転生とらぶる   作:青竹(移住)

1365 / 4305
1300話

 ナデシコを半包囲していた木星蜥蜴の戦力は、完全に消え去っていた。今ここで見る事が出来るのは、チューリップ、大型戦艦、カトンボ、バッタといった木星蜥蜴の無人兵器の残骸のみ。

 そして何より目に付くのは、やはりスプーンでくり抜いたような跡を示す火星の大地だろう。

 フレイヤという、ニーズヘッグの装備している武器の中でも特に広範囲に攻撃可能な物を使った痕跡だ。

 地上に落ちていた木星蜥蜴の無人兵器の破片も、その多くがフレイヤの跡地へと集まっている。……いや、フレイヤによる二次被害の空気の流入により強制的に集められたと表現した方が正しいか。

 まぁ、悪い事ばかりじゃない。地上に散らばっていた木星蜥蜴の残骸のうち、小さな部品の類は全てそこに集まっているのだから、掃除をするのには便利だろう。

 チューリップ、大型戦艦辺りは損傷の少ない奴を確保しておきたいところだけど、どうだろうな。

 バッタとカトンボは結構出てくるから、ここで無理に入手しなくてもいいだろうが。

 ともあれ、俺はニーズヘッグの中でT-LINKシステムによる周囲の探索を行い、この近辺に木星蜥蜴の姿が完全に消滅している事を確認すると、ナデシコへと通信を送る。

 

「ナデシコ、聞こえているな。見ての通り木星蜥蜴は全て滅ぼした。取りあえず……そうだな、これからの事を話したいから、そっちに戻ろうと思うが、構わないか?」

 

 本来であれば、そう尋ねる必要はないだろう。俺の現在の所属はナデシコなのだから。

 だが、俺の本性……というのはちょっと違うか。本来の力? ともかくニーズヘッグを見せてしまった以上、ナデシコ側で拒絶反応を起こした者がいたとしてもおかしくはない。

 そう思ってたんだが……

 

『はい、お待ちしています』

 

 まさか、艦長にこうもあっさり言われるとは思いもしなかった。

 拒絶反応を起こすどころか、普通に迎え入れるとは……

 

『ちょっ、ユリカ! 幾ら何でもそんな簡単に……アクセルがその、何て言うか……とんでもない存在なのは間違いないんだよ!?』

 

 ジュンの叫ぶ声が聞こえてくるが、こういうのが普通の反応だろう。

 こうして考えると、艦長って器が大きいんだな。……いや、元々テンカワを抜きにすればその能力が高いというのは認めてたんだから、驚きはないか。

 

『ちょっと、アクセルに助けて貰ったのにそういう事を言うのってどうなのよ?』

『それはそうだけど……でも……』

『だよねー。いっきなりブリッジに変な黒いのがぶわぁって出たと思ったら、アクセルの姿が消えて、でもって見た事のない機体が出て来て、木星蜥蜴を倒したんだし……』

『おい、ヒカル! 少し言い方を考えろよ!』

『あらあらー。リョーコってばムキになっちゃって。やっぱり気になる相手の事をこんな風に言われるのは嫌なのかなー?』

『べっ、別にあたしはそんな事……』

『くそう。アクセルめ。一人で美味しいところを持ってきやがって。にしても、あの機体、どこから見ても敵側の機体にしか見えないな』

『ちょっとガイさん。もう少し真剣に私達の将来の事を考えて下さい』

 

 うん、忌避感云々って感じじゃなかったな。

 さすがに能力は一流でも性格に問題ありのメンバーを集めたナデシコ。まさかこうもニーズヘッグに対して恐怖や畏怖を抱かない奴が多いとは思わなかった。

 特にフレイヤなんか、この世界だと全く見た事もないだろう武器だろうに。

 ……微妙に今の会話の中に色々な意味で危ない内容を話している某元声優とかいたが、そっちは俺に関係ないのでスルーさせて貰おう。

 

『アクセル、いいからさっさと戻ってきなさい。色々と説明して貰わないといけないんだから』

 

 エリナも多少驚きの余韻を残してはいるが、特に恐怖を感じた様子もなくそう告げる。

 驚きの余韻で薄らと頬が赤くなって目が潤んでいる辺り、微妙に色っぽいんだが。

 

「いいんだな?」

 

 念の為に尋ねると、エリナの表情に笑みが浮かぶ。

 

『当然でしょ。ここにいる皆が今までアクセルと接してきて、どんな性格をしているのかってのは分かってるのよ。実際、アクセルが私達に対して不利になる行動をするというのなら、今まで何度だって機会はあったでしょ? それに、今回その機体……ニーズヘッグとか言ったと思うけど、そのニーズヘッグを出したのだって、ユートピアコロニーの地下にいる人達を助ける為だったんでしょ。そんな人を相手に、何を怖がれって言うのよ』

「……馬鹿だな。普通なら俺みたいなイレギュラーとは出来るだけ関わり合いたくないと思うのが普通だろうに」

『そんな事はないわ。確かに普通ならそうかもしれない。けど、私やナデシコに乗ってる人達が普通だと思う?』

『あ、エリナさん酷い! 私は普通の恋する乙女ですよ!』

『黙らっしゃい。全く、いいところで邪魔しないの。……とにかく、いいからさっさと戻ってきて事情を説明してちょうだい』

 

 艦長を一言で斬って捨てたエリナだったが、最後に一瞬だけ俺の方へと視線を向けて口を開く。

 

『アクセルが誰でも、私にとってアクセルはアクセルだというのは変わらないわよ』

 

 その言葉には心からの思いが込められており、先程の艦長の言葉以上に俺を安堵させる。

 

「ああ、すぐにそっちに行く」

 

 そう告げると通信を切り、ニーズヘッグのコックピットから出る。

 恐らくナデシコのブリッジでもこっちの方をきちんと観測してるんだろうが、ここまで俺の異常さ……いや、規格外なところを見せつけた以上、隠す必要はないだろうと判断し、混沌精霊としての力で空を飛びながら地上へと降りる。

 そのままニーズヘッグの足へと触れ……次の瞬間には空間倉庫に収納され、その姿は消えていた。

 そうして影のゲートを使ってブリッジへと向かおうとするも、ふと懸念に気が付く。

 恐らく大丈夫だとは思うが、懸念に関してはきちんと解消しておいた方が俺の心的負担もなくていい筈だ。

 そう判断して影のゲートへと身を沈め、次に姿を現したのはブリッジ……ではなく、ミロンガ改を収めてあるコンテナの中。

 まぁ、ナデシコにいるメンバーが妙な真似をするとは思わないが、それでもナデシコにいる者達全てを完全に信用出来る訳ではない。

 もしかしたら何か妙な真似を企むような奴がいるかもしれないし、ネルガルがきちんとチェックをしているから大丈夫だとは思うが、他の会社や連合軍からのスパイが乗り込んでいる可能性も否定出来ない。

 だからこそ、俺の正体を露わにした事で妙な考えを起こしてミロンガ改を接収しようとする者がいないとも限らない訳で……まぁ、火星でミロンガ改を接収してもどうしようもないとは思うが、テンパった奴に限って後先考えずに行動を起こす。

 そんな訳で、ミロンガ改をこうして出しておく訳にもいかず、その装甲へと触れると、次の瞬間にはミロンガ改の姿はコンテナの中から消えていた。

 今の様子をナデシコのブリッジで確認しているのは間違いないだろうが、元々俺の機体なんだし文句は言わないだろう。

 

「さて、次はいよいよブリッジか」

 

 呟き、再び影のゲートを作り、そこへと身を沈めていく。

 そうして次に俺が姿を現したのは、今度こそナデシコのブリッジだった。

 

「きゃっ! え? ちょっ、アクセル!? どこから入って来たの!?」

 

 ブリッジにある影から唐突に姿を現した俺を見て、ハルカが驚きの声を上げる。

 まぁ、いつの間にかブリッジの中にいるのを見れば、そうも思うか。

 

「そんなに不思議がる必要もないだろ。俺が影のゲートを使って転移するのは、さっきも見ていた筈だし」

「そ、それはそうだけど……でも、急に姿を現したら驚くわよ!」

「悪いな。……さて、今のやり取りで十分注目を集めた事だし、どうする? ここで俺の件を話すか?」

 

 周囲に視線を巡らせると、ブリッジにいるナデシコの主要メンバーの視線が全て俺の方へと向けられている。

 驚くべきはこういう事に興味がなさそうなルリですら俺の方へと視線を向けている事か。

 ……いや、最近は以前と違って俺を毛嫌いしているというのがなくなってきてたし、そう考えればおかしな話でもないのか?

 

「その、アクセルさん。今回の件は私達だけではなく、ナデシコ全てに関わる事となります。出来れば、ここにいるメンバーだけではなく、ナデシコに乗っている全ての人へ聞かせたいのですが、構わないでしょうか?」

 

 そう言ってきたのは、プロスペクター。

 相変わらず腹の中を読ませないような表情を浮かべている。

 

「へぇ。意外だな。てっきり俺の事は情報を漏らさないようにするという手段を取ると思ってたけど」

「ははは。確かにアクセルさんの事を知っているのが私や他にも少数であればその選択はあったかもしれません。ですが、アクセルさんの件はこのブリッジにいる人は全て目にしてますし、ブリッジ以外でも先程の戦いを目視なり映像でなり見た人も多い筈。その全てを隠し通すなど、とてもとても……寧ろここで隠すような真似をすれば、それはナデシコに乗っているクルー全員がネルガルに対して不信を持つでしょう」

「なるほどな」

 

 そう来たか。

 いや、実際それは正しい。

 ナデシコの外の様子を見るのはブリッジ以外にも幾らでも手段はある。

 ニーズヘッグを見て、更にその鬼神の如き戦いを見た上で、あの機体についての詳細は不明ですとか言っても、誰も信じないだろう。

 それどころか、プロスペクターが口にしたようにナデシコのブリッジ……そして何よりネルガルに対する不信を招く危険もある。

 そう考えれば、一見無茶に見えるナデシコのクルー全てに俺の話を聞かせるというのも当然の結果なのだろう。

 事実、エリナやゴートといったネルガル側のメンバーがプロスペクターの意見に対して何も言わないのだから。

 

「分かった、そうしてくれ。俺もナデシコという艦には愛着があるからな。そのナデシコのクルーが四散するような光景は見たくない」

「ありがとうございます。……ルリさん、お願い出来ますかな?」

「はい」

 

 メグミじゃなくてルリなのか。いや、メグミはあくまでも通信担当だから、今回のようにナデシコ艦内に対してこちらの声を聞かせるというのはちょっと違うのか?

 

「ナデシコの皆さん、私はプロスペクターです。これから、先程まで行われていた戦闘についての説明を……そして、あの不明機に乗っていたアクセルさんの事情についての説明があるとの事ですので、アクセルさんの許可を貰ってこの映像は艦内全てに流しています。可能な限り作業を中断してこの映像を見て下さい」

 

 そう告げたプロスペクターが、俺の方へと視線を向けてくる。

 

「さて、どこからどう説明したらいいのか、少し迷うな。まさか、俺が生まれてからの全てを説明する訳にはいかないだろうし」

「ははは。出来れば私もそれは聞いてみたいところですが、いつまでもこうしている訳にもいきませんしね」

 

 どうやら話の進行はプロスペクターが行うらしい。

 いや、俺としても全員に一気に話し掛けられるよりは誰か1人に話される方がいいけどな。

 

「そうだな……なら、まずは俺の正体から説明しようか」

「正体?」

「ああ。このブリッジにいるメンバーは、さっきの戦闘が始まる前にちょっと言ったかもしれないが、その辺の説明からしていくのが手っ取り早いだろう」

「……シャドウミラー、とか言っていましたが?」

 

 確認を込めて尋ねてくるプロスペクター。

 ブリッジにいる他のメンバーもまた、俺の方へと意識を集中して……うん? 何だ? イネスが何か微妙に悔しそうな表情を浮かべてこっちを見てるんだが。

 顔立ちが整っているだけに、妙な艶がある。

 そんな風に考えていると、俺の隣にいるハルカや、少し離れた場所にいるエリナが責めるような視線を向けてくる。

 ……そう言えば、俺の正体を話すという事になれば、この2人との関係もしっかりとする必要があるんだよな。

 シャドウミラーの事を説明するとなれば、当然レモン達のような俺の恋人達についても説明する必要が出てくる。

 その辺を考えれば、ハルカやエリナがどんな反応をするのか……怖いような、楽しみなような、微妙な感じだ。

 

「アクセルさん? どうかしましたか?」

「ああ、いや、何でもない。どう説明すればいいのか順番を考えててな」

 

 プロスペクターの言葉にそう告げる。

 まさか、恋人の件で悩んでいたなんて言える筈もない。

 特に、この映像はナデシコの全てに流れているのだから。

 その上で、俺はナデシコの独り身の男にはかなり睨まれている。

 まぁ、ハルカやエリナといった美人2人を独占しているように見えるんだから、当然か。

 

「そうですか。では、お願いします」

「ああ。……まず俺の名前はアクセル・アルマー。これは間違いのない事実だ。所属国家はシャドウミラー。世界の狭間とでも呼ぶべき場所にあり、複数の異世界、平行世界といった世界と繋がりを持つ国の代表をやらせて貰っている」




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。