転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1306話

 オリンポス山にあるネルガルの研究所へと戻ってきたナデシコは、すぐに着陸して避難民を地上へと降ろす。

 いや、火星の生き残りを避難民と呼んでいいのかどうかは分からないが、取りあえず便宜上は避難民という事にしておく。

 ナデシコに乗りたくないというのと同様に……いや、それ以上にネルガルの研究所も好きにはなれなさそうだったらしく、苦々しげな表情や怒りの表情、悲しげな表情を浮かべている者が多い。

 一番穏当そうなのが嬉しさと悲しさが混じり合ったような微妙な表情だというのが、避難民がネルガルに対して抱いている感情を表している。

 もっとも、それでも自分達が助かる為にはこのネルガルの研究所を使わなければいけないというのが、より複雑な思いを抱かせているのだろうが。

 避難民の者達にとっては、ネルガルというのは火星が危険になったら自分達だけさっさと逃げ出してしまったような存在だ。

 いや、勿論それが悪い訳じゃないのは分かっているんだろうが、それでもやっぱり素直に頼るという事は出来ないんだろう。

 これは……やっぱりあの計画をきちんとした形にして進めた方がいいか?

 俺達にも避難民達にも利があるし。

 ただ、それをやってしまうと色々と面倒な事になるのは目に見えてるんだよな。

 悩む。けど、それが一番丸く収まる選択肢なのは事実。

 ……まぁ、連合軍にとっては許容出来ないだろうが。

 木星蜥蜴の方は無人機だから特にどうこう思ったりはしないだろうが、それでも無人機であるが故に敵が現れたと判断すれば攻撃するのに躊躇しない筈。

 

「アクセル、今後の件を説明したいから主要メンバーは集まって頂戴」

 

 食堂で紅茶を飲みながら考えていると、不意にそんな声が掛けられた。

 声の聞こえてきた方へと視線を向けると、そこにはエリナの姿。

 俺の部屋で話した通り、出来るだけ俺に抱かれる前のように接しようとしているようだが、寧ろそれを意識し過ぎているせいか薄らと頬が赤く染まっている。

 さすがにそれを指摘するような真似をする気はないので、お茶請け用に注文したチョコクッキーを口の中に放り込み、紅茶を飲む。

 

「分かった、すぐに行く。……にしても、随分と人が減った印象を受けるな」

 

 立ち上がりながらナデシコ食堂を見回すと、そこにいるのは数人のクルー程度。

 研究所に到着するまでは、避難民の多くがここにいたんだけどな。

 ネルガルも負い目がある為か、料理は無料で出されていたみたいだし。

 ……まぁ、それでもなくならない程度に食料は積んできてるんだろうが。

 そもそもスキャパレリプロジェクトは表向き火星に生き残った連中がいないか調査し、いれば助ける為というものだ。ネルガルの本音が研究所にあるデータの回収だとしても。

 そうである以上、連合軍辺りに突っ込まれないように食料は大量に積んでくる必要があったんだろう。

 もっとも、火星までの片道が2週間程度だからこそ大量の食料を積み込む事が出来たんだろうが。

 

「仕方ないわよ。向こうに取って私達は裏切り者に等しいんだから」

 

 エリナも避難民から自分達がどう思われているのかというのは知っているのだろう。

 それこそ会長秘書という立場にいるエリナだ。当然火星の意見とかはしっかりと調べてあるんだろうし。

 

「あいつ等、どうなると思う?」

 

 テーブルから立ち上がり、食器を片付ける場所に置いて、食堂から出ながらエリナに尋ねる。

 その問い掛けに返ってきたのは、小さく首を横に振るという行為だった。

 

「ナデシコに乗って地球に戻るのは嫌がっているし、このまま火星に残ってもジリ貧でしょ。頼みの綱のアクセルに亡命を希望しても断られた。そうなれば残るのは……恐らく火星に残って何とか隠れ住むというのを選択するでしょうね。幸いこの研究所にはシェルターが完備されているし」

 

 予想してたけど、やっぱり俺が亡命を断った事は知ってたか。

 どこから知ったのかというのは、聞くまでもないだろう。

 それこそコミュニケを使って盗聴していたのかもしれないし、オモイカネを使ってこっちの様子を探っていたのかもしれない。

 まぁ、その辺は元々予想通りの流れなので、何も言わないでおく。

 

「一応どうにかする方法はあるんだけどな。避難民が死なずに済んで、地球にも利益があって、ネルガルにも利益があるって方法が」

「……そんなに都合のいい方法があるの?」

「ある。ここに来る途中で考えていた方法がな。……ただ、その方法を取れば取ったで色々と面倒な事になるのは確実なんだよな」

「取りあえず聞かせて貰える?」

 

 通路を歩きながら、エリナが視線で話を促してくる。

 さて、どうするべきか。答えるか答えないか……いや、ここまで言ったんだから、もう答えた方がいいだろ。 

 どのみち俺だけではどうするか決められなかったんだし。

 エリナから何か意見を貰えればいいかもしれない。

 

「そこまで難しい話じゃない。今までにも何度か考えてたんだし。まず大前提として、俺達シャドウミラーは避難民を亡命者として受け入れるつもりはない」

「そうね」

 

 この辺は既に理解している為か、特に何をするでもなく頷きを返す。

 

「だからって避難民をこのまま見捨てるとなると寝覚めも悪いし、何よりシャドウミラーの評判にも関わってくる」

 

 ヴィンデルがいた頃のシャドウミラーであれば、特殊部隊や反乱軍としての性格が強かったから、自分達の利益にならない相手を見捨てても全く問題はなかった。

 そもそも、非難するような相手すらいなかったし。

 だが、今は違う。

 俺達シャドウミラーは特殊部隊や反乱軍といった形ではなく、国家として存続している。

 しかも幾つもの異世界と関係を持ち、それらの世界に比べると上位の存在としてだ。

 その辺を考えると、ここで避難民を見捨てると言うのは色々と都合が悪い。

 勿論それだけでシャドウミラーの各世界に対する優位性が揺らぐ事はないだろう。

 けど、マイナス要素は可能な限り減らしておくのに越した事はない。

 

「……で?」

「つまりだ。火星に……それもこの研究所を基地として避難民が暮らせるようにしたいと思ってるんだよ」

「まぁ、そうでしょうね。アクセルの国に彼等を迎え入れないのなら、残る手段はそれくらいしかないと思うわ。けど、ここの守りはどうするの? 言っておくけど私達だっていつまでもここにいられる訳じゃないのよ?」

「問題ない。この研究所を中心として、俺達が戦力を出す。……ぶっちゃければ、この火星に俺達シャドウミラーの基地を作ろうと思っている」

「ちょっと、ここは放棄されているとは言ってもネルガルの施設よ。勝手に自分の物にしたりするのは困るわ」

 

 即座に言い返してくるエリナだったが、その気持ちは分からないでもない。

 事実、ここの地下にあるチューリップもどきを考えれば、そう簡単にこの研究所を明け渡すつもりにはなれないんだろう。

 

「けど、それがベストだろ? それに、勿論この研究所を俺達に譲ってくれるって言うんなら、相応の見返りも用意させて貰う。シャドウミラーとこのナデシコ世界が交流する事になった時、ネルガルを優先する。……どうだ? ネルガルに取っても悪い事じゃないと思うけど」

「それは……」

 

 まさか、俺の口からネルガルを優先するという言葉が出てくるとは思わなかったのだろう。通路を歩いていたエリナの足が止まり、こちらへと視線を向けてくる。

 ただ、実際問題ネルガルの社員であるエリナやプロスペクターと接している限り、今のネルガルに対してそれ程悪い印象はない。

 図書館で調べた限りだと、前会長はかなりあくどい性格をしていたらしいが。

 今の会長はその前会長の血縁だって話だし、その辺を考えるとまだ完全に信用する事は出来ない、か?

 もっともシャドウミラーと手を組んで裏切りを働いたりすれば、それがどんな目に遭うのかってのはニーズヘッグを見れば分かって貰えると思うが。

 基本的にシャドウミラーは国家としてそれなりに他の異世界と友好関係を結んではいるが、軍事国家と呼ぶべき形式の国だ。

 しかも、戦力に関しては1つの世界と平然と戦争をして、楽に勝てる程の力を持った。

 

「……地球にも利があるって話だったけど?」

 

 ひとまずこの件に関しては置いておく事にしたのだろう。エリナは話を地球に関しての利益へと移す。

 

「利益はあるだろう? この火星が俺達シャドウミラーの勢力圏になれば、地球と木星蜥蜴の間に俺達がいる事になる。つまり、木星蜥蜴が地球に侵攻しようとした場合、まず俺達が木星蜥蜴とぶつかる事になる」

 

 これは、実は俺達にとっても決して悪い話じゃないんだけどな。

 バッタやジョロ、カトンボ、大型艦、そして何よりチューリップ。これらが俺達と戦うという事は、逆に考えれば俺達がこの無人機を好き放題に鹵獲出来るという事でもある。

 古代火星文明の遺産とも呼べる無人機を、だ。

 勿論将来的にその辺を全て研究して解析し尽くしてしまえば、その後は延々と攻めて来ても一撃で撃破してもいい。

 また、当然その戦闘で撃破した木星蜥蜴の残骸はホワイトスターにあるキブツへと投入して俺達の資源となる。

 BETAと似たような形の処分方法ではあるが、木星蜥蜴はBETAのように悪臭が存在しない。

 そういう意味では、寧ろBETAよりも木星蜥蜴の方が戦いやすい相手だとすら考えられる。

 それに大型艦やカトンボ、チューリップといった無人の戦艦は質量が大きい分、キブツに入れるには最適だしな。

 大型艦辺りは無人艦という事もあって、出来ればシャドウミラーの戦力として使いたいという思いもある。

 メギロートやイルメヤ、シャドウといった無人機や量産型Wの運用機としては劣化型ナデシコと言ってもいいような大型艦はそれなりに使い勝手が良さそうだし。

 最初はチューリップが最有力候補だったんだが、チューリップが輸送艦や輸送ポッド的な存在じゃないというのがはっきりしてしまったしな。

 そうなると、あの転移方法が他の世界でも使えるかどうか分からない以上、こっちの選択肢としてはカトンボか大型艦になる訳だ。

 で、カトンボより大型艦の方が新型である以上、性能も高い、と。

 

「地球と木星蜥蜴の緩衝材にね。……でも、地球にはまだ多くのチューリップがあるのよ? チューリップが転移装置であるとはっきりした以上、地球にとっては火星で木星蜥蜴を防いでも殆ど意味がないんじゃない? それこそ、火星を通った木星蜥蜴が全滅すると向こうが学んだら、地球にあるチューリップから直接転移してくる可能性もあるでしょう?」

「……学ぶ?」

「あ、いえ。うん。無人機だって学習はするでしょう?」

 

 ふと気になった言葉を口にすると、何故かエリナは慌てたようにそう言い直す。

 何だ? もしかして木星蜥蜴についての情報を何か持っているのか?

 ……いや、持っていて当然か。ナデシコの始まりとなったチューリップもどきを研究していたネルガルだ。他に全く知られていない木星蜥蜴の情報を持っていてもおかしくはない。

 出来ればその辺の話を聞いてみたいところではあるが、無理に迫ってもエリナが話す筈がない、か。

 恋愛に関しては奥手なエリナだが、会長秘書としての職業倫理は高いし。

 取りあえずその件については置いておくとして、今のエリナの言葉に答える。

 

「地球にあるチューリップくらいは連合軍で何とかなるんじゃないのか? 無人機の怖いところは恐れもせずに延々と援軍を出してくるところだ。その援軍をこっちで押さえるんだから、地球にあるチューリップくらいは連合軍でどうにかして欲しいんだけどな」

「……難しいでしょうね。数もそうだけど、純粋に性能でも負けてるもの。それこそ、時間を稼げばナデシコを量産するって方法もあるかもしれないけど、その時間がないのよ。それに援軍だってチューリップを通して幾らでも出せるでしょうし」

 

 魔法球があれば解決しそうだが、まさかそんな事を口にする訳にはいかないしな。

 少し考え、妥当な解決策を口にする。

 

「最悪の場合、シャドウミラーから地球に部隊を派遣してもいい。勿論、その時は連合軍が妙なちょっかいを掛けてこないようにして貰わないといけないがな。もしシャドウミラーの技術や機体、人員をどうにかしようとした場合、相応の報復があると思ってくれ」

「……そう、ね。その辺はどうなるのかちょっと調整が必要だけど……ただ、連合政府が領土でもある火星を譲るかどうか……いえ、今のままなら木星蜥蜴に占領されてるから認めるでしょうけど、アクセル達が本格的に火星を自分達のものとして使えば欲を出すかもしれないわよ?」

「もしそうなったら……その時は地球、火星、木星蜥蜴の三つ巴の戦いになるだろうな。まぁ、その時にネルガルがどの勢力に着くのか楽しみにさせて貰おうか」

 

 そう告げると同時に、ナデシコのブリッジへと到着するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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