転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1269話

「なぁ、こういう場合ってお見舞いの品とか持っていった方がいいのかな?」

 

 医務室へと向かっている途中、テンカワが不意に尋ねてくる。

 

「あー……どうだろうな。一応見舞いだし、あった方がいいのかもしれないけど、どこで手に入れる?」

 

 空間倉庫の中にはそれなりに使えそうな物が大量に入っているが、まさかそれを出す訳にはいかないだろう。

 もし出してもいいんなら、それこそ色々と面白い物を出せるんだが。

 

「えっと、一応コンビニっていうか、店はあるらしいぞ。ただ、この忙しい時間にやってるかどうかは分からないけど。それと、食堂に行けば料理とか作って持っていけるな」

「それはちょっと面倒臭くないか? そもそも、そこまでしてもヤマダが喜ぶとは思えないし。特に俺が見舞いの品を持っていけば」

「あー……うん、だろうな」

 

 テンカワも、ヤマダが俺に抱く対抗心というのは何度かその目で見ているのだろう。

 納得したように頷く。

 

「けど、そういう意味だと俺だってガイに好かれてるって訳じゃないと思うぞ」

「……そうなのか? 同じエステバリスのパイロットだし、仲はいいと思ってたんだが」

「俺が本職のパイロットなら、その可能性もあったかもしれないんだけどなぁ……コックとの兼業だから」

「そうらしいな。そもそも、元々はコック志望だったんだろ?」

「そ。で、サセボシティの戦いでガイが骨折して出撃出来なかったし、更には全く訳の分からない機体はいるしで、色々とあった結果俺が木星蜥蜴を誘き寄せる為に出撃したら……」

 

 チラリ、とテンカワの視線が俺に向けられる。

 その視線の意味は、言わなくても十分に分かる。

 つまり、囮をやる筈が、気が付いたら俺が全機倒してしまっていたと。

 実際、あの時は本来ならテンカワの機体がバッタやジョロを誘き寄せ、チューリップを内部から一撃で倒した重力波砲で纏めて消滅させるつもりだったのだろう。

 さっき見た重力波砲の威力を考えると、それは普通に出来そうに思える。

 もしあの戦いでそんな真似をしていれば、今回の連合軍の譲渡要求はミロンガ改ではなくナデシコになっていたかもしれないな。

 いや、軍ってのは色々と欲深い。ナデシコとミロンガ改の両方を欲していた可能性もある……というか、高い。

 

「で、あの戦いで生き残ったというのもあって、俺はコックとパイロットの両方をやる事になったんだけど……ガイは俺がパイロットに専念しないのが気にくわなかったんだろうな。俺に対する風当たりも、アクセル程じゃないけど結構強いよ」

 

 たはは……と苦笑を浮かべるテンカワだが、俺としてはテンカワの姿勢はそれはそれでいいと思うんだけどな。

 

「お前は別にパイロットになりたかった訳じゃないんだろ?」

「え? ああ、うん。このIFSも火星だと皆普通に使ってたし……俺も元々の夢はコックなんだよな。だからパイロットになるってのは、仕方がないからやっているだけで」

「なら、それはそれでいいんじゃないか? ま、ただ個人的に言わせて貰えば、パイロットってのはそう簡単に兼業出来る程簡単なものじゃない。命に関わってくる以上、訓練も相当に厳しくやる必要があるし、それをやればコックとしては……どうだろうな」

 

 命に関わる、か。

 俺の場合は混沌精霊という事もあってその辺の意識が希薄だが、普通のパイロットなら確実にそっち関係に意識を集中した方がいいだろう。

 特にエステバリスは小型で装甲も薄い。下手をすれば一撃で撃破される可能性すらある機体だ。

 そう考えると、本気で生き残る気があるのならコックとパイロットのどっちかに専念した方がいいと思うが……それを知った上で両方の道を選ぶというのなら、それはそれでテンカワの選択だろう。

 

「そう思わないか?」

「え?」

 

 通路の先にいた人物に尋ねる。

 テンカワはそれに気が付いていなかったのだろう。少し間の抜けた声を上げる。

 

「いやいや、困りますな。大事なパイロットを悪の道に誘っては」

 

 通路の先にいた人物、プロスペクターはいつものように笑みを浮かべて首を横に振っていた。

 手に果物の入った籠を持っているってことは、ヤマダの見舞いにきたのか?

 ともあれ全く困っているようには見えないが、それでも言葉を考えるとやっぱり面白くはないのだろう。

 

「そうか? 実際、テンカワの前でこう言うのはちょっと悪いけど、テンカワの実力は決して高くないぞ? 今回の戦いは怪我とかしていなかったが、純粋な技量で考えればヤマダの方が上なのは間違いないだろ?」

 

 もっとも、そのヤマダも俺への対抗心から実力を十分に発揮出来てはいないのだが。

 いや、そもそも今回はそれ以前の問題か。

 海上での戦いだというのに、何故か空戦フレームではなく陸戦フレームを装備していたんだから。

 

「うーん、アクセルさんの仰りたいことは分かりますが、ヤマダさんが怪我をしてしまった以上、暫く出撃は出来ないのですよ? そのうえでテンカワさんまで出撃出来ないとなると、戦力的な問題が……」

「本人にやる気がないのに出撃させても、それこそ損傷を受けるだけだぞ? もし本気で今のテンカワを使うのなら、もっとしっかりと訓練をやる必要があるだろうな。……コックの方を疎かにして」

「それはっ!」

 

 俺の言葉に、テンカワは咄嗟に何かを言おうとする。

 いや、何を言おうとしているのかは十分に分かっていた。

 そもそもの話、あくまでもテンカワにとってはコックが主でパイロットが従なのだ。

 そうである以上、従のパイロットの為にコックの時間を削られるというのは許容出来ないのだろう。

 勿論、パイロットがテンカワしかいなければ話は別だ。

 原作知識はほぼ皆無に等しい俺だったが、それでもテンカワが恐らくこの機動戦艦ナデシコの主人公だっていうのは、これまでの経験から殆ど確信に近い思いを抱いている。

 そうである以上、本来であればこの展開ではヤマダが怪我をしてテンカワしかパイロットがいない状況になり、それでテンカワがパイロットとして成長していくのだろう。

 ……そう。本来であれば、だ。

 今のナデシコには、木星蜥蜴の集団を1機で圧倒出来る力を持つ俺がいる。

 それを考えれば、テンカワは……

 

「その、プロスさん、俺……パイロットよりコックの方が……」

「はいはい、はいはい。分かります。分かりますよテンカワさんの気持ちは。確かにアクセルさんという強力な戦力がいる以上、無理にテンカワさんが戦わなくてもいいのかもしれません。ですが……戦場というのはいつ、何が起きるのか分からないものです。それこそ、今日の戦闘が始まる前にヤマダさんが戦闘で大怪我をするというのを想像出来ましたか?」

 

 ……海上という戦場で陸戦フレームを装備して突っ込んで行ったんだから、現状は予想出来そうなものだが。

 

「ですから、で・す・か・ら! いざという時の為にもテンカワさんにはパイロットとしてしっかりと訓練を重ねておいて欲しいのです」

「分かってるんすけど……でも、俺はコックが、コックをやりたいんす」

「うーん、こう言ってはなんですが、もしナデシコが撃沈されてしまえば、コックどころではなくなりますよ? ホウメイさんだって、艦と運命を共にする可能性もあります」

「……そんな……」

 

 うん? ホウメイってのは、確か食堂の責任者だったよな? いや、責任者というよりはシェフって奴か? まぁ、その辺の違いは細かく色々とあるんだろうが、ともあれナデシコの食を司る的な意味で重要人物なのは変わらない。

 実際食堂で食った料理は超包子で出されている料理に勝るとも劣らぬといった具合だったし。

 この様子から考えると、恐らくテンカワの師匠みたいな存在なのか?

 

「ま、色々と言ったけど、最終的にはテンカワが考えればいいだろ。最後まで自分の意志を貫くか、それともコックよりもパイロットを重視するか。素直な気持ちを言わせて貰えば、俺としてはどっちでもいいんだけどな」

 

 ナデシコも、テンカワがパイロットじゃなくてコックに専念するって事になれば、何らかの対応を取るだろう。

 無難な線ではパイロットを補充するとか。

 というか、何で今までそれを選んでないのかがよく分からない。

 下手にパイロットとコックの二足の草鞋をさせるより、普通にコックに専念させてパイロットを補充した方が最終的には安上がりになるだろうに。

 もしかして、そう簡単にパイロットを補充出来ない理由でもあるのか? ……あるのか。そもそも、エステバリスは人型機動兵器だ、当然その操縦に慣れている者の数は溢れているって訳ではないだろう。

 その辺を考えれば、当然使えるパイロットが少なくてもおかしくはない、か。

 

「……分かった。どうすればいいのか、ちょっと考えてみるよ」

「そうしてください。ああ、これどうぞ。お見舞いに行くのならやはり果物の詰め合わせでしょう」

 

 そう言い、手に持っていた果物の入った籠をテンカワへと手渡す。

 なるほど、この果物の入った籠は俺達に渡すために用意してあったのか。……抜け目ないな。

 俺達がヤマダの見舞いに行くというのは予想済みって訳か。

 いやまぁ、今回は助かったけど。

 

「悪いな」

「いえいえ。アクセルさんへも好感度は、稼いでおいて損はないですから」

 

 如才なくこんな事を言ってくる辺り、随分とこっちに気を使ってはいるらしい。

 

「では、失礼します。……ああ、そうそう。恐らく数日後には色々と忙しくなると思いますので、体調は整えておいて下さいね。それと、テンカワさんもどちらを取るのかをそれまでに決めておいてくれると助かります」

 

 そう告げ、プロスペクターは去って行く。

 その後ろ姿を見送り、何とも言いがたい表情をしているテンカワの肩を叩く。

 

「ほら、今はヤマダの見舞いに行くんだろ。さっさと行くぞ。向こうも暇をしている……とは思えないが、それでも俺達が行けば少しはヤマダの気も紛れるだろ」

「あ、ああ。……そうだな。難しい事は後で考えればいいんだし。今はガイの見舞いに行くよ」

 

 そう告げ、俺とテンカワは医務室へと向かう。

 にしても、俺がヤマダと呼んでテンカワはガイと呼ぶ。

 それでいながら普通に会話が通じている辺り、ちょっと面白いな。

 そんな風に考えていると、やがて医務室へと到着する。

 

「ガイ、怪我はどんな具合だ?」

「どうやら暇そうだな、ヤマダ」

 

 医務室へと入り、ベッドで横になっているヤマダに対し、俺とテンカワは声を掛ける。

 

「だから、俺はヤマダじゃなくて、ガイ! ダイゴウジ・ガイだって言って……痛ててて」

 

 ヤマダ呼ばわりに叫ぼうとするが、それだけでも痛いんだろう。

 というか、本当に身体中ガチガチに固められてるな。

 両手両足がギプスで固められているその様子は、どこぞのスーパーロボットのように見えないでもない。

 確かヤマダはスーパーロボットが好きだった筈だから、もしかしたらこの状況は嬉しいんじゃないのか? ……さすがに身動き出来ない状況だと嬉しくないか。

 

「はははっ、元気そうで良かったよ。はいこれ。果物の詰め合わせ。ガイも食うだろ?」

「いや、それは嬉しいけどよ。……この状況でどうやって食えってんだよ。ここでナナコさんがいればなぁ……アクアでも可」

「ああ、アクアマリン! ……いいよなぁ」

「お? お前はアクア派か? 通だねぇ」

「だって、あのお淑やかさ……」

「それを言うならナナコさんだって……」

 

 何だか分からないが、俺の知らない場所で話が進んでいるらしい。

 どうなってるんだろうな、これ。

 いやまぁ、ヤマダが元気ならそれでいいんだけど。

 結局テンカワとヤマダの相性っていいというのははっきりしたらしい。

 取りあえず……と、二人の方へと視線を向けると、キョアック星人がどうこうとか言っているのが聞こえてきた。

 恐らく……いや、多分間違いなくこいつらが好きなゲキガンガーとかいう奴の話題なのだろう。

 全然話についていけない俺としては、いつも俺に絡んでくるヤマダの意識がテンカワに向けられているのを止めるつもりはない。

 それにヤマダも両手足が全く動かない状態だと、基本的に暇でゲキガンガーについての話が出来るテンカワってのはありがたい存在なんだろうし。

 そんな二人をそのままに、俺は折角なのでプロスペクターが持ってきた果物の盛り合わせに手を伸ばす。

 

「ヤマダ、この果物、食うけどいいか?」

「だから、キョアック星人は……ああ!? 好きにしろ! で、だな」

 

 俺の話をきちんと聞いてるのかどうか全く分からないが、ともあれ許可は貰った。

 幸い入院患者用にか果物ナイフは常備してあったので、それを使って梨の皮を剥いていく。

 料理が得意って訳じゃないが、それでも果物の皮を剥くくらいは出来る。

 勿論本職の料理人のように実を残さずにとか、そういう芸当は出来ないが。

 梨の皮を剥いて切り分け、シャリシャリとした林檎に似ているようでいて違う梨の食感を楽しむ。

 甘さも十分だけど……出来れば冷たく冷やした梨を食いたかったな。

 ジョーがどうとか言っているテンカワとヤマダの話を聞きながら、そう思うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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