転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1337話

 ナデシコ世界からは連合軍と連合政府のお偉方、そしてシャドウミラーからは俺、エザリア、あやか、千鶴が参加して行われた会談は、意外な事に和やかな雰囲気から始まった。

 こっちも向こうもまだ相手に対する要望やら何やらを口にしていないのは、お互いが何を望んでいるのかを知っているからだろう。

 どっちが先にそれを口にするのかというのもまた、お互いの関係の主導権争いに関わってくる……といったところか。

 

「ほう、すると中には私達のように地球外生命体に攻め込まれている世界もあると? まぁ、この世界の場合は攻めてくる相手は全て無人機なので、生命体と呼ぶのは相応しくないのかもしれませんが」

 

 マブラヴ世界の事を聞いた連合軍の総司令、グリューノが興味深そうに尋ねてくる。

 

「ええ、そうですよ。ただ、マブラヴ世界は私達が接触した時にはユーラシア大陸の殆どを地球外生命体……BETAに占領されていました。しかも、BETAは占領した場所を……何て言えばいいのかしら。アクセル、ちょっと出してくれる?」

「ああ」

 

 エザリアの要望に従い、空間倉庫から情報端末を取り出す。

 何もない場所から突然現れた情報端末に、ナデシコ世界の者達は全員が驚愕の視線を向けていた。

 いやまぁ、報告はあったんだろうけど、直接その目で見るというのは色々と違うんだろう。

 ともあれ、連合軍と連合政府のお偉方は俺の出した情報端末に映し出された映像へと視線を向け……

 

「う゛っ、こ、これがBETAかね?」

「うぷっ、な、何て言えばいいのか……色々と特殊な……」

「そう、個性的だね」

 

 それぞれがBETAの映像を見て思わず眉を顰める。

 その気持ちは分からないでもない。今でこそ慣れたし、シャドウミラーも特に問題なくなってきたが、BETAの外見は見た相手に生理的な嫌悪をもたらすような不気味な外見をしているのだから。

 個人的には突撃級辺りは結構好きな外見なんだけど、それも装甲殻があるからこそなんだよな。

 引っ繰り返すと、結局BETAってのがはっきりするし。

 

「私達が接触しているそのマブラヴ世界というのは、このようなBETAという敵を相手に戦っています。ただ、そのマブラヴ世界の時代が問題でして……」

「時代?」

 

 エザリアの言っている意味が分からないのか、グリューノが不思議そうに尋ね返す。

 

「ええ、このマブラヴ世界は現在まだ2000年ですから。その状況で技術の問題もあるんです」

「それは、確かにそうでしょうな」

 

 グリューノが頷く。

 こうして見る限り、やはり連合軍は元より連合政府の方にもグリューノの影響力が強いらしい。

 主導権を握っているのは、明らかに連合政府の代表と言われた人物ではなくグリューノなのだから。

 

「ですが、それではBETAとか言いましたかな。その宇宙生物を相手にどうやって対抗を? そのくらいの技術力しかないのであれば……」

「いえ、何十年とBETAと戦い続けているだけに、ある程度の蓄積はありますよ。ほら、これを見て下さい」

 

 エザリアが見せた映像は戦術機のもの。

 それを見たグリューノは見せ掛けだけではなく、本当の意味で驚いた表情を浮かべている。

 

「何と……人型機動兵器を……」

「勿論この時代の技術力で開発されたものですから、他の世界の人型機動兵器と比べれば性能は大分落ちます。それをフォローする意味も含めて、異世界間貿易を行っている国からマブラヴ世界に特例として兵器の輸出を許可していますので」

「……つまり、私達の世界もシャドウミラーと協定を結べば異世界の兵器を輸入出来ると考えてよろしいのですかな?」

「いえ、無理でしょうね」

「ほう。マブラヴ世界とやらには兵器を輸出してもいいのに、何故私達の世界は駄目だと?」

 

 グリューノも断られるというのは理解していたのだろう。だが、それでもこういう風に聞いてきたという事は、兵器の輸入に結構乗り気だと示しているというところか。

 エザリアは俺の方に一瞬視線を向け、俺はそれに頷く。

 問題はないから、思う存分やれをいう意思を込めて。

 ここで迂闊に思わせぶりな事を言ってしまえば、それを承諾の返事として取られかねない。 

 そうなると、後日この件で揉める事になる可能性が高く、だからこそそうならないように、シャドウミラーの態度をここで明確にしておく必要がある。

 

「マブラヴ世界では先程も言ったようにユーラシア大陸の殆どがBETAに占拠されていました」

 

 ……このされていましたって過去形なのが特徴だよな。

 実際、今はユーラシア大陸に存在しているハイヴの多くを奪い返す事に成功しているのだから。

 

「ですが、このナデシコ世界では……」

「待ってくれ。その、ナデシコ世界というのは私達の世界の呼び名かな?」

 

 グリューノの言葉が意外だったのだろう。エザリアは少しだけ驚きながらも、頷く。

 

「ええ。シャドウミラーではこの世界の名称をナデシコ世界としています」

「それは、誰の許可を得て付けた名前なのかな?」

「許可? 別にこれは私達がこの世界を便宜的に名付けただけであり、許可を得る必要はないと思いますが」

「……それでは、こちらでこの世界の名前を決めれば、それに従って貰えると?」

「そちらで自分達独自の名前を付けたいのであれば、それはそれで構わないのではないでしょうか? それをこちらが使うとも限りませんが」

「それは少し横暴では? その意見はシャドウミラー全体としてのものと考えても?」

 

 エザリアではなく、俺の方へと視線を向けて尋ねてくるグリューノの言葉に頷きを返す。

 

「そうだな。そもそもこの世界にナデシコ世界と名付けたのは俺だし。俺達シャドウミラーは、幾つもの世界と交流を持っている。だからこそ、その世界の特徴となるべき言葉を世界の名前に付けている」

 

 ……まぁ、中にはマブラヴ世界とか、そういうのもあるんだが。

 その辺は置いておくとして。

 

「それがこの世界の場合はナデシコだ、と?」

「俺のインスピレーションだとそうだな。木星蜥蜴世界というのも考えたんだが、それだと長すぎるし」

 

 ナデシコだと4文字だが、木星蜥蜴だと6文字。

 文字数にすればたった2文字でしかないんだが、その2文字が決定的に大きい。

 それと、語呂もナデシコの方がいいし。

 

「……そうですか。その辺については納得出来た訳ではありませんが、こちらで世界の名前を考えてもいいというのであれば、譲歩させて貰います」

「ああ、その辺は好きにして貰っても構わない」

 

 ただ、それを他の世界が使うかどうかは微妙だけどな。

 何だかんだで、異世界間貿易をやっている世界にとって中心にいるのはシャドウミラーだ。

 そうなれば他の世界でどの名称を使うのかというのは、考えるまでもないだろう。

 もっとも、明らかに自分達の世界の名前に悪意がついているような名前であれば、話は別だろうが。

 ナデシコ世界というのでは、特に悪意があるとも感じられない筈だ。

 グリューノもその辺を感じ取ったのか、それとも本気で自分達の世界の新しい名前を広めようとしているのか、やがて小さく頷くと話を変える。……いや、この場合は戻すか。

 

「それで、何故この世界に対して兵器の輸出を禁じてるのかを聞かせて貰いたい。聞いた話によると、私達の世界はBETAとかいう地球外生命体に襲われているマブラヴ世界と同じような境遇にあると思うのだが?」

「同じ、ですか。攻められているという点では同じですが、マブラヴ世界のようにユーラシア大陸の殆どを占拠されているといった事はないように思えますが?」

 

 ……そうなんだよな。実際問題、地球は木星蜥蜴に攻められているが、それでも占領されている訳じゃない。

 いや、部分的に占領されている地域とかはあるらしいけど、それだって狭い地域でしかない。

 そう考えれば、このナデシコ世界はマブラヴ世界に比べると随分恵まれていると言える……か?

 もっとも、木星蜥蜴のような無人機の集団に問答無用で攻められている時点で、とてもではないが幸運だとは言えないが。

 

「確かに今は地球で占拠されている場所は殆どありません。ですが、我々は入植が行われていた火星を木星蜥蜴によって占拠されているのです。その、マブラヴ世界でしたか? その世界が占領されているのは、あくまでも大陸が1つでしょう? それに比べると、私達の世界は火星という1つの惑星そのものを占拠されているのです。そう考えれば、十分私達の世界にも兵器を輸出してもいいと思うのですが?」

「火星、ですか。そういう意味で言えば、マブラヴ世界も火星はBETAに占拠されているのですよね」

 

 そう告げ、エザリアはあやかに視線を向ける。

 さっきまでは自分で情報端末を操作していたのに、今度はあやかに任せるってのは……この辺りは勉強というか、あやか達の修行みたいなものなんだろう。

 ともあれ、あやかが情報端末を操作すると、そこにはマブラヴ世界の火星が映し出される。

 フェイズ9という、現在確認されている中で最大級のフェイズを持つハイヴ。

 ……まぁ、現在はシャドウミラーが占拠して基地化を進めているのだが。

 そう言えばどのくらい基地化が進んでいるんだろうな。その辺の報告を聞くのをすっかり忘れてた。

 実際には量産型Wとメギロートだけで十分に回せるようになっていたりするのかもしれないが。

 BETAの死体を入手するという意味では、それこそ無限にキブツに投入する資源を入手可能な場所なんだよな。

 勿論本当の意味で無限にBETAを作り続けるなんて事は出来ないだろうから、いずれBETA側の資源が枯渇するだろうが。

 それが何ヶ月、何年、何十年、何百年先かはわからないけど。……何百年はないか?

 

「これが、ハイヴ……ですが、このマブラヴ世界では別に火星に入植をしていた訳ではないのでしょう? であれば、当然危機という意味ではこちらの方が上だと思いますが」

 

 グリューノも連合軍の総司令官を務めているだけあって、マーズゼロの映像に驚きはしたものの、すぐに気を取り直してそう尋ねてくる。

 だが、エザリアとしてはこの話の流れは寧ろ望むところだったのだろう。

 綺麗な笑みを浮かべ、グリューノの言葉に頷く。

 ……グリューノはともかく、他の4人の代表はそれぞれ多かれ少なかれ顔を赤くしているのは、容易くエザリアの手中に嵌まってしまう向こうの能力不足を嘆けばいいのか、それとも純粋にエザリアの美貌を褒めればいいのか。

 尚、見届け人としてこの会談に参加しているアカツキは、そんなエザリアの笑みを見て感心したような表情を浮かべていた。

 エザリアの美貌に感心したと言うより、その美貌を活かして主導権を握った手腕に感心しているといったところか。

 この点、アカツキは何だかんだと油断出来ないだけの能力を持っている。

 

「安心して下さい。現在このナデシコ世界の火星はシャドウミラーが拠点としており、その拠点に木星蜥蜴のような存在がいるのは色々と不味いので、こちらの軍で火星にいる木星蜥蜴を駆逐中です」

「越権行為だ!」

 

 エザリアの言葉に対し、即座に向こう側の代表の1人が叫ぶ。

 それを近くで聞いていたグリューノは、そんな代表の様子に微かに眉を顰める。

 不愉快そうな様子から考えると、余計な事を……という思いがあるのだろう。

 実際、ここで叫ぶというのは一見するといい手段にも思えるが、総合的な目で見れば悪手でしかない。

 

「何故でしょう?」

「決まっている、火星は木星蜥蜴に占拠されているとはいえ、歴とした連合政府の領土だ。それを勝手にシャドウミラーが火星で活動するというのは、侵略行為と取られても仕方がないだろう!」

「そうですか? 木星蜥蜴に支配されている火星を私達が無償で解放しているのですから、喜ばれる事はあっても責められることはないと思ったのですが」

 

 殊勝に告げるエザリアだったが、その言葉に込められているのはこれ以上ない程に鋭い刃だ。

 即ち、お前達の実力不足で占拠されている火星をこっちが無償で解放しているんだから、ゴタゴタ言うなというものなのだから。

 それが分かったのだろう。先程叫んだ代表の1人も不満を溜め込みながら言葉を収める。

 このまま話が進めば最終的に自分達の損になるというのを理解したのか、それともグリューノが何らかの合図でも出したのか。

 だが、一度主導権を握られるような真似をした相手の失策を、エザリアが見逃す筈がない。

 

「それに、私達は貴方達連合軍や連合政府が見捨てた火星の生き残りの人達に要望されて行ったのですから、感謝される事はあっても責められるような真似は……」

「そ、それは……」

「それと、その方達の要望もあって、私達シャドウミラーが火星をこの世界の本拠地として活動する事にしようと思っています」

 

 今回の会談で最大の爆弾がエザリアの口から投下される。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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