転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1440話

 その場所に姿を現した俺を迎えたのは、1人の子供……いや、ルリよりも大分幼く見えるし、この場合は幼女と呼ぶべきか。

 周囲に誰もいない状況なのは、この幼女の作業の邪魔をしたくないからか、それとも単純にもう勝ち目がないとして逃げ出したからか……ともあれ、この幼女は1人だけで12畳程の部屋におり、椅子に座って目を瞑っていた。

 その仕草には見覚えがある。

 ルリがオモイカネとアクセスをしている時もこんな感じだったのだから。

 目を瞑っているが、外見は非常に華奢だ。薄紫……いや、より白に近くなったような髪の毛をしており、肌の色も病的なまでに白い。

 その人物は俺が部屋の中に入ってきたのに気が付いたのだろう。瞑っていた目を開けて俺の方へと視線を向けてくる。

 その瞳は、ルリと同じく金色の瞳。

 何でも聞いた話だと、ルリと同じ技術を使って作られた者の特徴だとかなんとか。

 その幼女は金色の目を俺に向けながら口を開く。

 

「誰?」

「さて、この場合は何て言えばいいんだろうな。アクセル・アルマーって言えば分かるか?」

「アクセル・アルマー。知ってる。シャドウミラー代表。最優先撃破対象」

 

 随分と物騒な事を口にするな……と思ったが、そういう風に育てられたんだと考えればおかしくはないか。

 喋る言葉も抑揚がなく、表情も殆ど変わっていない。

 この辺は出会った当初のルリに若干似ている。

 ただし、ルリは多少なりとも感情の変化があったが、こいつにはそれがない。

 こうして見ていると、本当に何かの人形のようにすら感じてしまう。

 ……何だろうな。見ていると苛々してくる。

 勿論それは目の前の子供に対してではなく、この子供をこんな風に育てた奴に対してだ。

 

「そうか。……お前が戦車を操ったり、ハッキングをしようとしていた奴……って事でいいんだな?」

「そう」

「何でそんな真似をした……ってのは愚問か」

「命令だから」

 

 だろうな。

 自発的にそんな真似をしようとするようには思えない。……正確にはそんな積極性があるとは思えない。

 文字通りの意味で、人形として……人型の機械という扱いをされていたのだろう。

 それだけを考えれば、シャドウミラーで使われている量産型Wと似たようなものなのだろうが、最初から人型の機械という意味で生み出された量産型Wと、人として生み出された人間を一緒にする事は出来ない。

 ……こういうのは俺らしくないというのは分かってるんだけどな。

 戦争において、少年兵なんてのは珍しくも何ともない。

 それこそ、このくらいの子供に爆弾を背負わせて街中で爆発させるといった行為はこれまでに何度も見て、聞いてきた。

 中には、そんな組織を殲滅した事もある。

 

「……ここにはお前以外にも何人かいるって話を聞いたが?」

「知らない。消えた」

 

 消えた、か。逃げ出すにしても、この子供は賊軍にとって間違いなく有益な存在なんだから、置いて行く事は……いや、待て。それはつまりこの子供を置いて行かなければならなかったって事か?

 

「最後の命令は?」

「可能な限り足止め」

「……そうか」

 

 やっぱりな。

 多分この基地に存在していた賊軍のお偉いさんは既に逃げているのだろう。

 その時間を稼ぐためにこの子供に戦車を……待て。それだけか? 本当にそれだけで終わるのか? もしこの場合、俺だったら……ちっ!

 

「来い!」

 

 念動力による危険感知はない。

 だがそれでも、もしかしたら奴等は最悪の事を考えている可能性が十分にあった。

 そう、ちょうど俺達が攻めてくるのを待っているかのようなこのタイミングで。

 

「あ」

 

 軽く抱き上げると、その子供は全く重さを感じさせない。

 いや、重さはあるんだろうが、間違いなく平均的な子供の重さよりは軽い。

 それこそ、軽過ぎると表現してもいいくらいに。

 つまり、この子供はそれだけ栄養を与えられていなかったということだろう。満足に食事が出来ない……と思ったが、脳裏を以前のルリの姿が過ぎる。

 ルリも以前は食事に対して楽しみを見出していなかった。栄養補給という意味しかなく、ハンバーガーといった簡単に食べられる物と栄養剤の類で適当に済ませていたのだ。

 そう考えれば、もしかしたらこの子供もそう変わらないのかもしれないな。

 微かに……本当に微かにだが目を見開いている子供を抱きかかえ、俺の身体は影へと沈んでいく。

 普通なら初めて影に沈む感触に驚くのだろうが、幸いと言うべきかこの子供は今は俺が抱きかかえている。

 影に沈み込む独特の感触を味わう事なく……ただ、その子供は何故かじっと俺の方へと視線を向けていた。

 

 

 

 

 

「……あら、お帰り。予想していたよりも随分と早かったわね。てっきり向こうの基地をどうにかするんだとばかり思ってたけど」

 

 シロガネのブリッジに子供を抱きかかえながら影のゲートから出て来た俺を見ても、レモンは特に驚いた様子を見せずにそう告げる。

 まぁ、レモンは何度も影のゲートを見ているし、体験している。そこまで驚くような事ではないのだろう。

 ともあれ、俺はそんなレモンの言葉を聞き流し、ナタルへと指示を出す。

 

「ナタル、防御を固めろ。カトンボとヤンマも一旦退かせろ。恐らくこれは罠だ」

 

 ナタルの優秀なところは、命令を即座に行動に移せるところだ。

 勿論以前ナタルの上司――正確には違うが――だったアズラエルのように目茶苦茶な命令であれば話は別だが、今回のような命令の場合は話が違う。

 そんなナタルの命令は円と美砂からヤンマとカトンボ……正確にはそれを動かしているAIやメギロート、ファブニールに入っているシャドウの量産型W……面倒臭いからファブニールを操縦だな。ともあれ、そんな風に命令を下す。

 量産型WとAIなので、特に命令に逆らうような真似をせずに素直に後方へと退いてくる。

 防御を固めるように言ってあるので、当然G・テリトリーとEフィールドを展開しながらだ。

 このカトンボもヤンマも、シャドウミラーの改修によってディストーションフィールドよりも強力なG・テリトリーとEフィールドを展開可能になっている。

 そして防御力という意味では、この2艦よりも強力なファブニールは言うまでもない。

 ……代わりにバリアの類がないメギロートは攻撃を食らってしまえば防ぎようがないのだが。

 だが、ルリの同類の子供がここにいるということは、当然のように戦車の動きも止まっており、後方へと退避する際に攻撃はされない。

 もし賊軍に骨のある奴がいれば、戦艦の類は……いや、こちらは人数が必要だから無理か。けど、戦闘機の類は出撃出来ただろう。

 だが、こうして見ていても全く出撃してくる様子がない。

 この基地の戦力は、完全にこの子供任せだったのだろう。

 そしてクルスク工業地帯を基地化して立て籠もっていた賊軍の連中は、皆が皆この場から逃げ去ってしまった訳だ。

 向こうにとってはここで死ぬような事は全く考えていなかった……と言えばいいのだろうが、それにしても仮にも軍人が全員揃いも揃って基地を捨てていくとは……賊軍、賊軍と言ってきたけど、文字通りの意味で賊軍になってしまったな。

 ともあれ、クルスク工業地帯から距離をとる事には成功したが、こちらは全く何の被害も受けてはいない。

 そして十分に距離を取り、もう安心だと判断したのだろう。ブリッジにいたメンバーの中でレモンが代表して口を開く。

 

「それで、アクセル。事情を説明してくれる?」

「ああ。……いや、その前にこの子供をどうにかする必要があるか」

 

 レモンに答えながら、視線を俺に抱き上げられたままの子供へと向ける。

 何だかんだと、こうしていたにも関わらず嫌がって暴れたりもしなかったのは助かったが……普通、自分が敵の大将に連れ去られるような真似をすれば少しくらい騒いでもおかしくはないんだが。

 いやまぁ、感情の機微が殆どないというのは理解していたが。

 

「名前、聞いてもいいか?」

「ラピス。ラピス・ラズリ」

「ラピスか……」

 

 ルリといい、ラピスといい、宝石の名前を付ける決まりでもあるのか?

 いや、瑠璃はガラスって意味だったか?

 

「なるほど、ラピスか。……ラピス、今の状況は分かってるか?」

「捕らえられた」

 

 端的に告げるが、それは間違っている訳じゃない。

 

「……アクセル君、もしかしてそっちの趣味が……」

「違うぞ」

 

 どこか笑みを含めて告げてくる美砂へ即座にそう返す。

 けど、考えてみれば美砂達が15歳の時にキスをした訳で。

 でも最後まではしなかったんだから、多分ロリコンじゃない……筈。

 元々俺の好みは大人っぽい女だし。

 

「で、あの基地だが……向こうは最初から本格的に防衛するつもりはなかったらしい。ラピスに戦車を操らせて、それが不利になったらすぐに上層部は全員逃げ出したらしいしな」

「……こんな子供一人を残して?」

「ああ。時間稼ぎをするように言われていたらしい」

 

 まぁ、あくまでも効率だけを考えれば、戦車を動かしているのはラピスであり、その上司達はいても何の役にも立たないのだから、さっさと自分達は消えるというのは決して間違いという訳ではない。

 だが、それでも客観的に見るとあまりに情けないのは間違いがなかった。

 大人が子供に……それも幼女と呼ぶのが相応しいような、そんな子供を相手にして自分達だけで逃げるというのは、傍から見ていて情けないにも程がある。

 まぁ、賊軍の上層部にいるんだから、その辺は本人達としてはあまり気にしてない出来事なんだろうが。

 

「……情けない」

 

 ポツリと呟いたのは、ナタル。

 この場にいる中で、誰よりも軍人らしい軍人なのだから当然だが。

 純粋に軍人として過ごしてきたという意味では、俺とレモンも負けてはいない。

 それどころか、俺は士官学校を主席で卒業してるのだから、その辺のキャリアという意味では決してナタルに負けている訳ではないが……元々の性格が俺やレモンとナタルでは違い過ぎたし、軍にしても特殊部隊に所属した俺やレモンと違って、ナタルは真っ当な軍人として暮らしてきた。

 その上軍人一族と言われる家の出身なんだから、子供を捨て駒にして大人達が逃げるというのを見れば、どうしたって不愉快になるのは当然だろう。

 実際、原作でもナタルはドミニオンで軍人として育ってきていなかったフレイを慰める場面とかあったし。

 

「ま、しょうがないでしょ。向こうは文字通りの意味で賊軍なんだから」

 

 円の言葉が周囲に響く。

 賊軍……向こうの士気を低くし、もしくは怒らせる目的で賊軍と名付けたんだが……まさか、名は体を表すを如実に示すような真似をするとは思わなかった。

 苛立ち……そう、今俺が感じているこの気持ちは苛立ちと表現してもいいだろう。

 

「落ち着きなさい、アクセル。それで、その子……ラピスとか言ったわね。どうするの? 無難な線だとネルガルに引き渡す事だろうけど」

「だろうな。それが一番無難だとは思うんだが、な」

 

 呟き、一旦言葉を切ってから視線をラピスの方へと向ける。

 あからさまに幼いその様子は、俺が初めて会った霞と比べても尚幼いと言ってもいい。

 

「お前は、これからどうしたい?」

「私は捕虜」

 

 端的に告げるその様子は、感情を一切表す様子はない。

 

「そうだな、捕虜だ。けど、だからってお前がこれからどうしたいかの希望を口にするくらいはいいだろ? ナデシコ……ネルガルの戦艦の中には、お前と同じ力を持っている奴もいる。希望するならナデシコに乗せる事も出来るぞ?」

「ナデシコ……」

 

 その単語に少しだけ首を傾げるラピス。

 月ドックの時の戦いで、ナデシコと遭遇してルリと接触した事を思いだしたのだろう。

 

「でも、アクセル。そのラピスをネルガルに……いえ、ナデシコ世界の勢力に渡すのは色々と不味いんじゃない? 特に討伐軍はあの月ドックの戦いで色々と被害を受けてるんだし」

「……なるほど」

 

 あの戦いではメギロート以外はシャドウミラーに被害は殆ど出ていないので、俺としては何も思うところがない。

 だが、戦艦を同士討ちさせられた討伐軍の方では話が別だろう。

 勿論ラピスはこの年齢だ。上から命じられるままに行動を起こしたのだろうが、だからといって理屈で納得出来る話ではない。

 討伐軍側にラピスを渡した場合、あの時の戦いで死んだ者の遺族や友人、恋人といった者達によって面白くない展開を迎える事にもなりかねない。

 

「けど、ならどうする? シャドウミラーで引き取るのか?」

「そうね、私はその方がいいと思う。マリューやコーネリアを始めとする他の皆にも聞いてみないと正確なところは言えないけど、出来れば私達が保護したいと思ってるわ」

「……それは、つまり俺の子供として育てろって事か?」

「ええ。アクセルがいない時以外は例外なく夜の生活は続いているのに、誰も妊娠する気配はないでしょう? 多分アクセルが混沌精霊なのが関係してると思うんだけど……それに、いつかの時の為に子育ての練習はしておいた方がいいわ。……どう思う?」

 

 最後の問い掛けは、俺でもなく、ナタルでもなく……このブリッジにいる俺の恋人である円と美砂へと向けられたもの。

 それに2人は顔を赤くしながら口を開こうとし……次の瞬間、周囲に激しい爆発が生み出される。

 何が起きたのかというのは、考えるまでもない。視線の先では、クルスク工業地帯が炎に包まれていたのだから。

 ……俺達を引き込んで自爆するつもりだった、か。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:505
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1208

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