転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1450話

 自壊したかのようなチューリップ……いや、正確にはその中に待機していたバッタが内部から破壊したというのが正しいのか?

 けど、砂のように崩れ去っていったのを見る限り、やっぱり自壊したと表現するのが正しいと思われる。

 チューリップを守っていたバリアも、内部からの攻撃にはどうしようもなかったのだろう。あっさりと砕け散ってしまう。

 パリンと割れるバリアの典型だな。

 にしても、こうして内部からの衝撃であっさりと破壊されたのを見ると、やっぱりあのバリアはチューリップを閉じ込めておくんじゃなくて、外部の攻撃から守る為に存在していたとみるか。

 そして姿を現したバッタは、バッタとは思えない程に巨大な存在だった。

 チューリップそのものが俺の知っているチューリップと比べると圧倒的に小さい。

 だが、元々のチューリップが全長数百m単位の長さを持つのだから、それより小さくても当然のように一般的な視点で考えれば巨大と表現してもいい。

 チューリップの別名は次元跳躍門。

 その名の通り、転移する為の装置のような代物だ。

 だが、今俺の目の前にあるチューリップの残骸は、明らかに普通のチューリップではない。

 このチューリップは、最初に連合軍が予想していたように、移動ポッドのような代物だろう。

 そして中に、このバッタが入っていたと。

 全長15m……いや、もう少し大きいか? ともあれ、そんな程度の大きさのバッタだ。

 バッタというのはもっと小さい……それこそ人よりも小さい存在だと認識していたんだが、こうして見ると普通のバッタとは比べものにならないな。

 そうしてバリアを破壊して姿を現したバッタは、恐らく砂浜からでも見える筈だ。

 にしても、俺が来た途端にバッタが動き始めたって事は、明らかに俺を狙っての行動だろう。

 となると、木連は俺達と敵対するつもりになったのか?

 俺を狙って足の一本を振り上げているバッタを見ながら、取りあえず今はこのバッタをどうにかする方が先だと判断して、その足が振り下ろされた瞬間に地面を蹴って間合いを詰める。

 そしてバッタの身体へと触れると……次の瞬間には巨大バッタの姿は消え去っていた。

 

「ま、幾ら規格外のバッタを作ろうと、俺を相手にした時点で終わりだったって事だな」

 

 無人機である以上、わざわざ撃破せずともその身体に触れさえすれば空間倉庫に収納出来るので、それだけで敵にとっては致命傷となる。

 問答無用で無力化されるのだから、どうしようもない。

 

「意味ありげに出て来た割りには、呆気なかったな」

 

 呟き、空間倉庫の中に入った巨大バッタと入れ替わるように通信機を取り出す。

 そして幾つかの操作をすると……

 

『はい? アクセルさんですか?』

 

 空中に浮かんだ映像スクリーンに姿を現したのは、木連にいる白鳥だった。

 背後にはユキナの姿もある事から、恐らく現在は家の中にいるのだろう。

 

「忙しいところ悪いな」

『いえ、少しは落ち着いてきましたから。……それで、用件の方は?』

「これが見えるか?」

 

 映像スクリーンに、背後にあるチューリップの残骸を映し出す。

 

『これは……?』

「たった今俺を攻撃しようとしたチューリップだ。普通のチューリップと違って転移する為のシステムではなく、移動ポッド的な役割のチューリップだった。……で、中には巨大な……全長15mを超えるだけのバッタが入ってたんだが……俺が近づいた途端に反応した」

 

 そう告げれば、白鳥も俺の言いたい事を理解したのだろう。顔が厳しく引き締まる。

 

『こちらは何もしてません』

「そう言うけど、実際にこうして襲われたのは事実だぞ?」

『それは……』

 

 言葉に詰まる白鳥だったが、苛めるのはこの辺にしておくか。

 

「安心しろ。別に本気でお前達が俺達と敵対しようとしているとは思っていない」

 

 その言葉に白鳥の顔に安堵が浮かぶ。

 だが、それは俺がそう思っているだけであって、第三者の目から見れば明らかに木連が俺と敵対しているように見える。

 今回の件が偶然俺達を狙った……と考えるのは、ちょっと難しい。

 ああ、でも俺達がこの無人島に来るのを決めたのは昨日なんだし、それを知ってる者も少ない。そんな状況の中、一晩でこの件の準備を出来るかと言われれば……否とは言わないが、それは難しいだろう。

 それも、恐らく今回の件を企んだだろうと俺が予想している奴にとっては。

 

『ふぅ、そうですか。そう言ってくれるとこちらとしても助かります』

「俺はそう思っているけど、他の奴までは分からないぞ? ……まぁ、冗談はともかくとしてだ。チューリップはクリムゾングループ製と思われるバリアで守られていた。そして俺がやって来たのを見計らうようにして中から巨大バッタが姿を現した。……さて、これから予想出来ることは何だ?」

 

 クリムゾングループとの付き合いがあり、俺という存在を……より正確にはシャドウミラーを邪魔だと判断している人物。

 そんな人物の心当たりの中で、現在最も追い詰められているだろう人物。それは……

 

『草壁中将』

「正解」

 

 そう、熱血クーデターの中で幕僚と共に姿を眩ました草壁だ。

 草壁にとって、俺という存在は……延いては俺が率いるシャドウミラーという存在は邪魔者以外のなにものでもないだろう。

 そして俺を攻撃出来る機会があれば、それを逃す筈もない。

 また、俺を殺せなくても今回のように木連の兵器を使って俺を攻撃すれば、木連とシャドウミラーの間にある関係を断ち切る事が出来る可能性もある。

 ……草壁も空間倉庫を使ってあっさりと巨大バッタが収納されてしまうというのは完全に予想外だったのだろうが。

 これで実は草壁の仕業じゃないとかなれば自信満々に言ってる俺が色々と恥ずかしいんだけど、今の状況で木連が俺に攻撃を仕掛けてくる可能性を考えると、その可能性が一番高いというのも事実なんだよな。

 

『……ですが、今の草壁中将がそちらに次元跳躍門……いえ、移動ポッドでしたか。とにかく、それを為すだけの余力があるとは思えません。生産プラントがあればまだしも、草壁中将が押さえていた3割の生産プラントもこちらが押さえてますし』

「このチューリップを、木連で地球に送った物かどうかは、分からないのか?」

 

 普通であれば、自分達が敵対する地球へと向けて放った兵器の類はきちんと把握してなければおかしい。

 だが、そう告げる俺の言葉に白鳥は難しい表情を浮かべて首を横に振る。

 

『いえ、残念ですが……各司令官が独自の行動を起こしたという可能性もありますから。熱血クーデター以降はその辺の把握もしっかりとやってるんですけど』

「つまり、いつこのチューリップが地球に来たのかは分からない、と?」

『そうなります』

「草壁が生産プラントを隠し持っていた可能性は? 草壁の立場なら、公にある生産プラントはともかく個人で隠し持っていてもおかしくないだろ?」

 

 特にシャドウミラーという存在が出て来た以上、木連はいつ負けてもおかしくはなかった。

 そう考えれば、いざという時の為に生産プラントを隠し持っていてもおかしくはないだろう。……もしくは、それ以外の用心の為という可能性も十分以上にあるが。

 

『生産プラントの隠匿ですか。……もしそれが本当だとすれば、許されざる大罪と言えますね。ですが、もしそれが本当でも、そう多く生産プラントを確保していたとは思えませんが』

「他の可能性としては、ハッキング技術とかか?」

 

 今回、俺が来たのを見計らうようにしてチューリップの活動が始まった。

 つまり、それを行ったのは草壁であり、木連のネットワークか何かに侵入してそこからチューリップが起動するようにしたのではないか。

 そんな疑いが俺の中にはあった。

 

『それは……いえ、向こうにはヤマサキがいた筈。それを考えれば、あるいは……?』

「ヤマサキ?」

 

 聞き覚えのない名前だったが、俺が知っている木連の者はそんなに多い訳ではない。

 中には当然俺が知らなくても有能な者がいるだろう。

 そして、恐らく今口に出たヤマサキという男も……

 

『はい。木連の中でも優れた科学者として有名な人物です。ただ、目的の為であれば手段を選ばないところがあり、前々から問題視されてました。性格としてはユーモアがあって、決して悪い奴ではないのですが……』

 

 また、随分と変わった評価だな。

 有能で手段を選ばないところがあるというのはよく聞く話だ。

 自分の信念を持っており、その為にはどんな被害が出ても構わないという草壁に通じるところがあるだろう。

 だが、そんな人物でありながら、白鳥が敵ではないと……それどころか、悪い奴ではないとすら言うというのは、かなり予想外の光景であると言ってもいい。

 今まで会った事がないような人物らしい。

 それに木連の科学者という事は、当然のように今まで火星古代文明の技術を調査する時間があった訳だ。

 生産プラントがあれだけ大量にあった以上、それ以外の技術についても何らかのものを得ている可能性は高い。

 

「ヤマサキ、か。お前がそう言うって事は相当に有能な人物だったらしいな」

『はい。それは間違いなく』

 

 そんな有能な人物が草壁と共に消えた、か。

 それに草壁は木連の秘密兵器のジンシリーズとやらの設計図も持っていると考えると……どこに行ったかが問題になる。

 それでも現在の木星付近で草壁が潜んでいるというのは危険だろうし、火星にはメギロートやシャドウといった戦力が存在して警戒網を敷いている。

 そうなると最も可能性が多いのは地球……それも以前から木連と手を組んでいたクリムゾングループ辺りに合流している可能性が高い。

 今回の件も、木星に……いや、木連の施設にいても、こちらの動きを察知するという事は出来なかっただろう。

 その辺を考えても、やはり地球にいる可能性が高い、か。

 

「木連としてこれからどう動くつもりだ? 今回は俺がいたからこそ騒ぎになる前にどうにか出来た。だが、ハッキングの類で遠距離からチューリップを始めとする無人機をコントロール出来るとなると、地球は混乱するぞ?」

『そう、ですね。残念ながらそうなってしまいます。……アクセル代表』

 

 少し考えた白鳥が映像スクリーンの向こう側からじっと俺の方へ視線を向けてくる。

 何を考えているのかというのはまだ分からないが、何らかの決意を抱いているのは確実だろう。

 

「何だ?」

『シャドウミラーというのは、非常に高い技術を持っている。……そうですよね?』

「ああ」

 

 一瞬の躊躇いもなく、白鳥の言葉に頷きを返す。

 実際、シャドウミラーの技術力について、俺は何の疑いもなく全面的に信頼を寄せている。

 技術班に所属している者達の性格はともかく、能力については疑う余地は全く存在しないのだから。

 

『これはあくまでもまだ内々の話として頂きたいのですが、シャドウミラーの技術力があれば、ヤマサキを始めとする草壁一党のハッキングに対処出来ますか?』

「出来る」

 

 こちらもまた、一瞬の躊躇なく答える。

 実際、現在のナデシコ世界最高峰の能力を持っているルリとオモイカネの能力であっても、シャドウミラーの機体をハッキングする事は出来ないのだ。

 ヤマサキが幾ら有能であり、どれだけの能力を持っているとしても、シャドウミラーの技術班に匹敵するとは思えない。

 何しろシャドウミラーの技術班は、元々高い能力を持っている者達の集まりだ。

 しかもそんな者達が外の1時間が中では48時間になる魔法球の中で延々と自らの技術を高めているのだ。

 どう考えても、普通の技術者に対抗出来る訳がないんだろう。

 実際、ギアス世界では天才という扱いだったロイドでさえ、シャドウミラーの技術班に所属した当時は能力的に下っ端だったのだから。

 

『では、その辺で協力して貰えませんか?』

 

 話の流れからそんな流れになるというのは分かっていた。

 実際今の木連ではヤマサキとやらに対応するのは難しいのだろう。

 もしくは対応出来たと思っても一時的な時間だけであり、また暫くすればまたハッキングされるという可能性が高い訳だ。

 そうなればイタチごっこになるのは確実であり……そうなる前にヤマサキからのチョッカイを一掃したいという事なのだろう。

 それは分かるし、こちらとしても木連がヤマサキとやらに好きなように動かされるのは面白くない。

 だが……それでも木連とシャドウミラーというそれぞれの立場を考えると、どうしてもそう簡単に頷く事は出来ない。

 

「話は分かった。ただ、この件は結構大きくなりそうだし、俺の一存でどうにか出来るような事じゃない。明日にでもエザリアにそっちに連絡させるから、それで交渉してくれ」

 

 こういう時はエザリアに丸投げするに限る。

 実際、この件は国同士の問題である以上、エザリアに話を通すのは決して間違っている訳ではないのだから。

 

『わっ! ……分かりました。そうさせて貰います』

 

 エザリアの名前に一瞬嬉しそうな表情を浮かべた白鳥だったが、映像スクリーンに映し出されたユキナが鋭い視線を向けたのに気が付いたのだろう。すぐに冷静に戻って頷くのだった。

 ……まぁ、笑みを我慢しきれてはいなかったが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:505
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1208

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