転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1601話

「ほら、どうした! その程度でもうギブアップか!?」

 

 道場に綾子の声が響き、それを聞いたデュオが畳の上で寝転がっている状況から何とか立ち上がる。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……くそっ、この化け物女が……」

「へぇ、化け物女ね。なら、化け物らしくもう少し厳しくいってもいいか?」

「すいませんでしたぁっ! 勘弁して下さい!」

 

 綾子の言葉に本気を感じ取ったのだろう。デュオは即座に謝罪の言葉を口にしながら立ち上がる。

 まさに千鳥足と表現するのが相応しい、そんな足。

 それでも、口では文句を言うものの、本当の意味で訓練を止めるつもりはないらしい。

 俺とデュオの、模擬戦と呼ぶにも色々とちょっとアレな日から数日。

 デュオは俺が……そして凛や綾子が自分よりも遙か格上だというのを身を以て実感したらしく、現在は綾子によって鍛えられていた。

 まぁ、生身の戦いでは綾子が圧倒的に強いが、MSを使った模擬戦ではまだデュオの方が綾子よりも技量は上だ。

 総合的に見れば、その勝率はイーブンといったところか。

 

「うおおおおおっ!」

 

 そんなデュオをよそに、五飛は綾子に向かって青龍刀を構えながら突っ込む。

 幾ら刃のついてない模擬刀だからって、綾子へ思い切り振り下ろすのは……普通の軍人が見たら、訓練だとは思わず、ただ襲い掛かっているようにしか見えないよな。

 外見だと、綾子は凜々しい系の美人ではあるが、間違いなく美女と呼ぶに相応しい姿をしている。

 そんな綾子に青龍刀で襲い掛かっているのだから……どこからどうみても、暴漢にしか見えないだろう。

 まぁ、実際には……

 

「遅い。もっと鋭く振るうように」

 

 全身全霊を込めた五飛の青龍刀の一撃を、半身を引く事によってあっさりと回避し、青龍刀の刃の背の部分をあっさりと指で掴んで止めているのだが。

 

「うわ……嘘だろ? 何だってあんな真似が出来るんだよ? 美綴ってMSパイロットなのに……」

「あら、知らないの? シャドウミラーに入るにはあのくらい出来る必要があるって話よ?」

「嘘だろ……嘘だろ?」

「何で2回言ったのかは分からないけど、間違いない事実よ」

「……でも、あっちの2人もガンダムのパイロットでシャドウミラーのメンバーなんだろ? ……あの2人がああなっている時点で、それは嘘だと思うけどな」

「いやいや、何でもあの2人はガンダムのパイロットだから特例としてシャドウミラーに所属されるのを許されているだけで、実際には見習い扱いだって話よ?」

「ガンダムのパイロットで見習いって……一体全体、どうなってるんだよ?」

「シャドウミラーだから仕方がないわ」

 

 連合軍の軍人が話している声が、そう聞こえてくる。

 見習い……うーん、見習いか?

 というか、綾子や凛くらいの強さがなければシャドウミラーになれないとなると、ホワイトスターの方には何気にシャドウミラーに入れないような奴が結構出て来そうなんだが。

 まぁ、シャドウミラーは連合軍にかなり実力を見せつけている。

 そうなれば、こんな噂話が出てくるのも仕方がないのだろう。

 ……ただ……

 溜息を吐きながら、視線を道場の隅へと向ける。

 すると一瞬前までそこにあった顔が、すぐさま柱へと隠れた。

 昨日辺りからずっと俺の後をつけている人物だ。

 敵意はないようなので放っておいたのだが、このままストーカー化されたりしたらちょっと面白くないのは間違いない。

 そろそろ何の用件があるのか、しっかりと聞いておいた方がいいか。

 

「じゃあ、俺は少し外に出てくるから頑張ってくれ」

「ああ、分かったよ。アクセルには言うまでもないと思うけど、気をつけて」

 

 綾子の視線が一瞬だけ道場の隅に向かったのを見て、小さく頷く。

 もっとも、綾子も本気であのストーカー未満の人物が俺に危害を加えられるとは思ってないだろうし、同時に危害を加えようとしてもこの世界の人間で俺をどうにか出来る筈がないというのも知っている。

 だからこそ、俺に呼び掛ける声はあくまでも念の為でしかなかった。

 ……まぁ、五飛の関節を固めて畳に押しつけながら、そんな風に言葉を掛けてくるってのも、ちょっと奇妙な感じだが。

 ともあれ、綾子の訓練を見に集まっていた軍人達の視線を一身に受けながら、俺は道場を出る。

 すると案の定、ストーカー未満の人物も俺を追って道場を出てくるのが気配で分かった。

 さて、じゃあいい場所は……まぁ、あそこか。

 元々この道場は、ルクセンブルク基地でも端の方に作られている場所だ。

 それだけに、隠れられるような場所は幾らでもある。

 道を歩きながら角を曲がり……その瞬間、気配遮断のスキルを使用する。

 そして数秒後、急いで走ってくる足音が聞こえ……やがて、20代半ば程……丁度俺と同い年くらいの年齢の男が姿を現した。

 

「え? あれ? アクセル代表は!?」

 

 俺が角を曲がってからこの男が姿を現すまでに掛かった時間は、5秒程度。

 なのに、もう俺の姿がなくなっていたというのは、男にとっても信じられなかったのだろう。

 まぁ、別に気配遮断を使わなくても、普通に身体能力で男を誤魔化すような方法は幾らでもあったのだが……今回はこれが一番手っ取り早かった。

 その男の後ろへと回り込み、気配遮断を解除してから男の肩へと手を伸ばす。

 

「さて、ここ数日の間ずっと俺をつけてたようだけど……何が目的だ? 敵意の類がないのは、見れば分かったが」

「ア、ア、ア、ア、ア……アクセル代表!? え? あれ? 何で?」

 

 まさかいきなり背後から声を掛けられるとは思ってなかったのか、男は酷く狼狽しながら驚愕に目を見開く。

 

「傭兵ならこのくらいは簡単な事だ」

 

 ……まぁ、凛や綾子でなければ出来ないから、シャドウミラーの傭兵なら、というのが正しいのだろうが。

 五飛とデュオは、まだ見習い隊員らしいから置いておくとして。

 いつ見習い隊員なんて制度が出来たのか、シャドウミラーを率いている俺も全く分からないが。

 

「よ、傭兵って凄いんですね!」

 

 目を輝かせて告げてくる男。

 こうして見ると、間違いなく俺達に対して敵対意識を持っているようには見えないんだよな。

 まぁ、だからといって何がどうなるって訳でもないんだが。ともあれ……

 

「傭兵が凄いかどうかは、人によるだろうな。それで改めて聞くが、何の用件があって俺をつけ回していたんだ?」

「え? し、知ってたんですか!?」

「そのくらい、傭兵なら簡単な事だ」

 

 ……何だか、どんどん傭兵に対するハードルが上がっているように感じるが、これも実際に凛や綾子なら容易に出来る事なのでよしとしておく。

 

「それで、用件は?」

 

 こっちに尊敬の視線を向けてくる男の視線を見て、微妙に嫌な予感を覚えながらそう尋ねる。

 

「はい。その……僕、いえ自分をシャドウミラーに入れて下さい!」

 

 そう叫び、男は深々と頭を下げるのだった。

 まぁ、多分そんな事だろうとは思ってた。

 この男の目には、俺達に対する尊敬とか好意とか、そういうのしかない。

 敵意の類がない以上、俺達に好意的に接してくれるのは嬉しいのだが……いずれ、こういう事になるのではないかと、そう思ってはいた。

 連合軍の中で、シャドウミラーはかなり特殊な存在だ。

 ノベンタ直属の傭兵団などというのは、普通ならまず考えられないような存在なのだから。

 だが、それを可能とする程の戦力が、シャドウミラーにはあった。

 そんなシャドウミラーに憧れ……るだけならいいが、自分もその一員になりたいと、そう思うような奴が出てくるのは、少し考えれば非常に分かりやすい。

 寧ろ、こう言ってくる奴が出てくるのが遅いとすら思っていた。

 実際にはシャドウミラーの能力を見て、色々と怖がっている奴が多いというのは知っている。

 だが、逆にシャドウミラーの能力を見て、自分達に利用しようと考える奴もいるだろう。

 それは、凛が既に色々と動いて何度か潰しているという話を聞いている。

 そんな中で、こうして直接俺にシャドウミラーに入りたいと言ってくる……それも、利用云々ではなく、純粋に憧れからそう言ってくる奴がいるというのは、少し驚きだった。

 勿論悪い気はしない。しないが……

 

「駄目だな」

 

 俺としては、こう答えざるを得ないのも事実だった。

 もしここで安易にこの男をシャドウミラーに所属させでもした場合、それこそ次から次に自分もシャドウミラーに所属したいと言ってくる奴がいるだろう。

 ……いや、案外少ないか?

 シャドウミラーはその強さから非常に目立ってはいるが、それでも結局のところ、傭兵だ。

 連合軍の正規兵から、わざわざ傭兵に職を変えようなんて思う奴は……いそうだな。

 現に、こうして俺の目の前にはそれっぽい奴がいるし。

 

「お願いします! 僕をシャドウミラーに入れて下さい! 何でもします!」

「そう言われてもな。大体、お前は何が出来るんだ?」

「今はトラゴスのパイロットをやっています」

 

 トラゴス……トラゴスか。

 正直、微妙だというのが俺の感想だ。

 連合軍でなら、トラゴスというのはある程度使い勝手のいいMSだろう。

 いや、寧ろ数の多い連合軍こそがトラゴスを最大限に有効利用出来る勢力だと言ってもいい。

 何しろ、遠距離からの援護射撃というのは、余程の精度がない限りは弾幕という数でそれを補う事になる。

 つまり、数が多ければ多い程に有利なのだ。

 ……だが、それはあくまでも連合軍で運用されるという事が前提になってのものでしかない。

 俺達シャドウミラーは基本的に援護射撃を必要とはしない。

 勿論あれば嬉しいし、今回加わったのが近接戦闘メインのデュオである以上、援護射撃が全くいらないという訳ではないのだが……それを単機、もしくは少数でこなす以上、その辺の一般パイロット程度の技量では話にならない。

 このW世界で言うのなら、少なくてもトロワくらいの技量は必要になるだろう。

 ……まぁ、トロワはサーカスを自分の家だと判断しているのだろうから、五飛やデュオみたいにシャドウミラーに所属させようとしても難しいだろうが。

 シャドウを操縦している量産型Wなら、技量という意味ではガンダムのパイロットを上回っていると言ってもいいし、そっちなら数も揃えられるので万々歳なんだが。

 

「シャドウミラーの能力を考えれば、トラゴスというのは部隊特性に合わないんだ」

「……どうしても、駄目ですか?」

「ああ」

 

 無理矢理トラゴスを使う、それも連合軍の一般パイロット程度の腕でそれを考えるとなると、ぱっと思いつくのはMS輸送機の護衛か?

 だが、寧ろMS輸送機の護衛をさせるのであれば、リーオーの方が機動力や運動性が高い分、向いている。

 

「その……もしどうしてもシャドウミラーに所属したいと思ったら、どうすればいいんでしょうか?」

 

 ここまで明確に断られても、諦める様子はないか。

 その根性に関しては褒めてもいいかもな。

 

「そうだな、ガンダムのパイロットと同レベル……とまではいかないが、それに準ずるだけの操縦技術を手に入れるか、それ以外で何か誰にも負けないような一芸を身につける事だな」

「……なるほど。分かりました。もう少し頑張ってみます!」

 

 俺の言葉に諦めるかと思いきや、寧ろ笑みを浮かべてそう告げてきた。

 この前向きさはいいんだけどな。

 だが、シャドウミラーで求めているのはあくまでも即戦力だ。

 こっちで育てる……といったような余裕はない。

 それこそ、トロワを始めとしたガンダムのパイロットであれば、幾らでも歓迎するんだが。

 ああ、でも……

 

「そうだな、書類仕事とかは得意だったりするのか?」

「……いえ」

 

 残念ながら、こっちにも適性はない、と。

 書類仕事が得意なら、凛の補佐として雇っても良かったんだが……そうはいかないらしい。

 まぁ、シャドウミラーの強さに憧れてきたのであれば、それは不思議でも何でもないが。

 ともあれ、こっちとしてはやっぱりこの男を雇う訳にはいかなかった。

 

「なら、やっぱり無理だな。……ただ、それでもシャドウミラーに入りたいのなら、もっと腕を磨いてこい。ガンダムのパイロット並とまではいわないが、それでも一方的にやられないだけの技量があれば、シャドウミラーに入れるかもしれないな」

「……分かりました。今日のところは諦めます。ですが、またきっとアクセル代表に会いにやって来ますから!」

 

 そう告げると、男が去っていく。

 ……連合軍にしては、珍しいタイプだな。

 実際にそれだけの技量を持って俺の前に現れるのか……それとも、諦めるのか。

 どうなるのか、結果が楽しみだ。

 そう思った瞬間、ルクセンブルク基地全体に、ヴィー、ヴィーという非常警報が鳴り響いた。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1035
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1309

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