転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1526話

 デュオがやってきた翌日、俺と凛、綾子の姿はサルベージ船の中でもトールギスの改修が行われている格納庫の中にあった。

 ここはトールギスの格納庫なので、当然デスサイズもウイングガンダムもない。

 恐らく今頃はデュオとヒイロ、それとこの船の船員が必死になって調整したり修理したりしてるんだろう。

 そう考えれば、こっちは向こうに比べると静かなものだ。

 

「……いや、それよりも前のトールギスと殆ど変わってないように見えるんだが」

 

 俺の視線の先にあるトールギスは、ハワードから聞いたところによると既に改修は大部分が終わっており、後は最終調整だけらしい。

 だが、その割りにはこうして見ると、特に変わったところがあるようには見えない。

 いや、トールギス全体で変わったところが見えないというのは、理解出来る。俺が改修を頼んだのは、あくまでもスーパーバーニアと武器だけなんだから。

 でも肝心のスーパーバーニアも、以前と比べると殆ど変わっているようには見えない。

 いや、多少スラスターの数が増えているか?

 それでも全体的に見ると、とてもではないが以前のままでしかない。

 

「なぁ、これはどうなってるんだ? 俺が聞いた話だと、スーパーバーニアは改修されたって事だったんだが」

「ふむ? ああ、外見は以前と変わらんよ。じゃが、スーパーバーニアの中身は別物じゃ。本来なら外側も全て1から作り直したかったんじゃが……時間が、な」

 

 そう言われれば、俺もハワードに対して文句を言う事は出来ない。

 実際、少しでも早くトールギスの改修を終わらせるようにと頼んだのは、俺なのだから。

 当然1から作り直すのに比べると、間違いなく性能は落ちてるだろう。

 だが、既にオペレーション・メテオが始まっている以上、殆ど時間がないのは事実だった。

 

「……なら、しょうがないか」

「別にアクセルの技量があれば、多少この機体の性能が悪くても問題ないんでしょ? なら、別にそこまで拘る必要もないじゃない?」

 

 そう告げる凛の言葉は、間違いのない真実でもある。

 そもそも元からトールギスが俺の反応についてこられないという事は、理解していたのだ。

 だとすれば、高望みし過ぎなのもちょっと不味いか。

 

「分かったよ。それで、機体の様子はどんな具合なんだ? 最終調整は他の奴がやって、ハワードは確認をするんだよな?」

「うむ、そのつもりじゃよ。それを今から行う訳じゃ。これで終われば、トールギスは無事改修完了となるじゃろう」

 

 相変わらずサングラスを掛けているので、その表情ははっきりとは分からない。

 だがそれでも、自分の開発したMSがより性能を増して日の目を見るというのは、開発者として嬉しいのだろう。

 その辺は技術班との付き合いも長いので、何となく理解出来る。

 性格も問題ないし、出来ればハワードはシャドウミラーに引っ張りたいんだよな。

 老いという問題も、シャドウミラーに来れば時の指輪の効果で解決するんだし。

 だが……ハワードがそれを望まないというのも、十分に理解している。

 また、ガンダムを開発した5人の科学者と同様に無人機を嫌っているというのも問題だ。

 W世界の無人機嫌いというのはどうにかならないものか。

 ツバロフ辺りならこっちの意見に賛成するだろう。……だが、正直ツバロフは欲しい科学者だとは思えないんだよな。

 ビルゴは原作でもかなり強力なMSだったが、それを可能にしたのはあくまでも5人の科学者がいたからだ。

 メリクリウスとヴァイエイトという2機のMSがあったからこそ、完成したMSだ。

 MDのAIを開発したというのは褒められるが、そのAIはまだまだ未成熟で、敵に利用されることもあった。

 そうなると、ツバロフをシャドウミラーに引き込んでも、無人機のAIを変な風に弄られる可能性がある。

 そして何より、ツバロフは功名心が強くプライドも高い。

 これが功名心が強いだけであれば、技術班に来ても他の連中に教えを請う事も出来るだろう。

 だが、下手にプライドが高いのでそれも出来ない。

 ましてや、技術班にいるのは全員がツバロフよりも年下なのだ。

 ……まぁ、魔法球に入っていた時間とかを考えれば、実際にはツバロフよりも年上がいても不思議じゃないんだが。

 ともあれ、外見を考えればツバロフが圧倒的に年上になるだろう。

 自分よりも圧倒的に若く、それでいて自分よりも圧倒的に能力が高い。

 妙なプライドが邪魔をして、教えを請う事も出来ない。

 そんなツバロフが最終的にどんな手段に出るのかというのは、予想するまでもないだろう。

 それこそ、妙な事を企んで騒動を起こすのは間違いない。

 そんな人物をスカウトしたいとは、とてもではないが思えない。

 

「では、これから最終調整がしっかり終わっているのかどうかをチェックするから、アクセルはコックピットに乗ってくれ」

「分かった」

 

 ハワードの言葉に従い、乗降ワイヤーを使ってコックピットへと入る。

 当然だが、トールギスのコックピットの内部はリーオーとそう変わらない。

 ところどころ違う場所はあるが、それでも基本はリーオーだ。

 まぁ、プロトタイプ・リーオーって呼ばれているくらいなんだし、このコックピットからMSを動かす最低限のものを残したのがリーオーのコックピットなんだろうな。

 そのまま機体を起動させていく。

 そうしてまず行ったのは、トールギスを1歩歩き出させる事だった。

 それは全く問題なく行われ、映像モニタに映し出されたハワードが安堵の息を吐いているのが分かる。

 傍から見る限りだと、結構自信があるように思えたんだけどな。

 ああ、けど最終調整は自分でやったのではなく他の船員にやらせたのだから、そのせいか?

 ともあれ、最終調整のチェックはしっかりとやったって話だったんだし、そこまで気にする必要はないと思うんだが。

 そのまま格納庫の中で、ゆっくりとトールギスを動かす。

 俺の手足の如く動く……という意味では、リーオーとかに比べると随分とマシだ。

 だが当然ながら俺が本気で操縦しようとすれば、こっちの反応速度についてくることは出来ないので、その辺を考えた操縦をする必要があるだろう。

 

『どうじゃな?』

 

 映像モニタに格納庫の通信装置から送られてきた映像が映し出される。

 取りあえずきちんと動いている事に満足したのか、ハワードの顔からも先程の安堵した表情は既に消えており、少しだけ得意気に見える。……まぁ、顔は例の如くサングラスを掛けているので、はっきりとは分からないが。

 

「まだ機体を慣らす意味でゆっくりとしか動いていないけど、今のところは問題ないな。……ただ、今回の最大の改修ポイントのスーパーバーニアをどうするかが問題だな。試したいけど、こんなのをここで試せば当然ながら連合軍やOZに見つかるだろ」

『うーむ、それはそうじゃが……しかし、そのスーパーバーニアは実際に動かしてみなければ不具合がないかどうかは分からんぞ? いや、勿論儂が改修した代物じゃし、不具合の類があるようには作られておらんが』

 

 そう言えば、改修してもスーパーバーニアはスーパーバーニアなんだな。

 てっきりⅡとか改とかつくかと思ったんだが。

 いや、最初に俺がスーパーバーニアと呼んでしまったから、それでか?

 ともあれ、陸は基本的に連合軍とOZに完全に抑えられていると考えられる以上、そこでトールギスを動かせば間違いなくすぐに発見される。

 海上なら地球上の全ての海を24時間態勢で監視しているとは限らないだろうけど、どこが安全なのかというのは俺にも分からないしな。

 かといって、まさかこのサルベージ船の中でスーパーバーニアを全開にする訳にもいかないだろう。

 そんな真似をすれば、確実にこの船が破壊されてしまう。

 これにはハワードも悩んでいるようで、口籠もるが……それに待ったを掛けたのは、凛だった。

 映像モニタの向こう側で、笑みを浮かべて口を開く。

 

『アクセル、その件だけど多分私が解決出来ると思うわ』

「凛が?」

 

 意表を突いたのは凛とMSという組み合わせが致命的なまでに合っていなかった。

 元々機械関係には酷く弱い凛の事だ。

 それこそこのままホワイトスターに連れていった時、無事に生活出来るのかと思える程に。

 まぁ、量産型Wを暫くサポートとして付けておけば問題はないだろうが……

 とにかく、そんな凛にMSに関しての話が出来るとは思わなかったのが、俺の驚いた理由だ。

 だが、映像モニタの向こう側の凛は、自信に満ちた笑みを浮かべて口を開く。

 

『アクセル、私が何なのか……忘れた訳じゃないでしょ? あの基地の事を思い出しなさい』

 

 ……なるほど、結界か。

 ただ、それでも疑問には思う。

 俺達が住んでいたあの連合軍の元基地に張っていた結界は、あくまでも侵入してきた者を察知するような結界だ。

 外から周囲の様子が分からなくなるような結界を……それも、トールギスが自由に動き回っても大丈夫な程の結界を展開出来るのか、と。

 そんな俺の疑問を見て取ったのか、凛は口元に自信に満ちた笑みを浮かべる。

 その笑みを見た瞬間、俺の中に浮き上がってきたのは、凛に任せておけば大丈夫だと絶対的な安心感……ではなく、本当に大丈夫なのか? という疑問だった。

 凛には、基本的に大事な時に限って大きなミスをするという、うっかりの呪いがある。

 それこそ、うっか凛と呼ぶのに相応しい程の呪い。

 そしてトールギスを自由に動かせるだけの空間的な余裕を作り出す結界ともなれば、当然大事だ。

 そう考えれば、うっか凛が発動してしまっても不思議でも何でもない筈だ。

 

「本当に任せても大丈夫か?」

『ちょっと、アクセル。それどういう事? 私の腕は知ってるでしょ?』

 

 魔術については基本的に絶対の自信を持っている凛だ。

 それだけに、俺の口から凛の腕を疑うような言葉が出て来た事が許せなかったのだろう。

 だが、それでも魔術と言う言葉を口にしないのは、ハワードがそこにいるからか。

 この世界でも神秘を他人に話せば何らかのマイナス要素がある可能性はある。

 そう考えれば、迂闊に口に出せないのは当然だった。

 ……いや、それ以前にこのW世界で魔術なんて言葉を口に出した場合、間違いなく胡散臭い視線を向けられるだろうが。

 それとも、実は魔術とかのオカルトは金持ちの間では意外と趣味として広まっている可能性は……ないか。

 まぁ、けど実際、W世界で連合やOZ、ロームフェラ財団といった者達に見つからないようにトールギスのテストをするとなれば、当然のように何らかの手段を講じなければならない。

 その手段で最善なのは、この世界の人間にとって全く理解出来ない手段……つまり魔術なのは、当然の出来事だった。

 

「ああ、勿論凛の腕は知ってる。そうだな、考えてみれば凛に頼むのが一番手っ取り早いんだ。じゃあ、頼めるか?」

 

 煽てるようにそう告げると、凛は嬉しそうに……そして、してやったりといった笑みを浮かべる。

 そんな笑みを浮かべている凛をそのままに、俺は一旦トールギスを元の場所へと戻してコックピットを開く。

 ドーバーガンやライフル、ビームサーベルといった武器も試してみたかったが、それはスーパーバーニアと同様にサルベージ船の中で出来るようなものではない。

 そうして乗降フックを使って床に降りると、ふと気になってハワードに尋ねる。

 

「そう言えば武器の件はどうなった? 一応こっちも頼んでおいた筈だが」

「無茶を言うでないわい。スーパーバーニアの方の改修で手一杯で、そっちには手を付けておる暇はないわ」

「そうか」

「ただ、他の連中が頑張って、ライフルの銃身を伸ばして威力を高めることに成功した。おかげで、ドーバーガンみたいに右腕の外側に設置するようになったが」

「多少動きにくくなったようだが、威力が上がるのは歓迎だ」

 

 特に責めもせず、ハワードの言葉に頷く。

 実際、トールギスの改修作業をこの短時間でやって貰ったのを考えれば、武器の方に殆ど手を出していなくても文句を言える筈はない。

 いや、寧ろスーパーバーニアの方だけでも終わらせてくれた事に驚きを抱く。

 それに、ハワードにはオペレーション・メテオでデュオの件もあったしな。

 そう考えれば、ここまでやって貰ったことに感謝こそすれ、責めるつもりはない。

 そう考え……早速凛と一緒に出掛ける相談をしようとした時、ふと視界の隅に気に掛かる相手の顔があった。

 咄嗟に足の動きを止めて視線を向けると、そこにいたのはデュオと……同い年くらいの男がもう1人。

 表情を全く変える様子もなく、トールギスへと視線を向けていた。

 立っているだけでも分かる、MS全盛のW世界の人間としては、かなりの身のこなし。

 それでいながら、それを隠す術も知っている。

 それが誰なのか……考えるまでもなく、俺は知っていた。

 この世界の原作、ガンダムWの主人公……ヒイロ・ユイ。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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