転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0120話

 ドルムへと帰還し、格納庫へとグロウセイヴァーを戻して整備員へと委ねる。

 俺が帰還してきた時にグロウセイヴァーの姿を見た整備員達は揃って驚愕の表情を浮かべていた。それはそうだろう、ここにいる整備員達とは長い……それこそシャドウミラーが設立した時からの付き合いだが、ここまでダメージを受けたグロウセイヴァーは初めて見るのだから。

 左手は肘から先が無く、肩やクロノスに装備されているファントムも半数近くがその姿を消している。また、装甲にも細かい傷が大量につけられているその状態はまさに中破と呼ぶに相応しい姿だ。

 

「どのくらいで修理は完了する?」

 

 近くにいる整備員へと声を掛ける。

 その整備員は困った顔をして手元のPDAでグロウセイヴァーの状態を確認している。

 

「そうですね。ファントムの補充はすぐに可能です。左腕もアシュセイヴァーの予備部品があるのですぐに交換できます。ただ……」

 

 困ったような顔で整備員が見つめているのは、グロウセイヴァーの左手。正確には左手の甲に装備されているグレイプニルだ。

 

「グレイプニルか」

「はい。何せかなり特殊な装置でして、技術班の中でもあれを作れるのは……」

「レモンだけ、か」

「ええ。それだけに予備もないんです。取りあえず修理自体はそれ程時間がかかりませんが、左手のグレイプニルは使えなくなります。それでも構いませんか?」

「無い物ねだりをしてもしょうがないな。分かった、その線で進めてくれ」

 

 俺の言葉に頷くと、整備員はすぐにグロウセイヴァーの下へと走っていく。早速修理に取りかかってくれるのだろう。

 

「隊長、シロガネが……」

 

 その声のした方を振り向くと、そこにはエキドナが立っていた。いつもの冷静さの中にも、どこか苛立ちの色が見える。

 

「W16、シロガネがどうした?」

「クロガネとの戦いの最中に戦場を離脱しました」

「……は? ドルムに撤退したんじゃなくてか?」

「はい。戦場の離脱です。ギャンランドはドルムへと帰還したのですが」

 

 ……あぁ。そう言えば原作でも確かにテツヤのクロガネと戦うけど負けてしまい、そのままどこかに去って行ったな。ホワイトスターに撤退はしていなかった筈だ。その流れ通り、シロガネはドルムへと帰還せずに戦場から離脱したのか。

 にしても、シロガネのクルーはリー以外は殆どが量産型Wだった筈なんだが……裏切りとみなされて殺されない事を祈ろう。

 

「その事はヴィンデルには?」

「連絡済みです。気にするな、と」

「そうか。ヴィンデルがそう言うのなら構わないだろう。作戦司令室へ行くぞ」

「はっ!」

 

 エキドナを従え、作戦司令室へと向かう。

 

 

 

 

 

「戻ったぞ。状況はどうなっている?」

「アクセルか。防衛に出ていた部隊は破れた。クロガネとヒリュウ改は既にドルム内部へと突入して、インスペクターの部隊と戦いを繰り広げている所だ」

「インスペクターでは奴等に勝てないだろうな」

「それは実際に戦ってきた経験からの言葉かしら?」

「ああ。奴等は強い。謎が多いアインストならともかく、既にインスペクターの手に負える相手じゃない」

「その割には、グロウセイヴァー1機で奴等の部隊と渡り合っていたようだが?」

「その結果が機体の中破だ。幸い予備部品があるから修理はすぐ終わるらしいが……左手のグレイプニルはレモンしか作れないし、予備もないからな」

 

 俺のその言葉に、レモンが苦笑を浮かべる。

 

「確かに予備を作っておかなかったのは失敗だったわね。でも、こっちにも事情があるのよ。色々と手を出しすぎたせいで、グレイプニルの予備を作るのまで気が回らなかったわ。それに、まさかアクセルがあそこまで追い詰められるなんて思いもしなかったし」

「ベーオウルフ、か。私達との因縁だな。あちらの世界でも、そしてこちらの世界でも……結局最後に私達の前に立ち塞がるのは奴と言う訳だ」

 

 苦々しげな表情を浮かべながら、ヴィンデルが呟く。その脳裏には今まで何度となく俺達の前に立ち塞がってきたキョウスケ・ナンブの姿が浮かんでいるのだろう。

 

「ギャンランドの準備を急がせろ。最悪の事態が起きても、あれは残さねばならん」

 

 ヴィンデルの命令が作戦司令室に響く。それを聞き、俺は覚悟を決める。

 

「……ヴィンデル」

 

 振り返ったヴィンデルがこちらへと視線を向けるが、俺の顔が余程真剣に見えたのだろう。ヴィンデルも真剣な表情に変わる。

 

「何だ?」

 

 ……この台詞を言ってしまえば、俺はもうヴィンデルと共に行く事は出来ない。何だかんだ言いつつも、5年近くの付き合いをしてきたヴィンデルを俺自身の都合で切り捨てる事になる。それはあちらの世界でキョウスケがシャトル事故に遭い、アインストに感染された時と同じようにだ。

 それもキョウスケとは学年が違っていた為にたまにしか接触がなかったが、ヴィンデルとは二人三脚でシャドウミラーをここまで動かしてきたのだ。

 ……レモンも入れれば三人四脚と言うべきか。

 そんなヴィンデルを切り捨てる。俺に出来るのか? だが、出来なければ俺は……いや、レモンやエキドナも含めたシャドウミラー全員が死ぬ事になるだろう。原作通りに進むのなら、あるいは俺はアルフィミィのおかげで助かるかもしれない。だが、レモンは確実に死ぬ事になる。

 それを意識した瞬間、不思議と俺の心は決まった。

 女の為に人生を決めるとかどこのドラマの主人公なのやら。内心で思わず苦笑しながらも口を開く。

 

「ヴィンデル、悪いが俺はこれ以上お前と共に進む事は出来ない」

「……何?」

 

 俺の言葉に、眉を顰めるヴィンデル。レモンは真剣な表情で俺とヴィンデルを見ている。エキドナはそのレモンのすぐ後ろに控えていた。

 

「アクセル。今の言葉をもう1度聞きたい」

 

 何かを確認するかのように問い掛けるヴィンデル。俺はその様子を見ながら再度口を開く。

 

「俺は、お前と共に進む事は出来ない」

「奴等に寝返ったか? ……いや、お前がそんな事をする訳がないな。長い付き合いなんだしそのくらいは理解している。……何故だ?」

「俺は元々知っていたんだよ。シャドウミラーがあっちで反乱を起こして、ベーオウルブズに敗れ、こちらの世界に転移してくる事。そしてこちらの世界でノイエDCに協力して連邦に反旗を翻す事。ミッション・ハルパー、オペレーション・プランタジネットを通してノイエDCを切り捨ててインスペクターと手を結ぶ事。……そして、インスペクターがクロガネとヒリュウ改に追い詰められる事……その全てをな」

「……」

 

 俺の言葉を無言で聞いているヴィンデル。恐らく頭の中では俺の話を検証しているのだろう。

 

「それなら、何故それを変えようとしなかった? 私達の行く末を知っていたのならそれを変える事だって出来た筈だろう?」

「そうだな。現に色々と歴史を変えてきた。だが、大まかな流れを変える訳にはいかなかった」

「……何故だ?」

「俺が、生き残る為にだ」

「生き残る?」

「例えば、あちらの世界のベーオウルフ。奴はアインストに感染していた。もし俺達があちらの世界で連邦軍に勝っていたとしても、恐らくそう先は長くなかっただろう」

 

 ベーオウルフのアインスト感染。それを聞き、眉をピクリと動かす。

 

「それは事実なのか?」

「ああ。それは間違い無い。それがあるからこそ、俺はお前の連邦軍に対する反乱に賛成し、結果的にこちらの世界に転移してきた訳だ」

「……」

「そして俺の知っている流れのままに進めば、このドルムで俺達シャドウミラーは壊滅する事になる。……クロガネとヒリュウ改によってな」

「それが、私と共に行けない理由か」

「そうだ」

「だが、アクセル。そもそもそれ以前にお前は一体何故そんな事を知っている? それも念動力の力か?」

「……大きな枠で考えればそうなるな」

「大きな枠?」

「そう。俺は生まれつき何個かの特殊な力を持っていた。例えば大まかな歴史の流れの知識。あるいは……」

 

 指をパチリと鳴らす。同時に、俺の横に空間倉庫が展開する。

 

「空間倉庫という、容量が実質無限ともいえる空間を自由に使える力。そして……」

 

 空間倉庫からスライムを出現させる。

 

「これは……アダマン・ハルパーの?」

「そうだな。正確には俺の身体の一部と言っても過言ではない、もう1つの感覚器、スライムだ」

「つまり、アダマン・ハルパーとは……」

「ええ。私が参式斬艦刀の技術を流用して作った事にしてはいるものの、正確にはまったくの別物よ」

 

 口を挟んできたレモンへと視線を向けるヴィンデル。

 

「なるほど、レモンもお前の協力者という訳か」

「その通りだ。話を戻すが、こういう力を持って生まれて来た俺は生き残る為に行動してきた。そしてここまで来たが、このままお前と行動を共にした場合、俺達はここでその命を終える事になる」

 

 そこまでを一息に言ってから、ヴィンデルの目を見据えて再び口を開く。

 

「ヴィンデル。お前の理想、闘争を日常とする世界を……諦めるつもりはないか?」

「ない」

 

 少しも躊躇う事なく、きっぱりと拒否をする。

 

「……どうしても、か?」

「無論だ。アクセル、お前が死なない為にこれまで必死で行動してきたように、私も己の理想を叶える為にこれまで必死で行動してきたのだ。その理想をそうそう簡単に捨てる真似など出来んよ」

「例え、その結果が死でもか?」

「その通りだ。生きる為にこれまでの自分を形成していた最大の要因を捨て去るという事は、すなわち精神的な死を意味する。肉体的な死と、精神的な死。どちらかを選べと言われたら、私は迷う事なく前者を選ぼう」

 

 ヴィンデルの言葉には一筋の迷いすらない。

 

「俺は……お前を殺したくはない。そこをどうにか曲げて、俺に従ってはくれないか?」

「フッ、敵にはどれ程にでも冷酷になれるというのに、味方には甘い奴だ。……アクセル、私はお前が普通では無いというのを薄々感じてはいたのだ」

「……何?」

 

 ヴィンデルが俺の特異性に薄々気が付いていた、だと?

 

「覚えているか? 以前、まだ士官学校時代の話だ。お前に特脳研の破壊工作を命じた事があったな?」

 

 もちろん忘れられる訳がない。アヤの脳を弄んでいたクズを殺した、俺のシャドウミラーとしての最初の任務を。

 

「あの時、後処理をした兵士から妙な報告があった。特脳研を囲んでいた壁に穴が空いているという報告がな。その穴が爆発で出来た物なら特に気にしなかっただろうが、念の為に詳しく調べた所溶解した結果の穴だと判明した」

「!?」

 

 そう。確かに特脳研に侵入する時、壁をスライムで溶かした。

 

「どうやら、その顔を見るに私の予想は当たっていたようだな。侵入口を作るにしても普通は熔解なんていう手段は使わないし、そもそも人が出入り出来るだけの穴を開けるのにはどのくらいの薬剤が必要になると思う? ましてや、お前を運んだ輸送機のパイロットの話では、特に大きな荷物を持っている様子も無かったという事だったしな。私が違和感を覚えるのも当然だとは思わないか?」

「士官学校時代から、俺の特殊性には気が付いていた訳か」

「先に言ったように薄々、だがな。まさか私もこれ程のものを隠していたとは予想も出来なかった」

 

 俺の能力に関しては本当に予想外だったのか、その顔には苦笑を浮かべている。

 その顔を見て再度口を開きかけた時、軽い衝撃が部屋を揺らす。恐らくクロガネとヒリュウ改がドルムの中で何らかの武器を使用した衝撃がここまで伝わってきたのだろう。

 

「さあ、時間も無い。……そろそろ決めようか」

「決める、だと?」

「ああ。私が生き残るか……それとも、アクセル。お前が生き残るか」

 

 懐から銃を取り出し、こちらへと向ける。

 

「ヴィンデル、お前が一流の兵士である事は俺も理解している。だが……俺に勝つ事は出来ないと分かっているだろう?」

 

 そう、このシャドウミラーにおいてヴィンデルは頭。すなわち指揮官。それに比べて俺は実行部隊たる手足なのだ。頭と手足が物理的にぶつかりあえばどちらが勝つかは言うまでもないだろう。

 

「確かにお前の言う通りかもしれない。だが私が望んでいる闘争が日常の世界では、それこそ裏切りは有り触れた物だろう。それが私に回ってきただけの事」

「……そうか、分かった。来い!」

 

 俺のその言葉と同時にヴィンデルが銃のトリガーを引く。殆ど同時に着弾するが、それは俺の肉体にではない。俺の周囲を覆うようにしているスライムに対してだ。

 

「ふっ、銃弾をあっさりと防ぐか。だが考えてみれば、アダマン・ハルパーはPTやAMを難なく切断していたのだ。驚くに値しないか」

「ヴィンデル……いや、もう何も言う事はない、か。行くぞ!」

「来い。お前の死の運命とやらを乗り越えて見せろ」

「加速!」

 

 精神コマンドの加速を使い、周囲を覆っていたスライムを解除。まだ銃口をこちらへと向けているヴィンデルの懐へと潜り込む。

 

「SPブースト!」

 

 SPを消費し、スライムの能力を強化。そのまま1条の銀の鞭と化してヴィンデルへと襲い掛かる。

 

 スライムがヴィンデルの胴体を袈裟懸けに斬り裂いたその瞬間、俺の脳裏に蘇ったのはシャドウミラー隊が発足して間もない頃にヴィンデルとレモン、そして俺の3人でああでもない、こうでもないと顔をつきあわせていた時の事だった。そう、俺達が本当に幸せだったと言える数少ない時間。

 

 そんな光景を見たのもほんの一瞬。次の瞬間にはヴィンデルは胴体から血を吹き出し、地面へと倒れ込む。

 

「ア…クセ……ル。私を倒して……生き…残ったんだ……必ず…生き抜け……友よ」

 

 その言葉を最後にヴィンデルの手は床へと落ち、目から光が消える。だが、胴体を2つに斬り裂かれたというのに、その口元にはどこか幸せそうな笑みが浮かんでいた。

 

「……馬鹿が。俺の事を友達だと思っているのなら、こんな所で1人だけ勝手にリタイアなんかするなよな」

「アクセル……」

 

 俺とヴィンデルから離れていたレモンが、心配そうな表情を浮かべながら俺に近づいて来る。そしてその手を伸ばし、俺の頬を優しく撫でた。

 

「ヴィンデルは貴男にとっては掛け替えのない友人だったんでしょうね。貴男が泣いているのを初めて見るわ」

 

 レモンの指はいつの間にか俺の目から流れていた涙で濡れていた。

 俺が、涙を流す……? そう言えば記憶を取り戻してから涙を流したのは初めてだ。あちらの世界でキョウスケの事故を知った時にも涙は流さなかったのに。

 ヴィンデルの死に際の言葉が頭の中に蘇る。生き残れ。そう言ってヴィンデルは逝ったのだ。

 

「ああ。生き残ってみせるさ。どんな事をしてでも、俺は生き残ってみせる!」




名前:アクセル・アルマー
LV:32
PP:130
格闘:234
射撃:252
技量:244
防御:241
回避:269
命中:291
SP:398
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:B
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP20
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???
    ???

撃墜数:169

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