転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1375話

 地球と木連の会談。言葉で言うのは簡単だったが、それは決して和やかとは言えない雰囲気で始まった。

 これまでの成り行きを思えばそれは不思議でも何でもなく、寧ろ当然と言うべきだろう。

 会談に参加しているのは、地球からは連合軍総司令のグリューノ、ヨシサダを俺達に推薦したミスマル、そしてヨシサダもアドバイザー的な感じで向こう側に参加しており、他にも連合政府からの人間なのか、以前俺達シャドウミラーと会談した時に見た顔の人物が二人の合計五人。

 それに対して、木連からは草壁、白鳥、月臣の三人のみ。

 木連の規模を考えれば、参加人数の差は仕方がない……のだろう。多分。

 シャドウミラーからは、立ち合いという扱いなので俺だけ。

 当然立ち合いである以上、基本的に俺は会談に参加する事はない。

 求められた時にだけ意見を言う形だ。

 ……よく考えてみれば、俺の立場ってシャドウミラーの代表な訳で。

 そう考えると、立ち合いを俺がやる必要は必ずしもないような気がするんだが……いや、今更考えるべき事じゃないと思うんだけど。

 

「木連、突撃宇宙軍優人部隊隊長、草壁春樹中将だ」

「地球連合軍総司令官、グリューノ・ブルスだ」

 

 お互い、最初の挨拶として自己紹介をし、他のメンバーもそれぞれ自己紹介をしていく。

 ……ただし、その自己紹介はどこか張り詰めた……いや、緊張した空気が漂っている。

 そうして自己紹介が終わり、最初に口を開いたのは草壁。

 

「まず最初に言っておく。今回会談を行う事になったのは、シャドウミラーからの仲介があった為だ。こちらとしては悪の地球に対しての感情は決して収まった訳ではない」

 

 俺に対する口の利き方と大きく違うが、草壁にとって相手が地球となれば、それも仕方がないのだろう。

 そもそも、木連の人間の多くがこの会談に対して反対だって話だったし。

 それでも地球の情報を少しでも得る為に、敵を知り、味方を知れば百発百中とか秋山が言って説得したとかなんとか。……色々混ざってるが、それは気にしないでおくとして。

 ともあれ、いきなり悪の地球呼ばわりされればグリューノも気分が悪いのは当然だった。

 

「悪の地球というのは、少し言い過ぎではないかな? 我々地球にしてみれば、侵略戦争を仕掛けてきている木連こそが悪という認識なのだが」

「何だと!」

 

 グリューノの言葉に、反射的に月臣が叫びかけるが……

 

「元一朗!」

 

 白鳥が月臣の肩へと手を伸ばすと、月臣もそれ以上は何も言わずに黙り込む。

 それを確認すると、再び草壁が口を開く。

 

「部下が失礼をした。だが、見て貰った通り、今のが木連の地球に対する一般的な反応だ。そもそも侵略戦争と言うが、こちらが送った使者を暗殺して闇に葬ってこの戦争の切っ掛けを作ったのは、他ならぬそちらだ。であれば、戦争の原因をこちらに擦り付けるのは盗っ人猛々しいと言うべきでは?」

「だが、今回の戦争でこちらが受けた被害は木星蜥蜴……いや、木連とは比べものにならない程に大きい」

「それが? 今も言ったが、そもそも戦争の原因を作ったのは、あくまでもそちらだ。そうであれば、被害が大きいというのも自業自得、それこそ天罰と呼ぶべきものだと思うが?」

 

 ピクリ、と。草壁の話を聞いていたグリューノの額が微かに痙攣するのが見えた。

 元々グリューノはそれ程我慢強い方じゃないしな。……だからこそ木連の使者の暗殺なんて真似をしたんだろうが。

 いや、それとも実は暗殺を行ったのはグリューノの部下の独断専行なのか? ……あやか達に対して夜の接待を要求してくるようなのが上層部にいると考えれば、必ずしもそれは否定出来ないか。

 うん? 夜の接待を要求してきたのは、連合政府の上層部だったか? それとも連合軍だったか……ともあれ、地球のお偉方だというのは間違いがない訳だが。

 

「ま、ま。お互い喧嘩腰にはならずに、その辺で。幸い、今回はこうして会談を行う事が出来た訳ですから。折角の機会を有効に使いましょう。何でも聞いた話によると、和平に関しての条件があるという話でしたが……その辺を詳しく聞かせて貰えないでしょうか?」

 

 ミスマルの言葉に、グリューノと草壁が言い争いを一時中断する。

 そして視線が集まったのを見て、ミスマルは小さく咳払いと共に再び口を開く。

 

「アクセル代表とシャドウミラーの協力によって得られたこの会談、お互いに色々と言いたい事があるのも分かりますが、建設的に行うべきでは? このままお互いの不満を口にするだけでは、意味がないでしょう」

「……そうだな。確かにこのまま地球側の言い訳を聞いているだけでは話が進まない。より建設的な話し合いをしたいというのは、こちらも賛成だ」

 

 草壁の当て擦りのような言い方にグリューノが再びコメカミをヒクリとさせる。

 だが、それでもここで何かを言い返せば話が拗れると思ったのか、頷くだけでミスマルの意見に同意する。

 

「それで、どうすれば和平を結ぶのか……その条件をお話いただけますかな」

 

 ヨシサダの言葉に、一瞬草壁が俺の方へと視線を向ける。

 何だ? 別に俺の方を見る必要はないと思うんだが。

 そんな風に疑問を抱いていると、すぐに草壁は俺から視線を離してヨシサダの方へと……いや、グリューノの方へと向き直って口を開く。

 

「まず最初に要求するのは、100年前に月の独立運動の際に連合軍や連合政府の陰謀によって我々の祖先が月を追い出されたと公表する事」

 

 まぁ、これは当然だろうな。今の木連が出来た原因の1つでもあるし。だが、それを言うという事は……

 そんな俺の疑問は、次の瞬間草壁の口から出た言葉により決定的となる。

 

「その後、火星に移住した我々の先祖に対して警告もなしで問答無用に核ミサイルを撃ち込んだ件もきちんと発表して自らの過ちを認める事」

 

 あー……やっぱりそう来るよな。核ミサイルを撃ち込まれたというのは、それ程までに許しがたい事なのだろう。

 最近でこそナデシコや木連の兵器によって重力波砲の類が広まってきたが、それまで最強の威力として兵器の頂点に君臨してきた核兵器というのは、それだけ大きな存在となっている。

 同時に核兵器には放射能の問題もあって、どうしても拒絶反応を起こす者が多い。

 それは、今になっても変わらないという事なのだろう。

 事実、グリューノを始めとしてミスマルまでもが厳しい表情を浮かべているのだから。

 

「……それは、難しいと言わざるを得ない」

 

 グリューノの口から押し出されるようにして呟かれたその言葉は、予想通りのものだった。

 連合軍総司令官として、月の事はともかく、火星の核に関しては絶対に譲れないのだろう。

 だが、草壁の言葉はまだ終わっていない。

 グリューノの言葉をスルーして、和平の条件についての話を続ける。

 

「次に、木連が地球に送った使者を殺した事。これについてもきちんと公表し、自分達がどのような行為をしたのかを世間に知らしめる必要がある」

 

 グリューノの表情が、核の時と合わせて更に一段険しくなる。

 

「それらの件と合わせ、連合軍や連合政府には統治能力が非常に怪しいと考えられる。よって、木連から監査を派遣し、それぞれの行動を常に監査する事とする。尚、この監査に関しては、取りあえず10年を目処にしており、それで連合軍と連合政府の行動が是正されたようであれば、監査の終わりとする」

「ふざけるなっ!」

 

 拳を机へと叩きつけるグリューノだったが、まさかここまで高圧的な件を出してくるというのは俺も思っていなかった。

 

「最後に、これまで行ってきた木連への賠償金として日本円にて200兆円を要求する」

 

 その言葉に、グリューノは既に声すら出さず、ただ草壁を睨み付ける。

 草壁から出された条件の殆どは、まず呑む事が出来ない為だろう。

 

「落ち着いて下さい、総司令。この場はあくまでも会談の場。お互いの意見を話し合うべき場所です。ここでお互いに非難をしても、何も変わりません」

 

 ミスマルがグリューノを落ち着かせるように告げるが、そのミスマルの表情もグリューノ同様に厳しいものがある。

 ヨシサダや他の随員も、厳しい表情なのは変わらない。

 草壁の出した条件というのは、それ程に厳しいものだった。

 

「……草壁中将、その条件はさすがにこちらも呑めません。どうにかもう少し受け入れやすいものにして頂く事は出来ませんかな」

「無理だな。正直なところを言わせて貰えば、木連における地球への条件という意味では、これでも随分と軽いものだと言える。中には地球が無条件降伏してくるまで徹底的に戦うべきだと言っている者も多いのだよ。そのような条件に比べれば、まだ受け入れ可能なものだと思うが?」

 

 そう告げる草壁の言葉に冗談の類はない。

 いや、それどころか、月臣が頷いている光景を見れば、確かにその言葉は真実なのだろうと理解出来る。

 勿論月臣が木連全ての意見を司っているわけではないだろうが、良くも悪くも感情をストレートに出す男だ。

 そして木連の人間の性格を考えれば、月臣の反応が一般的なものだと思っても決して間違いではない。

 ……白鳥の方は月臣程には表情を露わにしていないが、それでも表情の端々から草壁の言葉に同意しているのが窺える。

 どうやら、木連の地球に対する恨み辛みというのは、俺が……そしてグリューノ達が予想していた以上に大きかったらしい。

 

「月の件については、こちらとしても可能でしょう。ですが、それ以外……特に火星の核や使者の暗殺といったことを公表してしまえば、地球では大きな騒ぎとなります。それこそ、木連が嘘を言っているとして敵意を増すだけになるかもしれませんが?」

「ほう? さすがに悪の地球だけあって、真実を公表されると困るから、それを隠蔽しようという訳か」

「そこまでは言いません。ですが、将来ならともかく今は無理かと。……20、いえ10年後の公表という事ではどうでしょう?」

「ミスマル提督!」

 

 自分を余所に交渉をされているというのが許せなかったのか、それとも単純に地球にとって不利に過ぎると思ったのか。

 ともあれ、グリューノがミスマルを叱責するような声を出す。

 その気持ちは分からないでもない。

 グリューノは、地球連合軍の総司令という立場だが、実際には連合政府をも思い通りに出来るだけの権力を持つ。

 つまり、連合軍ではなく地球の総司令と表現してもいいような人物だ。

 そんな人物が地球が不利になるような事実の公表を認められる訳もない。

 だが、ミスマルはそんなグリューノへと落ち着かせるように口を開く。

 

「グリューノ司令、ここで少しでも話を詰めておかなければ、これからも戦争が続く事になります。そうなれば、我々の側が多くの被害を受ける事になるのですよ」

「そちらの軍人は状況を良く理解しているようで何よりだ。だが……生憎と、木連としては事実の公表を待つ事は出来ない。正直、今私が言った条件でもかなり譲歩しての結果なのだ。これ以上の譲歩はまず不可能だと思って頂きたい。悪の地球としては、この辺で事態の収拾を図った方がいいと思うが?」

「その、悪の地球という表現は出来れば止めて貰いたいのですが」

 

 少し言いにくそうなミスマル。

 その隣では、ヨシサダを含めた他の随行員達もそれぞれミスマルの言葉に同意するように頷いていた。

 まぁ、悪呼ばわりされて嬉しい奴なんて、そうはいないか。

 

「だが、我々にとって地球とは悪の象徴。事実、そう言われるだけの事をしてきたのも事実では?」

「それは……そうですが……」

 

 それから1時間程会談が進むが、お互いが自分の意見を押し通そうとしているだけで、とてもではないが交渉が纏まる様子はなかった。

 木連はあの条件が最低条件であり、それを譲る事は絶対に出来ないと告げ、地球側は絶対にそれを呑めないと。

 最終的には何も決まる事はないままに会談の予定時間は過ぎ去り、終了を向かえる。

 結局お互いに歩み合うという事は出来なかったな。

 まぁ、それでもこの辺は予定通りとも言える。

 何も一回会談をしただけで、全てが解決するとは思ってもいなかったし。

 だとすれば、お互いに面識を持っただけで今回の会談の最低限の成功ではあると言ってもいい。

 それに、和平交渉をする時のパイプを作る事は出来たのだから。

 後は……

 

「さて、そろそろ会談も終わりだが、この後の件は聞いているな?」

 

 俺の口から出た言葉に、その場にいた全員が頷きを返す。

 正直、今回の会談は重要だったが、この後に行われる行為の方もまた重要だった。

 即ち……

 

「ホワイトスターへの招待、このナデシコ世界ではお前達が2組目となる」

 

 そう、地球と木星のトップをホワイトスターへと招待する事だ。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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