転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1356話

 チューリップの装甲が思いも掛けない稀少物質で、シャドウミラーにとっても非常に有益な存在だと判明してから数日、木連の事もあって俺達はなるべく早く木星に行く必要が出て来た。

 もっとも、連合軍や連合政府との交渉を放って置く訳にもいかず、そちらを打ち切るつもりもなかったが。

 ともあれ、こちらの行動の自由を確保するべくこうして一面の草原という舞台を用意した訳だが……

 

「アクセル代表、急に私達を呼び出すというのはどういう用件かね? 私達もこう見えて色々と忙しいんだ。確かにシャドウミラーと交渉している状況だが、もう少しこちらの事も考えて貰えると助かるのだが……」

 

 連合軍総司令官としては、その言葉以上に色々と忙しいのは事実なのだろう。

 実際、1つの軍隊の総司令官が忙しくないとかなれば、それは色々と問題になる。

 ……うん? そう考えると、実は1つの国家の代表である俺が思った程に忙しくないのも色々と問題があるという事になるのか?

 一瞬脳裏をそんな考えが過ぎったが、すぐに首を横に振る。

 今はそういう事を考えている場合ではない。

 

「そうだな、恐らくお前達にとっても重要な事になると思う」

「……重要な事になるのはいいとして、何故こんなだだっ広い場所に? 交渉をするのであれば、どこかに部屋を取ってもいいのでは?」

 

 グリューノが少し不満そうな様子を見せるが、何も言わずにここに来るように告げたんだから、不満に思っても当然か。

 重要な事だと言わなければ、もしかしたら何らかの理由を付けて来なかった可能性もあるな。

 

「悪いが、広い場所が必要でな」

 

 そう言葉を返し、視線をグリューノから少し離れた場所にいる者達へと向ける。

 そこにいるのは、見るからに軍人……に見えるような者ではない。

 寧ろグリューノに比べても身体に筋肉はついておらず、見るからに技術者といった様子の者達。

 

「どうやらきちんと連れてきてくれたみたいだな」

 

 俺が技術者達のことを言っているのに気が付いたのか、当然だと頷いてくる。

 

「アクセル代表が絶対に連れてきて欲しいと言ったからには、何らかの理由があると考えるのは当然だろう。そうなれば、こちらとしてもそれを無視する訳にはいかないさ。……それで、そろそろ世間話もいいだろう。何故私達を呼んだのか聞かせて欲しい」

「そうだな。俺だっていつまでもこうしていられる訳じゃないし。この件はなるべく早く片付けた方がいいか。分かった。ちょっと待っててくれ。それと、あの技術者達にあまり動き回らないように言ってくれ。多分大丈夫だとは思うけど、万が一の為にも」

 

 その言葉にグリューノは微妙に理解出来ないといった様子を見せつつ、それでも頷く。

 シャドウミラーの力がどの程度のものなのか、それを知ってるからこそだろう。

 そんなグリューノをその場に残し、俺はそのまま草原の真ん中……グリューノや技術者達から離れた場所へと向かう。

 俺の姿に気が付いたのか、技術者達がお互いに目配せをして俺の方へと視線を向けてくるが……これから何が起きるのか理解していないらしく、その視線には多大な好奇心が混ざっていた。

 この辺は軍の技術者であっても、普通の技術者とは変わらないな。

 そんな視線を向けられながら、俺は空間倉庫のリストを脳裏へと出す。

 そうして次の瞬間には……俺のすぐ隣に、駆逐艦のクロッカスがその姿を現していた。

 

「なぁっ!?」

 

 技術者達の方からそんな声が聞こえてくるが、初めて空間倉庫を見た者の反応としては一般的だろう。

 当然のように、グリューノも驚愕の表情を浮かべたまま俺の方へと向かって走ってきている。

 

「ア、ア、ア、ア、アクセル代表! これは一体!」

 

 普段は冷静な風に見せ掛けているグリューノだったが、その本質はかなり熱くなりやすい性格をしている。

 そう考えれば、この反応はそうおかしなものではないのだろう。

 

「見覚えがあるだろう?」

「勿論だ! これは連合軍の駆逐艦。……それは分かる。だが、何故アクセル代表がこの駆逐艦を!?」

「落ち着け。その辺はしっかりと話すから」

 

 興奮した様子のグリューノを落ち着かせるように告げると、それで我に返ったのだろう。グリューノは咳払いしてから、改めて口を開く。

 

「見苦しいところをお見せした。……だが、私がこれ程取り乱した理由についても分かって貰えると思えるが?」

「ああ。……まず、この艦をどこで入手したかだが、予想は出来てると思うけど火星だ。シャドウミラーの実働班が火星における木星蜥蜴の殲滅をしているのは知ってると思うが、その時に実働班が見つけてくれたんだよ。火星の大地に凍り付いている連合軍の軍艦があるってな。で、それがこれな訳だ」

「……火星に? いや、だがこうして見る限りでは特に損傷はないようだが」

 

 だろうな。普通火星で見つかった連合軍の軍艦と言われれば、墜落したものだと思い込んでも不思議はない。

 

「そうだな。けど、損傷の類はどこにもない。いや、軽く擦った傷とかはあるけど、それくらいのものだ」

「何故、そんな軍艦が火星に?」

「それは、お前の方がよく知ってると思うけどな」

「私が?」

 

 俺が何を言っているのか全く分からないといった様子のグリューノだったが、そこに致命的な一言を口にする。

 

「この駆逐艦の名称、何て言うのか知ってるか?」

「いや。このタイプの艦はかなり量産されているから、こうして見ただけで名前はちょっと分からないな」

「……クロッカス。それがこの艦の名前だ」

「クロッカス?」

 

 クロッカス、クロッカス……と、何かを思い出すように呟くグリューノだったが、やがてその名前が何を意味してるのか理解したのだろう。グリューノの顔は見て分かる程に引き攣る。

 

「そう。クロッカス。連合軍が俺のミロンガ改を奪おうとして襲ってきた時に使われていた駆逐艦だな」

「いや、それは……」

「ああ、別にそれを責めるつもりはない。その辺に関してはネルガルとエザリアに任せているからな」

 

 その言葉に、再びグリューノの表情が引き攣る。

 当然だろう。エザリアがどれ程手強い交渉相手なのかというのは、ここ暫くの交渉で実感している筈なのだから。

 ネルガルの方にも、プロスペクターのような手強い人物がいる。

 

「とにかくだ。その件は後回しにするとして、このクロッカスは地球にあった筈が、チューリップに呑み込まれて火星に転移させられた訳だ」

 

 火星に転移という言葉に、グリューノの顔が引き攣る。

 さて、木星蜥蜴のボソンジャンプに時間移動の要素があった件……それをグリューノはどこまで知ってるんだろうな。

 

「ちなみに、火星でこの艦を見つけたと報告があって見に行った時は、艦体のいたる所に雪が積もって氷がこびり付いて、氷柱が生えている状況だった。とてもじゃないけど、俺たちが地球にいた時にチューリップに呑み込まれたとは信じられない程の時間が経ってるような、な」

「それは、つまり……木星蜥蜴の転移には時間移動も含まれている、と?」

 

 さて、この発言は猫を被っているものなのか、それとも本当に時間移動については知らないのか。その辺は多少気になるが……ともあれ、アカツキにしたのと同じような話をするというのも芸がないような気がするな。

 

「さて、どうだろうな。その辺は木星に調査団を派遣すれば多分分かるだろ」

「待って欲しい。出来れば、木星に対して手を出すような真似は……」

「おや、何でだ? こんなに大きな案件が判明したんだぞ? なら、当然それを解明するのは俺たちとしてはおかしくないと思うが? 特に現在火星で木星蜥蜴と戦っている、俺たちとしては」

 

 正直なところ、チューリップを構成している素材の重要性はシャドウミラーとして非常に大きい。

 各世界に存在する合金を合成する為の最重要の素材がチューリップを構成している素材なのだから。

 しかもチューリップがないと合金を作れないとなると、G元素とかを始めとした稀少素材より、こっちの方が重要だろう。

 そもそもマブラヴ世界の火星の最大級のハイヴ、マーズゼロを俺達が占拠して基地化した以上、G元素を入手するのは難しくない。

 寧ろ現状で一番入手が難しい合金に使える素材は、バジュラから取れるフォールドクォーツだろう。

 バジュラとの最後の戦いで大量に死体を入手し、その殆どを俺の空間倉庫に保存してある以上、素材を使い尽くすという事は暫く先になるだろうが……

 いや、技術班が使っている魔法球にも今までより多くの素材を置いておいた方がいいか?

 実際、今回の合金の件もバジュラの死体を多少ではあるが魔法球の中に置いておいたからこそ出来たんだし。

 一応マクロス世界でもフォールドクォーツを人工的に作れるかどうかを試しており、その成果がフォールドカーボンという純度の低い代物なのだが……実用出来るのはいつになる事やら。

 

「ぐぬっ、それは……分からないでもないが……」

 

 木星蜥蜴……いや、木連の件を俺達に知られるのを恐れての言葉なのか、それとも単純に俺達だけに木連のプラントを所有させたくないのか。

 さて、どっちだろうな。

 いやまぁ、普通なら俺達がプラントを云々と言っても信じたりはしないだろう。

 だが今回の場合、俺はクロッカスを空間倉庫から出しているところをグリューノに直接見せている。

 そうなれば、当然プラントであろうとも俺が空間倉庫で奪取出来ると考えてもおかしくはない。

 いや、実際そうやってプラントを入手するつもりなんだけどな。

 そもそも、敵対している相手の貴重な戦力を奪うというのは、俺にとってみれば慣れているしな。

 

「俺達が木星に行けば何か不味い事でもあるのか?」

「それは……」

 

 言葉を詰まらせるグリューノ。

 さて、この期に及んでもまだ白をきるか。

 なら、そろそろいいか。

 

「木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家間反地球共同連合体。……通称木連」

「っ!?」

 

 俺の言葉に、グリューノが鋭く息を吸う。

 そして信じられないとばかりに俺の方へと視線を向けてくる。

 

「何故、その名前を?」

「何故だと思う?」

「……ネルガル、か」

 

 まぁ、分かるよな。

 木連が俺達に直接接触してきた訳じゃない以上、木連の事を知ってる存在は非常に限られている。

 そんな中で、当然のように情報を漏らした最有力候補としてネルガルが上がるのは、当然の事だろう。

 俺がナデシコに乗っていたという事もあって、ネルガルとの付き合いは深いしな。

 

「そういう事だ。言っておくが、ネルガルを……いや、アカツキは責めるなよ? そもそも、このクロッカスを見つけたのが原因で追い詰められたんだ。もし責めるんなら、クロッカスをチューリップに呑まれるような真似をした連合軍を責めるべきだな」

「……ぬぅ」

 

 余程に俺の口から木連の名前が出たのが予想外だったのか、グリューノは言葉に詰まる。

 連合軍としては絶対に知られたくない事だったのだから、仕方ないだろうが。

 独立運動の過激派を月から追い出したのはともかく、火星に核を撃ち込んだというのは色々と致命的だろう。

 

「シャドウミラーは、それを知ってどうしようというのだ?」

「特に何もするつもりはないな。別に木連の件を公表したりとか、そんな風には考えてないから安心しろ。ただ、その代わり木連と接触するのを黙認して貰うぞ」

「……もしそれを拒否したら?」

「別にどうもしないさ。ただ、俺達はそれに構わず木連と接触するけどな。連合軍にそれを止める事は出来ないだろ?」

 

 その言葉を、グリューノは実感として知っているのだろう。

 現在ナデシコ世界の中で最も強力な兵器は戦艦のナデシコ。

 特にグラビティブラストは、この世界にでは特筆すべき威力を持つ兵器だ。

 だが……同じグラビティブラストを使うヤンマからの攻撃を正面から受けてもシャドウはバリアを破られることはなかった。

 そしてシャドウミラーの使用する武器は、ディストーションフィールドを破るのも容易に可能とする。

 だとすれば、もし連合軍がナデシコ級を量産してシャドウミラーに戦いを挑んだとしても、待っているのは敗北以外には存在しない。

 特に今のシャドウミラーは、ファブニールという武装ユニットが存在している。

 それがあれば、シャドウ1機だけで相当の戦力になるのは間違いないだろう。

 

「……では、どうしてもシャドウミラーは木星蜥蜴と接触すると?」

 

 あくまでも木連という言葉を使わず、木星蜥蜴と言う言葉を使うグリューノに頷きを返す。

 

「ああ。近いうち木星に向かう予定だ。向こうが俺達の存在を知っているのかどうかは分からないが、それでも未知の勢力だとすれば向こうも話を聞くだろう。そうなれば、俺達がどんな存在かを知る事が出来る筈だ」

 

 まぁ、木連の戦力は無人機だから、俺達の事を知らない可能性もあるが。

 ああ、でも無人機の消耗が激しくなって異変を感じはしているか?

 

「せめて、向こうに転移する時は連合軍からも人を派遣させて貰いたい」

 

 グリューノはそれだけを言うのが精一杯だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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