転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1432話

 木連が白鳥を始めとする穏健派若手将校――月臣を穏健派と呼んでいいのかどうかは疑問だが――のクーデターが終結してから、一週間。

 ちなみに当初は革命という言葉を使っていたのだが、木連の人間にとっては革命よりもクーデターという単語の方が使いやすかったらしく、結局あの騒動は月臣の『熱血は盲信にあらず』という檄の言葉から熱血クーデターという名前で広まっている。

 ともあれ、事を起こすのよりもそれが終わってからの方が忙しいのは当然だった。

 草壁と一緒に行方不明になった人物には、木連の中で高い地位にあった者も多数おり、結果として一時的に木連内部が混乱することになってしまったのだ。

 白鳥や秋山、月臣、高杉といった者達が何とか人を派遣してその混乱を収め、ようやく木連も普通に動くようになってきたのが、つい数日程前の話だ。

 それを見届け、生産プラントに関してはゲートの通信機能を使ってエザリアと白鳥が交渉をし……何だかんだと、エザリアに惚れた弱みのある白鳥が始終押されていたが、それでも月臣や秋山といった者達がフォローをしたおかげで無事に話が纏まる事になった。

 最終的にこちらが得たのは、チューリップの生産プラントが5、ヤンマの生産プラントが10、カトンボの生産プラントが7、バッタの生産プラントが3と、中々の収穫となったと言ってもいい。

 エザリア頑張り過ぎだろうと思ったのは俺だけじゃない筈だ。

 

「そんな訳で、俺達はそろそろ帰るが……木連の方はよろしく頼むぞ」

「はい。まだ混乱は完全に収まっていませんので、この混乱が収まったら木連として地球に向かい、討伐軍との間に協力態勢を整えるつもりです」

 

 白鳥の言葉に、周囲にいる秋山や月臣、高杉といった者達がそれぞれ頷きを返す。

 ……高杉の視線が神楽坂に向けられているのは多少気になるが。

 神楽坂も高杉の視線についてはどのような意味なのかを理解してしまった為だろう。少し居心地が悪そうにしている。

 

「ぷんぷん。結局家には殆ど来なかったじゃない。また今度木連に来たら、きちんと顔を出しなさいよ!」

 

 何故か見送りに来ているユキナが、頬を膨らませて不機嫌そうにそう告げる。

 いやまぁ、白鳥の妹なんだからここにいてもおかしくはないんだが。

 ちなみに白鳥が木連の正式なトップに立った……という訳ではない。

 草壁が実質的な木連の指導者であっても、名目上の上層部は存在していた。

 それは白鳥達が木連の主流派になっても変わらないので、今後も木連の代表はまだ俺が顔を見た事もないような連中になるのだろう。

 ……いやまぁ、ここに俺達はいない事になってるのでここに顔を出せないのも分かるが、それでもお忍びで顔を見せてもいいと思うんだけどな。

 何か考えがあってこうしているのか、それとも単純にシャドウミラーという存在に対して恐怖を抱いているのか。はたまたそれ以外の何かの理由があるのか。

 正確な答えは分からないが、それでも向こうは姿を現さないのだから、俺が気にする必要もないだろう。

 結果として、シャドウミラーの認識では木連のトップが白鳥達という認識になるだけで。

 

「神楽坂さん!」

 

 ふと、別れの挨拶もそろそろ終わるかといったところで、そんな声が周囲に響く。

 誰の声なのかというのは考えるまでもない。

 皆の注目を集めたのだが、高杉自身は全くそれに気が付いた様子もなく神楽坂の前へと進み出る。

 神楽坂の方は、そんな高杉に向かって少し複雑な表情を向けていた。

 当然だろう。キッパリと振った男が、またもや告白をしかねないと思しき勢いで話し掛けてきたのだから。

 全員の視線を向けられているのにも気が付かず、高杉は小さく深呼吸してから口を開く。

 

「神楽坂さん。その……これから地球では戦いが続くと思います。神楽坂さんは強いと言っても、女性なのは間違いありません。くれぐれもお気を付けて!」

「え? あ、あー……その……」

 

 神楽坂は困った様子を見せながら、頬を掻き……やがて何故かその視線は俺へと向けられる。

 どうにかしてよ、と目で訴えてくる神楽坂。

 一度振った相手だけに、こうして自分の安全を祈られるというのは居心地の悪いものがあるのだろう。

 高杉も、現状で再び神楽坂に言い寄るのではなく無事を祈るというのは……白鳥の知り合いだけあって、性格はいいんだよな。……いい性格と性格がいいだと意味合いが大きく違うが。

 もっとも高杉をいつまでもこのままにはしておけないだろう。

 何故かユキナも興味深そうな視線を高杉に向けてるし。

 この辺、ユキナが子供でも……いや、子供だからこそ恋愛に強い興味を持っているって事なんだろうな。

 

「ワクワク、ワクワク」

 

 相変わらず自分の感情を擬音で表し、更にそれを口にするという癖は直っていないらしい。

 そんなユキナの視線が神楽坂へと向けられている中、助けを求められた俺はしょうがなく神楽坂の方に近づいて行く。

 正直、ここで口を出せば更に高杉の誤解……俺と神楽坂が付き合っているという、そんな有り得ない誤解を強めるように思うのだが。

 それでも助けを求められたのだから、放っておく事は出来ない。

 

「安心しろ、高杉。神楽坂はこの世界の住人を相手にしても全く問題なく倒す事が出来る」

「……ちょっと」

 

 うん? 今ので何か不満だったのか? 神楽坂は俺へと不満そうなジト目を向けてくる。

 だが、現状では特に何を言う気もないのか、不満そうな表情をしつつもそれ以上は言葉に出さない。

 

「……アクセル代表……神楽坂さんとお幸せにっ!」

 

 高杉の方も、俺を見てそう叫ぶとその場から走り去って行く。

 いやまぁ、うん。何をしたいんだろうな、あいつ。

 神楽坂の事を諦め切れないのか?

 

「アスナ、モテモテやな」

「ちょっ、このか。いきなり何言ってるのよ」

「うんー? ただ、アスナはモテモテで羨ましいなーって」

「な、何よ。あんただって……」

 

 そこで一旦言葉を切った神楽坂は、桜咲へと視線を向ける。

 その視線を向けられて嫌な予感でもしたのか、桜咲が何か口を開こうとして……

 

「ま、このかは刹那さんがいるから、将来は安泰だもんね」

「なぁっ! ちょっ、ちょっとアスナさん!? 何故に私に飛び火!?」

「だってこのかの失態は刹那さんの失態でしょ? 恋人なんだし」

「うー、あー……」

 

 何だかいつの間にか話が逸れて、桜咲をからかう感じになってるな。

 いやまぁ、別にそれならそれでいいんだが。

 桜咲も、普段は凜々しい系の美人でクールビューティと言ってもいいのに、エザリアやエリナと違って少し喋るとすぐにボロが出る。

 ……そういう意味だと神楽坂も同じ感じか。

 こっちは外見だけは誰も文句を付けられないレベルの美人だが、喋ると残念さを露呈してしまう。

 いやまぁ、普通に考えればパーフェクトな美人よりもどこか隙のある女の方が人気ありそうだけど。

 

「ほら、話はそれくらいにしろ。そろそろ出発するんだからな」

「それにしても、何だかんだと木連に来てから結構な時間が経ったけど……こうして見ると、このコンテナを見て懐かしくなるとは思わなかったわ」

 

 俺の隣に来たエリナが、後ろにあるコンテナを眺めながらそう告げる。

 

「俺達が木連にいた間の殆どの時間をコンテナの中で過ごしていたんだから、そう思ってしまうのは仕方ないだろ。特にエリナの場合は自衛も難しかったし……」

「一応ある程度の護身術は習ってるんだけど?」

 

 それは分からないでもない。

 エリナは間違いなく美人と呼べるだけの容姿をしているし、ネルガルの会長秘書という立場でもある。また、本人も気が強いのだから人に狙われるという危険は幾らでもある。

 特に女であるエリナは、そういう下種な欲望を持っている奴に襲われる可能性もあるだろう。

 その辺を考えると、護身術を習っていてもおかしくはないのだが……

 

「それでも、こう言ってはなんだがエリナ程度の腕だと殆ど意味がないのも事実なんだよな」

「……それ、どういう意味?」

 

 少し不満そうな様子のエリナだったが、俺は視線を高杉……はいないので、月臣の方へと向ける。

 聞いた話だと、高杉には及ばないが月臣も木連の中ではトップクラスの使い手らしいし。

 

「月臣とかの強さを考えると、エリナが中途半端に護身術を使っても、殆ど役に立たないだろ」

 

 護身術はあくまでも護身術でしかない。

 いや、勿論護身術だからって甘く見ている訳じゃない。本当に極めれば護身術であっても非常に強力だというのはこれまで色々と見てきているので理解しているし。

 だが……エリナの場合は護身術を極めたって程じゃない。

 そもそも護身術の修行以外にもやる事が多くあるのだから、1つの事に集中出来ないという問題がある。

 エリナ自身は身体を動かすのがそんなに苦手って訳じゃないし、頭もいいので才色兼備って表現が相応しいんだろうが……それでも魔法球とかもない、普通の時間の流れに身を委ねているのだから、何でもかんでも極められるって訳じゃない。

 そういう意味で、シャドウミラーかそうじゃないかってのは大きく違う意味を持つんだよな。まぁ、それは最高機密なので、シャドウミラー以外の連中には全く分からないが。

 

「……分かってるわよ」

 

 エリナも、自分が月臣に勝てないというのは理解しているのか、短くそう答える。

 

「それより、このコンテナはどうするの? もし良ければネルガルに譲って欲しいんだけど」

 

 そう告げたのは、単純にこのコンテナに対して懐かしさを感じているから……というだけではないだろう。

 このコンテナ自体かなり丈夫なのだから、何かの時に避難シェルターとして使えると思ったのもあるだろう。

 この辺、ネルガルの会長秘書だけあって目敏い。

 実際、このコンテナは宇宙空間でも普通に過ごす事が出来るのだから、避難シェルターとしてだけではなく、脱出艇や脱出ポッドとして使おうと思えば普通に使える。

 技術的にもシャドウミラーの秘匿技術の類は使われていないので、問題なく譲渡してもいいと思うんだが……

 

「その辺はエリナがエザリアに頼んでみてくれ。向こうでもこれを何かに使おうとしているかもしれないから、俺の独断では判断出来ない」

 

 シャドウミラーの代表である俺が独断で決められないというのは少々情けないようにも思えるが、技術班というのはシャドウミラーの中でもそれだけ突出した部署だ。

 以前何かのアンケートで見たんだが、一般的にシャドウミラーは軍事国家という認識をされている。

 それは間違っている訳ではないのだが、正確でもなかった。

 シャドウミラーで根幹を成すのは、技術班なのだから。

 そして非常に高い技術力を持っている技術班が作ったのが、コンテナ。

 技術班の作ったコンテナを、無許可で渡す訳にはいかない。

 ……そもそも、今まで使っておいてなんだが、このコンテナを作ったのが技術班である以上、当然レモンやマリュー以外の技術班も制作には参加しており……自爆スイッチ程度であればまだしも、変形、分離、合体機能とかがあっても俺は驚かない。

 いや、変形や分離はともかく、合体というのは何と合体するのかという疑問があるが。

 それこそこの都市艦と合体出来ると言われても、不思議と納得してしまうのは俺だけではないだろう。

 ……これ以上考えるのは止めておいた方がいいか。何だか深く考えれば考える程それが現実になりそうだ。

 残念そうな表情を浮かべているエリナだったが、この件に関しては本当に俺ではなくエザリアとの交渉を頑張って貰うしかない。

 

「……そう」

 

 少しの沈黙の後、エリナが短く呟く。

 まぁ、これまでもエザリアと色々話をしてきたんだから、どれくらい強敵なのかというのはエリナも理解しているのだろう。

 シャドウミラーで武力のラスボスが俺で、技術力のラスボスがレモンなら、エザリアは政治力のラスボスだ。

 ……戦争は政治の一つだというのを考えると、実はシャドウミラーの真の支配者はエザリアじゃないのか? ああ、いや。でも何だかんだとシャドウミラーが軍事国家である以上、最終的にはやっぱり俺になるのか。

 

「ま、頑張ってくれ。そもそも、まだ異世界間貿易の条約も結んでないんだから、そっちを先にした方がいいと思うけどな」

「そうね、それも考えないといけないのよね」

 

 色々とやるべき事があって悩むエリナだが、そういう意味では俺も負けてはいない。

 まず今回の件の最大の収穫である生産プラントをきちんと動かせるようにしないといけない。それも、出来れば技術班が使っている魔法球ではなく、別の魔法球を用意してだ。

 生産プラントの数を考えると、下手に技術班の使ってる魔法球に生産プラントを設置すると、向こうが狭くなるしな。

 その辺を考えれば、やっぱり別の魔法球を用意するのが最善の選択だろう。

 特に今は魔法球に組み込んでいた時の指輪も外してるから、特に何か設定をする必要はないし。

 そんな事を考えつつ……俺達は木連から帰還する。

 いや、帰還自体はシステムXNで1分と掛からず終わるんだが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:505
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1208

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