転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1482話

 突然姿を現した2人の女。

 片方は10代半ばで、今まで俺と戦い……いや、俺に蹂躙されていた奴等と同年代の人物だった。

 

「貴方達……貴様、一体何をした!」

 

 目の前に広がる光景……手足が砕かれて意識を失っている者。

 腰から血を流して暴れ回っている者。

 顎が砕かれ、言葉を口に出来ずにあーうー言っている者。

 そんな者達を見て、頭に血が上ったのだろう。

 

「ナスターシャ!」

 

 そして案の定、まだ無事だった者達の内の1人が叫ぶ。

 ナスターシャというのが、この女の名前なのだろう。

 どうやらこのナスターシャというのも俺の顔を知らないらしい。

 だが……この場にいる最年長の、ナスターシャと共に姿を現した女の方は、俺の顔を知っていたらしい。

 

「これは……どういう事でしょうか、アクセル代表」

「ラトロワ中佐!?」

 

 ナスターシャの口から出たのは、驚愕の声。

 知り合いらしいこいつらに怪我を負わせた俺に対し、ラトロワと呼ばれた女が丁寧な口調で声を掛けたのが我慢出来なかったのだろう。

 

「お前は?」

「は! ソ連陸軍、ジャール大隊の指揮を執っていますフィカーツィア・ラトロワ中佐であります!」

 

 敬礼をしながら告げるラトロワに、ここでようやく他の連中も非常に不味い事態なのだと理解したのだろう。顔を引き攣らせている者が多い。

 

「そうか。俺の事は言わなくても誰か分かるな?」

「は! シャドウミラーのアクセル・アルマー代表で間違いないでしょうか?」

 

 アクセル・アルマー。

 俺の顔は見た事がなくても、その名前は知っていたのだろう。

 自分達がどんな相手にちょっかいを掛けたのか……それどころか、本気で殺そうとしたのかを理解し、先程にも増して他の者達の顔色が青くなる。

 

「で、この愚物達とお前との関係は?」

 

 見たところ随分と親しいようだが、どうやらただの上司……といった感じではないのか。

 

「は! 自分の隊の者達であります!」

「そうか。で、お前の隊の者達がこの基地で……シャドウミラーが色々と手を貸しているこのプロミネンス計画が行われている場所で暴行事件を……それも強姦致傷事件を起こそうとしたんだが、これはどういう事だ? それも、止めようとした俺を相手に、出来るかどうかは別として本気で殺そうとすらもした」

「それは……この者達の上官たる自分の不徳の致すところであります」

 

 ラトロワがそう言ったのが堪えたのだろう。先程までは俺を殺気で満ちた目で睨んでいた者達が申し訳なさそうにして項垂れる。

 

「そうだな。このようなゴミ共の上司だ。お前がどの程度の存在なのかは大体理解出来る。正直、何故お前程度の女がここにいるのか、それがよく分からないな」

「なっ!」

 

 その言葉にナスターシャと呼ばれた女が何かを言い返そうとするも、正直そっちは既に相手にする必要は感じられない。

 

「申し訳ありません」

「部下を見れば上司の質が分かるというのは良く言われるが、この程度の奴等じゃな。……まぁ、いい。それで今回の件の責任はどう取るつもりだ? ソ連がシャドウミラーに対して宣戦を布告した。そう取られてもおかしくない出来事だが」

 

 他国の代表を殺そうとしたのだから、それは当然戦争になってもおかしくはないだろう。

 

「待って下さい! そんな事は決して!」

 

 戦争になったらどうなるのか。それは中国が証明しているというのを思い出したのだろう。

 事実、現在既に中国という国は実質的に消滅しており、日本の保護国という扱いになっているのだから。

 ソ連は中国と比べても国力は上だが、BETAにより国内を荒らされたのは事実だ。

 今はBETAに荒らされた国内もハイヴを取り返して基地化しているが、BETAに荒らされた場所はそう簡単に修復出来る訳でははない。

 他の世界からテラフォーミングの技術を得てはいるのだが、それだって別にソ連を優先しているわけではないのだから。

 そんな状況でソ連がシャドウミラーと戦争をする事になれば、それこそ蹂躙される結果しか存在しない。

 それが分かっているからこそ、ラトロワは何とかそれを避けようとしているのだろう。

 ぶっちゃけ、ソ連は今までシャドウミラーに対して怪しい動きをしてきたし、地理的にも中国と隣接している。

 であれば、ソ連も中国と同様日本の保護国にしてしまった方が手っ取り早くていいんだが。

 

「二度とこんな事はさせませんので、どうか寛大な処置をお願い出来ませんでしょうか?」

「二度と……か」

 

 呟きながら、この世の終わりのような表情をして下を向いている奴等へと視線を向ける。

 俺に襲い掛かってきて怪我をした者はそんな余裕はないが、幸いと言うべきか、襲い掛かるのに時間が掛かった連中はどうしようもない程に事情を理解している。

 自分達の行いで、ラトロワにとんでもない迷惑を掛けていると。

 

「こいつ等の様子を見る限り、これまでにも何度も同じ事を繰り返しているようだが? そして、お前はそれを知らなかったのか、知っていてもそれを止めなかったのか……どのみち程度の低い人間なのは明らかだろう。そんな程度の低い人間の言う事を信じろと?」

 

 自分でも厳しい言葉を言っているのは分かっている。

 それが、半ば八つ当たりに近いという事も。

 だが、俺には義理とはいえラピスという、イーニァとそう変わらない娘がいる。

 また、レモンを始めとした世紀の美女と呼んでもいいような美人を何人も恋人としている。

 そんな俺にとって、こいつらのやろうとした事、そして今までやってきた事は、どんな理由があっても許せる事ではない。

 ましてやそんな人物がシャドウミラーの管轄している基地にいるというのは、許容出来る筈もなかった。

 

「申し訳、ありません。全ては私の責任です」

「だろうな。だが、その責任を取る事すら出来ないんだろう? それとも、何か。お前はシャドウミラーの代表である俺を殺そうとした件に対して責任を取れるというのか?」

「それは……いえ、では自分の命を……」

「そんな下らないものはいらない。そもそも、俺とお前の命が等しいとでも? 自分の価値を過大評価するにも程があるぞ。己の分、というものを理解するんだな。……まぁ、いい。これ以上お前に何かを言っても意味はないだろう。この件はソ連上層部にきちんと抗議させて貰う。その際に向こうがどんな態度を取るのかで、ソ連に対する俺達シャドウミラーの態度も変わってくるだろう」

 

 これ以上ここで話す価値はない。

 そう判断し、少し離れた場所で何が起きているのか理解出来ないといった様子のイーニァとクリスカの方へと近寄って行く。

 

「待って下さい!」

 

 そんな俺の背に聞こえてくるのは、切羽詰まったラトロワの声。

 先程までの冷静さは既に微塵も残ってはいない。

 その場で足を止め、首だけをそちらに向ける。

 俺の目に映ったのは、緊張でか顔を真っ青にしているラトロワの姿。

 そこには、今の声と同じく先程までの冷静さは少しも残っていなかった。

 

「何だ? もうお前如きに用はない。さっさとどこへなりとも消えろ」

「待って下さい。……上に報告するのは、出来れば止めて欲しいのですが」

「何故だ? ソ連の軍人に迷惑を掛けられたんだ。その責任を上の者に取って貰うのは当然だろう? お前程度の女が責任を云々したところで意味はない。……悔やむなら、こんな低脳共を部下にして、しかもその性根を叩き直す事すら出来なかった自分の無能さを恨むんだな」

「お前ぇっ!」

 

 何故かラトロワではなく、その近くにいた女……ナスターシャとかいう女が激昂する。

 上司を侮辱されて我慢は出来なかったらしいが……この場合、それは悪手でしかない。

 

「まだ俺に何か用件があるのか? お前達如きに関わっているような暇はないんだがな。これからソ連に対する態度をどうするのか、シャドウミラーの方で相談する必要が……」

「アクセル」

 

 そんな俺の言葉を遮るように口を挟んできたのは、予想外な事にイーニァだった。

 まさかここでイーニァが口を挟んでくるとは思わなかったので、少しだけ驚く。

 

「どうした?」

「あのね、出来ればあの人達の事をこれ以上苛めないで欲しいんだ……」

 

 そして、更にまさか。イーニァの口から出て来たのは、自分やクリスカに危害を加えようとした相手を庇う言葉。

 そう思った瞬間、殆ど発作的に笑いの感情に襲われる。

 

「くっ、はははは……まさか自分達が強姦しようとした相手に庇われるとはな。みっともないにも程がある。なぁ、どんな気分だ? こんなゴミ共の上官として今の気分は」

「……」

 

 無言が返されるが……さて、どうしたものか。

 イーニァに言葉を挟まれたせいか、ラトロワやその部下を排除するという気持ちが一気に消えていった。

 まぁ、考えてみればイーニァやクリスカもソ連の人間なんだから、ソ連が何らかの制裁を受けるような羽目になれば、それは困るよな。

 かと言って、こいつらをそのままにするって訳にもいかないし……

 ああ、こんな場所で使う物ではないだろうけど、こんな時にピッタリな物があったな。

 その事に思い至ると、空間倉庫の中からとあるマジックアイテムを思い出す。

 それは、本来そう簡単に使うべき代物ではないのだが、今この場に限ってはこれが最善だろうという判断だ。

 

「さて、このままお前達のようなゴミと話していても不快感しかないし、手っ取り早くいくか。この世界でも随分と広まってはいるが、シャドウミラーには魔法という技術が存在する。……こんな風にな」

 

 魔法という言葉にラトロワとナスターシャ以外の者が疑わしげな表情をしたのを見て、指を白炎にして炎獣を作り出す。

 SD化した熊の炎獣だけに、当然のようにイーニァがそれを見て目を輝かせる。

 そのまま炎獣にイーニァの側で適当に遊んでいろと命じると、驚愕の表情を浮かべているラトロワ達へと、改めて視線を向ける。

 まぁ、今のは正確には混沌精霊である俺の力であって、純粋な意味の魔法ではないんだが……まぁ、ファンタジーという意味では変わらないしな。

 

「魔法があるのは分かったな?」

「……はい」

 

 ラトロワが頷くのを確認し、次に先程俺が思い出したアイテム……鵬法璽を空間倉庫から取り出す。

 魔法というものを知らず、魔力すら感じた事のないラトロワだったが、それでも鵬法璽から感じられる何かは感じ取る事が出来たのだろう。

 思わずといった様子で数歩後退っているのが確認出来た。

 

「これは鵬法璽というマジックアイテムで……そうだな、簡単に言えば約束を絶対に守らせるという能力を持つ。これから、このマジックアイテムを使ってお前に出す条件を認めるのなら、お前の名前を以て契約に応じろ。そうすれば今回の件はここだけの話としておいてやる。嫌なら別に契約をしなくても構わない。ただし、その場合はソ連の上層部に今回の話を持っていく事になる」

「……分かりました」

 

 ラトロワが頷いたのを確認し、俺は鵬法璽に魔力を込めて口を開く。

 

「フィカーツィア・ラトロワは、今日この時からこの場にいるラトロワの部下が他人に対し意図的に危害を加える事を禁止とする。また、この場にいるラトロワの部下がこれまで行ってきた罪の被害者達全てに対し、直接全員を連れて2年以内に謝罪に訪れる事にする。尚、その際に被害者に対し謝罪の意志を込めて対価を支払う事とする。また、その対価は被害者自身が決めるものであり、いかなるものであっても断る事は出来ない。以上の行為をこの場にいるラトロワの部下の誰か1人でも守らない場合は、フィカーツィア・ラトロワの命を以て償う事とする。この契約に従う意志があるのであれば、自分の名を以てこの契約に従うと明言しろ」

 

 俺から出された条件は、酷く厳しい。

 だが、こいつらが今までやってきた事を思えば、それは当然だろう。

 それこそ、クリスカやイーニァを強姦しようとした奴等がやってきた罪を考えれば、ラトロワが犯罪者に犯されろという風に命じられるかもしれないが、こいつらを教育する事が出来ない以上、自業自得でしかない。

 ここが基地であるが、不思議と周囲は静まり返っていた。

 ラトロワと、その部下達は俺が口にした条件の厳しさに頬を引き攣らせる。

 しかし……それでもラトロワは口を開こうとし……

 

「待って下さい、中佐! そんな条件を呑んだら!」

 

 ナスターシャの口から悲痛な叫びが出る。

 それでいながら、俺に絡んできた奴等へと憎悪を込めて睨み付けていた。

 

「ナスターシャ、心配はいらない。アクセル代表の言う通り、今回の件は私の管理能力の欠如によるものだ。その責任を取るのであれば、これくらいはしなければならないだろう」

「中佐!」

「……フィカーツィア・ラトロワの名において、私はアクセル代表の出した条件を呑みます」

 

 そう告げた瞬間、鵬法璽が眩く輝き……契約はここに成るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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