転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1464話

 遺跡のコアユニットが眩く光り、突然姿を現したラピスと同じくらいの年齢の子供。

 何故かミカンを手にしたその子供を見て、テンカワはアイちゃんと叫んだ。

 つまり、これらの事から考えればテンカワはあの子供が誰なのかを知っているという事になるのだが……けど、普通に考えればそれは異常な事以外のなにものでもない。

 そもそも、このアイちゃんという子供はどこからボソンジャンプをしてきたんだ?

 ボソンジャンプ……うん、この世界の転移なんだし、ボソンジャンプで間違いない。

 実はこの世界にはボソンジャンプ以外の転移方法が他にもあるとかだったら話は別だが。

 そして何より、生身の身体でボソンジャンプをしているというのが気になる。

 ボソンジャンプというのが生身の人間に耐えられないというのは、地球でチューリップに飲み込まれて火星に転移してきたクロッカスが証明している。

 だが、このアイちゃんという子供は、どうやってかは分からないが普通に生身でボソンジャンプをしてきたのだ。

 月臣に視線を向けると、そこでは驚愕の表情を浮かべている。

 まぁ、生身でボソンジャンプをする為に遺伝子操作されてきたのだから、それは当然だろう。

 自分のアイデンティティの一端が崩れかかっているかのような、そんな感覚だろうか。

 理由はともあれ、あのアイちゃんと呼ばれた子供がこうしてボソンジャンプしてきたのは間違いのない事実だ。

 

「アイちゃん! アイちゃん! 何でここに!? 生きてたんだね!」

 

 テンカワが感極まったといった様子で叫びつつアイちゃんと呼ばれた子供へと近づいてく。

 

「あー! お兄ちゃん! お兄ちゃんだ! こんな場所にいたの!?」

 

 アイちゃんの方も喜びの笑みを浮かべつつテンカワへと向かって走っていく。

 そしてミカンを手に持ったまま、テンカワへと抱きつく。

 

「あーっ!」

 

 叫び声を上げたのはユリカ。……うん、まぁ、気持ちは分からないでもないけど、空気を読んで黙ってた方がいいと思うぞ。

 

「うわっと! ……アイちゃん、どうしてここにいるのさ?」

「え? えっとね。ばーんってなって、そしたらお母さんが寝ちゃって、お兄ちゃんがピカピカ光り始めて、どこかに消えてしまいそうになったから追いかけて……そしたら変な所にいて、その人達が何かして、ここに戻ってきたの!」

 

 ……擬音が多くて、ちょっと意味が分かりにくい。

 だが、その説明でもテンカワには何となく意味が分かったのだろう。何かを言い掛けて結局何も言えずに黙り込み、アイちゃんの頭を撫でる。

 

「どう思う?」

「……そうね。多分レモンの思ってる通りでいいと思うんだけど……有り得るの?」

「有り得るんでしょうね。だからこそ彼女はここにいる」

 

 レモンとマリューが邪魔にならないように短く言葉を交わす。

 技術班だけあって、現状がどんな風になっているのかの理屈を考えているんだろう。

 

「……さて、そろそろ事情を聞かせて貰えないかな、イネス・フレサンジュ博士」

 

 そんな中、遺跡の中にアカツキの声が響く。

 イネスに呼び掛けながらも、アカツキの視線が向いているのはアイちゃんの方だ。

 アカツキの声とかは全く聞いた様子もなく、話している内に感情が高ぶったのかテンカワに抱きついて泣いている。

 これにはユリカも文句を言えないのか、多少頬を膨らませながらも黙っていた。

 

「説明しましょう!」

 

 ……実はイネス、自分に話を振られるのを待っていたのか?

 いやまぁ、説明好きなのを考えれば不思議でも何でもないが。

 実際問題、強引にテンカワを今回の調査に連れてきたのはイネスだ。

 そして遺跡に姿を現した、テンカワの知り合いのアイちゃん。

 これに何の関係もないと思えという方が無理だろう。

 嬉しそうなイネスの様子は、説明が出来るからか……それともテンカワとアイちゃんを再会させる事が出来たからか。

 理由の有無はともかく、イネスの説明を聞くとするか。

 

「アクセル達がコアユニットと呼んでいるこの装置。正確にはボソンジャンプの演算ユニットと呼ばれる物です。この演算ユニットがあるからこそ、私達はボソンジャンプをする事が出来るの。それはいい?」

「……まぁ、色々と聞きたい事はあるけど、それは今はいいよ。話を続けて」

 

 アカツキが促すと、イネスは笑みを浮かべて話を続ける。

 

「古代火星文明……そう言われているこの文明は、正確には火星で興った文明ではないの。それは木星付近に生産プラントがあった事から考えても明らかでしょう?」

 

 イネスの視線が向けられたのは、この場で唯一の木連の人間である月臣。

 色々と思うところはあるのだろうが、今は黙ってイネスの話を聞いている。

 

「正確には、旅をしている途中で火星に寄り、そしてこの遺跡を作った」

「それより、なんでアイちゃんがここにいるんですか!?」

 

 ユリカが我慢出来ないと叫ぶ。

 まぁ、それは分からないでもない。基本的には嫉妬深いユリカだ。自分が好きなテンカワが子供ではあっても自分以外の女と抱き合っているのが許せないんだろう。

 これでテンカワが普段からユリカとそれなりに仲が良ければ多少の余裕はあったかもしれないが……テンカワはエリナに惚れていて、ユリカの想いは完全に一方通行だったしな。

 そんなユリカからの視線を受け、イネスは苦笑を浮かべて口を開く。

 

「しょうがないわね。その辺から話しましょうか。……さて、知らない人もいると思うから最初から話すと、さっき姿を現してアキト君に抱きついているのはアイちゃん。元々火星の生まれで、木連の攻撃を受けたときにアキト君と同じ場所に避難していたのだけど、そこに無人機が来て、アキト君は地球にボソンジャンプしたけどアイちゃんは過去の火星にボソンジャンプしてしまった。ちなみにアイちゃんが持っていたミカンはアキト君があげた物ね」

 

 子供を相手に無人機が襲い掛かったと聞き、月臣が不愉快そうに顔を顰める。

 ……もしかして、この様子を見る限りだとバッタとかが子供を殺すとは思ってなかったのか?

 それとも知ってはいたけど、止める事が出来なかったとか。

 草壁が事実上の木連の支配者だったのを考えれば、あるかもしれない。

 

「そしてアイちゃんが過去の火星で会ったのが、この文明を作った人達。つまり古代火星文明を築いた人達」

 

 イネスの視線が再度テンカワの方に向けられるが、そこでは泣き疲れたのだろう。つい先程まで泣いていたアイちゃんは、テンカワに抱きついたまま眠りについていた。

 まぁ、あのミカンを持っていたのを考えれば、多分テンカワが地球に転移した時から主観時間としては殆ど時間が経ってないのだろう。

 テンカワにとっては数年前の出来事であっても、アイちゃんにとってはつい数時間前……下手をしたら数十分前の出来事という可能性すらある。

 そう考えれば、疲れて眠くなってしまっても無理はない、か?

 

「……何故フレサンジュ博士がそこまで詳しく彼女の事を知っているのか。それを聞いてもいいかい?」

「アカツキ会長、私の名前は何かしら?」

「は? イネス・フレサンジュ博士だろう?」

「そう。イネス。そしてイネスのイはアルファベットのI。……アイ。そう言えば分かるかしら?」

「……は? いや、それは……え? つまり、そういう事なのかい!?」

「そうよ。そこにいるアイちゃんは、もうすぐ自動的にボソンジャンプしてしまう。それこそ今よりももっと昔の火星にね。そこでネルガルの研究者に拾われて、イネス・フレサンジュという名前になるの」

 

 ……つまり、アイちゃん=イネスという事になるのか?

 タイムパラドックス的な感じでどうなるんだ?

 いや、別にどっちかがどっちかを殺したりしている訳じゃないんだし、それは問題ないのか? ……それでも色々と思うところはあるが。

 うん? 待て。じゃあ、つまり……

 

「イネスは全てを知ってたって事か?」

 

 呟くと、その場にいた全員の視線がイネスへと向けられる。

 だが、その疑問の視線にイネスは首を横に振って否定した。

 

「残念ながら外れね。この後、この子はどうやっても過去の火星に飛ばされる事になる」

「何だって!?」

 

 イネスの言葉に最初に声を上げたのは、当然ながらテンカワだ。

 自分の腕の中で眠っているアイちゃんを離してなるものかと言わんばかりにそっと抱きしめる。……強引に抱きしめないのは、起こさないようにしている為か。

 

「残念ながら、そんな真似をしても無駄よ。……少なくても私は過去の火星に飛ばされた。そして記憶を失い、ネルガルの研究員夫婦に拾われる事になる」

「記憶を失う、ですか?」

 

 ユリカの言葉に、イネスは頷きを返す。

 

「ええ、そうよ。残念ながら……というのはちょっとどうかと思うけど、実際に記憶を失ったんだから仕方がないわね。その結果、私は私を拾ってくれた研究員夫婦の子供として育てられた。そして大きくなった私は、両親と同じ研究者となった」

「……なるほど、ね。正直普通にその話を聞かされても信じられないだろうけど……テンカワ君を連れてきた事を考えると信じざるを得ないか」

 

 アカツキはテンカワの方を見ながら呟く。

 実際テンカワを連れてくるようにと言ったのはイネスであり、そしてテンカワを連れて遺跡に来てみれば丁度アイちゃんがボソンジャンプしてきた。

 そう考えれば、イネスの言ってる事は絶対に間違っているとは言えないだろう。

 ただまぁ、幾つか疑問もある。

 そもそも、何故今日ここにアイちゃんがやってきたのか。

 アイちゃんが転移してくるのが今日この時だったとして、何でそれに合わせたように俺達が遺跡の探索をする事になった? それに何より……

 

「記憶を失っていたイネスが、何故昔の事を思い出しているんだ?」

 

 そう、過去の火星にボソンジャンプして記憶を失うのであれば、イネスは何故それを覚えているのか。いや、それは記憶を取り戻したって事なんだろうが、いつ記憶を取り戻したのかという疑問もある。

 そんな俺の疑問に、イネスは薄らとした笑みを口元に浮かべる。

 

「いつ……と具体的に言うのは分からないわね。徐々に……少しずつ記憶を取り戻していった、という方が正しいわ」

「徐々に、ね。……記憶喪失というのはそういうものなの?」

 

 イネスの言葉に、マリューがレモンへと尋ねる。

 レモンは量産型Wの件もあるし、疑似記憶や疑似経験といったもの使っている関係もあって、記憶とかについてもかなり詳しい。

 だが、そんなレモンであってもマリューの疑問には首を傾げるしかなかった。

 

「どうかしら。普通ならそういう事も有り得るけど……そこにボソンジャンプという要素が加わればどんな風に影響してくるのかはちょっと分からないわ」

 

 そうなんだよな。ボソンジャンプというのは俺達に取って非常に未知の要素が強い。

 である以上、そこに何らかの要素があったとしても今の時点で確実に調べる事が出来るとは限らない。

 ……まぁ、分からないのは今のところであって、実際には時間が経てばボソンジャンプについて完全に解明してもおかしくないのがレモンがレモンたる由縁なのだが。

 

「イネスさん……いや、アイちゃん? とにかく、そんな事よりもこっちのアイちゃんをどうにかする事は出来ないんすか?」

 

 眠っている、小さい方のアイちゃんを見ながらテンカワが尋ねる。

 基本的には大人しいテンカワだったが、時々感情が爆発するような事がある。……だが、今それをしないのは自分の腕の中で眠っているアイちゃんを起こしたくないからだろう。

 それだけテンカワにとってアイちゃんというのは大事なんだろうが、ユリカが不満そうな表情を浮かべてお前を見ているぞ。

 そんな風に思いながらイネスの返事を待っていたのだが、期待を込めたテンカワの視線に、イネスは首を横に振るだけしか出来ない。

 

「無理ね。その子が過去に戻るのは、古代火星文明の人達が……ボソンジャンプを作り上げた人達がそうするようにしたの。私達ではどうする事も出来ないわ」

「そんなっ!」

 

 自分の事……正確には過去の自分の事であるにも関わらず、あっさりとそう告げるイネスにテンカワは思わず叫びそうになり……チャリン、と。何かの音が周囲に響く。

 音がした方へとここにいる皆が視線を向けると、そこにあったのは金属のカード。

 

「……そう言えばそんな物も貰ってたわね」

 

 呟く声が聞こえたのは、イネスから。

 

「この金属のカードは?」

「古代火星文明の人達から貰った物よ。……それより、時間ね」

 

 イネスが呟くと、次の瞬間にはアイちゃんの身体が光り始める。

 本人は眠っているので全く気が付いていないが……

 

「アイちゃん、アイちゃん!」

 

 叫ぶテンカワだったが、その身体を包む光は徐々に強くなっていき……やがて俺達の前からその姿は消え去る。

 

「アイちゃん、アイちゃーんっ!」

 

 遺跡の中には、テンカワの慟哭の声のみが響き渡るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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