転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1458話

「……は?」

 

 正直、ナタルから火星に敵が現れたという通信を聞いた時、何がどうなってそうなる? という思いから間の抜けた言葉が出たのは事実だ。

 だが、すぐに納得もしてしまう。

 向こうにとって討伐軍の存在も怖いが、何より怖いのは当然俺達シャドウミラーだろう。

 自由に転移を使いこなし、その上持っている技術力も火星古代文明の技術を多少なりも受け継いだ木連よりも高いのだから。

 無人機のバッタはメギロートに到底及ばない性能しかなく、向こうにとっての戦力はメギロート、シャドウ……そして何より幹部陣の使う機体や、何より俺のニーズヘッグの性能を考えればどうしようもない。

 そうなってしまうと、シャドウミラーをどうにかする必要があるというのは事実であり、そう考えれば火星に攻め込むのは不可解ではない。

 だが……それでも、賊軍の考えは浅いと言わざるを得ない。

 このサセボシティを攻めたのは、つまり火星に俺達がやってこないようにする為の陽動を含めての事だったのだろう。

 しかし俺達がシステムXNを使って自由に転移を出来る以上、地球と火星の距離というのは全く問題にならない。

 まぁ、向こうにとってはそれしか手段がなかったというのが正しいところなのだろうが。

 何をどうしようと、俺達の方が戦力は上でシステムXNで転移して地球と火星を数秒程度で移動が可能。

 だとすれば、少しでも俺達の注意を引き付けたかった……というところか。

 

「分かった、ならすぐに火星に向かう。何機かファブニールとメギロートを連れて行くから、ヤンマとカトンボを……」

『違う』

 

 俺の言葉を遮るように、ナタルが首を振る。

 ……違う? 何が違うんだ?

 そんな俺の疑問を理解したのだろう。ナタルは小さく溜息を吐いてから口を開く。

 

『火星に賊軍がやって来たのは事実だ。シャドウミラーをどうにかしようと思ったのかどうかは分からないが……その、何だ。火星の防衛を任せてきた戦力と戦闘になり、全滅してしまった』

「……は?」

 

 再び俺の口から力の抜けたような声が漏れた。

 いや、言ってる事は分かる。実際、火星にはいざという時の事を考えて戦力を残してきたのだから。

 だが……だからと言って、全滅? 賊軍も火星がこのナデシコ世界においてシャドウミラーの本拠地であるというのは知っていた筈だ。

 だとすれば、当然かなりの戦力を用意してもおかしくはないが……

 

「その、ナタルにこう聞くのもどうかと思うが、その報告は事実か? もしかして何らかの理由で欺瞞情報を流されているという可能性は?」

『私も最初はそれを考えた。だが、量産型Wからの映像を見ると、実際に賊軍の用意した新型艦やアクセルが倒したテツジンの同型機が火星の周辺宙域で破壊されているのが確認出来る。間違いなくこれが向こうの最終手段だった筈だ』

 

 ……まぁ、ゲートを押さえて俺達を脅すなり、いっそホワイトスターに逃げ出してしまうという可能性すら考えられる。

 俺達とまともに戦ってしまえばまず勝てない以上、そういう手段を取るのはおかしくない。おかしくないんだが……それでも何かこう、すっきりしないものを感じる。

 

『それと、少し妙な報告も入っている』

「妙な報告?」

『そうだ。火星にやってきた賊軍だが、火星に降下しようとした時にとったコースがおかしい。私たちシャドウミラーの本拠地でもある元ネルガルの研究施設があった場所とは全く違う方向へと向かって降下しようとしていたようだ。……降下する前に宇宙で防衛戦力に撃破されてしまったが』

「……降下する場所が俺達の本拠地じゃない? 何だってそんな真似を……どこに降下しようとしていたのか分かるか?」

『こちらで得ているデータによると、いわゆる極冠地域といった場所だ』

 

 極冠地域? 何でまた?

 極冠地域には特に何かシャドウミラーが施設を作っている訳でもないし、木連が火星を占領する前にネルガルを含めた当時火星に進出していた勢力が何らかの施設を建設した訳でもない。

 だとすると、一時的に極冠に自分達の勢力を築く筈だった?

 いや、だとしても今の火星には幾らでも土地がある。

 現在シャドウミラーが火星を占拠しているとしても、施設としているのはゲートを設置した、元ネルガルの研究所のみだ。

 それ以外の場所は全く施設を作ったりはしていない。

 そう考えれば、幾らでも木連が拠点と出来る場所はあった筈だ。

 そんな状況で極冠地域に拠点を築く必要はない。

 つまり、拠点を築く以外に極冠地域に向かう理由があった訳で……

 

「極冠地域に何かある、のか?」

 

 考えられる一番の可能性はそれだろう。

 俺達シャドウミラーが制圧するまでの数年、火星は木連の支配下にあった。

 その間に極冠地域に何らかの物資か何かを隠した……のか?

 けど、純粋な物資というだけなら、クリムゾングループやネルガルのサワガサキ、連合軍でグリューノを裏切った奴がいたのを思えば、大抵の物は揃った筈だ。

 つまり、そこに保管されているかもしれない物資は、賊軍では入手出来なかった代物……そこまで考えれば、何があるのか何となく理解してしまった。

 現状で草壁が最も欲しているのは、当然の如く戦力。

 だが、木連が有していた生産プラントを持ち出す事は殆ど無理だった筈である以上……

 

「そこに眠っているのは、生産プラントか?」

 

 そう呟く。

 

『可能性はある。他の何かかもしれないが……』

 

 そう呟くナタルの顔には微妙な表情が浮かんでいた。

 賊軍がそれを用意していたのか……もしくはそこにある遺跡を発掘しようとしていたのかは分からないが、それでも賊軍に極冠地区にある何かを渡さなくて済んだのは良かったが、極冠地区に何かがあると気が付かなかったのは色々と失態だとでも思っているんだろう。

 別にナタルは火星の担当って訳じゃなかったから、そこまで気にする必要はないんだけどな。

 そういう意味で考えれば、極冠地区のすぐ側まで移動したにも関わらず見逃していたというのが正しい。

 ……今にして思えば、以前草壁が俺に言った火星にまだ何かがあるってのは正しかったんだな。

 しかもそれが極冠地区にあった……か。

 以前の調査では極冠地区のすぐ側まで移動したんだが、その極冠地区を調べる途中でトラブルが起きたんだよな。

 そう考えると、何と言っていいのやら。

 ただ、それでも賊軍の奴が極冠地区にある何かをどうにかしようと思って火星に向かおうとして、迎撃されて全滅だ。

 ……正直なところ、これで賊軍のトップが纏めて全滅したって言われてもあまり実感が湧かないよな。

 いや、実は火星に向かったメンバーの中に賊軍の上層部が全員揃っていたとは限らないのか?

 けど、現状で地球に残っていても、それは賊軍にとってピンチでしかない。

 勿論地球で全面攻勢に出たのだから、誰かが指揮を執らなければならないんだろうが……

 

「ナタル、火星に突入しようとした奴等の乗っている艦なり兵器なりは全て撃破してしまったのか?」

『量産型Wの報告ではそうなっている』

「そうか」

 

 この辺、量産型Wの融通が利かないところが出てしまった形だ。

 出来れば生き残っている奴がいれば、向こうの情報を聞けたんだが……

 まぁ、この件に関してはしっかりと指示をしていなかったのが悪いと言われればそうなんだろうが、まさか賊軍を全面攻勢に出した状態で自分達だけで火星に向かうとは思ってもみなかったしな。

 

『これからどうする?』

「そうだな、これ以上ここで話していてもどうにもならないだろ。幸いもう賊軍の戦力は殆ど撃破したし、俺は火星に向かわせて貰う。それとコーネリアや討伐軍に連絡して、賊軍の上層部が火星に向かって全滅したってのを知らせて、まだ戦っている賊軍がいるのならそっちにも情報を流してやってくれ」

 

 自分達が戦っている中で上層部が火星に行った……それは、今戦っている奴を捨て駒にして逃げ出したと判断されてもおかしくない。

 元々ただでさえ追い詰められて士気の低い賊軍だ。この情報は賊軍の士気を致命的なところまで落とす可能性がある。

 これが、せめて火星に向かった者達の目的が俺達に対する反撃の秘密兵器を取りに行った……でもって、その秘密兵器を確保したとなれば話は別だったかもしれないが、火星に向かった戦力が何も出来ずに撃破されたとなれば、士気を下げる事しか出来ない。

 

『兵力はどうする? 何機かファブニールやメギロートを連れて行くか?』

「いや、こっちにも戦力は必要だろ。火星に行ったら向こうで戦力を揃える」

 

 火星がシャドウミラーの本拠地になっている以上、そこで戦力を揃えるというのは難しい話ではない。

 それこそ、火星に出向いた賊軍を倒した戦力だってあるし、何より火星にはゲートが存在しているのだから。

 

『了解した。では、気をつけてくれ』

 

 ナタルからの気遣うような言葉に頷きを返すと、そのナタルを押し退けるようにして美砂が映像モニタに映し出される。

 

『アクセル君、本当に気をつけてよ! アクセル君の身体は、アクセル君だけのものじゃないんだからね』

「分かってる、任せておけ」

 

 その言葉は、普通男が女に……しかも妊娠している女に対して言うものだと思うだけどな。

 それでも俺を心配してくれての言葉である以上、無碍にも出来ない。

 

「美砂も円も、大丈夫だとは思うけど気をつけてくれ。ここでの戦闘は終わったも同然だが、賊軍を殲滅した訳じゃないしな」

『分かってるわ。向こうが何かしてきたら、しっかりと力で教え込んであげるわよ』

 

 笑みを浮かべて告げる美砂だったが、それは決して強がりだったり言葉だけのものだったりする訳じゃない。

 美砂は実際にそれだけの力を持っているのだ。

 その後も一言二言短いやり取りをし、通信を切る。

 アウル達にも何か言っておこうかと思ったが、別にいいだろ。

 そんな訳で、俺は早速転移の準備を開始する。

 

「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」

 

 その言葉と共に光の繭がニーズヘッグを包み込む。

 この辺、木連の転移技術に比べるとどうしても劣るんだよな。

 そんな風に考えている間に、転移フィールドの生成が完了する。

 

「転移」

 

 その言葉と共にシステムXNによる転移が行われ、次の瞬間には既にニーズヘッグの姿は火星にあった。

 一応座標としてはゲートを設置してある基地から少しだけ離れた場所であり、転移位置に狂いの類は存在しなかった。

 

「聞こえるか?」

『は、アクセル代表。聞こえています』

 

 通信に現れたのは、当然のように量産型W。

 地球に今までいた俺がこうして突然姿を現したのに全く驚いた様子もないのは、量産型Wの優れたところだろう。

 

「先程火星に突入しようとして撃破された者達の機体を回収しろ。生き残りがいれば最優先で確保して治療するように」

『了解しました』

 

 情報源の確保はこれでOK、と。

 まぁ、宇宙空間で撃破されて生き残れる者がどれだけいるかは不明だけどな、

 それでもやらないよりはやっておいた方がいいのは確かだ。

 

「それと、シャドウを5機程こちらに寄越せ。ファブニールはいらない」

『了解しました』

 

 こちらも特に反論もなく受け入れられる。

 そして1分もしないうちに基地からシャドウがやってきた。

 ファブニールの運用が本格化されてからは、基本的にファブニールでの出撃が当然になってしまっているのだが、今回のように調べ物をする時はシャドウのままがいい。

 

「よし、システムXN起動……」

 

 こうして5機のシャドウと共に、ニーズヘッグは極冠地域へと再び転移するのだった。

 

 

 

 

 

「ここが極冠地帯か。……以前はこの近くまで来たけど、特に何かある訳じゃないよな」

 

 極冠地帯へとやって来たのだが、こうして見る限りでは特に何がある訳でもない。

 生産プラントを始めとした何かが隠されているのであれば、間違いなくここに存在していると思うんだが……でなきゃ、賊軍の奴等はこっちになんてやって来ないし。

 

「さて、どうしたものか。もっと人を……メギロート辺りを連れてくるべきだったか? それとも、いっそ火星の生き残りの連中を動員しても良かったかもしれないな」

 

 呟きながら、一応念の為にと改めてレーダーで周囲を見回すが、特に何がある訳でもない。

 ASRSやミラージュコロイドのようなステルス装置でも開発したのか? とも思ったんだが……さて、どうするべきか。

 いや、考えるまでもない。賊軍の奴等がここに向かっていたのは明らかなのだから、当然のようにここには何かがあるのは間違いない。

 だとすれば……

 

「探せ。この辺には確実に何かがある筈だ。それを見つけ出せ!」

 

 量産型Wの操るシャドウが、俺の言葉に即座に散開する。

 俺もまた、念には念を入れる感じで周囲の様子を探っていた。

 そんな感じで数十分が経過し……

 

『アクセル代表、向こうの山に何重ものディストーションフィールドが展開されている場所を発見しました』

 

 そんな通信が量産型Wの1人から入ってくるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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