転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1295話

「さて、ようやくこれで火星に到着した訳ですが……」

 

 そう告げたのは、プロスペクター。

 火星に降下しようとして地表で待ち受けていた木星蜥蜴をグラビティブラストで一掃して火星に降下したナデシコで、現在主要メンバーがブリッジに集まってこれからの事を話し合っていた。

 主要メンバー……ブリッジでこのブリーフィングを行っている以上、ブリッジメンバーは全員参加しており、プロスペクターやゴートといったネルガル側の人間、そして実質的にこのナデシコの中でも最高権力者であるエリナ、それと俺を入れてパイロットが6人、整備班からはウリバタケといったところか。

 

「で、これからどうするんだ?」

「まずはネルガルの研究所へ向かおうかと。……それで問題は戦力をどうやって振り分けるかですが」

 

 チラリとプロスペクターの視線が俺の方へと向けられる。

 何を言いたいのかは分かる。現在ナデシコにある、エステバリスとミロンガ改という2つの戦力についてだろう。

 特にミロンガ改はエステバリス5機掛かりでも勝てないという、凶悪な性能を持っている。

 出来ればそのネルガルの研究所の護衛としてミロンガ改を連れて行きたいんだろうが……

 

「ミロンガ改だと大きいから目立つんじゃない?」

 

 そう声を上げたのは、ハルカ。

 その言葉に、他の者達も殆どが頷く。

 そうなんだよな。ミロンガ改はエステバリスに比べれば目立つ。今までの他の世界だと、人型機動兵器は20m前後の物が多かった。唯一の例外がギアス世界のKMFか。

 ああ、それとネギま世界とかFate世界とか門世界とかはそもそも人型機動兵器がなかったな。……全然唯一じゃなくなったけど、まぁ、人型機動兵器があるという世界前提ではそんな感じだった。

 とにかく、この世界ではミロンガ改は非常に目立つ。

 火星を占領している木星蜥蜴だって、当然普段から見回りはしているだろうし、ナデシコが火星に降下してきたのなら尚更見張りは強化してるだろう。

 ……もっとも、実はその辺をどうにかする方法はある。

 ミロンガ改にはASRSが搭載されているんだから、それを使えば木星蜥蜴に見つかるような事はない。

 ただ、ASRSは今のところまだこの世界で使ってないから、ネルガルにも知られてない技術なんだよな。それをここで使ってもいいものかどうか……

 

「ですがハルカさん。エステバリスはナデシコから離れるとなると、バッテリーを持っていかなければなりません。更に、バッテリーを使っても長時間の行動は出来ない訳で……」

「おいおい、プロスさんよ。ネルガルの研究所に向かうっつったって、何時間もぶっ続けてエステバリスを動かさなきゃいけない訳じゃねえんだろ? そもそも護衛って事は、あくまでも念の為って訳だ。その辺を考えれば、やっぱり一番危険度が高いのはナデシコだろ? 最大戦力のミロンガ改はナデシコに残しといた方がいいと思うんだけどよ」

 

 ウリバタケの言葉に、それを聞いていた何人かが頷く。

 だがそんな者達とは逆に、ネルガル側の人員のプロスペクター、ゴート、そしてエリナは苦い表情を浮かべていた。

 何だ? まるで俺をその研究所とやらに連れて行く必要があるみたいに考えているように見えるが。

 研究所の方に何かあるのか?

 

「あのー……」

 

 ミロンガ改をどこに配備するのかを考えていたブリッジの中で、唐突に声を上げたのはテンカワだった。

 どこか微妙に申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、それでもこれだけは絶対に主張したいと声を張り上げる。

 

「その、出来ればユートピアコロニーにちょっと行きたいんすけど」

「ユートピアコロニー? アキトの故郷の?」

 

 ユートピアコロニーという名前に聞き覚えがあったのか、艦長がテンカワへとそう尋ねる。

 そうか、そう言えばテンカワと艦長は火星で家が隣同士だったって話だな。

 だとすれば、艦長もそのユートピアコロニーってところに住んでた訳で、名前を知ってるのも当然か。

 ん? 俺もどこかでその名前を見たか聞いたかした覚えが……記憶を辿っていると、その答えに辿り着く前にプロスペクターが口を開く。

 

「ユートピアコロニーですか。あそこにはもう何も……」

「分かってるっす。けど……それでもあの場所は俺の故郷だから」

「くぅーっ! 分かる、分かるぞテンカワ! 自分の故郷ってのは大事だよな。その故郷を見て木星蜥蜴と戦う覚悟を決める。これぞ男だ」

「ちょっと、ガイさん。今は余計な口を挟まないの。ほら、黙って成り行きを見守りましょ」

 

 ヤマダがメグミに押さえつけられている光景は、ここ最近良く見る光景だ。

 ……そう言えば、ネルガルとの契約書の件ってどうなったんだろうな。

 いつの間にか思い切りスルーされてるんだが。

 ウリバタケ辺りが、また後で思い出して余計な騒動にならないといいんだけど。

 

「良かろう。……行ってきなさい。故郷を見る権利というのは、誰にでもあるものだ」

 

 不意にそんな風に声を上げたのは、フクベ提督。

 いつもは黙って眠っているか、お茶を飲んでいるかをしてるのに、珍しく自分の意見を……あ。フクベ提督? それってもしかして……

 ユートピアコロニー、フクベ提督、木星蜥蜴、チューリップ。それらの単語が俺の頭の中で1つに繋がっていく。

 確か木星蜥蜴が火星に攻めてきた時の戦いで、フクベ提督が自分の乗艦をチューリップにぶつけて火星に落としたんじゃなかったか?

 で、そのチューリップがユートピアコロニーに落ちたとか何とか、この世界について図書館で調べた時に新聞記事で見た記憶があった。

 テンカワの故郷がユートピアコロニーって事は……もしかしてフクベ提督ってテンカワの仇だったりするんじゃないのか?

 そんな風に考えている間にも話は進み、最終的には俺がプロスペクターやエリナ、ゴート達と一緒に研究所へ、リョーコ、ヒカル、イズミの3人が本拠地であるナデシコを守り、テンカワだけだといざという時に危険だって事でヤマダと一緒にユートピアコロニーへと向かう事になる。

 ……当初研究所へ向かうのはリョーコ達だって話だったんだが、エリナやプロスペクター達によって押し切られた形だ。

 まぁ、今回ナデシコが火星へとやってきたのは、表向きの民間人を救助するというのはともかくとして、本音は研究所に残っているだろうデータとかが目的だった筈だ。

 その回収という意味では、ナデシコの最高戦力であるミロンガ改を持っていくのは決しておかしな話じゃない。

 それに、現在のナデシコ世界で唯一ネルガルだけが木星蜥蜴に対して有効な兵器を生み出す事が出来るのは事実。

 研究のデータやら何やらを回収すれば、より木星蜥蜴に対して有効な兵器を開発出来ると考えると、研究所を最優先するのは当然だろう。

 ……まぁ、木星蜥蜴もディストーションフィールドを装備するようになって、ナデシコのグラビティブラストで一掃って訳にはいかなくなったが。

 エリナは頬を赤く染めて照れくさそうにしていたが、それでも仕事に私情を挟むような真似はしないらしい。

 

「では、そういう事で。皆、すぐに準備をお願いします。アクセルさん、出発は30分後ですので、そちらも準備をよろしくお願いしますね」

 

 プロスペクターの言葉で、皆がそれぞれ自分のやるべき事を行う。

 早速準備をするべくブリッジから出ようとすると、ハルカが近づいてくる。

 

「アクセル、気をつけてね」

「俺が木星蜥蜴如きにやられると思うか? 俺の力は知ってるだろ? 木星蜥蜴の新型だって、あっさりと倒したんだぞ?」

「それでも、よ。アクセルの強さは知ってるけど、私がアクセルの事を心配するのは当然でしょ?」

 

 その言葉通りに当然といった表情を浮かべて告げてくるハルカに。

 当然ブリッジでそんな真似をしていれば、まだ残っていた者達の視線を集める訳で……

 

「ちょっとアクセル。これから研究所に向かうのに、準備が必要だっていうのは分かってるでしょ。ここでハルカとイチャついてる時間があったら、早く準備してちょうだい」

 

 そこに残っていたエリナが、きつい視線を俺の方へと向けてくる。

 

「あら、別に恋人同士の時間を少しくらいくれてもいいじゃない?」

「だ、誰がアクセルの恋人ですって!? そういうのは、きちんと相手の了承を貰ってから名乗れる事でしょ!」

「そうね。……でも、何でエリナがそこまで怒ってるのかしら? 何かアクセルに思うところでもあるとか?」

「そっ、それは……」

 

 エリナが言葉を詰まらせる。

 ……そんな状況を、面白そうに見ていたり、不愉快そうに見ていたり、呆れたように見ていたりする者がおり、このままではいらない騒動に巻き込まれるだろうと判断した俺は、気配遮断を使用してその場を後にする。

 ナデシコは本当に騒動には困らない艦だよな。

 だからって、それに巻き込まれるのはごめんだが。

 ブリッジを出た俺の耳に、中から俺の名前を呼んでいる誰かさん達の声が聞こえてきたが、きっと気のせいだったのだろう。空耳だ空耳。うん、きっと間違いなく。

 そんな風に考え、気配遮断を解除して格納庫へと向かう。

 幸い……幸い? まぁ、取りあえず知っている奴には会う事がないまま通路を歩いていると、コミュニケに着信があった。

 誰からの着信なのかは分かっていたが、もしかして……本当に、万が一、億が一にも何かの業務連絡だったりすれば無視するのは不味いので、通信を受けるが……

 

『ちょっとアクセル! 貴方ねぇ、ああいう時に自分だけさっさと逃げ出すのって卑怯じゃない?』

『そうよ。争いの張本人でしょ? なのに、何で自分だけさっさといなくなるのよ。おかげで、ブリッジに残っていた人の視線が私達だけに向かってきたじゃない』

 

 2つの映像スクリーンが映し出され、丁度俺の顔を挟み込むようにしているのは、予想通りにハルカとエリナの2人だった。

 ……こうなるだろうとは思ってたんだけどな。万が一を考えた俺が馬鹿だったか。

 微妙に反省しながらも言い訳を探し、丁度いい言い訳があった事に気が付く。

 

「研究所に出発する準備をしろって話だっただろ。特に俺の場合は機体が格納庫じゃなくてコンテナにある。だから、余計に準備に時間が掛かるんだよ」

 

 それは、ある意味で正論。

 だからこそ、ハルカとエリナもそれ以上は何も言わずに不満そうにしながらも黙り込む。

 

『戻ってきたら、しっかりと話をしましょうね。この3人で。いい、エリナ。アクセルと一緒に行動するからって、妙な抜け駆けはなしにしてよ?』

『ちょっ、誰がよ! べ、別に私はアクセルの事なんかなんとも……』

『あら? じゃあ、何でそんなに頬が赤くなってるのかしら? 美人な顔が台なしよ?』

『そ、それは……』

 

 また、すぐにそんなやり取りが始まってしまったが。

 ともあれ、何とか話を先送りにする事には成功した。

 コミュニケを切って、格納庫へと向かいながら考える。

 そろそろハルカには俺の事を話した方がいいのかもしれないな。好奇心や興味が強いとは言っても、ハルカが俺に対して強い好意を抱いているのは事実だ。

 そうである以上、俺もしっかりとその気持ちに応える必要がある。

 例えば、俺に恋人が他に9人、別れ別れになった凛と綾子を入れれば11人いるという事も含めてだ。

 そうなれば、当然俺が他の世界からの住人であるというのも教える必要が出てくるかもしれないが……そのせいで、エリナの方にはその辺を教えるかどうか迷うんだよな。

 エリナが俺に好意を抱いているというのは、恐らく間違いない。……うん、多分。

 実はこれが女の駆け引きだったりするかもしれないが。

 ともあれ、そんなエリナの好意があるというのはともかく、ネルガルという会社に対する忠誠心? ……いや、忠誠心というのはちょっと違うか。ともあれ、ネルガルに対する強い思いがあるのも理解している。

 そんなエリナに俺の事を……シャドウミラーの事を言ってしまえばどうなるのか。

 下手をすれば、ナデシコ世界VSシャドウミラーという形にすらなりかねない。

 ……まぁ、それでもシャドウミラーが負けるとは思わないが、戦争状態になってしまえば面倒な事になるのは間違いない。

 戦争ってのは始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しいからな。

 だとすれば、この世界では木星蜥蜴を合わせて三つ巴の戦いになってしまう。

 いや、ネルガルがそこまで馬鹿な真似をするかと言われれば、否か?

 寧ろ、こっちを取り込むために接触してくる可能性が高いな。

 

「おうアクセル。もう行くのか?」

 

 俺よりも先にブリッジを出ていたおかげで、ハルカとエリナのやり取りを見ていないウリバタケがそう尋ねてくる。

 女好きなウリバタケだけに、もしブリッジに残っていれば思い切り俺に対して嫉妬を向けていただろう。

 その辺はラッキーだったな。

 

「ああ、木星蜥蜴が妙な真似をしないように、先に出撃しておきたい」

 

 短く言葉を交わし、そのまま格納庫に設置された扉からコンテナへと向かい、ミロンガ改へと乗り込んで出撃するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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