転生とらぶる   作:青竹(移住)

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番外編011話 0136.5話

「くそっ、こちらの計算が滅茶苦茶だ!」

 

 黒の騎士団幹部の本拠地とも言えるトレーラーにある自分の部屋へと入ってきたその男は、羽織っていたマントをソファへと苛立たしげに叩き付け、被っていた仮面を乱暴に机の上に置く。

 仮面の下から現れたのは、黒髪と紫の瞳を持つ怜悧そうな男の顔だった。その男の現在の名はルルーシュ・ランペルージ。過去の名前はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。正真正銘世界の3分の1を支配する超大国である神聖ブリタニア帝国の皇子だった男だ。だが、父親の裏切りとも言える行動により寄る辺を無くし、現在は母親と縁の深いアッシュフォード家に匿われていた。そしてルルーシュ本人は黒の騎士団というレジスタンスを率いるゼロとして活動している。

 そんな黒の騎士団が起こしたブリタニアに対する攻撃。日本解放戦線という最大級のレジスタンスを攻撃したブリタニア軍の不意を突いて奇襲を仕掛け、エリア11の総督にしてブリタニアの魔女の異名を持つコーネリア・リ・ブリタニアを孤立させて捕らえる寸前までいったのだ。後数分の時間があればコーネリアを捕らえて自分の母が死んだ理由をギアスを使って知る事が出来たというのに。そこにアレが現れた。

 

「空を飛ぶKMFだと……計算外にも程があるぞ。イレギュラーはあの白兜だけで間に合っているというのに」

 

 そう、コーネリアを捕らえる寸前で一機のKMFが乱入してきたのだ。それも空を飛ぶという常識外れな登場の仕方で。

 実はKMFではなくアーマードモジュールという機種なのだが、ルルーシュがそれを知る事はない。

 よって……

 

「恐らく、空を飛ぶ為の装置は小型化出来ていないのだろう。それ故にその装置を積み込んでいるあのKMFも巨大になっていると考えるべきか」

 

 当然このような誤解をしてしまう事になる。

 

「ただ機体が大きいだけならまだ対処のしようもあるが、あのカレンと互角に渡り合う腕の持ち主だという事を考えると厄介だな」

 

 ルルーシュの脳裏に浮かんだのは、黒の騎士団最強のKMFである紅蓮弐式と、そのパイロットを務める黒の騎士団エースの紅月カレン。つまりは黒の騎士団の最大戦力と互角以上に渡り合った異形の空飛ぶKMFの姿だった。

 

「いや、互角というのは正しくないな。どちらかと言えば押されていた」

 

 敵が最後に使ってきた、その巨大な質量を活かした体当たり。それを紅蓮弐式は防いだものの輻射波動に不具合が出ていたのだ。恐らくあの時土砂崩れが起きていなかったら負けていただろう。

 

「そして白兜も健在、か」

 

 空を飛ぶKMFの後詰めとして出てきた白兜。この機体もまた、紅蓮弐式と互角の性能を持つ極めて厄介な機体だ。ルルーシュとしてもC.C.が助けに入ってくれなければあのまま捕縛されていただろう。

 

「おやおや、随分と荒れているな」

 

 突然部屋の中に声が響き、慌てて仮面を手に取ろうとするがすぐに聞き覚えのある声である事を思い出し舌打ちをする。

 

「部屋に入る時はノックくらいしろC.C.」

 

 C.C.と呼ばれた緑の髪の女は軽く肩をすくめる。

 

「私はちゃんとノックしたぞ? それに気が付かないお前が悪い」

「ぐっ」

「それよりもあの空飛ぶ機体はそんなに予想外だったのか?」

「ああ。あんな機体があるとは予想もしていなかったし、ブリタニア軍に潜入している工作員からの情報もなかった。……あの特殊性を考えれば、恐らくあの白兜と同じ開発系統だと思うが」

「そうか? だが白兜と空飛ぶ機体では随分と意匠が違うぞ?」

「だが、あれだけ高性能の機体をポンポン作れる技術者がそう大量にいるとも思えん。恐らくKMFに飛行性能を与える為の技術立証試験機か何かだと思うが」

 

 アクセルの事を知らないルルーシュは自分の常識に当てはめてそう判断する。だが、その推理はそれ程間違っている訳ではないのだ。事実特派ではKMFを飛行可能にするフロートユニットの開発も進めているのだから。

 

「どのみちたった一機の機体で出来る事はあくまでも戦術的な勝利にしか過ぎん。俺が目指すのは戦略的な勝利だ」

 

 自分の言っている事を確認する意味でもそう呟くルルーシュ。だが、彼は知らない。アクセル・アルマーという規格外の存在を。本来の自分の機体を持ち出せばそれだけで戦略を一変させてしまう事が可能なグロウセイヴァーという規格外の機体と共に。


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