転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1352話

 アカツキが姿を現したのは、サワガサキにとっても意外だったのだろう。

 目を軽く見開きながら数秒黙り込み、やがて肉の付いた頬を振るわせながら口を開く。

 

「これはこれは、アカツキ会長。お仕事が忙しかったのでは? 何でもクリムゾングループの方から何か問題があったという連絡を受けてますが」

「そうだね、本来ならそのつもりだったけど……友人が僕を訪ねてきたんだから、当然そちらを優先させて貰うさ。特にアクセルは友人というだけじゃなくて、ビジネスパートナーとしても重要な存在なんだし」

 

 髪を掻き上げながら告げるアカツキは、人に見られるという事に慣れているのだろう。

 まぁ、顔立ちは整っているし、モデルの類になってもおかしくはない。

 実際ネルガルの会長として露出してるんだしな。

 そういう点で、社長のサワガサキは圧倒的に遅れを取っている訳だ。

 

「そうですか? 私としてはアカツキ会長が忙しいのではないかと思い、気を利かせたつもりだったのですがな」

「……もしそうするのであれば、出来れば前もって連絡が欲しかったね。僕を訪ねてきた相手を、僕に連絡がないまま自分が会うというのは……少しよろしくない出来事だとは思わないかな?」

「いやいや、連絡をしようとは思っていたんですよ。ですが、アカツキ会長が忙しいというのは十分に分かってますから」

 

 笑みを浮かべてやり取りをする2人だったが、その心の内にあるのはお互いに対する警戒心と、隙あらば攻撃を……いや、口撃をしようという思いだろう。

 見て分かる程に笑みとは裏腹のピリリとした緊張感を持った空気が存在するのだから、ここにいる俺は何なのかという事になる。

 それでも、俺だって何の意味もなくこうしてネルガル本社に来た訳ではない。そもそも木星蜥蜴についてネルガルが何かを隠しているのかもしれないというのを確認する為に来た訳で……

 

「俺を置いといて2人で話を進めないでくれないか」

 

 牽制をしあっている2人に対し、そう告げる。

 その言葉でアカツキもサワガサキも俺の事を思いだしたのだろう。我に返って口を開く。

 

「別にアクセルの事を忘れていた訳じゃないさ。折角僕を訪ねてきてくれたんだし。ただ、ちょっとその前に片付けるべき事があっただけだよ」

「そうですな、アクセル代表はネルガルの大事なお客様なのですから、まさか放って置く訳は……」

「社長。少し勘違いしていないか? アクセルは僕に会う為にネルガル本社までやってきたんだよ? それについては、受付できちんとそう明言している」

「いやいや、こちらで得た情報によると、アクセル代表は何かを確認したくてネルガルに来たとの事。だとすれば、別にアカツキ会長に拘らなくてもいい筈です。アカツキ会長との面会を希望したのは、あくまでも他に伝手がなかったからでは?」

 

 ……待て。

 サワガサキは今何て言った?

 俺が確認したい事があってネルガル本社にやってきた?

 いや、それは間違いのない事実だが、なんでこの男がそれを知っている?

 それを知ってるのは、あの時ニヴルヘイムにいた面子だけだ。

 どうしても知るとなると、スパイの類をシャドウミラーに送り込む必要があるが……そもそも、今シャドウミラーで地球に来ているのはナデシコ世界に来る前にシャドウミラーに入った者達だけだ。

 とてもではないが、スパイをやるような者達だとは思えない。

 信じているというのはあるが、それ以外にもスパイだったりすれば何らかの仕草で俺がそれに気が付いてもおかしくはない。

 念動力……は、俺の命の危機だったり、被害が大きい時に発動するのを考えるとあまり信頼は出来ないが、それでも念動力ではなく、純粋に戦場の中で生きてきた俺の勘というのは信頼に値する。

 その俺の勘が、シャドウミラーにスパイの類はいないと言っており、そうなるとサワガサキはどこで今の情報を仕入れたのかという事になる。

 ……単純なハッタリだったりしないだろうな?

 いや、見るからに狸爺と呼ぶのがピッタリなサワガサキなだけに、結構ハッタリって線はあるのか?

 エザリアとは言わずとも、あやかや千鶴を連れてくるべきだったか?

 だが、政治班の3人を連れてくれば、それはシャドウミラーとしての公式的な動きとなる。

 また、連合軍を始めとして他の勢力にもシャドウミラーの政治班は顔が知られて……いや、知られ過ぎているといってもいい。

 当然だろう。このナデシコ世界にとって俺達シャドウミラーというのは異常な存在だ。

 特にエザリアを始めとした政治班は、そのマスコミに対しての露出度も高い為に名前と顔がかなり売れている。

 ……メディアに登場して一気に有名になったのは、当然のようにあの3人が美人……それも、ちょっとやそっとの事では見られないレベルの美人だからというのもある。

 その辺を考えると、やっぱり俺1人で行動するのがベストなのは間違いのない事実。

 とにかく、サワガサキが口にしたのは殆どブラフである……と認識しておくとしよう。

 俺達の中にシャドウミラーを裏切るような奴はいないのだろうし。

 唯一怪しいのは、酒とかを飲まされてポロリと情報を口にしたことだが……その辺が一番心配なムウは基本的に表に出てないしな。

 表に出ている男で一番有名なのは、俺……ではなく、イザークだったりする。

 基本的に政治班の護衛として交渉の場に顔を出しているのだから、政治班と一緒にいる事の多いイザークが有名になっても不思議はない。

 何気にイザークもコーディネイターだけあってかなり顔立ちは整っている。SEED世界で俺と戦った時に付いた、顔面の傷も今はもう消えているし。

 そうである以上、クール系という事でネットや雑誌でそれなりに有名になっているとか。

 ……クール系、ねぇ。まぁ、外見だけで見ればそんな風に見えても仕方ないのかもしれないが、実際には結構頭に血が上りやすいんだけどな。

 ヤマダのような熱血馬鹿とまでは言わないが。

 

「さて、それで俺が何でネルガルに来たのかだったか。ちょっと面白い物を火星で見つけたんだよ。それに関して、ネルガルの意見を聞かせて貰いたいと思ってな」

 

 その言葉に、サワガサキはニンマリとした笑みを浮かべる。

 俺の言葉が、アカツキという個人に対して用事があったのではなく、ネルガルに用事があるという点でサワガサキの言葉通りだったからだろう。

 実際にそれは間違っていないのだから、当然だろうが。

 それとは逆に、アカツキの方は一瞬だけ眉を顰めつつ、それでも次の瞬間には笑みを浮かべて口を開く。

 

「なるほど、僕に聞きたい事があった訳だ。それで、どんな物かな? いや、それよりここは社長室で、話をするにも都合が悪い。少し場所を移そうか」

「アカツキ会長。アクセル代表が聞きに来たのは、アカツキ会長個人にではなく、ネルガルという会社に聞きに来たのです。であれば、より多くの人間が聞いた方がよいと思いませんか?」

 

 サワガサキの言葉に同意するのはあまり嬉しくはない。実際、この件についてサワガサキが何かを知っているかどうかは分からないし、何より今の口ぶりからすると、他にも何人もの人を集めて話を聞くという風に聞こえる。

 木星蜥蜴の転移技術に時間という概念が関係してくるのかどうかは分からない。

 それが間違っているのか合っているのかは不明ではあるが、出来ればこの件を知っている者の数は少ない方がいい。

 

「悪いが、ネルガルに相談には来たが、出来ればこの件は知ってる者の数が少なければ少ない程いいんだ。今回はアカツキだけに話させて貰うとしよう」

「そんなっ! アクセル代表、ネルガルについては……」

「社長」

 

 何かを言い募ろうとしたサワガサキに、アカツキが鋭く、そして短く口を開く。

 

「アクセルは僕に用事があると言ったんだ。そうである以上、大人しく引き下がった方が身の為だよ。シャドウミラーがどういう存在かは、君自身が映像をその目で見て理解しているんだろう? なら、ここは大人しく引き下がった方がいいと思うけどね」

 

 そのアカツキの口調に、これ以上言い募れば自分にとって不利になるだけだと判断したのだろう。サワガサキは黙り込む。

 

「さ、アクセル。社長もこれ以上は何もないようだし、そろそろ行こうか。僕に話があるんだろう? 出来ればアポを取ってから来て欲しかったけどね」

 

 どうするか一瞬迷ったが、そもそも俺がネルガルに来たのはアカツキに話を聞く為だ。

 そうである以上、ここでサワガサキに拘る理由はないだろう。

 

「分かった。じゃあ、行くか。……世話になったな」

 

 サワガサキと、そのSPと思われる男にそれだけを告げて社長室を出る。

 俺が社長室を出る瞬間、サワガサキがアカツキに向けていた、その太っている外見に似合わない鋭い視線に少し驚いたものの、曲がりなりにもネルガルという大企業の社長を務めているんだから、外見通りの人物ではないというのは理解出来た。

 

「いいのか?」

 

 社長室を出て、1階へと降りるエレベーターの中でアカツキにそう尋ねる。

 だが、そのアカツキは俺の言葉に対して小さく肩を竦めてから口を開く。

 

「いいんだよ。元々社長は前会長……つまり、僕の父親の片腕だった男だ。で、僕はネルガルに前時代的な風習を改めるように改革していっている。つまり、ここで多少敵対しても結果としては何も変わらないのさ」

 

 そう言えば、ネルガルの前会長は相当に強引な性格をしていたって何かで見たな。

 アカツキはその路線を継承せず、独自路線で進めている訳か。

 だからこそ、サワガサキのような前会長派の生き残りの社長派とは敵対しているんだろう。

 

「内部抗争があるのか」

 

 そんな俺の呟きを聞き取ったのか、アカツキは苦笑を浮かべる。

 

「自慢じゃないけど、ネルガルってのは大きいからね。当然そこにいる人の数も多くなり、そうなれば派閥の類も生まれる。……シャドウミラーは違うのかい?」

「どうだろうな」

 

 シャドウミラーに派閥? 正直イメージが湧かない。

 人数が少ないからという理由もあるんだろうが、シャドウミラーでは大規模な派閥抗争といったものはない。

 一番強烈な派閥抗争は……フェイト率いるコーヒー派と、俺の紅茶派ってところか?

 けどそれだって、一種のお遊びに近い代物なのは間違いないし。

 いや、でもコーヒー派のフェイトは店を出したり、コーヒー豆を売りに出したりして、ある程度の利益を上げているんだからお遊びとは言えないか?

 考えれば考える程、シャドウミラーはアットホームな雰囲気を持つ国家なんだな。

 ……アットホームな軍事大国とか、色々と面白過ぎる気もするが。

 そんなことを考えていると、やがてエレベーターが1階へと到着する。

 そしてエレベーターの扉が開くと、周囲にいた者達全員の視線がこっちに集まる。

 まぁ、このエレベーターが社長専用の物だというのは、ネルガルに勤めていれば全員が知ってるんだろうし、それも無理はないか。

 だが、そこから出て来たのがネルガル会長のアカツキ……とついでに俺だと知ると、その場にいた者の目が大きく見開かれる。

 この様子を見る限りだと、会長派と社長派の派閥抗争に関しては社内でもかなり広がっているらしいな。

 社員の皆がアカツキに対して頭を下げ、挨拶をし、目礼をする。

 

「やぁやぁ、皆頑張って仕事をしてるかい? このネルガルの発展は君達の肩に掛かっている。僕も頑張るから、君達も頑張ってくれたまえ!」

 

 爽やかな笑みを浮かべて手を振りながらそう告げると、社員の皆は嬉しそうな表情を浮かべてそれぞれアカツキへと言葉を掛けていた。

 ……へぇ。意外と社員に人気があるんだな。

 勿論社員全員がアカツキに対して友好的だという訳でもないだろう。

 社長派の者も当然いるだろうし、この中には表向き友好的な態度をしつつ、実は社長派という者がいてもおかしくはない。

 それでも、こうして見る限りでは全体的に若い社員からの支持率は高いらしい。

 同時に、そのアカツキと一緒に社長専用のエレベーターから出て来た俺を訝しげに見る視線もあるが、その辺は仕方がないだろう。

 俺という全く見知らぬ存在がアカツキと共に行動しているのだから。

 あ、でも受付嬢のカウンターでは俺を見て驚きの視線を向けている者もいるな。

 俺が来た時に対応した受付嬢の姿もある。

 ともあれ、そんな社員達の間を通り抜け、俺とアカツキは近くにある普通のエレベーターに乗り込む。

 他の社員は遠慮して俺とアカツキだけしかいない中でエレベーターは進んでいき、やがて会長室のある、ネルガル本社の最上階に到着する。

 エレベーターを出て、秘書達に軽く挨拶をしながら会長室に入っていくアカツキの後を追う俺に、当然のように秘書達は訝しげな視線を送ってきた。

 そう言えば、秘書って事はエリナの職場でもあるんだな。

 まぁ、そのエリナは今ナデシコに出向してるが。

 

「……で、そろそろ僕に会いに来た用件を聞いてもいいかな?」

 

 会長室のソファに腰を下ろしたアカツキの言葉に、俺は頷きを返す。

 

「そうだな、ちょっと立って俺の方に近づいてくれるか?」

「……は? 何だい、藪から棒に」

「いいから」

「まぁ、アクセルがそう言うならいいけど……」

 

 そう言い、俺の方へと近づいてきたアカツキだったが、次の瞬間には悲鳴を上げる。

 

「うわぁっ!」

「悪いな、少し付き合ってくれ」

 

 アカツキと共に影へと沈みながら、俺はそう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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