へと向かって距離を縮め、襟首を強引に掴んでくる。

 何だ? 何だっていきなりこんなにキレている?

 取りあえず、これ以上エリナを興奮させてもこっちにいい事は何もないのは事実。

 だとすれば、出来るだけ落ち着かせる必要がある、か。

 

「落ち着け、何がだ?」

「何がだ、じゃないでしょ!? 何よブラックホールエンジンって! あんたの機体を作った人はネルガルから機密情報でも盗んだの!?」

 

 今までは貴方だったのが、余程に興奮している為だろう。あんたへと変わっていた。

 いや、それどころじゃなく……今のエリナの慌て具合や、言葉から考えてナデシコの動力炉ってブラックホールエンジン……そこまでいかなくても、似たような重力を使った代物だったりするのか?

 だとすれば、俺としては嬉しいような、悲しいような……正直、微妙なところだ。

 そもそも、自慢じゃないがシャドウミラーの持っている重力系の技術は非常に高い。

 だというのに、この世界で得られる技術が重力系の技術だとすれば……いっそ、早めに切り上げて帰った方がいいかもしれないな。

 そんな風に考えながら、エリナを落ち着かせるように言葉を掛ける。

 

「そんな筈はないだろ。そもそも、ネルガルってのは世界でも有数の企業なんだろ? そう簡単に機密情報を盗める筈がない」

「じゃあ、何でよ! 何でブラックホールエンジンなんて代物があんたの機体に使われてるのよ!」

「偶然。そう考えるべきだろうな」

「偶然? ……そんな偶然なんて……」

 

 そこまで呟き、ようやく自分が俺に迫っているのに気が付いたのか、少し恥ずかしそうにしながら俺から離れていく。

 さて、どうしたものか。

 ミロンガ改に使われている重力系等の技術をどうやって誤魔化すか。

 そうなると、テスラ・ドライブとか、ASRSとか、エナジーウィング、関節部分に使われているPS装甲といったシャドウミラーの機密情報を知らせる事も考えないといけないか?

 だが、それは困る。

 シャドウミラーの技術的な優位性を台無しにする可能性がある。 

 だとすれば、俺がやるべきは何とかここを誤魔化す事、か。

 ……俺に出来るか?

 いや、やる必要がある。ただし、最悪の場合はナデシコから逃げ出し、ミロンガ改を回収してニーズヘッグでホワイトスターに帰還する事も検討する必要があるな。

 

「あくまでも偶然だ。俺が言っても色々と信じられないのは分かるだろうが、それでも俺のミロンガ改に使われているブラックホールエンジンは俺達の組織独自の物だ」

「組織?」

「ああ、組織だ」

 

 ここで組織……シャドウミラーの存在を口に出すのは色々と不味い気もするが、まさか俺が個人的にブラックホールエンジンを作った何て言っても誰も信じられないだろう。

 それ以前に技術的な事を聞かれても俺には説明出来ないしな。

 

「どこの組織とは言えないが、それでもこの技術は俺達が独自に発展させてきた代物だ」

「……本当なの? アクセル。貴方がどこの人間かははっきりとしていない。それこそ、私達と敵対する組織の存在の可能性もある。それをどう考えてるの?」

「その件に関しては、遺伝子調査ではっきりした筈だが?」

「はっきり? 結局オモイカネがフリーズして、何も分からなかったという話だけど?」

 

 じっと俺の方へと視線を向けていたエリナだったが、そのまま数分程俺と視線を交わす。

 

「……まぁ、いいわ。ただ、この件はちょっと問題になるかもしれないわ。悪いけど、本社の方に知らせる事になると思うけど、構わないわね?」

「ああ、構わない。ただ、言うまでもないが、俺の機体を調べるというのは遠慮して貰おう」

「善処するわ」

 

 そう告げると、エリナは椅子から立ち上がる。

 

「悪いけど、今日はこの辺で失礼させて貰うわね。本社の方に連絡をする必要もあるし。本当にネルガルから機密を盗んでいるのかどうかを確認する必要もあるから」

「だろうな」

 

 最後に俺の方を一瞥すると、エリナはそのまま部屋を出て行くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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