転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1343話

 その知らせは、俺に取っても予想外だった。

 シロガネにある俺の部屋でソファに座って報告をしてきたエザリアの方を見ながら、口を開く。

 

「このまま、他の場所の木星蜥蜴もどうにかして欲しい、と?」

「ええ。余程前回の戦いで圧勝したのが嬉しかったんでしょうね。……まぁ、表向きはそんな感じだけれど、どうやらミスマル提督だけに手柄を立てさせるのを面白く思っていない人がいるようよ」

 

 その言葉で思い出したのは、パーティの時に俺に向かってごますりをしてきた男。

 確かあの男はミスマルのライバルだって話だったから、それを考えれば誰が今回の件を主導しているのかは容易に想像出来る。

 いや、ミスマルのライバルと呼べるのはあの男だけとは限らない以上、他の軍人が裏で糸を引いている可能性はあるか?

 ただ、後ろで誰が仕組んでいるとしても……

 

「シャドウミラーとしては、ありがたいんだけどな。無人兵器を好きなだけ鹵獲出来るようになったし」

 

 前回の戦いで試してみた、俺が生身で無人機を空間倉庫へと入れていく方法。

 あの方法はコストパフォーマンス的にもかなりの効果を発揮していると言ってもいい。

 ……まぁ、シャドウミラーの場合はキブツがあるのでコストパフォーマンスとか考える必要はないんだけど。

 そもそも、本当にコストパフォーマンスを考えるのであれば、ニーズヘッグは色々な意味でコスト度外視の存在だろう。

 何しろ、トロニウムやネオ・グランゾンのバリオン創出ヘイロウを小型化したの、グレートグランドマスターキー、T-LINKフレーム等々、それ以外にも高コスト・高性能を地でいっている機体だ。

 それこそ、ニーズヘッグに値段を付けるとすれば、とてもではないが付ける事は出来ないだろう。

 

「じゃあ、引き受けてもいいのね?」

「ああ」

「……一応言っておくけど、今回の件は恐らく木星への偵察を少しでも遅らせる為というのもあると思うわよ?」

「……ああ、そういう意味もあるのか」

 

 ネルガルや連合軍が実力で俺達シャドウミラーの行動を掣肘出来ない以上、向こうに取れる手段はそう多くない。

 その中の1つが、俺に木星蜥蜴の無人機を与える事で木星に向かわせるのを防ぐ……というものなんだろう。

 それは決して間違っている手段ではない。

 ただ、向こうの誤算として、シャドウミラーの戦力は俺以外にも多くいるという事だ。

 それこそ本気になれば、俺が木星に行ってる間にもこっちに残った戦力だけで木星蜥蜴への対処はどうとでもなる、といったように。

 

「ただまぁ、ヤンマとカトンボ、チューリップはなるべく多く確保しておいた方がいいだろうし、今回は向こうの手に乗ってもいいだろ。火星の方もまだ完全に片付いてはいないし」

「ヤンマやカトンボを手に入れるのなら、普通に木星に行ってプラントを手に入れた方がいいと思うのだけど」

 

 エザリアが呆れたような表情で告げるが、確かにその言葉は事実だ。だが……

 

「連合軍の方に俺達をどうにかしようとしている奴がいるんだろ? そっちをある程度油断させる為にも、今は油断させる方がいい」

「暴発させる気?」

「どうだろうな。それがベストなのは事実だけど、それでもさすがにそこまでは……」

 

 そこまで考え、ムネタケがエリナに向かって発砲した事を思い出す。

 それも威嚇とかそういう意味ではなく、当てるつもりでだ。

 ネルガルの会長秘書という立場にいて、あの当時……というか、今の時点でもナデシコの中では実質的な最高権力者であるエリナを射殺しようとしたのだ。

 この世界でのネルガルという企業はかなりの影響力を持っている。

 軍事だけではなく、総合商社として色々な場所へと手を伸ばしているのだ。

 そんな会社の会長秘書を殺そうものなら、ネルガルと連合軍の関係は致命的なまでに悪化していただろう。

 ナデシコ級が是非とも欲しい連合軍としては、まさにネルガルにどうしようもない程の借りを作る事になっていた可能性がある。

 幾ら自分達がナデシコで捕虜にされており、連合軍との取引に使われるか、もしくは火星まで連れて行かれると思い込んでいたとしても、軽挙妄動としか言いようがない行為だ。

 それを連合軍の将官がやるんだから、色々と問題があるよな。

 とにかく、これからナデシコ世界との付き合いが長くなる可能性が高い以上、出来れば連合軍や連合政府とは友好的な関係になりたい。

 そうなるには、不穏分子の類は出来るだけ早い内に取り除く必要がある。

 こっちが向こうの要請に従っていれば、そのうちそんな奴等もボロを出すだろう。

 暴発してくれるのがベストなんだが、そこまで短絡的な行動に出るとは思えないし。

 それに、カトンボ、ヤンマ、チューリップを破壊せずに入手出来るというのが嬉しいのも事実なんだよな。

 

「じゃあ、取りあえず向こうにはOKの返事をしておくわよ?」

「ああ、その方向で頼む」

 

 エザリアが俺の言葉に頷くと、そのまま去って行く。

 ……さて、これで連合軍はどう動くかな? 出来ればこっちに有利なように動いてくれるのが最善なんだが。

 

 

 

 

 

「今回は俺達がメインという事でいいんだな?」

 

 シロガネのブリッジで、ムウの言葉に頷きを返す。

 

「ああ、連合軍も戦力を出すって話になってるけど、映像としてのインパクトは前回で十分という考えらしい」

「私達を使い勝手のいいコマか何かと勘違いしてるのではないか?」

 

 ナタルの言葉に、美砂が面白そうな笑みを浮かべて口を開く。

 

「シャドウミラーを自分達のコマだと考えるような人がいるというのは、少し面白いわね。最終的に何をどう考えるのか。少し興味深いわよね?」

「美砂、少し黒いわよ」

 

 親友の様子に、チクリと一刺し入れる円だったが、その円もやはり連合軍にいいように使われていると感じているのか、あまり愉快そうな顔はしていない。

 

「ま、もう少し我慢してくれ。連合軍の強硬派を暴発させる為には、いい餌を使う必要があるんだよ」

「そこまでする必要があるとは思えないけどな。いつもなら力尽くで強引にどうにかするのがアクセルらしいと思うんだが、何でまた急に?」

「たまには俺も知略で勝負しようと思ってな」

 

 正確には原作知識がないから、今までのように強引に事を運ぶのは少し危険だと判断した為だ。

 単純に原作知識がないだけならまだしも、強引に事を運んだ場合、微妙に嫌な予感がするんだよな。

 念動力って訳じゃないから、俺に危険がある訳じゃないんだろうけど。それでも色々と修羅場を潜ってきた経験から考えると、そんな感じだ。

 それにナデシコ世界との間で条約を結ぶにしても、地球にいる木星蜥蜴の排除というのは元々こちらから出す条件として入っていた。

 そう考えれば、地球の木星蜥蜴をどうにかするのはそうおかしな話じゃない。

 

「知略? アクセルが知略ねぇ」

「……何か言いたい事があるなら、はっきり言ってもいいんだが?」

 

 何かを言いたげなムウの様子にそう告げるが、ムウは口笛を吹きながら視線を逸らすだけだった。

 そうして色々とありながらも、俺達は2度目の木星蜥蜴殲滅作戦の日を迎える。

 

 

 

 

 

「では、シャドウミラー各機、出撃」

「了解。シャドウミラー各機、出撃して下さい」

 

 ナタルの命令を円が伝える。

 すると、シロガネからムウのアシュセイヴァーを中心とした機体が出撃していく。

 戦端を開いたのは、ムウのアシュセイヴァー。

 シャドウも持っている使い捨てのミサイルポッドから、S-11ミサイルを全弾発射する。

 放たれたS-11ミサイルは、ミサイルとは思えない程の速度で飛んでいく。

 この辺、シャドウミラーの技術班が作っただけあって、その辺のミサイルよりも余程速度がある。

 元々ミサイルってのは、その速度が遅い。

 いや、普通に考えれば速いんだろうが、ビームや重力波砲、そこまでいかずとも実弾のライフルとかマシンガンとかに比べると、どうしても遅く感じる。

 で、シャドウミラーのメンバーであれば、それこそ量産型Wであってもそれを撃ち落とすのはそう難しい話ではない。

 ……精霊の卵の隊員の中には、まだミサイルを撃ち落とせない奴もいるけど、向こうはまだ修行中のエルフ達なんだから仕方がないか。

 ともあれ、そんなシャドウミラーの面子にもそう簡単に撃墜されないようにと技術班が作り上げたのが、今ムウが使ったミサイルだ。

 その速度は通常のミサイルとは比べものにならない程に速く、腕利きのエースパイロットであればまだしも、木星蜥蜴の無人機にどうにか出来るような速度ではない。

 それを示すかのように、シロガネのブリッジにある映像モニタにはまっすぐと空気を斬り裂くかのように空を飛んでいるミサイルの姿が映し出されていた。

 そうしてミサイルは木星蜥蜴の前衛であるバッタの集団へと向かい……起爆する。

 S-11というのは、マブラヴ世界で開発された高性能爆薬で、その威力は戦術核にも匹敵する。

 それでいて汚染の心配はないんだから、使いやすい事この上ない。

 そんなS-11ミサイルの大爆発が幾つも起こり、敵先陣のバッタは見事なまでに爆発に呑まれ、消えていく。

 それは損傷を受けたとか撃破されたとかいうのではなく、文字通りの意味での消滅だ。

 爆発の中心部分から離れた場所にいたバッタは、それでもまだ残骸が残っていたが。

 木星蜥蜴にとっても、この大威力のミサイル攻撃というのは完全に予想外だったのだろう。

 一瞬動きが鈍り……そこにムウがメギロートやシャドウを率いて突っ込んで行く。

 S-11ミサイルにより完全に先陣がボロボロになった木星蜥蜴に、ムウの操るアシュセイヴァーの攻撃は対処しようがない。

 メギロートがバッタを次々と撃破していくのを横目に、アシュセイヴァーはハルバートランチャーを使ってカトンボのディストーションフィールドを貫いていく。

 量産型Wが操るシャドウも、グラビティキャノンでディストーションフィールドを貫き、撃破していく。

 重力波砲やビームに対して強い威力を発揮するディストーションフィールドだが、それにも限度があるという事なのだろう。

 

「アクセル君、そろそろ行った方がいいんじゃない?」

 

 シロガネの映像モニタでその光景を見ていると、美砂がそう声を掛けてくる。

 

「そうだな、このままだと俺が入手するよりも前に全滅させられてしまうか。じゃあ、行ってくる」

 

 ブリッジにいるメンバーへとそう告げ、足下に影のゲートを作り出して身体を沈めていく。

 そうして姿を現したのは、前回と同様にシロガネの装甲。

 これもまた前回と同じように、そのまま空中へと向かって飛ぶ。

 もし今の俺をこの世界のパイロットが見ていれば、自殺行為だと驚くだろう。

 ……いや、戦闘機や戦闘ヘリといった機体を出撃させているのを考えれば、もしかしたら見ている奴がいるかもしれないが。

 ともあれ、そのまま混沌精霊としての力で空を飛びながら、真っ直ぐに木星蜥蜴の本陣の方へと向かって飛んでいく。

 戦場となっている場所では、メギロートとバッタによる戦闘がそこら中で行われている。

 まぁ、シャドウミラーと木星蜥蜴の中で最も多い機種なんだから、当然か。

 そんな風に考えながら空を飛んでいると、背後にバッタがついている戦闘機を発見した。

 連合軍の戦力なのは間違いないが、何とかバッタを振り切ろうとしているらしい。

 ただ、バッタの方もそれを逃さずに攻撃を行おうとミサイルを……

 

「させるか」

 

 行きがけの駄賃とばかりに、真横を通り抜けざまにバッタへと炎を放つ。

 円の純炎の涙と同じように、俺は意識するだけでそこに炎を作り出す事が出来る。

 それも、円の操る炎よりも圧倒的に高温の炎を、だ。

 進行方向に現れた炎を回避する事が出来ず、バッタは真っ直ぐ炎へと向かって突っ込んで行く。

 炎に触れた次の瞬間、背中のミサイルが爆発し、バッタは内部から粉々になってしまう。

 そうして連合軍の戦闘機と擦れ違うと、そのコックピットに乗っていたパイロットはヘルメット越しでもよく分かる程に目を大きく見開いて俺の方へと視線を向けていた。

 ……うん、色んな意味で驚かせてしまったらしい。

 とにかく運の良かったパイロットをその場に残して俺は再び木星蜥蜴の本陣へと向かって行く。

 途中で何度か俺の方へと攻撃を仕掛けてきたバッタがいたが、その全てが白炎に包まれ、ミサイルが誘爆して内部から爆発されるという結末を迎えていた。

 そうして木星蜥蜴の本陣へと到着すると、次々にヤンマがディストーションフィールドを解除するのに合わせて中へと侵入し、空間倉庫へと収納していく。

 また、チューリップも触手へと触れて次々に空間倉庫へと収納し……ふと気が付けば、戦場からヤンマとチューリップの大半は消え失せていたのだった。

 連合軍の消耗も殆どなく、最終的に見れば連合軍の大勝利ということになる。

 戦力の大半はシャドウミラーだったんだが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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