転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1331話

 サツキミドリ2号にあるネルガルが所有する家での交渉が終わった後、俺達は当然シロガネへと……戻らず、街中を歩いていた。

 量産型Wは連れて歩くと目立つので、先に帰って貰ったが。

 サツキミドリ2号ではあっても、ここに俺達がいるというのが色々と不味いのは事実。

 実際、こうして街中を歩いていると俺達を尾けてくる奴の姿も何人かある。

 今のところ敵意がないから放っておいてるんだが、どこかの組織の人間なのは間違いないだろう。

 ……こんなに動きが早いというのを考えると、連合軍か? それともライバル会社のネルガルに対して諜報員を放っていてもおかしくないクリムゾングループ辺りって可能性もある。

 はたまた、それ以外の組織が俺達に人をくっつけていてもおかしくはない。

 そんな状態であってもこうしてサツキミドリ2号の中を歩いているのは、他の面々からナデシコ世界の街並みを見てみたいという要望があった為だ。

 これが、もし遊びたいので街中を見てみたいと言われれば断ったかもしれない。

 だが、交渉をする上でナデシコ世界の事を知っておく必要があると言われれば、それを否定する事は出来ない。

 映像とか資料とかのデータで知った気になっていても、実際に体験してみないと分からない事があるのも事実。

 そういう意味では、今回の件は必須事項であると言ってもいい。

 いや、必須事項とまではいかないか?

 それでもやっておいた方がいいのは事実だ。

 

「あら、アクセル君。向こうの方にあるのはなんでしょう?」

「服屋だな。確か前に来たときにハルカがルリにどんな服が似合うかってのを話していたのを聞いた覚えがある」

「ハルカさん、ですか。……そう言えば、何故彼女をハルカさんと呼んでるんです?」

 

 千鶴との会話中、不意に出て来たあやかの言葉に首を傾げる。

 

「名前で呼ぶのはおかしいか?」

「……ああ、なるほど。勘違いをしていたんですのね。正確にはハルカ・ミナトで、ハルカの方が名字ですわよ」

「は? じゃあ、ミナトが名前なのか?」

「ええ。以前ホワイトスターに泊まったじゃないですか。その翌日にお風呂に入りながら聞いたのですが、ミナトさん、少し気にしてらっしゃいましたわよ? 他の方は名前で呼んでいるのに、何故自分は名字なのかと。ですが、名前と名字を逆に覚えていたとは……」

「あー、うん。今度ハルカ……いや、ミナトに会ったら謝っておく」

 

 けど、ハルカとミナトだとハルカの方が名前でミナトの方が名字って思ってもおかしくないと思うんだが。

 そもそも、このナデシコ世界は色々と名前の付け方がおかしい。

 テンカワ・アキトはテンカワが名字でアキトが名前。

 これは俺にも分かりやすい。

 ミスマル・ユリカも同様に分かりやすい。

 けど、今回のハルカ、リョーコ、イズミ、ジュンといった風に名字と名前が似ているような人物や、メグミのように名前の方が先に来ている人物、更にエリナにいたっては、エリナ・キンジョウ・ウォンだ。

 イネス・フレサンジュといったように最初から和風の要素がなければ寧ろ分かりやすいんだろうけど。

 

「今までずっとハルカって名前だと思ってたんだけどな」

「そう。ハルカとミナトだと、ミナトの方が名字に聞こえてもおかしくないと思うわ。……まぁ、アクセル君がきちんとミナトに確認していなかったのが悪いんだけど」

 

 ウフフと笑みを浮かべている千鶴だが、その笑みには間違いなく俺を責める色がある。

 うん、相変わらず妙な迫力を発揮してるな。

 ただ、今回の件に関しては千鶴が言ってる通り全面的に俺が悪い以上、言い訳をする事も出来ない。

 

「2人共、そのくらいにしておいてあげなさい。それより、折角だから服を見ていきましょうか。この世界でどんな服が流行っているのかというのは知っておきたいし」

 

 エザリアの助け船のおかげで、何とか2人の責めからは抜け出す事が出来た。

 もっとも、今エザリアが口にしたのは、俺を助けるというよりは純粋に服に対して興味があったからだろう。

 ホワイトスターにある店は、少数を除いて各世界から出店している。

 当然その店の中には服屋もあり、各世界の流行が採り入れられている訳だ。

 基本的にはどんな服を見てもそう大きな違いがあるとは思えないのだが、実際にそれを着る方にとってはその小さな差異が大きいらしい。

 ……小さな差異が大きいってのも、微妙に矛盾しているような気がするが。

 ともあれ、そんな理由で未知の世界であるナデシコ世界のファッションには色々と興味深いものがあるのだろう。

 俺の場合は特に着る服には拘りがない。

 いや、シャドウミラー時代から着ている改造軍服を着続けているというのが拘りと言えば拘りになるか?

 キブツのおかげで布地に困る事もなくなってるけど、実はこの改造軍服。地味に技術班の技術が採り入れられており、時々バージョンアップしていたりする。

 ただ、俺自身は服に拘りはないが、他の面子が拘るのに口を挟むような真似はしない。

 特にあやかや千鶴は、俺に見せる為の服を選ぶという意味で張り切っている面があるし。

 

「下着もいいのがあればいいんだけど……大きいサイズだと、可愛いのがあまりないのよね。もっとも、アクセル君の場合は可愛いよりもセクシー系の方を好むんだけど」

「……千鶴、街中で貴方がそういう事を言わないの」

 

 千鶴の口から出た言葉に、エザリアが注意する。

 偶然それを聞いていた通りすがりの男は、俺やイザーク……特にイザークへと嫉妬の視線を向けていた。

 何でイザーク? と思ったが、今の千鶴の話を聞いて頬が赤くなっているのを見れば、千鶴の言葉に出て来たアクセルというのはイザークだと思っても仕方がない。

 中にはそんなイザークを可愛いとか言っている女の姿もあるが、イザークは努めて無視しているらしい。

 オウカに知られると色々とあるんだろうな。

 

「アクセル、ちょっとどこかで軽く食べていきたいんだけど、お勧めのお店はある?」

 

 エザリアの言葉に、俺が真っ先に浮かんだのは当然の事ながら以前ハルカやルリと一緒に街中に来た時に寄ったファーストフード店だった。

 ハルカと来た以外にも本を買う為だったり他の買い物とかで色々とサツキミドリ2号に出かけはしたが、やっぱり一番印象に残っているのはあのファーストフード店なんだよな。

 ナデシコでもあの店の件はかなり広まっており、実際にファーストフード店に負けていられないとして、テンカワはホウメイと協力してナデシコ食堂でフライドポテトを何度も試作していたし。

 ……ただ、結局それでも美味いフライドポテトは出来上がったんだが、それでもある程度美味いってだけで、あの店のフライドポテトには及ばなかった。

 ファーストフード店で出しているフライドポテトなんだし、決して手が込んでる訳じゃないと思うんだけどな。

 

「じゃあ、近くにあるファーストフード店に行くか」

「ファーストフード店? アクセル、お前母上の健康を少しは……」

「イザーク、たまにはファーストフードもいいでしょう。それにわざわざアクセルが普通のファーストフード店に案内するとは思えないわ。何かあるのでしょう?」

 

 イザークとエザリアのやり取りに頷きを返す。

 

「その店は俺がナデシコでパイロットをやっていた時に有名になった店でな。ファーストフード店としてはハンバーガーとかがあまり美味くない。いや、寧ろ微妙と言ってもいい。けどサイドメニューの……特にフライドポテトに関しては絶品なんだよ」

「フライドポテト? ただ芋を揚げただけのものだろう? それがそんなに違うのか?」

 

 疑わしげな視線を俺に向けてくるイザーク。

 だが、それが普通の反応であるというのを知っている為、それを責める事はしない。

 実際、あのフライドポテトは自分で食べてみないとその味が分からないというのは事実なのだから。

 

「ま、実際に食ってみれば分かるだろ。ほら、行くぞ」

 

 そう告げ、ファーストフード店へと入っていく。

 システムとしては、どこの世界にもあるファーストフード店と似たようなものだ。

 店員の前に並んで注文するというもの。

 

「あらあら、ファーストフード店というのはどこの世界でも変わらないのね」

 

 カウンターに並んでいる客を見渡して告げる千鶴。

 その言葉に俺達の前に並んでいた客が訝しげな視線を向けてくるが、その視線は千鶴やあやか、エザリアへと向けられた時点で訝しげなものから感嘆の視線へと種類を変える。

 思わず見惚れているその男、年齢は今の俺と同じか少し上くらい……20代半ばってところか?

 その男へとエザリアが視線を向けると、頬を赤くしながら前へと向き直る。

 そうしながらも、チラチラと後ろを見ているのはやっぱり後ろにいる俺達が気になるからだろう。

 それでも男連れである俺達に話し掛けるような勇気は持てなかったのか、それ以後は結局何も行動を起こさないままに店員に注文して列から外れていく。

 ……ハンバーガーとかじゃなくて、サイドメニューを注文している辺り、この店については使い慣れているんだろう。

 そうして俺達の番になり……

 

「フライドポテトLLサイズとストロベリーシェイク」

 

 俺の注文に習うように、全員が注文していく。

 もっとも、周囲に並んでいる他の客は、あやか、千鶴、エザリアもフライドポテトをLLで頼んでいたのに驚いているようだが。

 普通であればカロリーを気にしてそんなに大きなサイズを頼まないのだろう。

 ただ、シャドウミラーの面子は違う。

 魔法球の中に入ってエヴァと訓練を頻繁にするので、寧ろ多目に食べないとカロリー不足で痩せ過ぎてしまう。

 そういう意味では、ダイエットに丁度良いのかもしれないな。

 ……その分、かなり運動量が必要になるので、慣れないと翌日は筋肉痛で死ねるが。

 

「ああ、それとフライドポテトLLを50袋持ち帰りで頼む」

「え? えっと、その……LLサイズを50袋、ですか?」

「ああ」

 

 唖然とする店員だったが、きちんと俺がネルガルのカードを使って料金を支払ったのを見れば、特に文句はないらしい。

 てっきり注文し過ぎですとか言われるかと思ったけど。

 取りあえず空間倉庫に入れる分は確保、と。

 ……このファーストフード店、火星にも出店してくれないかな。

 そうしないと、次のフライドポテトを食いたくなったら、システムXNを使って転移してこなければならなくなってしまう。

 

「50袋の方は出来たら持ってきてくれ」

 

 番号札を貰い、そのままフライドポテトとストロベリーシェイクを手に客席へと向かう。

 そうしてそれぞれが席に座ると、俺以外の全員が……それこそあやかや千鶴ですらも、どこかフライドポテトに胡散臭げな視線を向けている。

 まぁ、話だけを聞いていれば色々と思うところがあっても仕方がない。

 

「ま、とにかく食ってみてくれ。そうすれば俺が言いたい事も分かるだろうし」

 

 そう告げ、お手本とばかりに俺はフライドポテトへと手を伸ばして口へと運ぶ。

 久しぶりに感じる、外側がカリッ、サクッとした食感でありながら、中はホクホクとしたジャガイモの食感。

 言葉にすれば本当にそれだけなのだが……だが、実際に食べるとやっぱり感じるのは1つの感情だけ。

 

「美味い」

 

 それしか言葉が出てこない。

 正直、何だってこんなに美味いのか、本気で分からない。

 フライドポテトだぞ? ジャガイモを切って揚げる……他に手間を掛けるとしても、あく抜きやら一度下茹でしてから揚げるとか、それくらいしか思いつかない。

 実際ナデシコ食堂でもアキトやホウメイが頑張って再現しようとしていたが……結局はお手上げだったし。

 こういうのを何て言うんだったか。

 お手上げ侍?

 うん? このお手上げ侍ってどこから出てきた言葉だ?

 まぁ、いい。今はそんな事は関係なくこのフライドポテトを味わおう。

 ふと気になって他の面子へと視線を向けると、そこでは予想通りの光景が広がっていた。

 大きく目を見開き、動きを止めている。

 そしてゆっくりと味わうように口の中にあるフライドポテトを噛み締めると飲み込み、再びフライドポテトへと手を伸ばす。

 

「どうだ? 美味いだろ?」

 

 そう声を掛けると、あやか、千鶴、エザリア、イザークの4人はそれぞれ我に返ったように頷きを返す。

 

「あ、ああ。何でただのフライドポテトがこんなに美味いんだ?」

 

 信じられないといった表情で呟くイザーク。

 

「さて、それは分からない。ナデシコでもこの美味さの秘密を突き止めようとして食堂のコックが頑張ってたけどな」

「……ファーストフードよね?」

 

 確認するように告げる千鶴の言葉に頷きを返す。

 

「そうなると、そこまで大袈裟な手を加える事は出来ないから、そんなに複雑な手間じゃないと思うんだけど……」

 

 首を傾げながらも、千鶴はフライドポテトを口へと運ぶ。

 全員が千鶴の言葉に頷きながらも、フライドポテトへと舌鼓を打つのだった。

 ちなみにそれから暫くして、50個のフライドポテトが届けられて、他の客に思い切り注目されてイザークにジト目を向けられる事になったが、それはそれだろう。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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