転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1286話

 ハルカやエリナとの一件があった日から、数日。

 いよいよナデシコの出航準備も整ってきており、日数的にも残り数日で今年が終わるといった具合だ。

 ……俺の場合、Fate世界に行った件で色々と日数の感覚がおかしくなっているから、その辺は詳しく考えない事にした。

 そもそも、時間が流れるのに一喜一憂するのは年齢がある者、時の流れの内側にいる者達だ。

 それに比べると時の流れの外にいる俺はその辺を全く気にしなくてもいいから、もう年末だと言われても、はいそうですかと答える事が出来る。

 で、ともあれそういう理由で普通に日々を過ごしていた俺だったが、何もかもが平常通りかと言えばそうではない。

 まず、エリナ。

 本来は俺のフォロー役という事でネルガルから送られてきた人材だったが、クリスマスの日に俺に抱かれてしまった事で非常にギクシャクとした空気になっている。

 ここ数日の会話も、義務的なものだけという有様。

 この前も通路で偶然出会ったら、顔を真っ赤にして逃げ出してしまった。

 以前は色仕掛けでもする為にエリナのような女を送ってきたんじゃないのか? とか思ってたが、思い切り間違いだった訳だ。

 寧ろ、向こうが俺に色仕掛けされた格好になっているような気が……

 そんな訳で、周囲が俺を見る目は微妙に好奇心に満ちたものになっている。

 そもそも、ナデシコという限られた空間の中だ。どうしても噂話とかに興味を持つ者は多いのだろう。

 勿論整備班の男を中心にして、エリナとハルカという美人2人に手を出しているような――実際出したんだけど、記憶に残っていない――俺は嫉妬の対象なんだろう。

 以前は艦長との関係でテンカワに厳しい視線が向けられていたのだが、今は俺の方にそういう視線が向けられる事も多い。

 ……ちなみに、そういう視線を向けられているのは俺だけじゃない。何だかんだといつの間にかメグミと仲良くなっているヤマダもその手の視線を向けられている。

 出来れば、これでヤマダが落ち着いて俺に対抗心を向けてこなければいいんだが。

 いや、対抗心を向けるのはいい。実際リョーコも俺に対抗心を向けているのだから。

 だが、ヤマダが俺に向けている対抗心は度が強すぎる。

 純粋な対抗心と言うよりは自己顕示欲に近い。

 その辺がメグミと仲良くなった事で上手い具合に収まってくれると助かるし、その性格と技量からいつの間にかエステバリス隊の指揮を執る形になっているリョーコもチームワークが乱れなくて助かる。そしてナデシコ全体としても、戦力が有効に使われる事によってより多くの木星蜥蜴に対抗出来るようになる。

 ともあれ、ヤマダにも男達から嫉妬の視線が向けられているが、ウリバタケの方も部下から怪しげに見られている。

 ヒカルと仲がいいのを勘ぐられているらしい。

 本当はどうなっているのか分からないが、個人的には単純に趣味的な感じで仲がいいだけなんじゃないかと思ってるんだけどな。

 まぁ、だからって俺に向けられる視線が緩くなる訳じゃないんだが。

 ちなみに俺がそういう視線を向けられている理由の、両手に花のもう片方の花であるハルカはと言えば……こっちは寧ろ積極的に俺に話し掛けてきている。

 クリスマスパーティの翌日に言ってたように、きちんと俺がハルカに好意を抱く……それも愛情的な意味での好意を抱かせる為なんだろう。

 勿論俺も男だ。ハルカのような美人に言い寄られて嬉しくない訳ががない。

 ただ、こうも行く先々で女と深い関係になるっていうのは正直どうなんだ? と思わないでもない訳で……それが原因で一線を――肉体的な意味ではなく――超えられないでいる。

 しかもそんなハルカや俺にプロスペクターが男女間の付き合いは云々と言ってくるんだよな。

 その点は、一時期艦の中が荒れそうになった原因でもある。

 ……最終的には何だかんだと収まったんだが。

 ちなみに、それを収めた功労者曰く……『そういうのは人目のないところでやればいいんじゃないですか?』との事だ。

 相変わらずの無表情だが、聞き慣れた口癖の『バカばっか』が出たのを考えると、ルリに取ってもあの状況は面白くなかったのだろう。

 

「アクセル、次だ次! おら、もう1回やるぞ!」

 

 半ば現実逃避染みた考えごとをしていたが、その声で我に返ってしまう。

 視線の先にいるのは、運動着に身を包んだリョーコ。

 荒い息を吐いているが、それでもまだ目の闘志は消えていない。

 ただし、立っているのは既にリョーコだけであり、パイロット3人娘の他2人や、ヤマダ、テンカワといった者達は畳の上でピクリとも動けなくなって倒れ伏している。

 ここは、サツキミドリ2号にある運動場の1つ。

 今日はパイロット全員が特にやるべき仕事はなく、こうして生身での戦闘訓練をしていたのだが、結果はご覧の通りだ。

 ちなみに当然ナデシコにも生身の訓練をする為の場所はあるのだが、どうしても戦艦という限られたスペースの中となると場所は狭くなる。

 それにサツキミドリ2号を出発すれば嫌でもその訓練室を使わなければならなくなるのだから、サツキミドリ2号にいる間はもっと広い場所で訓練をしたいと思うのも分からないではない。

 

「分かった、来い」

「行くぞ!」

 

 その言葉と共にリョーコが俺との距離を縮めてくる。

 走った速度を活かして真っ直ぐと俺の顔面に拳を振るうリョーコ。

 その動きを命中する直前に顔を数cm動かすだけで回避する。

 勿論リョーコも自分の素直な一撃が当たるとは思わなかったのだろう。寧ろ外した拳の勢いを利用して、次の一撃へと繋げる。

 そのまま蹴りへと攻撃を繋げ、俺の足を止めるべく太股へとローキックを放ってくるが、その一撃も俺が素早く後ろへと後退した事により回避する。

 攻撃を回避しながら感じるのは、エステバリスのパイロットの中で最も生身の戦いに才能があるのがリョーコだという事だ。

 それだけではなく、ヒカルやイズミもそれなりに鍛えているし、ヤマダも一般人に比べると腕は上だろう。テンカワは……まぁ、コックなんだから仕方がないのかもしれないが。

 次々に放たれるリョーコの攻撃を回避しながら考える。

 そもそも、IFSというのはパイロットのイメージで機体を動かすという仕組みだ。

 それだけであればT-LINKシステムに似ていなくもないんだが……当然そういうシステムである以上、基本的にパイロット個人の技量がダイレクトに操縦に影響する。

 勿論イメージという事で想像……もしくは妄想する力が高ければそっちはそっちでいいんだろうが、そこまでの想像力や妄想力を持っている者はそれ程多くはない。

 やはり無難なのは、自分の身体を鍛えてそれをイメージするという事だろう。

 生身での戦いが強いのはIFS操縦に絶対的に必要……という訳でもないのだが、有利なのは確実だった。

 特に射撃はともかく近接攻撃を得意とするパイロットにとっては、半ば必須事項に近いとも言えるだろう。

 そんな風に考えていると、連続して攻撃を外し続けていたリョーコが後ろへと下がって大きく息を吐く。

 相手に攻撃を回避されるというのは、想像以上に体力を消費する。

 ましてやリョーコが相対しているのは俺だ。

 1発も攻撃が当たる事はなく、ただひたすらに空振りしまくっていたのだ。

 いや。寧ろここまで体力が保った事の方が驚きか。

 今日の訓練は既に2時間近く行われている。

 その2時間で、全員が俺に攻撃を1発も当てる事が出来ずに体力を消耗していたのだから。

 

「ほら、行くぞ。……耐えて見せろ」

「っ!?」

 

 俺の口から出た一言に、リョーコは咄嗟に防御の構えを取る。

 そこに向かって突き出されたのは、拳。

 勿論全力な訳じゃなく、1割も力を込めてはいない。

 というか2割、3割と力を込めれば、鍛えていても人間なら普通に死んでしまう。

 そんな風に手加減をした一撃だったが、その速度と威力はリョーコにとっても完全に想定外のものだったのだろう。防御の隙間を縫い、リョーコが着ているプロテクターへと命中する。

 

「うおっ!」

 

 そんな声を上げつつ吹き飛ぶリョーコ。

 それでも身体のバランスを崩すことはなく、立ったままでこっちの攻撃を受けたというのは普通に驚くべき事だった。

 反射神経と運動神経が高いレベルでバランス良く纏まっているんだろう。

 ……もっとも、それでも立っているのが精一杯という状態であり、足がガクガクとして動けない状況になっていたが。

 

「終わりだな。取りあえず少し休憩だ」

「待て、アクセル! あたしはまだやれる!」

「足を震わせながら言っても説得力がないぞ。30分くらい休憩したらまた手合わせをしてやるから、今は少し休め。それと、次はお前達全員と俺で戦う」

「なっ!?」

 

 俺の口から出た言葉が予想外だったのか、リョーコの口から驚愕の声が上がる。

 まぁ、テンカワはともかくとして、他の4人はある程度訓練を受けた者達だ。

 その4人を相手にして俺が1人で戦うと言ってるのだから、舐められたと考えても当然だろう。

 

「まっ!」

「何か言いたいのなら、実力で示せ。そもそも、機体を使った模擬戦でもお前達全員で俺と戦ったのに全敗だっただろ? なら、生身でも大して変わらないだろうな」

 

 それだけを告げ、リョーコ達を運動場において出て行く。

 さて、これで発奮しないような奴等じゃないと思うが……限界を超えた、その先の限界。これからの戦いを思えば、その程度には達して貰わないとな。

 これがオズマとまでは言わないが、アルトやミハエル程度の技量を持っていればある程度安心出来るんだが……いや、高望みし過ぎか。

 今は一流の技量を持っているアルトやミハエルだが、あの2人だってバジュラ戦役で幾度となく死の淵を覗き、それでも生き残ってようやくあそこまでの技量を身につけたんだ。

 それを思えば、まだ木星蜥蜴とろくに戦闘もしていないこの状況でリョーコ達にそこまでの腕を期待するのは厳しいか。

 アルトやミハエルより一段落ちるルカ辺りなら可能か? ……まぁ、元々ルカはバックアップとかがメインだし、戦闘方法でもゴーストを使ってのものが多かったから、どうしても技量がアルトやミハエル達に追いつかなくてもしょうがないんだが。

 そんな風に考えていると、不意にこっちを見つめている視線に気が付く。

 少し離れた場所……誰だ?

 敵意はないようだが……

 そんな風に思いながら視線を感じる方へと向かって走り出す。

 

「きゃっ!」

 

 向こうもいきなり俺が近づいてきて驚いたのだろう。小さな悲鳴が上がり、その声で誰が俺を見ていたのかをすぐに理解し、溜息を吐きながら口を開く。

 

「エリナか、どうしたんだ? お前から俺に近づいてくるなんて珍しいな」

 

 クリスマスパーティの件があってからは、どことなく他人行儀になっていたエリナだったが、まさかこうして自分から近づいてくるとは思いも寄らなかった。

 そんな俺の驚きの言葉に、エリナは何かを言おうとして俺の目を見て……次の瞬間、急激に頬を赤く染めながら、口を開く。

 

「べ、別にあんたの事が気になったから見に来たわけじゃないんだからね!」

 

 そう告げ、走り去るエリナ。

 ……素晴らしい。典型的なツンデレだ。

 いや、そうじゃなくて。

 その口から出た内容はともかく、多分俺を心配して見に来たのだろう。で、結局は俺が近づいてきたので恥ずかしくなって逃げ出してしまったと。

 普段の凜々しい表情からは考えられない程に乙女だな。

 エリナがあんなだから、テンカワの俺に対する態度も若干厳しくなってるんだろうが。

 恋か愛か、はたまた単なる憧れかは別として、自分が好意を持っている相手が特定の男に対して今のような態度を取っていれば、それは当然テンカワにしてみれば面白くないだろうし。

 今は運動場の中に行くのは少し気まずいので、休憩時間が終わるまでは少し外でも散歩して回るか。

 そう考え、俺はその場を後にする。

 

 

 

 

 

「よし、準備は出来たようだな。じゃあ、これが今日最後の手合わせだ。お前達の本気を見せろ」

 

 休憩の時間が終わって運動場に戻り、すっかり体力と気力を取り戻した5人を相手にそう告げる。

 まぁ、この短時間だと気力はともかく体力の完全回復までは無理だろうが。

 

「よしっ、行くぞ野郎共! アクセルに目に物見せてやるんだ!」

 

 リョーコの言葉を合図に、全員が一斉に向かってくる。

 俺を包囲するように動き、ヤマダとテンカワが回り込むようにしながら動く。

 ……へぇ、ヤマダが突出しないできちんと皆と連携して動いているな。

 この動きを見る事が出来ただけでも、この手合わせを考えた甲斐があった。

 ただ、その代わりテンカワの方が若干単独で突出しがちなのは……エリナの件があるからだろうな。

 そんな風に考えながら俺の目を引く為にヤマダが俺へと向かって拳を放つ。

 その動きを回避し、プロテクターで覆われている胴体へとカウンターを繰り出しながら、そろそろサツキミドリ2号を出発する事になるんだなと、しみじみ思うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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