転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1261話

「ちょっとあんた! こんな事をしてもいいと思ってるの!? さっさと離しなさい! その汚い足を背中から退けなさいって言ってるのよ!」

 

 足の下でムネタケがギャーギャーと喚く声が聞こえてくる。

 もっとも、本来ならそのムネタケを助けるだろう他の兵士達は全員が意識を失って床に倒れている以上、どうしようも出来ないが。

 いっそ他の場所を占領しに行っているメンバーが戻ってくれば……とか考えてるのか? ああ、それは十分に有り得るな。

 ブリッジが占拠されている以上、当然ここの様子を見ていると思っても間違いない。

 だとすれば、自分達の指揮官が捕らえられてるんだから何らかの行動を起こしたとしても不思議じゃない。

 あるいは……気絶している兵士達を起こす為に叫んでいるとか? なるほど、どちらかと言えばそっちの方が可能性は高いか。

 この様子を見ているかどうか分からないブリッジより、ここで気絶している者達を起こす方が確実性は上だろう。

 

「って訳で、少し黙ってて貰うぞ」

「げふぅっ!」

 

 背中を踏んでいる足に若干力を入れると、次の瞬間にはムネタケの口から悲鳴のような何かが聞こえてきた。

 いや、何かじゃなくて悲鳴だろうが。

 

「ちょ、ちょっと。何なのよ! って訳でって何かどういう訳なのよ! 大体あんた、こんな真似をして連合軍を敵に回すつもり!?」

「どうだろうな。それもいいかとちょっと思ってきたところだ。俺に手を出すんなら、当然自分達だって手を出されるのを覚悟してるんだろ? 例えば……お前は俺に銃を向けた。つまり、お前も俺に撃たれる覚悟はある筈だな?」

 

 ムネタケの背中に足を乗せたまま、床に落ちている銃へと視線を向ける。

 その銃……拳銃は、ムネタケが持っていた物だ。

 出来れば兵士が持っていたサブマシンガンが欲しかったんだが、少し離れた場所にあるしな。

 ムネタケから足を離せば、そのまま逃げてしまいそうだし。

 いや、それでも捕まえる事は出来るだろうが、面倒過ぎる。

 

「なっ、なななななな……何を言ってるのよ! あんた正気!?」

「勿論正気で本気だ。お前を撃つというのはもう変えられない未来だしな」

「待って、待ちなさい! そんな事をしたら、あんた本気で連合軍を敵に回すわよ!」

「それがどうした? 所詮木星蜥蜴を相手にして一方的に押されてる程度の弱小組織だろ。ナデシコに乗っていたなら、見た筈だな? 俺がミロンガ改でバッタとジョロを一掃する光景を」

「た、確かにあんたは強いかもしれないわ。けど、人間には体力の限界ってのがあるのよ。それに、武器だって補給がなければいずれどうしようもなくなるでしょ。ね? 悪い事は言わないから、大人しく連合軍に投降しなさい。悪い目には遭わせないから」

 

 背中を踏まれている状況である以上、全く抵抗が出来ない為に無理矢理顔を曲げて俺の方へと視線を向けながらムネタケが必死に告げてくる。

 

「ああ」

 

 その言葉に思わず呟く。

 そうか、ネルガルの方から情報は渡っていないのか。

 もし情報が渡っていれば、ミロンガ改にブラックホールエンジンが搭載されている事は知っているだろう。そして永久機関である為、ミサイルはともかくビーム系の武装によるエネルギー切れは存在しないといった情報を知らない筈がない。

 けど、よく考えればそれは当然か。そもそも、ネルガルというのはこのナデシコ世界でも有数の大企業だ。

 そんな大企業が、明らかに自分達の利益になる情報をそうやすやすと渡す筈がない。

 ふむ、だとすればやっぱりネルガルが俺を裏切ったという訳ではないのか?

 そうなると、この男をどう処理するのがいいのかを考えていると、何故かムネタケの表情が明るくなる。

 

「ああ!? 今、ああって言ったわよね! じゃあ、連合軍に投降するのね。よく決心したわ。安心しなさい。この件は多少の問題にはなると思うけど、この私が……わ・た・しが、何とかしてあげるわ。だから、いいわね? 事情聴取で何かを聞かれたら、私に説得されて連合軍に投降する事にしたって言うのよ?」

「……何寝言を言ってるんだ? 今のああってのは、そういう意味じゃない。お前の間抜けさ加減に納得しただけだよ」

「何ですって!?」

「ま、とにかくだ」

 

 ムネタケの持っていた拳銃の銃口を、その持ち主へと向ける。

 銃口が向いているのは、ムネタケの特徴でもあるキノコの後ろ……つまり後頭部だ。

 菌糸類であっても、ここを撃てばさすがに死ぬだろ。

 

「ちょっ、ちょっと! 何をしてるの!? 何をするの!? 本気!? 止めなさい!」

 

 微かに動ける首を回し、俺が何をしようとしているのかを悟ったのだろう。ムネタケは顔を真っ青にしながら制止の声を向けてくる。

 

「言っただろう? 俺に銃口を向けたんだから、当然自分も銃口を向けられる覚悟はあったんだろうってな? もしかして、自分は優位に立っているから何をやってもいいと思ったか? まさか、軍人がそんな馬鹿な真似をする筈がないよな。……さて、じゃあそろそろお別れの時間だ。お前が誰に敵対したのか。あっちの世界で十分にそれを思い知ってくれ」

「待って待って待って待って! あの時は本気じゃなかったの! 撃つつもりはなかったわ!」

「そうか。じゃあこの銃には弾が入っていないのか?」

「それは……」

 

 言葉に詰まるムネタケ。

 まぁ、数で押せば自分の有利は絶対に覆されないと思ったんだろうが……

 

「この銃に弾丸が入っていない事を祈るんだな。……じゃあな」

「待っ!」

 

 最後の命乞いを無視し、そのままトリガーを引こうとして……

 

「待って!」

 

 パァンッ!

 その声が聞こえてくるのと、トリガーが引かれるのは殆ど同時だった。

 いや、ギリギリ声の方が早かったか。

 その声のしてきた方へと視線を向けると、そこにはネルガルのスーツを着たエリナの姿があった。

 余程急いで走ってきたのだろう。息を切らせて必死な表情を浮かべていた。

 

「……殺した、の?」

 

 恐る恐ると掛けてくる声に、視線をムネタケの方へと向ける。

 顔のすぐ横に銃弾が着弾した影響で、完全に意識を失っているムネタケへと。

 

「いや、もう一瞬エリナが声を掛けるのが遅ければ、後頭部に銃弾を撃ち込んで頭が破裂してたんだろうけどな」

 

 俺の背後から来た為、ムネタケがどんな状況になっているのかは全く分からなかったのだろう。生きていると聞き、安堵の息を吐く。

 もっとも、現状でムネタケを殺していれば色々と揉め事が大きくなるのは分かりきっていただけに、正確には俺が狙ったのはムネタケの後頭部ではなくて耳。

 右耳辺りを吹き飛ばそうと思っていた。

 ……それはそれで、後日揉め事が起きていた可能性が高いが。

 

「良かったわ。連合軍との間に問題が起きたら、洒落にならないもの」

「ま、それはそうだろうな」

 

 何だかんだで、連合軍というのはこの世界における最大の軍事組織なのは間違いない。

 確かにネルガルというのはこの世界でも有数の企業なのは間違いないのだろう。

 だが、それでも連合軍と正面から戦うというのは荷が重すぎた。

 シャドウミラーが手を貸せば話は別かもしれないが、そうなればそうなったでまた別の問題も出てくるだろうし。

 

「それで、こいつらはどうするんだ? 何だか俺を捕らえようとしていたみたいだし、ブリッジの方も占拠されているみたいだが」

「ああ、ブリッジの方はもう解決したわ。クルーの中でも何て言ったかしら? ほら、アクセルと一緒に囮をやった人」

「テンカワか?」

「そうそう、そのテンカワって人が他の人達を率いてブリッジを強襲して制圧し返したみたい」

「……テンカワが?」

 

 改めて尋ねると、エリナは頷く。

 テンカワが、か。俺がテンカワと話したのはそんなに長くない。

 いや、短いと言ってもいいだろう。

 けどその短い時間話しただけでも、テンカワが率先して行動を起こすようには思えなかった。

 何と言うか、受動的というか、物事に流されてようやく動くみたいな……うん、多分この世界の主人公はテンカワで間違いないんだろうなと思ってしまう。

 で、ヒロインは艦長、と。

 この辺は話の流れから考えて、まず間違いないだろう。

 俺の前で安堵していつものキツイ表情を微かにではあるが緩めているエリナは、多分ヒロインじゃないんだろう。

 いや、テンカワが10代後半で、エリナは20代。年齢差は数歳程度なんだし、十分にヒロインの資格はあると思うんだが。

 そのエリナは、俺から向けられている視線に気が付いたのだろう。訝しげに俺の方を見てくる。

 

「何よ?」

「いや、何でもない。ともあれ、何をするにしても一旦部屋に戻った方がいいな」

「何でよ?」

「俺の部屋にハルカを置いてきたからな。連れ去られた状態のままだと、いらない心配をさせてしまいそうだ」

「馬鹿ね、そういう時こそコミュニケを使えばいいじゃない。わざわざそっちに行ってたら時間の無駄でしょ」

「……おお」

 

 そう言われれば、確かにちょっと話をするくらいならコミュニケを使えば全く問題はないのか。

 エリナの言葉に頷き、早速コミュニケを起動させようとしたところで……

 

「あれ?」

 

 ふと、そんな声が聞こえてくる。

 それも、聞き覚えのある声で……って、さっき同じような事を考えたんだが。

 ともあれ、その声のした方へと視線を向けると、そこにいたのはハルカ。

 しかも、手には消火器を持っている。

 ……ナデシコに消火器ってあったのか?

 いや、寧ろ戦艦だからこそいざという時の為に消化器が用意されていてもおかしくはない。

 もっとも、さすがに家で使うような消化器ではないだろうが。

 どこぞの国ではF1レースでF1マシンが燃えた時に家庭用の消化器を使ったという逸話が残っているが、まさかナデシコでそんな真似はしないだろう。

 仮にも世界的な大企業なんだし。

 

「うーん……余計なお世話だった?」

 

 手に持った消火器を降ろしながら告げるハルカに、小さく肩を竦める。

 

「余計なお世話って訳じゃないけど、出来れば危ない真似はしないで欲しかったな」

「む。ちょっと、何よその言い方。折角助けに来てあげたのに、そういう風に言う訳?」

「いや、助けに来てくれたのはありがたいが、お前は身体を鍛えたりはしてないんだろ? こいつらは仮にも軍人だぞ? さすがに女の細腕でどうにか出来る相手じゃない」

「ふーん。……ま、それは事実だけどね。でも、少しくらい感謝してもいいんじゃないの?」

 

 俺の言葉が不満だったのか、ハルカの視線がジト目となる。

 それに対し、俺が何かを言い掛けようとしたところで……

 

「はいはい、その辺にしてちょうだい。とにかく今は、この状況を何とかする必要があるでしょ」

 

 エリナが手を叩きながらそう告げる。

 どう見ても、委員長体質だよな。

 いや、こういう時は助かったって言うのかもしれないけど。

 現状、連合軍の兵士が艦内にいる状況で言い争っていても、向こうにとって有利な事でしかないし。

 もっとも……

 

「本命の俺を捕らえに来たムネタケはこの有様だし、ブリッジの方ももう鎮圧したんだろ? なら、そこまで心配する必要はないと思うんだが」

「そんな訳にはいかないでしょ。連合軍の人達が何の援護もない状態でこんな真似をすると思う? 多分、ここで迂闊に時間を掛ければもっと大勢でやって来るわよ。それも、戦艦とかを使ってね」

「……なるほど」

 

 気を失っているムネタケへと視線を向ける。

 確かに色々と小賢しい性格をしているこの男……いや、キノコが何の後ろ盾もないままで艦内の鎮圧なんて手段に出る筈もないか。

 

「なら、どうするんだ?」

「勿論早いところ、このサセボシティを出発するのよ。……本当はアクセルのミロンガ改だっけ? あの機体を格納庫から直接出撃出来るように機体を改造したかったんだけど、そんな時間はとてもじゃないけどないし」

「いや、時間があっても無理だろ。下手をすれば数ヶ月単位で時間が掛かるんじゃないか?」

 

 基本的にこのナデシコはエステバリスの運用を前提としている。

 実際、出撃する時に使う発進口とかも、エステバリスの大きさに合わせた作りになっていた。

 勿論丁度エステバリスの大きさって訳ではなく、ある程度の余裕を持たせて作られてはいるんだろうが。

 それでも、エステバリスとミロンガ改では大きさが違いすぎる。

 1回りや2回りではなく、2倍、3倍といった大きさなのだから当然だろう。

 ナデシコで本格的にミロンガ改をエステバリス同様に運用出来るようにするとなると、設計を根本から見直すといった作業が必要になってくる。

 それなら、多少不便でも俺がナデシコに入って来た時にしたように、物資搬入口から出入りした方が手っ取り早い。

 

「……分かってるわよ。けど、ミロンガ改の性能はかなり高いの。それこそエステバリスとは比べものにならないくらいにね。なら、その戦力を十分に運用出来るようにしたいというのは当然でしょう?」

「なるほど。まぁ、データ取りもしたいってのもあるんだろうが」

「う゛っ!」

 

 図星だったのか、エリナは息を詰まらせるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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