転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1600話

「ああああっ、くっそぉっ!」

 

 格納庫の中に入った瞬間に聞こえてきたその声は、予想通り非常に悔しそうなものだった。

 それでも人や物に当たったりしていないところは、さすがと言えるのだろう。

 いやまぁ、もしそんな真似をしようものなら、凛とか綾子からお仕置きされてしまう可能性が高いのだろうが。

 

「ほら、落ち着け。整備員達もどうしたらいいか困ってるぞ」

 

 そんなデュオへと声を掛ける。

 普段は陽気な性格をしているデュオだったが、ガンダムのパイロットらしく非常に負けず嫌いだ。

 勿論八つ当たりの類はしないのだが、それは多少なりともデュオに関わらないと分からないだろうし、もしくは俺のように原作知識を持っていてこその判断だ。

 まだデュオの性格をよく分かっていない整備員達は、下手にデュオに話し掛けて八つ当たりでもされたら……と思っても仕方がない。

 

「アクセル……まさか、あんなに簡単にやられるとは思ってなかったよ」

 

 デュオの言葉に、模擬戦を見ていた整備員達が不思議そうな表情を浮かべる。

 先程の模擬戦……それなりに互角なような戦いに見えたが、五飛はかなり手加減をしていた。

 特にシェンロンガンダムの代名詞の1つでもある火炎放射器は使っていないし、盾を投擲するという攻撃方法も使っていない。

 勿論盾を投擲云々というのであれば、それはデュオも同様だったが……

 

「あいつ……五飛だったよな? あいつって、元からあんなに強かったのか?」

「どうだろうな。ある程度の強さはあったと思うが、それでもここまで強くはなかったと思うぞ」

「なら、何で今はあんなに強いんだ? 俺を相手に手加減して勝つなんて」

「それはお前にとっても同じ事だろう?」

「……はっ、アクセルだったら分かってるだろ? それでそんな風に言うってのは、ちょっと卑怯だと思うんだけどな」

 

 デュオが言いたいのは、お互いが全力ではなかったとしても、余力の違いに差があったという事だろう。

 お互いが10の力を持っていても、デュオが7の力で戦い、五飛は5の力で戦った。

 両方とも全力ではなくても、その差は決定的だ。

 

「考えられるとすれば、俺達と一緒に行動している事だろうな。他にも力の近い相手と訓練をしたりしてるし」

 

 トールギスを使っている俺とは訓練をしていないが、トーラスを使っている綾子とは結構訓練をしているのを何度も見た事がある。

 地球に降りてきてからは宇宙にいた時のような訓練は出来ず、実戦に関してもオペレーション・デイブレイクが始まってからは大人しくしていた。

 そんなデュオとは違い、綾子のトーラスや連合軍のリーオーといった者達と何度となく訓練を行い、その上OZを相手にしての実戦も何度となく繰り返している。

 当然経験値という意味では他のガンダムのパイロットよりも有利になっているのは間違いないのだろう。

 また、生身での戦いでの体験も五飛はデュオを大きく上回っている。

 特に大きいのは、やはり俺、凛、綾子といった3人を相手に戦った事だろう。

 どうあっても、シャドウミラーを相手にして戦っても勝てず……更にはそこで、自分はシェンロンガンダムに……ナタクに相応しくないと考えてしまい、それに相応しいように自分を鍛え上げた。

 そんな生身での訓練も、間違いなく五飛にとっては有益だった筈だ。

 身体能力の高さが操縦技能に直結するというのは、それこそ綾子を見ていれば分かるだろうし。

 元々素の能力が高いので、多少操縦技術が劣っていても、反射神経や対G能力でどうとでも対処は出来る。

 操縦技術が急激に上がっているというのは……これは身体能力ではなく、純粋に綾子の能力か。

 ともあれ、デュオと五飛では周囲の環境そのものが大きく違っており、それが今日の模擬戦の結果だろう。

 

「……それだけで、あんなに差がつくのかよ?」

「当然だ」

 

 そう答えたのは、俺……ではなく、こちらに近付いてきた五飛。

 まぁ、この格納庫はシャドウミラー用の格納庫で、そうなれば当然デスサイズだけではなくシェンロンガンダムもここに置かれている。

 だとすれば、模擬戦が終わった以上、五飛がこうして顔を出してもおかしくはない。

 

「お前……」

 

 デュオもそれに気が付いたのか、五飛の方に驚愕の視線を向けていた。

 五飛に負けて、周囲の様子を見て理解する程には気にしている余裕はなかった、か。

 

「俺はナタクに相応しい男になるように、鍛えてきた。……お前もアクセル達と戦ってみるといい。そうすれば、俺が強くなった理由は分かるだろうし、同時にお前に勝った俺も所詮はまだ弱いと理解するだろう」

 

 それだけを言うと、五飛はデュオに背を向けて去っていく。

 ……もしかして、デュオを慰める為にやって来た、のか?

 まぁ、五飛にとってデュオというのはガンダムのパイロットという事で、数少ない自分の同類だ。

 当然そこには多少ではあっても仲間意識のようなものがあるのだろう。

 

「……アクセル、達? もしかして、凛や綾子も強いのか?」

「そうだな。少なくてもデュオと五飛が2人で纏めて掛かっても、1人でどうにかなるくらいの技量はある」

 

 デュオも、相手がどれだけ強いのかというのは大体理解出来るのだろうが、それでも相手があまりに強過ぎると、どうしてもその差が読めないのだろう。

 

「……マジかよ」

「ああ。何なら戦ってみればいい。あくまでも生身の戦いだが、デュオを相手にするのなら、それこそ数秒程度で戦いは終わるぞ。ああ、ただしその場合戦いを挑むのは凛じゃなくて綾子の方がいいな」

 

 凛という名前が俺の口から出た瞬間、デュオはうげぇ、といった表情を浮かべる。

 まぁ、凛には散々してやられている事を考えれば、これは当然の反応か。

 いぢめっ子の本領発揮といったところなんだろう。

 

「本当にそんなに強いのかよ?」

「だから強いって。何回聞いても、事実はどうにもならないぞ」

 

 このW世界で、生身のまま戦いを挑んで綾子に勝てるような相手は……まずいないだろう。

 それこそ生身で五飛に勝ったトレーズ級が何人集まったところで、鎧袖一触にされるだけだ。

 

「どうしても信じられないようなら、実際に綾子と戦ってみたらどうだ? 優しく……かどうかは分からないが、ある程度の指導はしてくれると思うぞ?」

 

 元々世話好きの綾子だけに、多少のアドバイスくらいはするだろう。

 まぁ、最初に綾子と戦った時、そのアドバイスを聞くだけの余裕があるかどうかというのは、別の話だが。

 

「……なるほど」

 

 俺の言葉に、デュオは短く呟く。

 恐らく今日か明日辺りに綾子はデュオに戦いを挑まれる事になるんだろうな。

 ま、デュオが強くなってくれれば、シャドウミラーとしても強化されるんだから、文句はないが。

 一言だけ呟き、何かを考え込み始めたデュオをその場に残し、俺は格納庫を出ていく。

 整備員も、デュオが黙ったのを見て安心したのだろう。機体の整備に取り掛かる。

 ……どちらかと言えば、機体の整備というよりもデスサイズの性能を調べたいという方が強いんだろうが。

 背中からは、そんな整備員達の頑張る声が聞こえてくる。

 

「どうだった? デュオの鼻は引っ込んだ?」

 

 格納庫から出た場所で待っていた凛が、そう尋ねてくる。

 

「鼻が引っ込んだというか……折ったと言うべきじゃないのか、こういう時は」

「そう? でもまぁ、これでデュオが今よりも強くなるのなら、私としても文句ないんだけどね」

 

 書類整理をやっていて溜まったストレスをデュオで発散させよう……とか考えてるんじゃないよな?

 いや、それくらいなら普通に考えそうな気がするけど。

 そんな凛の隣にいる綾子に視線を向け、笑みと共に口を開く。

 

「五飛の次はデュオだな。部下……いや、弟子? それとも後輩か? ともあれ、頑張ってくれ」

「あたしに投げるのか?」

 

 不満そうな綾子だったが、実際最近の俺は何だかんだと結構忙しい。

 特にOZの基地に忍び込んではMSを奪うといった行為を繰り返してOZの戦力を減らしつつ、俺の資産も増やさなければならない以上、あまり時間的な余裕はない。

 今のところは、OZも俺の行動に対処出来ないでいる。

 だが……向こうにとっては、そうそう同じ事を何度も繰り返しやられる訳にはいかないだろう。

 ただでさえ、OZは少数精鋭で数が少ないのに、その機体を俺に奪われるような事になってしまえば、パイロットはいるのに乗るMSがないなんて事態にもなりかねない。

 五飛はレイクビクトリア基地でパイロットの方を狙ったが、俺の場合はMSの方を狙わせて貰おう。

 

「……分かったよ。けど、今度一緒に遊びにいって貰うからな」

「ああ。俺でよければいつでも付き合うさ。ただ、買い物はあまり時間が掛からないようにしてくれると嬉しいな」

 

 女の買い物には時間が掛かるというのが定番だが、それを待ってる方としてはあまり面白いものじゃない。

 ましてや俺の場合、何故か街中に出ればトラブルに巻き込まれる事が多い。

 綾子の買い物が終わるのを待っていたら、恐らく……いや、ほぼ確実に何らかの騒動に巻き込まれるだろう。

 正直なところ、そうなったらそうなったで、色々と暇潰しには丁度いいと思うんだけどな。

 

「あ、私も忘れないでよね?」

 

 凛も綾子に負けじと、そう告げてくる。

 勿論俺に否とは言うつもりはないので、凛と綾子の2人と一緒にデートへと向かうのは決定するのだった。

 まぁ、そのデートがいつになるのかは分からないが。

 デートを楽しむとしても、まずはOZのオペレーション・デイブレイクを早いところ終わらせる必要がある。

 

「やっぱりデートは普通のデートがいいわよね」

「そうだな。あたしも凛の意見には賛成だ」

 

 そう呟く凛と綾子の3人は、今まで色々と大きな騒動に巻き込まれてきた経験からの言葉だろう。

 

「俺も普通のデートを楽しみたいところだよ」

 

 呟き、そのデートの資金はやっぱり今日の模擬戦で勝った分になるのだろう。

 そう思うのだった。

 

 

 

 

 

「……俺か?」

 

 模擬戦があった日の、翌日。

 何故か俺の前にはデュオが決意を固めて立っていた。

 

「ああ。綾子に聞いた。アクセルが綾子や凛よりも強いんだろ?」

「いや、そうだけど。でも、どうせなら凛や綾子に勝ってから俺に挑むとかしないか?」

 

 そもそもの話、凛や綾子を相手にして勝てないのであれば、それこそ俺と戦っても勝ち目はないと思うんだが。

 いや、それ以前に今の俺には物理攻撃が無効である以上、凛のように魔力を使った攻撃をするか、綾子のように宝具を使った攻撃でもしなければ、効果はないんだが。

 

「五飛の奴もお前と戦ったんだろ? なら、俺だってお前と戦う権利があると思わないか?」

「別に、その辺は思わないが……」

 

 五飛が俺と戦ったからといって、何故デュオまで俺と戦う必要があるのか。

 そんな疑問を抱くが……俺を見ているデュオの目は、決して冗談が混じっているようなものではない。

 それどころか、デュオには珍しいくらいに真剣な視線をこっちに向けている。

 ……仕方がない、か。

 

「分かった。ただ、今回だけだぞ。次から俺と戦いたいなら、凛と綾子に勝ってからにして貰う。それでいいか?」

「ああ、それでいい!」

 

 食いつくかのように勢い込むデュオの様子に、小さく溜息を吐いてから場所を移動するべく立ち上がる。

 

「じゃあ、道場に行くぞ。そこで戦ってやる」

 

 こうして、俺達は何故か使い慣れた道場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「……で、凛や綾子、五飛と……まぁ、サリィまでは許容範囲内だけど、何でこんなに人が集まってるんだ?」

 

 溜息を吐きながら、周囲を見回す。

 そこには、何故か多くの軍人の姿があった。

 それどころか、五飛との模擬戦の時のようにトトカルチョをやっている者すらいる。

 ……ちなみに、掛け率は1.1:8.9だった。

 言うまでもなく俺が1.1だ。

 賭けとして成立するのか、これ?

 そう思ったが、何人かは大穴としてデュオに賭けているのもいるし、中には何分で倒されるかといった項目で賭けている者もいる。

 

「元々、この道場はそんなに人気がある場所じゃなかったらしいけどね。アクセルを含めてあたし達が色々とここで活動しているせいか、何気に人気スポットになってるらしいよ」

 

 綾子の言葉に頷きながら、俺は道場の中央でデュオと向かい合う。

 

「準備はいいのか?」

「ああ、勿論。……じゃあ、行くぞ!」

 

 その言葉と共に、デュオは真っ直ぐに俺へと向かってくる。

 五飛と違って銃を使わない戦いというのは印象にないデュオだったが、それでもガンダムのパイロットだけあって相応に鍛えてはいるのだろう。

 踏み込みの速度は五飛には及ばずとも、その辺の一般の軍人よりは明らかに上だ。

 

「がっ!」

 

 だが、当然俺の行動についてこられる筈もなく……こっちに近付いてきたデュオの横を通り抜けざまに一撃を食らわせると、あっさり意識を失うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1035
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1309

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