転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1370話

「アクセル代表、この度はこちらの騒動に巻き込んでしまい、大変申し訳ない」

 

 頭を下げる草壁。

 草壁の言っている騒動というのは、昨日メギロートVSバッタの模擬戦を閲覧していた俺達の部屋に襲い掛かって来た者達の件だろう。

 同時に、その後避難しようしていた時に襲い掛かって来た笠の男の件も含まれていると見て間違いない。

 それらを含め、色々と木連にとって大きな失態だったのは間違いない。

 幸い俺達に被害は出なかったが、木連側ではある程度の被害が出たとか何とか。

 こちらに被害が出なかったのは俺という存在がいたからであって、木連には生身での戦闘力が高い者は殆どいないのだから仕方ない。

 

「もうあの騒動は片付いたみたいだが、結局何が原因だったんだ?」

「過激派……と呼ぶべき者達がいるのでしょうな。その者達が言うには、地球と関係を持っているシャドウミラーと友好的に接するのは許される事ではないと」

「なるほど。だからあの笠の男が俺を直接殺しに来た訳か。確かに自分達の代表が殺されるような事になれば、それはお互いに仲良くしようなんて事にはならないだろうし。……それで、あの笠の男は何か喋ったのか?」

 

 俺を直接暗殺しに来たという事は、間違いなく今回の件の詳しい事情を知っている筈だ。

 だとすれば、木連としても何とか情報を得たいと思っているだろう。

 そう思って尋ねたのだが……戻ってきたのは、沈鬱な表情だった。

 

「あの男を捕らえていた部屋に、何者かが入り込んだらしく……」

「殺された、と?」

「はい。折角アクセル代表にあの者を捕らえて貰い、その上でこちらに身柄を引き渡していただいておきながら、申し訳なく思っています」

 

 頭を下げてくる草壁だが……あの笠の男の気配を殺す能力は、シャドウミラーから見れば稚拙とすら言えるレベルだったが、木連の者にとっては十分一流の域だった訳か。

 量産型Wの1人でも貸し出すべきだったか? ……いや、それは無理か。量産型Wはシャドウミラーにとってはレモンの技術の結晶と言ってもいい。

 門世界のオーガを始めとするモンスターや金ぴかの細胞を増殖してまで使用してるんだから、とてもではないが他の組織に貸し出したり譲渡したりなんて真似は出来ない。

 

「だとすれば、結局あの笠の男からは何も情報を聞き出す事は出来なかった……そう思ってよろしいのですか?」

 

 俺の隣に座っていたエザリアの問い掛けに、草壁は申し訳なさそうな表情を浮かべて再度頭を下げる。

 ……さて、どうしたものか。

 そこまで考え、ふと思いつく事があった。

 確かに情報を聞き出すのは無理だったかもしれないが、司法解剖をすれば多少なりも何らかの情報が手に入るのではないかと。

 

「司法解剖はしたのか?」

「……いえ。残念ながら死体は侵入者に持ち去られたようで」

「うん? ちょっと待て。じゃあ、木連としては笠の男の死亡を確認した訳ではないのか?」

「直接は見ておりませんが、監視カメラには残っていました。首を斬り裂かれるところが生々しく」

 

 監視カメラに映像が残っていたとなれば、やっぱり死んだのは確実か。

 けど……

 

「生きてる人間だけならともかく、死体を持って見つからずに逃げ去る? そんな事が出来るのか?」

「やられた以上は出来る、としか私からは言えません」

 

 だろうな。出し抜かれたのだから、そう言うしかないか。

 

「では、草壁中将。その映像データをこちらにも貰えますか? 一応検証してみたいので」

「……検証、ですか」

 

 エザリアの言葉に、少しだけだが草壁の眉が顰められる。

 

「それは、私達木連を信用していないと?」

「別にそうは言いません。ですが、木連では気が付けなかった事でも、シャドウミラーなら気が付けるとは思いませんか? 技術力の違いというのは、こういうところで如実に現れるものですし」

「ですが、それでは私はともかく、今回の件に関わっていた者達が納得出来ないかと。出来れば、こちらを信用して貰いたいのですが」

 

 ……何だ? 何でこうも映像データを渡すのを嫌がる?

 映像データは、ただ1つのものではない。それこそ、コピーしようと思えば簡単にコピー出来る代物だ。

 だとすれば、向こうにそれを拒むような理由なんかはないと思うんだが。

 草壁が理由にしている、今回の件に関わった者が納得出来ないという理由にしても、何らかの情報を少しでも見つける為には、そこまで拘る事じゃないと思う。

 断言出来ないのは、木連はヤマダモドキが大勢いる為だ。

 ヤマダモドキのメンタリティは、時に俺の予想を容易に超える。しかも斜め上の方向に。

 だとすれば、自分達の仕事が信じられないという思いから暴発してしまってもおかしくはない。

 それこそ昨日の再現なんて真似になれば、草壁としても頭が痛いだろうし。

 だが、俺達がそこに腐心してやる必要はない訳で……

 

「草壁、何故そうまで映像データをこっちに引き渡すのを嫌がる? 何か見られては困るようなものでもあるのか?」

「……それは……」

 

 言葉に詰まるとなると、もしかして本当に何か見られたら困るようなものがあるのか?

 

 そんな俺の疑問を読み取ったかのように、草壁は口を開く。

 

「実は、笠の男が殺された映像を見た者がその映像データを消してしまい……」

 

 言いにくそうにしているその言葉だったが、到底見過ごせるものではない。

 

「つまり、笠の男の仲間がいたって事か?」

「いえ、違います。人が直接殺された光景を見た男がショックを受けて発作的に……というのが正しいかと」

「……発作的に?」

 

 いや、初めて人が死ぬ光景を見て、ショックを受けるのは分かる。

 俺自身はもう何人、何十人、何百人、何千人……それこそ何万人もの人の死を見て、そして与えてきた。

 そんな俺だけに、人の死というのには既に慣れというものすら感じている。

 特に戦場ではお互いに殺し、殺される。

 正確には俺を殺す事が出来る者は非常に限られているが、少なくても向こうはそのつもりで掛かってくる事が多い。

 そうである以上、こちらとしても相応の対処をする事になる訳で……いや、今更俺の死生観を考えても意味はないか。

 とにかく、俺は死に慣れているから1人死ぬ程度ならどうという事もないが、普通の人間にとっては、映画とかドラマならともかく、実際に目の前で人が死ぬ光景というのは色々とショックが大きいだろう。

 それも、木連の人間にとって人を殺すというのは地球と戦争をしている割りには驚く程少ない。

 地球との戦争がバッタを始めとした無人機で行われている以上、直接人の死をその目で見る事はまずないし、見るとしても映像データを通してとなるだろう。

 だとすれば、人の死を見た木連の人間が発作的に映像データを消すという行動に移してしまっても無理はない……のか?

 無理はない、ないのかもしれないが……

 

「大きな失態であるのは間違いない事実ですね。今回の件、木連としてはどのように謝罪する気ですか? シャドウミラーの代表でもあるアクセル・アルマーをそちらの内輪揉めに巻き込み、更には暗殺者を送り込まれ、その暗殺者を捕らえたのもアクセル代表。その上捕らえた笠の男を木連に引き渡したにも関わらず、ろくに情報を引き出す事が出来ないまま敵の手で暗殺され、その上犯行が行われた一部始終の映像データも既にないという……正直、これ程木連が当てにならない組織だとは思いませんでした」

 

 ……こうして聞くと、木連は物凄い失態を続けて何度もやってるんだな。

 ちょっと出来過ぎだと思うくらいに。……出来過ぎ? いや、まさかな。そんな事をするメリットは存在しないだろう。

 俺達と敵対しても、向こうにとってはいい事は何もない。……そう、ない筈だ。

 まさか俺を殺せばシャドウミラーが混乱して、それを木連が抑えてシロガネを自分達の物にするなんてのは、シャドウミラーの実力を知っている以上、まず無理だろうし。

 だとすれば、やはり今回の件は偶発的な出来事なんだろう。

 

「汗顔の至りです。そこで、木連としてもシャドウミラーに対して謝罪の気持ちを込めて贈り物をしたいと思います」

「……贈り物、ですか」

 

 エザリアが一瞬俺の方へと視線を向けてくる。

 向こうが何をくれるのかは分からないが、この状況でこちらに渡すというのであれば、相当な代物の筈だ。

 

「その贈り物というのは、具体的に何なんでしょうか?」

「シャドウミラーは、私達木連と同じく無人機を主力としているとか。そこで、虫型戦闘兵器の生産プラントを、と考えているのですが。正直、ゲキガンガー3の豪華セットとどちらがいいか非常に迷ったのですが……」

 

 本気か? ……いや、本気っぽいな。

 虫型戦闘兵器……バッタはともかくとして、正直ゲキガンガー豪華セットとか全くいらないんだが。

 草壁も何を考えてそんな贈り物を……そう言えば草壁も木連の軍人だったな。

 だとすれば、やっぱりそっち系等の趣味があっても仕方がないのか?

 それにバッタの方もぶっちゃけいらないんだが。

 戦闘型じゃないバッタ……それこそ、木連の中で労働力として働いているバッタならまだ使い道もあるけど……ぶっちゃけ、純粋に戦闘兵器として見た場合はどう考えてもメギロートの方が上だ。

 そもそも、主な武器はミサイル。それと対人用くらいにしか使えない機銃くらいしかないし。ああ、体当たりという手段もあるか。……けど、バッタの大きさで体当たりされても、人間とかならともかくメギロートの大きさになると殆ど意味はないんだよな。

 まだナデシコ世界に来たばかりの時であれば、この世界の技術を調べるという意味で十分にバッタも価値はあったかもしれない。

 だが、今となっては木連とのこれまでの戦闘でバッタは無数に入手し、既に余り気味ですらある。

 というか。余ったバッタはキブツへと突っ込まれているらしいし。

 エザリアもそれは理解しているのだろう。草壁の言葉に首を横に振る。

 

「申し訳ありませんが、そちらの虫型戦闘兵器……バッタは、こちらとしてはその生産プラントを貰っても特に利益にはなりません。そちらの気持ちも分かりますが、出来ればもっと別の……そう、チューリップ……そちらが言うところの、次元跳躍門の生産プラントはどうでしょう?」

「さすがにそれは頷けませんな」

 

 草壁としても、木連の戦略の中核を為すチューリップの生産プラントをこちらに寄越すのは避けたいと考えているらしい。

 いや、当然か。ここでもし俺達にチューリップの生産プラントを渡してしまえば、地球との戦いに支障が出るのは間違いない。

 以前であれば、チューリップが多少なくなっても問題はなかった。

 だが、今はナデシコがいる。

 チューリップを容易に破壊出来るだけの攻撃力を持っているナデシコの事を考えれば、出来るだけチューリップの数は温存しておきたいし、作り出すプラントも手元に置いておきたいと考えるのが当然だろう。

 

「確かに木連にとってチューリップというのは、非常に重要な施設でしょう。ですが、その重要な施設を私達に譲渡する事こそ、謝罪の気持ちを表していると言えるのでは?」

「それは……」

「そもそも、そちらはアクセル代表が暗殺者に狙われるというような事になった意味をしっかりと理解していますか? このままではシャドウミラーと木連の間にある友好関係は、すぐにでも消滅してしまいかねません。そうなれば、私達シャドウミラーとしては木連ではなく、もう一方の勢力と手を組む事になるという可能性は十分にあります。それを理解した上で判断して欲しいのですが」

「脅し……ですか」

 

 少し……本当に少しだけだが、苦々しげな表情を浮かべた草壁の言葉に、エザリアが返したのは綺麗な笑みだった。

 ……ただし、どちらかと言えば氷の微笑と表現するのが正しいだろう微笑だが。

 

「まさか。そんな事は考えていません。ですが、シャドウミラーとして取るべき選択というのは、十分に考える必要があります。その際に、今回の件が重要な意味を持つというのを理解して貰えれば、こちらとしても助かります」

「……こちらとしては、虫型戦闘兵器の生産プラントの譲渡というのが最大限可能な譲歩なのです。上層部も、空間跳躍門の生産プラントを渡すという事には、どうあっても賛成しないでしょう」

「そうでしょうか? そもそも、現在の木連では草壁中将が実質的な木連の指導者という事になっているという話も聞きますが?」

「デマですな。木連には私よりも上の存在はきちんといます」

「その割りには、私達とは会ってませんけど?」

「こちらにも、その、色々とあるのですよ。……ともかく、こちらとしては空間跳躍門の生産プラントを下さい、はいどうぞとは言えません。であれば、一度戻って相談したいのですが……」

 

 結局この日の会談はこれで終わり、チューリップの生産プラントの件については後日改めてという事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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