転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1358話

 キノコ、と。

 そんな俺の声が周囲に響く。

 それに関して誰も異論を唱えなかった事が、俺の言葉の正しさを証明していた。

 別に本物のキノコがそこにあった訳ではない。

 ただ、俺達の前にいるのが、いわゆるキノコのような髪型をしていたのだ。

 ……レオンにしろ、キノコ、いやムネタケにしろ、なんだってこんなにキノコ頭が流行ってるんだろうな。

 しかもこのキノコの顔、どこかで見覚えが……

 そんな俺の視線に気が付いたのか、ようやく俺を出迎えた連合軍の軍人が再起動する。

 

「し、失礼しました。その、こちらがアクセル代表と共に木星へと向かって貰う、ムネタケ・ヨシサダ少将となります」

「……ムネタケ?」

 

 少将というのにも驚いたが、それより俺を驚かせたのは当然のようにその名前だった。

 そう、ムネタケ。先程も思い出したが、このナデシコ世界でキノコ頭だった人物。

 そして何より、ナデシコに乗ってきて俺に向けて銃口を向けた人物。

 エリナに向かっても容赦なくトリガーを引いたのは、色々な意味で驚きだった。

 俺の様子を見て、誰の事を思いだしたのか理解したのだろう。もう1人のムネタケは、深々と俺に向かって頭を下げてくる。

 

「アクセル代表には、息子がとんでもないご迷惑をお掛けしてしまい、父親として非常に申し訳なく思っています」

 

 そんなムネタケ……それだと向こうのキノコと区別が付かない以上、こっちはヨシサダと呼ぶべきか。

 ともあれ、ヨシサダはあのキノコの父親とは思えない程に温厚そうな人物だった。

 いや、もしかして俺達がシャドウミラーだからと言う理由で猫を被っているだけという可能性もあるが、それでも自分達よりも色々な意味で上位の存在を前にしてそれを出来るというのは息子よりかなりマシだろう。

 ……まぁ、息子の方は俺がシャドウミラーの代表ではなくて氏素性の知れない人間だって思い込んでいたんだから、無理もないかもしれないが。

 それでもミロンガ改という破格の機体を持っていた俺と敵対するという選択肢を選んだのは、決して賢いとは言えない。

 

「もう済んだ事だし、その辺はいい。……ちなみに、息子の方は今どうしてるんだ? 俺が知ってるのは、最後にこのサツキミドリ2号でナデシコから連合軍に引き渡されたってところまでだが」

「はい。現在は極東方面軍の第8資料室の副室長補佐をしております」

 

 資料室ってのは、俺のイメージだと閑職って感じなんだが。

 それも第8資料室で、更には室長じゃなくて副室長補佐。

 提督の地位にあった男にしては、随分と……いやまぁ、それだけ連合軍がシャドウミラーを重要視しているって事なんだろうが。

 

「そうか」

 

 取りあえず俺が言える事はそのくらいしかなかった。

 実際、それ以外に何を言えと。

 ともあれ、何だか微妙な空気になったので話を変えた方がいいだろう。

 

「それで、ムネ……いや、ヨシサダ少将が俺達と一緒に木星に行くと?」

 

 そんな俺の問い掛けに、ヨシサダの隣のお偉いさんが頷く。

 

「はい。彼は穏やかで人当たりも良く、今回のように敵対的な相手と友好的に接するにはこれ以上ない人材かと。アクセル代表もご存じのミスマル提督から強い要望がありまして」

「ミスマル提督というのは、確か極東方面軍の提督よね? アクセルが乗ってたナデシコの艦長の……」

 

 尋ねてくるエザリアの言葉に頷きを返す。

 

「ああ。色々とユリカの事になると暴走しがちではあるけど、能力的にはかなり優秀らしい」

「アクセルの目から見ても?」

「恐らく優秀なのは間違いない」

 

 ユリカに対する親馬鹿ぶりを除けばだが。

 ユリカを人質にしてしまえば、恐らくあっさりと釣り出せるような気がする。

 そう思うのは、ミスマルの親馬鹿ぶりをこの目で見たからだろう。

 

「なるほど。……ムネタケ少将」

「いえ、名前の方で呼んで下さい。皆さんと……正確にはアクセル代表とですが、息子と色々とトラブルがあったのは事実です。そうなると、これからも息子の話題が出る事もあるでしょうから、そうなった時に混乱しないように」

「そう? じゃあ、そうさせて貰うわ。ヨシサダ少将。率直に聞かせて貰うけど、貴方は木連をどう思っているの? 連合軍の軍人ではなく、1人のムネタケ・ヨシサダとして聞かせてちょうだい」

 

 エザリアの鋭い視線がヨシサダを射貫く。

 だが、ヨシサダもそんなエザリアの視線を受けながらも、全く動じた様子がなく口を開いた。

 

「そうですね。私個人としては、残念だと思いますよ。向こうも色々と思うところはあるのでしょうが、出来ればその憎しみを超えて手を取り合っていきたいと思っています。……まぁ、向こうの使者を害してしまっている以上、容易に和平を……とはいかないでしょうが」

 

 へぇ。現状を良く見ているな。

 それに木連に派遣されるだけあって、当然の事だが木連についても知らされているらしい。

 エザリアの言葉に答えているヨシサダは、確かにミスマルが推薦するだけの事はある。……というか、何だってこんな有能な父親の教育を受けてきたのに、息子の方はあんな風になったんだろうな。

 一応提督だったって事は、優秀では有るのかもしれないが。

 ともあれ、ヨシサダの方は無駄に騒動を引き起こすような真似はしそうにない。

 だとすれば、連合軍も木連を相手に強硬姿勢を止めたのか?

 シャドウミラーが関係しているのは間違いないだろうが……

 

「個人的に、ね。連合軍が妙な命令を出せば、軍人としてそれに従うと?」

 

 エザリアの視線がヨシサダ……ではなく、その上司の軍人の方へと向けられる。

 だが、その軍人は慌てたように首を横に振ってエザリアの言葉を否定した。

 

「そ、そんな事は考えてません。私達としても、木連との戦争は不利益しかないのですから。出来れば早期にこの戦争を終結させたいと考えています」

「そうなの? その割りには木連の大使をその手に掛けたらしいけど」

「それは! それは、その……連合軍の中にも様々な派閥がありまして。その中でも特に過激派と呼ばれている者達が……」

「なるほど。まぁ、連合軍のように大きな組織になれば、色々とあるのは間違いないでしょうね」

 

 エザリアの言う通り、地球規模の組織である以上、そこに多くの思惑が入り交じってくるのは仕方がないだろう。

 ……ただ、俺から見た場合、連合軍の総司令官をやっているグリューノも十分以上に強硬派に思えるんだけどな。

 それとも、実は表向きだけ強硬派という扱いにしているけど、実は違うとか?

 ありそう、か?

 うーん、正直微妙としか言えない。

 それでも連合軍の総司令をしている以上、ある程度の能力はあってもいい。

 そう思った俺の脳裏を、スパロボ世界のケネスの姿が過ぎる。

 あの男もそういう意味ではグリューノと似ているのか?

 まぁ、それでもあそこまで無能だとは思えないが。

 

「そっちの件はともかくとして、取りあえず連合軍からはヨシサダ少将が来るという事でいいのね?」

「はい」

「言っておくけど、ヨシサダ少将はあくまでも第三者、見届け人、オブザーバーといった感じの扱いになるわよ? それに、木星へは私達のシロガネで行く事になるけど、艦内を連合軍の人に自由に歩き回らせる訳にもいかない。そうなると、量産型Wが世話役として付く事になると思うけど?」

 

 世話役と言えば聞こえはいいが、実質的には監視役だ。

 いやまぁ、実際に何かヨシサダが危機に陥った時は量産型Wがその身を守るだろうけど。

 それでも量産型Wの仕事は、ヨシサダが妙な真似をしないかの監視だ。

 ……ヨシサダの人当たりの良さを考える限り、そこまで妙な心配はしなくてもよさそうな気もするけど。

 

「ええ、構いませんよ。私としてもシャドウミラーの量産型Wというのには興味がありましたから。その、受け答えは出来るんですよね?」

 

 へぇ、少し意外だったな。

 てっきり量産型Wはあまり好まれないとばかり思ってたんだが。

 いや、それとも単純にヨシサダだけが特別なのか?

 実際ヨシサダの隣にいる軍人は、量産型Wと聞いた時に微かにだが嫌そうな表情を浮かべていたし。

 勿論その表情はすぐに消えたが。

 

「そちらがそれでいいのであれば、こちらとしても文句はないわ。……アクセル、構わないわね?」

「ああ、問題ない」

 

 エザリアに言葉に俺が頷くと、ヨシサダとその上司の軍人はほっと安堵の息を吐く。

 何だかんだで、結構緊張していたらしい。

 

「それで、その……私が何か持っていくべき物はありますか? もしあるのであれば、今のうちに教えて欲しいのですが。準備をしませんといけませんし」

「特にないわね。連合軍の軍人として問題ない状態であれば、そのままで結構よ。食事の類もシロガネの方で出せるし。ああ、でも武器の類は……どうするの?」

 

 尋ねてくるエザリアの言葉に悩む。

 実際問題、自衛の為の武器は持ちたいというのが向こうの本音だろう。

 だが、木連と交渉なり会談なりをする上では連合軍の軍人が武器を持っている状況というのは良くない。

 かといって手ぶらで木連との会談や交渉に参加させると、木連の連合軍や連合政府に対する恨みから考えて最悪ヨシサダが殺されかねない。

 量産型Wを護衛としてつけている以上、基本的に危険はないと思ってもいいのだが、それでも絶対って訳じゃないしな。

 ヨシサダは温厚な性格をしているし、その辺を考えれば……

 少し考え、やがて口を開く。

 

「武器の持ち込みも許可しよう。ただし、可能な限り武器を使わないように心掛けてくれ。何かあっても、基本的には量産型Wが何とかするのは間違いない。量産型Wはそれだけの力を持っているから、基本的には身の危険を心配する必要はない」

 

 そうして告げた言葉に、軍人は安堵の息を吐き……だが、それを遮るようにヨシサダが口を開く。

 

「シャドウミラーの量産型Wというのは、それ程の力を持っていると? それこそ、アクセル代表が自信を持っている程にですか?」

「うん? ああ。量産型Wの性能は生身の戦いでも、機体を使った戦いでも、この世界の軍人の殆どより上だと思う」

 

 この世界の軍人全てよりも圧倒的に上だと言うつもりはない。

 一部の天才は量産型Wを上回る能力を持っているのは間違いなく、その力を侮るつもりはない。

 純粋に機体性能を考えれば、シャドウに勝つ機体はないだろうが……さて、その辺を連合軍も理解しているのかどうか。

 そんな俺の考えは、次のヨシサダの言葉によって一瞬だけ意表を突かれる。

 

「では、結構です。私は武器を持ち込みません。護衛に関しては全面的にシャドウミラーにお任せします」

「ムネタケ少将!?」

 

 ヨシサダの言葉に真っ先に反応したのは、俺やエザリア、それ以外のシャドウミラーの面子ではなく、ヨシサダの上司の軍人だった。

 

「中将、私の役目を考えると、木連の方々に疑念をもたらすような事はするべきではありません。それにシャドウミラーの実力というのは私よりも中将の方が余程ご存じでしょう?」

「いや、だが……」

「これは、連合軍の為であるのと同時に、私自身の為でもあるのですよ。正直、私は見ての通りそろそろ年ですしね。実際の戦闘をするには年齢を重ね過ぎてしまいました。そう考えれば、私が下手に護身用の武器を持つより、シャドウミラーに任せた方がいいかと」

「それは、確かだが」

 

 上司としては、ヨシサダの言葉は寧ろありがたいのだろう。

 だがそれでも、やはり軍人として武器を持たせないというのは色々と危険だと判断した……といったところか。

 

「中将、私からの要望です。お願い出来ませんか?」

「……分かった。ムネタケ少将の意見を尊重しよう」

 

 こうして、護衛は量産型Wに任される事になった。

 となると、ヨシサダの護衛兼監視役の量産型Wは性能が少しでも上の方がいいな。

 金ぴかの細胞を使った量産型Wに任せたいところだが……能力的には十分なんだが、まだしっかりと暴走だったり、金ぴかの自我が出て来たりしないかという確認は完璧じゃない。

 ここはやっぱり今まで同様に安定性の高い旧式の量産型Wに任せるべきだな。

 

「そのような訳で、よろしくお願いします」

「ああ、こちらもよろしく頼む」

 

 頭を下げてくるヨシサダに俺もそう返事をする。

 にしても、連合軍にも人材はいるよな。

 しかもそれが、あのムネタケの父親だというのだから、色々と思うところはある。

 

「それで、アクセル代表。実際に木星へと向かうのはいつくらいになる予定ですか?」

 

 ヨシサダの上司の言葉に、エザリアの方へと視線を向ける。

 正直、こちらとしては行こうと思えば今日これからでも行けるのだから。

 

「そう、ね。連合軍の方の準備もあるし……十日後といったところでどうかしら」

 

 エザリアの言葉に誰も異論はなく、こうして木星へと向かう日は10日後に決まったのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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