転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1404話

 ネルガル月ドックの3番ドックに入港したシロガネを待っていたのは、予想外の歓迎だった。……いや、予想外と言う程でもないか。

 この月ドックにいた者達にとって、賊軍に襲われるような事になれば全滅していた可能性が高い。

 それを防ぐという意味でも、シャドウミラーという存在は非常にありがたかった……それこそ地獄に仏くらいの救い主だったのは間違いないのだから。

 

「よく来てくれたねアクセル。それにシャドウミラーの方々。この月ドックを我が家だと思って、思う存分寛いで欲しい。それにしてもアクセルとこうして会うのも久しぶりだ」

「いや、ついさっき映像モニタで話しただろ」

「何を言ってるのさ。こうやって直接会うのは久しぶりって意味だよ。勿論通信をして会話をすることは難しくはない。だがしかし、それでもこうして直接会うというのは大きな意味を持っているのさ。その辺はアクセルも理解しているだろう?」

 

 そう言ったアカツキの視線は、俺ではなく、俺達を歓迎するために動員されたメンバー……特にその中にいたミナトとエリナの方へと向けられていた。

 何となくアカツキの言いたい事を理解した俺は、小さく肩を竦めてから口を開く。

 

「まぁな」

「だろう? アクセルを待ってる人も多い。そういう人達の為にも、是非時間を取ったらどうだい? 勿論僕としては賊軍が襲ってきた時に腰が痛くて出撃出来ませんでしたとか言われなければ、何をしてもOKだよ」

「……会長……」

 

 ボソリ、と。アカツキの後ろにやって来ていたエリナが、その耳元で呟く。

 その呟きに何を感じ取ったのか、アカツキは見事にその動きが固まる。

 

「……さぁ、皆さん。取りあえず一休みする場所に案内しますので、こちらにどうぞ。色々とこのドックについての説明や、どうやって防衛するかといった事も説明しないといけませんので」

 

 そんなエリナに、俺達はドックの中にある会議室へと案内される。

 ちなみに、案内されたのは俺とナタルの2人だけだ。

 円と美砂は一応念の為という事でシロガネに残っている。

 ……量産型Wもいるし、その辺の心配はいらないと思うんだが。

 ただ、円も美砂も生身の戦闘という点では実働班の中でもトップクラスの腕を持つ。

 イザークですら勝てないんだから、その実力は推して知るべきだろう。

 いや、単純に実働班がPTとかの操縦訓練をしている時間を円や美砂は生身での戦闘訓練に当てているから、どうしても訓練時間が違うんだし、仕方ないんだろうが。

 魔法球を使えばその辺は解決出来そうだけど、今のところはそこまでムキにはなっていないらしい。

 寧ろイザークの場合はPTの操縦訓練の方を重視している。

 基本的に生身での戦いとPTでの戦いのどちらが多いかと言われれば、勿論PTに乗っての戦いなのは事実だ。

 実際に生身での戦いなんて殆ど起きないしな。

 ……それにイザークの場合は俺への対抗心もある。

 そういう意味で、やはりPTの操縦訓練を重視するのは当然なのだろう。

 

「賊軍が攻撃してくるという話ですが、具体的にいつというのは分かっているのですか?」

 

 月ドックの通路を歩きながら尋ねるナタルに、アカツキは首を横に振る。

 

「まだしっかりとした日付は分からないけど、間違いなく攻撃してくる筈だよ。戦力を集めてるって話だし」

「戦力を集めているのですか? では、いっそこちらから攻撃を仕掛けては? そうすれば向こうに先制攻撃を許して、この月ドックが被害を受ける事もありませんが」

「そうだね、僕としても出来ればその選択をしたいんだけど……」

 

 口籠もるアカツキの表情には、一瞬だけだが悔しそうな色が浮かぶ。

 ……なるほど。可能であればアカツキとしても先制攻撃を選びたかった訳か。

 ただ、それが不可能な状態にある、と。

 何が理由だ?

 

「とにかく、こちらとしては向こうが攻撃を仕掛けてきたらそれを迎え撃つという方向に話を進める必要があるんだ。……今回の件は、賊軍もかなりの戦力を動員しているから、それを一網打尽にする好機だと言われればその通りなんだけど……」

「それが狙いか」

「そ。……今回の件は大規模な会戦という扱いにして、賊軍の士気を一気に落とすという案があってね」

「……それなら別にこっちから奇襲を仕掛けて向こうの戦力を殲滅しても結果としては変わらないんじゃないか?」

 

 そんな俺の疑問に、アカツキは首を横に振る。

 

「こっちが有利な状況で一方的に勝つよりも、敵が攻撃を仕掛けてきて向こうが有利な状況から一気に逆転をした方が向こうの士気を挫けるんだってさ。しかもその光景を映像に残して大々的に使いたいらしい」

 

 まぁ、その考えは分からないでもないが……なるほど、何でシャドウミラーに協力を要請してきたのかと思ったら、そういう問題があったのか。

 ナデシコ世界において、ナデシコは極めて強力な戦力だ。

 木連のヤンマを始めとした相手に対してはそこまで一方的な戦力とはならないが、連合軍の戦力に関して言えば圧倒的と言ってもいい。

 だがそれも、こちらが主導権を握っての事だ。

 特に防衛戦となると、ナデシコのような強力な戦闘力を持っていても単艦では全方位から攻撃された時に対処が出来ない。

 この辺は、以前シャドウミラーがサツキミドリ2号を救援に行った時と同じだ。

 あの時もサツキミドリ2号が木連の無人機に包囲されている状況だった。

 それを俺達が助けに行った時も、個々の戦力としては圧倒的だったが向こうの手数をどうにかするのが難しく……それでも強引に何とかしたが、それだって実働班という戦力があっての事。

 だが、ナデシコの場合はあくまでもナデシコ1隻しか存在しない。

 一応エステバリスも賊軍の戦力に比べると圧倒的な性能を持ってはいるのだが、ナデシコからあまり離れられないという欠点がある。

 その辺を考えると、やはり手数が足りないというのは問題になるだろう。

 

「それで俺達、か」

「そうだね。この月面ドックはどうしても陥落なんて事はさせたくないんだ。ミスマル提督からも、その辺はくれぐれもって言われてるし」

「まぁ、いざとなったらメギロートやシャドウを駐留させればそれでいいから何とでも出来るけどな」

「あはは。シャドウミラーの戦力は羨ましいよ」

 

 アカツキがそう告げるのと同時に、とある部屋の前で足を止める。

 

「さ、入ってくれ。取りあえず現在の状況とか、その辺をしっかりと見てくる必要があるだろうし、事態が動くまではここで待機してて欲しい」

「……いいのか? いや、俺としては嬉しいけど」

 

 休むというだけなら、それこそシロガネで休むというのも普通にありだろう。

 だがこの月ドックについての情報を多少なりとも得ておきたいと思うのは間違いない事実であり……そういう意味では、ここで暇潰しをしてもいいってのは俺に取って嬉しい限りだ。

 いやまぁ、アカツキもそれを理解した上でこうして部屋を用意したんだろうが。

 

「ああ、それとエリナ君。君も暫くはアクセルの相手をしてくれ」

「なっ!? アカツキ会長、それは……」

 

 アカツキが言外に込めた言葉の意味を理解したのだろう。エリナの頬が真っ赤に染まる。

 

「いいから、いいから。折角こうしてアクセルを招待したんだから、ホストとして持てなすのは当然だろ? それに、今すぐに事態が動くとは思えないしね」

「それはそうですけど……でも、私の立場としては……」

「エリナ君の立場だからこそ、今アクセルやナタルさんの相手をするのが重要なんだろ? コネってのは重要なものだってのはエリナ君も知ってるだろ?」

「それは……そうですけど」

 

 アカツキの秘書をしているだけに、当然コネが重要だというのはエリナも理解してるだろう。

 いや、寧ろエリナこそがコネの重要さを一番良く理解していると言ってもいい。

 

「……分かりました。ですが、何かあったらすぐに連絡をして下さい」

 

 そう告げると、エリナは部屋の扉を開く。

 そんなエリナの耳元でアカツキが何かを呟くと、次の瞬間にはエリナの顔が真っ赤に染まり、厳しい視線で睨み付ける。

 ……アカツキの性格を考えれば、どんな事を言ったのかが容易に想像出来てしまう。

 

「おお、怖い怖い。じゃあ僕は情報を集める必要があるからちょっと行くね」

「普通なら情報を集めるのは秘書とかの役目だと思うんだけどな」

「ははは。普通ならそうかもしれないけど、今回は色々と特殊だし。それにアクセルだって僕といるよりはエリナ君と一緒にいた方がいいだろ?」

 

 小さく肩を竦めてウィンクをすると、アカツキはそのまま去って行く。

 

「はぁ……全く。失礼しました。では、どうぞ」

 

 溜息を吐いてアカツキを見送ったエリナが、俺とナタルを部屋の中に案内する。

 何故かナタルがエリナへと同情の視線を向けていたのだが……この辺は苦労性で生真面目な性格をしているからこそ分かる同情か。

 扉の先にあったのは、かなり設備の整った部屋。

 スイートルーム……とまではさすがに言えないが、それでもかなり上質な家具の数々が揃っている。

 

「これは、また……てっきりブリーフィングルームの類かと思ってたんだけど、随分といい部屋だな」

「ええ。一応この部屋はVIP用の部屋として設計されているから。アクセルには丁度いい部屋でしょう?」

 

 笑みを浮かべて告げてくるエリナに頷きを返す。

 この部屋を居心地の悪い部屋だと言うような奴がいたとすれば、それは俺よりも遙かに贅沢慣れしている奴だろう。……いや、俺がそもそも贅沢にはあまり縁がないから、俺より贅沢慣れした奴なんて幾らでもいるだろうけど。

 正直、贅沢をしようと思えば幾らでも出来る。

 それが出来るだけの財力はあるし、権力もある。その上で力すらある。

 だが……それでも俺はそこまで贅沢は好まない。

 いや、レモン達のような最高の女を複数恋人にしているのが贅沢じゃないのかとか、ニーズヘッグというオーパーツ的な存在と言ってもいいような機体に乗っているのとか、魔法球で時間を有り得ないくらい有効に使えるのとか、混沌精霊となったことで不老になったとか……うん、そう考えると物凄い贅沢をしているように思えるし、実際に贅沢をしているな。

 ただそれでも、一般的な人が言うような贅沢という意味では、それ程でもない。

 食事に関しても、カレーライスとか普通に食べるし。

 ……あ、でもカレーに使うトッピングが20も30もあるようなのは贅沢と言えるか?

 

「コーヒーでも飲む?」

「いや、紅茶で頼む」

 

 そう言えばエリナには俺が紅茶派だってのは言ってなかったか? いや、言ったような気もするが、そこまで大事だとは思ってなかったとか。

 うん、何だか普通にありそうな気がする。

 ともあれ、エリナは俺の言葉に頷いて次にナタルへと視線を向ける。

 

「貴方は?」

「どちらでもいいのだが……手間の問題も考えて紅茶にしておこう」

「そう、じゃあちょっと待っててね」

 

 部屋に用意されている道具を使い、紅茶を淹れていくエリナ。

 俺とナタルは特にやる事もないので、そんなエリナの様子を眺める。

 ……へぇ、随分とさまになっている。

 ネルガルの会長秘書ともなれば、やっぱり紅茶とかコーヒーを淹れる技能も要求されるんだろう。

 ネギ辺りがエリナの紅茶を淹れる様子を見れば、恐らく絶賛する筈だ。

 

「どうぞ」

 

 そう言ってエリナが俺とナタルの前に紅茶を出す。

 

「エリナ、お前も飲めよ」

「え? その、いいの?」

「ああ。どのみちここにいるのは俺とナタルとお前だけだ。別によそ行きの顔を取り繕う必要もないだろ」

 

 エリナの視線がナタルへと向けられ……やがて、少し考えた後で頷くと、エリナは自分の紅茶も淹れて俺の向かいへと座る。

 

「初めまして……という訳ではないですが、きちんと自己紹介はしてませんでしたね。私はナタル・バジルール。シャドウミラーの旗艦シロガネの艦長をしています」

「うん? ナタル・フラガじゃないのか?」

 

 ふと疑問に思い、尋ねる。

 ナタルがムウと結婚した以上、名字が変わっていてもおかしくはない筈だが……

 だが、そんな俺の言葉を聞いたナタルは、慌てて首を横に振って叫ぶ。

 

「ば、いいんだ、ナタル・バジルールで! 名前はそのままにしているんだから!」

「なるほど、夫婦別姓って奴か。……まぁ、そっちの方が混乱しないと言えば混乱しないしな」

「……ナタル、だったわよね。貴方も随分と苦労してそうね」

「分かるか?」

「ええ。一応私もナデシコでアクセルと一緒の時間を過ごしたから、余計にね」

 

 何だか一瞬にして分かり合っているこの2人。

 相性は決して悪くないんだろうと思える2人だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:465
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1200

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