転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1350話

「……は? 今なんて言った?」

 

 マリューの口から出た言葉が信じられず、そう尋ね返す。

 だが、改めてマリューの口から出た言葉は、結局同じだった。

 

「アクセルが拾ってきた駆逐艦、あれはアクセルの前でチューリップに呑み込まれたクロッカスで間違いないわ」

 

 一応俺がこの世界に来てからどのような経験をしたのかはマリュー達に含めて話してあるし、ミロンガ改の整備のついでに映像データ等を調べもしたのだろう。

 また、ナデシコ世界の連合軍に対して優位な存在である以上、データを寄越すように要請するのも可能だ。

 それらのデータと、駆逐艦の中にあったデータを読み込んで得られたのが、コーネリアが火星で見つけ、俺が空間倉庫に入れて持ってきた駆逐艦がクロッカス……即ち、連合軍がミロンガ改を寄越せと盗賊の如き真似をした時、それに反応したチューリップによって呑み込まれた物だったと判明した訳だ。

 

「いや、けど……あの様子からして、数週間、数ヶ月ってところじゃないぞ? 放置されてから、年単位で時間が経っていてもおかしくない筈だ」

「でしょうね。それには私も同意見よ。けど、クロッカスの中にあるデータは嘘を吐かないわ」

「……となると、どういう事ですの?」

 

 地球からニヴルヘイムに戻ってきていたあやかが、その金髪をたなびかせながら首を傾げる。

 ちなみに、政治班はエザリアを入れて全員がニヴルヘイムに戻ってきており、俺はこうして久しぶりにマリュー、スレイ、あやか、千鶴、円、美砂の恋人達と食事を楽しんでいるところだった。

 エザリアは今頃イザークやオウカと食事をしているだろう。

 

「どうもこうも……クロッカスは数ヶ月程度じゃないくらい前から、火星にあったって事になるわ」

「え? でもアクセル君のミロンガ改を奪う為に来た時もクロッカスって駆逐艦は連合軍にいたのよね? それだと色々とおかしくならない?」

 

 マリューの言葉に円が疑問を口にする。

 そうなんだよな。マリューの説明が正しい――間違っているとは思わないが――のであれば、連合軍がミロンガ改を奪いに来た時、この世界にはクロッカスという駆逐艦が2隻存在した事になる。

 

「それって、どういう事なの? ちょっと意味が分からないんだけど」

 

 円に続き、美砂も意味が分からないと口にするが……正直、俺も意味が分からない。

 ただ、分かっている事もある。

 時流エンジンを動力炉に使った機体に乗っており、更にはスパロボRやOGsの原作を知っているからこそ分かってしまった。

 それはつまり……

 

「時間移動、タイムトラベル……そういう事か?」

「ええ。正確には木星蜥蜴が使っている転移システムには純粋に場所の移動の転移というのは出来ないんでしょうね。元々時間移動の要素が組み込まれていて、それを解除する事ができないのか、それとも木星蜥蜴もそれに気が付いていないのか……」

「どちらかと言えば、後者っぽいな。そもそも無人機に必要な機能だけをどうにかする能力があるとは思えない。その辺はかなりファジーな……それこそ、人の手が必要になるだろ?」

 

 俺の言葉にマリューは頷くが、少し何かを考えるようにして口を開く。

 

「そうでしょうね。ただ、今は木星蜥蜴が無人機の集団だということになってるけど、それが真実だとは限らないでしょう? 火星古代文明の生き残りがいる可能性は十分にあるわ」

「やっぱりタコ型宇宙人とかなのかしらね? だとすれば、夏美ちゃんのお土産に持って帰ってあげたいけど」

「いや、もしタコ型の宇宙人がいたとして、それを貰っても夏美は困るだけだと思うぞ」

 

 千鶴の考えは時々斜め上にすっ飛んでいく。

 そう言えば夏美は今頃どうしてるんだろうな?

 小太郎と怪しいとか何とかあったけど、くっついたか?

 姐さん女房って奴だな。

 

「とにかく、木星蜥蜴が使っている転移システムは、私達のシステムXNに比べて随分と不安定な代物だという事を覚えておいて頂戴。……あのクロッカスという駆逐艦を調べる事が出来て良かったわ。クロッカスその物には見るべき所はなかったけど、それ以上の物を手に入れる事が出来たんだから」

 

 満足そうに頷くマリュー。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 実際あの駆逐艦は調べはしたけど一応というつもりだった筈だ。

 ナデシコならもう少しやる気が出たかもしれないが、今回の場合は連合軍の駆逐艦だしな。

 そもそもナデシコにしても、木星蜥蜴にはヤンマという劣化版ナデシコとも言うべき存在もいるし。

 

「ちなみにだが、データの類は特に弄ったり消したりはしてないよな?」

「ええ。そんな真似をすれば、連合軍があの艦をクロッカスだって認めないかもしれないでしょ? ……シャドウミラーが自分達を騙す為、コピー艦を作った、とか」

「さすがにそれはないでしょう」

 

 マリューの言葉に美砂が呆れたように呟くが、あやかはそんな美砂の言葉に首を横に振る。

 

「いえ、決して有り得ないということはありませんわ。ナデシコ世界の上層部の人達は、私達が何を出来るのか、そして何が出来ないかというのが分かりません。それに、もし本気でやろうと思えば出来るという問題もありますし……」

 

 まぁ、キブツがある以上、決して不可能って訳じゃないんだよな。

 もっともそんな真似をして、こっちに何の利益があるのかって話にもなるけどな。

 その辺を考えると、クロッカスはさっさと渡した方がいいか。

 

「あやか、千鶴。エザリアを通して連合軍に連絡をしてくれないか? シャドウミラーが火星でクロッカスを見つけたと」

「分かりましたわ。事は結構大きいので、この件に関しては確かに私よりもエザリアさんを通した方がいいでしょうね」

「頼む」

 

 こうして、取りあえずクロッカスの処理は決まったのだが……

 

「木星蜥蜴の転移についてはどうするの?」

 

 そんな中で不意に美砂が口を開く。

 

「どうするって、どういう事だ?」

「もう、アクセル君ったら結構うっかりさんね。木星蜥蜴の転移は、時間移動の可能性もあるという事が判明したんでしょ? それを連合軍に教えるのかって事なんだけど」

 

 そうか、そっちの問題もあったな。

 けど、どうしたものか……一瞬迷い、視線をマリューの方へと向ける。

 

「どうする?」

「技術班としては、出来ればまだあまり情報を漏らして欲しくないわね。クロッカスを調べれば、自然とその辺の情報も判明するかもしれないけど、それにも大分時間が掛かると見ていいわ。そもそも転移能力だけならまだしも、時間移動だなんて普通に考えてそう理解出来る筈がないもの。……まぁ、私達は例外だろうけど」

「だろうな」

 

 シャドウミラーというのは、今まで色々な……それはもう色々な経験をしてきている。

 それこそ他の世界に転移するという経験すらしているのだから、その移動先が他の世界ではなく別の時間であったとしても……驚きはするだろうが、受け入れる事はそう難しくないだろう。

 その辺の事情に関しては、ナデシコ世界の住人とはくらべものにならないくらいに柔軟だと言ってもいい。

 

「お願いね。レモンの方には私から連絡を入れておくわ。これからチューリップを調べるのに時間を取られそうね。ファブニールの方も開発は終わったけど、量産体制はまだ整ってないのに」

「それを言われると……技術班には悪いな、としか言えないが」

「大丈夫よ、シャドウミラーの現状は分かってるから。幸い研究に行き詰まったりしたら、魔法球の中でストレス解消出来るし」

 

 マリューが俺の言葉にそう笑みを返してくる。

 技術班は、色々な意味で恵まれている。それは事実だが、同時に俺を含めて色々と仕事を押しつけてるのも事実なんだよな。

 レモンが言っていたエルフ族から技術班に人を入れるってのも、この辺が理由だったりするんだろう。

 技術班は完全にオーバーワーク気味だ。

 それでも何とかなっているのは魔法球と時の指輪の受信機があるおかげであり、同時に技術班の面々が仕事を楽しむことが出来ている為だ。

 色々な意味で変人が揃っているのは間違いないのだから、寧ろストレスで体調がおかしくなるというのは想像も出来ないが。

 寧ろストレスで体調が悪くなるのは、セシル辺りだろう。

 原作でもロイドのお守りを押しつけられたストレスからアッシュフォード学園の学園祭でモグラ叩きをやり、ロイドに似た人物の頭を延々と叩きまくっていたのだから。

 それに比べると、今はセシルが面倒を見ているのはロイドだけではない。

 寧ろロイド以上に問題児と言ってもいいだろう人材が、技術班にはゴロゴロしているのだから。

 ……そう考えてみると、よく今のセシルはストレスで体調を崩さないな。

 魔法球とかでストレス解消が出来るからか? いや、技術班の面々は基本的に魔法球に入り浸っている訳だし、エザリアと同じようには出来ないよな。

 だとすれば、何でだ? いやまぁ、ストレスが溜まってないのならそれはそれでいいんだが。

 実はあの2人の関係が意外と進んでいるとか。

 セシルがロイドをどう思っているのかというのは、それこそ見ていれば俺でも分かる。

 ただ、セシルはそれを隠し通しているつもりで、ロイドの方も恋愛に関する意識がそんなに強くないせいでそれに気が付かないし。

 

「ま、その辺はロイドがいつか気が付くか、セシルが業を煮やして行動に移るかどうかだな」

「アクセル君? 急にどうしたの?」

 

 俺の口から出た言葉に、円が不思議そうに視線を向けて尋ねてくる。

 

「いや、何でもない。それで話を戻すけど、これから技術班はチューリップに関する研究を強めていくって事でいいのか?」

「でしょうね。時間移動も関係してくるとなると、レモンも今まで以上に興味を持つ筈よ。だから、アクセルには出来ればチューリップをこれまで以上に確保して欲しいのよ。それも、出来れば地球でここ最近やってた見たいに、出来るだけ損傷を与えない形で」

「それは問題ないけど……うん?」

 

 そこまで告げ、ふと疑問に思う。

 チューリップ……即ちそれは、火星古代文明の遺産だ。

 そしてナデシコも同様に火星の古代文明の遺産を用いて開発された艦な訳で……

 

「もしかして、ネルガルに聞けばチューリップと木星蜥蜴の転移、それと時間移動に関しても分かるかもしれないな」

「……なるほど。確かにネルガルは木星蜥蜴が攻めてくる前から火星で研究していたんだし、チューリップについて何かを知っていてもおかしくないわね」

「だとすると、その辺のことを突っ込む意味でもクロッカスを返す時にはアカツキも立ち会わせた方がいいのか?」

 

 俺の口から出た問い掛けに、あやかと千鶴は賛成するように頷くも、マリューは少し渋い表情を浮かべる。

 

「出来れば連合軍にも木星蜥蜴の転移についてはあまり詳しい情報を流したくないのだけど。少なくてもシャドウミラーがその辺の技術をある程度解明するまでは」

「じゃあ、アカツキと最初に会って木星蜥蜴の転移技術について話を聞いて、それからクロッカスをどうするのか決めた方がいいか?」

「技術班としてはそちらの方がありがたいわね。ネルガルの人が一緒にいれば、どうしても連合軍の人にその辺についての詳しい説明を求められるだろうし」

「マリューの言いたい事は分かるけど、政治班としては、出来ればネルガルよりも連合軍を重視して欲しいわね。確かにネルガルの方が色々と情報を握っているのは事実でしょうけど、結局のところこのナデシコ世界で最大の影響力を持っているのは連合軍と連合政府よ。だとすれば、そちらを先に押さえた方がいいと思わない? 幸い、ネルガルとの間には色々と条約を結んでいるし」

 

 技術班のマリューと、政治班の千鶴の意見が真っ向からぶつかった形だ。

 そして2人は……いや、あやか、円、美砂、スレイの4人も俺の方へと決断を求める視線を向けてくる。

 ちなみにスレイが今回の件で殆ど口を挟まなかったのは、これが技術班と政治班に関係している事だからだろう。

 意見を聞かれれば何か答えたかもしれないが、今は取りあえず俺に任せるといったところか。

 

「シャドウミラーとしては技術班の方を優先せざるを得ない。シャドウミラーは技術力特化の国だというのは紛れもない事実だし」

「……そう、残念ね。けど、あまりネルガルだけを優先するようなことになれば、連合軍や連合政府がネルガルに余計な手出しをしないとも限らないわ。その辺はきちんと理解してちょうだいね」

 

 千鶴の窘めるような言葉に頷きを返す。

 実際問題、その点についてはきちんと考える必要があるだろう。

 連合軍を最優先するという訳ではないが、比較的優先させていくといった形で。

 連合軍の方も、木星蜥蜴についての何らかの事情を知っていれば話は別なのだが……いや、実は言わないだけで、その辺の事情を知っていてもおかしくはないのか?

 何だかんだと結構長い歴史の組織だ。もしかしたら以前木星蜥蜴と接触した……という事があってもおかしくはない、と思う。

 ともあれ、こうして俺達の次の動きは決まるのだった。

 さて、アカツキ……俺達に対して何て言ってくるのか楽しみだな。

 実はこれで何も知らないとかだったら、それはそれで面白い展開ではあるのだが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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