転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1273話

 ディストーションフィールドを張っているナデシコの内側にミロンガ改とエステバリスの姿はあった。

 そしてこっちに向かってきているのは、50機近いデルフィニウム。

 予想外の機数だ。

 当初の予想だと20機に満たないくらいじゃないかとゴートは言ってたんだが。

 ……もしかして、これって俺のせいか?

 普通に戦ってサセボシティを襲っていた木星蜥蜴を全滅させた訳で……その戦力と、チューリップを一撃で内部から破壊したナデシコの攻撃力を考えれば、妥当なのかもしれない。

 いや、この世界の者にとっては妥当なのかもしれないけど、俺から見れば足りないとしか言いようがないんだけどな。

 ともあれ、大量のデルフィニウムがナデシコへと向かってきて……不意に全機が一斉に止まる。

 へぇ。機体の性能はともかく、パイロットの技量はなかなかだな。

 

『ユリカ!』

「は?」

 

 そんな声と共に、オープンチャンネルで流れてきた通信映像。

 その映像を見て、思わず驚きの声を出してしまった俺はおかしくないだろう。

 いやだって、何でお前がそこにいるんだ?

 そう、映像モニタに映し出されていたのは、ナデシコの副長……えっと、名前何て言ったか。確か……ジョン? 違う、それだと犬の名前だ。

 

『ジュン君!?』

 

 艦長の声で思い出す。そうそう確かこいつの名前はジュンだったな。

 プロスペクターの話だと、艦長程に突出している訳ではないにしろ、士官学校を優秀な成績で卒業したらしい。

 それでいながらお人好しな一面があり……そんな事を考えている間にも、映像モニタで行われている二人の会話は進んでいく。

 

『ユリカ、今はそんな事を言っていられるよう状況じゃないのは分かってるだろ? ナデシコと、あのミロンガ改とかいう機体。それは今の連合軍に絶対に必要なものなんだ!』

『ごめんね、ジュン君。それは出来ないわ。私は私の道を行くの』

『ユリカ、今ならまだ提督も許してくれるよ! 連合軍に戻ろう!』

『ジュン君……ごめんなさい、それは出来ないわ。このナデシコはミスマル提督の娘としての私じゃなく、私自身が私としていられる場所だから。それに……ここには私の大事な人がいるの』

『……』

 

 艦長の口から出た大事な人という言葉に、ジュンの動きが止まる。

 いや、バイザーみたいなのを被ってるから表情は分からないんだが、恐らく今のジュンは表情を引き攣らせているのだろう。

 恋愛感情にそれ程鋭くない俺でもジュンが誰を好きなのかというのは分かる。

 だが、何故か艦長は全くそれに気が付いていない。

 いや、ジュンに好意を持たれているというのは理解しているのだろうが、その好意は男女間の恋愛ではなく友情の好意だと思い込んでいるのだろう。

 ……鈍いって罪だな。

 まぁ、俺が言えた義理じゃない言葉だが。

 

『そんなに……そんなにあのテンカワって男がいいのか』

『え? ジュン君? どうしたの?』

『ユリカ、僕は例え君に恨まれてもナデシコを止めるよ。さっきも言ったけど、ナデシコとミロンガ改はどうしても今の連合軍には必要なんだ。それをみすみす火星に向かって行かせる訳にはいかない』

『ジュン君! 何で分かってくれないの!?』

『……皆、攻撃開始だ』

 

 その言葉と共に、デルフィニウム部隊は一斉にミサイルを発射してくる。

 

『アクセルさん』

「分かってる」

 

 通信で艦長に促され、即座にジャマーを発動。

 ナデシコへと向かってきたミサイルの殆どは、あらぬ方向へと逸れていく。

 ……そう、殆どは、だ。

 幾ら技術班の手が入っているミロンガ改であっても、ジャマーの及ぶ範囲は基本的にミロンガ改の周辺。

 これは当然だろう。もしその効果範囲が極端に広くなってしまえば、下手をすると味方のミサイル攻撃にもジャマーの効果が発揮する可能性があるのだから。

 その辺を考えると、可能であってもジャマーの効果範囲はミロンガ改の周辺だけにしておくべきであり、つまりナデシコ全体をジャマーの効果範囲に入れるのは無理だという事になる。

 そうなると、ジャマーの効果範囲外にあるミサイルは手動で何とかするしかない訳だ。

 ……まさかデルフィニウム部隊がこんなに出てくるとは思わなかっただけに、さすがにこれは予想外。

 

『アクセル、一気にデルフィニウム部隊から距離を取るから、そのつもりでいてね!』

 

 ハルカからの言葉に頷きを返す。

 ちっ、こんな事ならディストーションフィールドの外に出ていれば良かったな。

 もっとも、そうなってしまえばジャマーの効果範囲が偏っていた以上、今更言ってもしょうがないが。

 それでもナデシコへと向かって放たれるミサイルは、かなりの数がジャマーによって無効化されている。

 そして徐々にナデシコの速度は上がり始め、デルフィニウム部隊を引き連れたまま第3防衛ラインを突破していく。

 デルフィニウム部隊を振り切れる程の加速は出せないが、それでも一旦距離を取ったおかげでミサイル攻撃は後方からのみとなる。

 どこか一方向からの攻撃となれば、俺にとっても防ぐのはやりやすい。

 そうして距離を取りながら上へ、上へと向かい……その際にも後ろから連続して放たれるミサイルは俺がナデシコの後部へと移動してジャマーを使い、逸らしていく。

 一方向からだけの攻撃だけに今は何とかなっているが、このままだとやばいな。

 このままデルフィニウム部隊を引き連れて戦闘衛星へと向かえば、前後からミサイルで攻撃される可能性が高い。

 だとすれば、それを避ける為には……デルフィニウム部隊を何とかするしかない、か。

 視線をテンカワのエステバリスへと向けるが、本職のパイロットな訳でもないテンカワを連れて行く訳にはいかないだろう。

 テンカワはエステバリスを操縦出来るが、その技量は決して高い訳ではない。

 まぁ、IFSを持っていても、元々は火星で暮らしていた一般人なんだから当然だろう。

 俺は性格的に合わないが、純粋な技量という意味ではきちんと訓練を受けているヤマダの方が上の筈だ。

 ……もっとも、ヤマダの場合は独断専行しやすいってのは、チューリップとの戦いの時の件を考えれば明らかだが。

 ともあれ、この件にテンカワを引き連れていく訳にはいかない以上、俺が全てをやるしかない。

 今のうちであれば、まだ何とか余裕はある……筈だ。

 

「ブリッジ、聞こえるか?」

『はい、アクセルさん。聞こえてますけど、どうしましたか?』

「このままバリア衛星をハッキングする為に移動していくと、背後のデルフィニウム部隊と前方の戦闘衛星からのミサイルで挟み撃ちだ。それを避ける為には、今のうちに後ろから追ってきているデルフィニウム部隊の数を減らす必要がある。かと言って、テンカワをこの場で出すのは技量的に問題がある。そこで俺が出撃したいんだが、第2防衛ラインに接触するまでの余裕はどのくらいある?」

『ちょっと、アクセル! 連合軍に被害を出さないようにしてって言ったでしょ!?』

 

 エリナが映像モニタから顔を出してそう告げる。

 まぁ、ネルガルの立場としてはそう言うしかないんだろうが……

 

「安心しろ。デルフィニウムの機体には損傷を与えるかもしれないが、パイロットには怪我をさせないようにする」

『……それは、出来るの?』

「俺の技量はもう知ってるんだろ? サセボシティを襲ってきた木星蜥蜴を全て撃破して、ミロンガ改にダメージを受けないだけの実力を持ってるんだぞ? 任せろよ、エリナ。お前は俺が必ず守ってみせるから」

『なっ、ちょっ、あんたいきなり何言ってるの!』

 

 何故か頬を真っ赤に染めながら叫ぶエリナ。何だ? 何か変なことを言ったか? いや、ともあれ今はそんなことをしてる場合じゃないか。

 

「とにかく、デルフィニウムには被害を与えるけど、パイロットは殺さない。この状況だ、機体が損傷すればさっさと戻るだろう。それでこっちを追ってきている奴の数を減らしてくる。艦長?」

 

 俺のやりたい事、やるべき事を告げ、艦長の返事を待つ。

 まぁ、実際この高度で機体に被害を受けても普通に追ってくるような奴はほぼ間違いなく死んでしまうだろうが……さすがにそれについては責任を持てない。

 自殺志願者や、自分の実力を必要以上に高く見積もっている奴を助けろという方が無理だろうし。

 それでも、普通なら……というか、デルフィニウム部隊を率いているジュンの性格を考えれば、機体にダメージを受ければすぐに撤退させる筈だ。……普通なら。

 艦長とテンカワの件で頭に血が上っていたりすれば、もしかしたらもしかするかもしれないけど。

 

『……わかりました。アクセルさんの実力を信じます』

 

 へぇ。普段の天然とは違って、即断即決が出来るってのはいいな。

 なかなかに判断力もあるし、その選択も間違ってはいない。

 ……その分、普段のテンカワと絡んでいる時のやり取りは色々と悲惨な感じだが。

 

「了解。じゃあ、俺がディストーションフィールドから抜け出る数秒でいいから消してくれ。それで、戦闘可能時間は?」

『約4分です』

 

 ルリの通信。

 俺をそんなに好んでいないらしいルリだったが、それでもこうしてきちんと仕事をしてくれるというのは助かる。

 

「分かった、4分だな」

『約4分、です。軍事衛星がいつミサイルを撃ってくるかは分からないので、出来るだけ早く戻ってきて下さい』

『そういう事。頼りにしてるわよ?』

 

 ルリとハルカの言葉に頷き、機体をナデシコの甲板上から浮かび上がらせる。

 

「テンカワ、こっちは任せる」

『え? ああ、うん。何をやれるか分からないけど、それでも精一杯頑張ってみるよ』

 

 テンカワの言葉に、若干の驚き。

 まさかこんな前向きな言葉が返ってくるとは、思ってもみなかった。

 もしかして、これもエリナにいいところを見せたいからか?

 まぁ、どっちでもいいけど。

 そうして俺はミロンガ改をナデシコの後方へと移動させる。

 

『今です』

 

 タイミングを合わせて告げてきたルリの言葉に従い、そのままディストーションフィールドへとミロンガ改を突っ込ませ……あわや衝突するかと思った瞬間ディストーションフィールドが消える。

 そしてディストーションフィールドが消えた瞬間に俺はナデシコの外へと向かい、次の瞬間には再びディストーションフィールドが復活した。

 さっきの通信から考えると、恐らくルリが調整をしたんだろう。いい腕をしている。

 ともあれ、ディストーションフィールドの外に出たミロンガ改は、当然背後から追ってきているデルフィニウム部隊の注目の的となった。

 そもそも、向こうが拿捕したいのがナデシコとミロンガ改なんだから、実はこの展開は連合軍にとってもありがたいものがあるんだろう。……唯一にして最大の誤算は、俺の強さだろうな。

 自慢じゃないが、俺の操縦技術は色んな意味で人間離れしている。他にも物理攻撃無効の効果もあって、普通のパイロットならどうしても機体を操縦する上で感じるGも無視出来るし。いや、これだと自慢か。

 

「って事で、取りあえず食らえ!」

 

 と叫びながら、先制攻撃としてデルフィニウムの足目掛けてビームマシンガンを放つ。

 集団になってきたデルフィニウム部隊だったが、今回はそれが仇となった。

 散開するのに失敗した数機のデルフィニウムが、ビーム弾によって足を破壊されたのだ。

 さて、どうなる? 機体に損傷を受けてそのままか、それとも帰還させるか……ジュンの頭に血が上っているかどうかを確認する意味での試金石だったが、次の瞬間には損傷を受けたデルフィニウム数機は戦線を離脱していく。

 よし。まだ十分に冷静だ。

 そんな風に思ったのが向こうに分かった訳ではないだろうが、デルフィニウム部隊から大量のミサイルが発射される。

 そのミサイルは当然ミロンガ改を狙ってくるが……おい、破壊してしまっていいのか? 鹵獲を狙ってるんじゃなかったのか?

 まぁ、どのみちミサイルは無意味だけど。

 即座にビームマシンガンを撃つ手はそのままに、開いている左手で機体の操作をし、ジャマーを起動させる。

 この辺、いちいち手で操縦しなきゃいけないのが面倒臭い。

 ニーズヘッグならT-LINKシステムを使って操作が出来るんだけど。

 ともあれ、こっちに向かってきたミサイル全てをあらぬ方向へと逸らし、ビームマシンガンで撫で切り――撫で撃ち?――にする。

 放たれたビーム弾が、次々にデルフィニウムに損傷を与えていき、損傷を受けた機体は次々に戦線を離脱していく。

 戦闘可能な時間は……残り約3分。

 この短時間で、敵を全滅させるのはミロンガ改の性能であれば余裕だ。

 ただ、全滅ではなく撃破しないで撤退に追い込むというのは、より高い技量が必要になる。

 それでも俺なら、そのくらいは全く問題なく出来る筈。

 そうして考えながら、事実次々にデルフィニウムを撃破していき……2分が経った頃には残りのデルフィニウムは3機。……3機?

 あれ? 何だ? 俺の見間違いじゃなければ、デルフィニウムの1機にテンカワのエステバリスがしがみついているように見えるんだが……気のせいじゃない、よな?

 残り3機のうち、2機のデルフィニウムにビームマシンガンで損傷を与え、そう思うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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