転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1612話

 綾子の白いトーラスがTVで放映された翌日には、OZの報道官が戦争に無関係の人物の屋敷を連合軍に協力しているシャドウミラーという傭兵部隊が襲い、その場にいた無関係の住人を皆殺しにし、金目の物をあらいざらい盗んでいった……という発表をした。

 虚実入り混じった内容ではあったが、連合軍側もすぐに反応。

 シャドウミラーが襲ったのはOZの上位組織で、実質的な意志決定機関であるロームフェラ財団を実質的に動かしているデルマイユの別荘であり、普段は使われておらず、更にはトーラスで破壊する前に外に逃げるように宣言すらした、と発表する。

 その上で、綾子のトーラスに残っていた映像データをそのまま流したのだから、OZは完全に言い負かされてしまった。

 更には、レディ・アンがルクセンブルク基地に送ってきた例の映像、コロニーをバルジ砲で狙っているという映像も流したのだから、OZの立場は結果的に弱くなってしまう。

 ……勿論OZがそれを黙って認める筈はなく、事実無根の捏造であり、映像は作られた物だと反論している。

 だが、当然のようにそれは冷笑を持って迎えられた。

 更にロームフェラ財団に関係している者は、当然OZの仲間であり連合軍と敵対しているという認識から、これからもロームフェラ財団に所属している者の屋敷を攻撃すると明言したのは大きかったのだろう。

 

「実際、そろそろデルマイユ以外の屋敷を襲ってもいい頃合いだと思うんだけどな」

「そうなの? ……あ、ここにもサインをお願い」

 

 ルクセンブルク基地で凛から渡される書類に目を通し、サインをしながら言葉を交わす。

 殆ど名目上に近いものだが、俺はシャドウミラーの代表という事になっている。

 そうなれば、当然のように俺がサインをしなきゃいけない書類も出てくる訳だ。

 一応殆どの書類は凛が処理してくれてるんだが、それでも全部という訳にはいかない。

 ましてや、俺と凛と綾子の3人だけならまだしも、現在は五飛とデュオの2人もシャドウミラーの所属となっている。

 当然五飛とデュオは一時的な腰掛けといった認識だと思うが、それでもシャドウミラーに所属している以上、相応の給料は払わないといけない。

 2人がいらないと言っても、支払う必要があるのだ。

 連合軍の中には、シャドウミラーを危険視している者が少なからずいる。

 トップの3人はシャドウミラーに対して理解を示しているのだが、その下は全てが俺達に対して寛容な訳じゃない。

 もし五飛やデュオに給料を支払っていないというのを知られれば、下手をすればそれを理由としてガンダムを取り上げるような動きを見せないとも限らない。

 勿論そんな話が上に通る訳はないのだが、現状で連合軍との関係を悪くする訳にはいかない。

 また、ただ働きでガンダムのパイロットを使っているという罪悪感もあるし。

 五飛はともかく、デュオ辺りならある程度金があれば何かを買ったりとか、そういう事はしそうだしな。

 五飛は……青龍刀のように武術で使う物を買ったりはしそうだけど、デュオみたいに自分の楽しみの為に何かを買うとかそういう印象はない。

 良く言えばストイックって事なんだろうが、悪い意味で言えば余裕がないんだよな。

 シャドウミラーにいれば、その辺りに変化が起きるかもしれないとは思っているんだが。

 残念ながら今のところ、その様子はない。

 

「ああ、違うわ。この書類のサインはこっち」

「っと、悪い。……うん? この収入は……」

「ほら、連合軍に雇われてから、エアリーズ隊の訓練をしたでしょ? それの件よ」

「それか。……また、随分と前のだな」

 

 そう言われ、トールギスを使ってひたすらエアリーズ隊と模擬戦をしていた時の事を思い出す。

 最初はそんなに技術がなかったけど、次第にその操縦技術も上がっていったんだよな。

 そして最終的にはOZの精鋭部隊を相手にしてもほぼ完勝出来るだけの実力を身につけた。

 

「一時期は各基地に派遣されてたけど、OZとの内乱が始まってからまた部隊を結成してニューエドワーズ基地を拠点に活躍してるみたいよ? OZの基地を陥落させたって話は聞くし」

「当然だろうな。精鋭部隊ですら敵わないんだし。勝つとすれば、それこそ数を揃える必要があるけど、元々少数精鋭のOZで、どこの基地に攻めてこられるかも分からないのに、数を揃えられる筈もない」

 

 完全にOZの量より質、少数精鋭の欠点が出た形だ。

 相手が弱ければ、多少の数の差はどうとでもなるだろう。だが、少数精鋭なのに、敵が自分達よりも高い技量を持っているとなれば……それはどうなるのか、考えるまでもない。

 それこそ、どこの基地に攻めてくるのかが分からなければ、OZにはどうしようもない。

 

「シャドウミラーだけじゃなく、それ以外でもOZに勝てる部隊があったか」

「でしょうね。所詮私達は1部隊でしかないもの。そんな状況だとOZの基地を攻略するにも時間が掛かるでしょ。それに……聞いてる? 最近海岸沿いにある連合軍の基地が何ヶ所か壊滅したらしいわよ?」

「……壊滅? 占領じゃなくてか?」

「ええ、壊滅。降伏すると通信を送っても、それを無視して攻撃してきたらしいわ。その結果、その基地にいた連合軍の生き残りはほんの数人だったそうよ」

「また、随分と乱暴な」

 

 俺の口から出た言葉には、呆れの感情が強くあった。

 当然だろう。原作のようにOZが一方的に有利な状況であれば、そのような真似をしても問題はない。

 だが、今は互角……いや、地球では勢力的に拮抗しているが、宇宙ではバルジの件もあってはっきりと連合軍が有利だ。つまり、総合的に見ればこの内戦は連合軍の方に天秤が傾いている。

 そんな状況下で降伏した基地の兵士を皆殺しに――何人かは生き残ったみたいだが――しようものなら、それは自分達にそのまま返ってくる事になる。

 恐らく、連合軍がOZの基地を攻略した時、上官が止めても無用な殺戮が起きるのは確実だろう。

 ……うん? 待て。原作と同じ?

 そこまで考え、俺の脳裏を2人の顔が過ぎる。

 1人は以前俺に向かってきて殺されたミュラー。これはいい。

 だが、原作でそのミュラーと手を組んで戦っていた金髪の軍人、アレックスとの接触は全くなかった。

 ましてや、今回襲われた基地は海岸沿いにある基地。

 そしてアレックスが原作で乗っていたMSは水中用MSキャンサーだ。

 これは偶然か? それとも……

 

「凛、海岸沿いの基地でその被害にあったのは1つだけか?」

 

 俺が考え事をしているのを見て黙っていた凛が、即座に頷きを返す。

 

「ええ。私のところに入っている情報だと、そうなってるわ」

「……これが1回で終わると思うか?」

「そう聞くって事は、アクセルは終わらないと思ってるの?」

「多分、だけどな」

 

 普通に考えれば、そんな事を繰り返すとは思えない。

 それこそ、OZがエリート揃いである以上、現状を正しく認識している者もいるだろう。

 だとすれば、アレックスのような蛮行は自分達の首を絞めるだけだというのも分かる筈だ。

 だが、エリートはエリートでも、アレックスのような歪んだエリート意識を持っているような奴であれば、それこそ暴走する危険性があった。

 厄介な事に、アレックスはミュラーと一緒に連合軍の基地を潰して回るように命令を受け、行動するだけの実力がある。

 生半可に実力があるからこそ、その動きを止められない者もいる。

 その上、自分の感情の暴走に引きずられてゼクスに噛み付くような凶暴さも持っているのだから……

 

「ノベンタ……いや、この場合はベンティか? そっちに相談した方がいいだろうな」

 

 現在、ニューエドワーズ基地に連合軍トップ3のうち、宇宙軍を任されているセプテムはいない。

 以前までは息子と祖父に宇宙軍を任せていたセプテムだったが、バルジ消滅のような異常事態ともなれば、やはり自分で直接指揮を執る必要があるのだろう。

 現在は宇宙に戻り、まだ幾つか残っているOZの基地をどうにか攻略しようと頑張っている筈だ。

 

「そう? まぁ、アクセルがそうした方がいいと思うのなら、連絡を取った方がいいんじゃない? ……あ、その前にここにもサインをして」

「……ぶれないな」

 

 凛の行動に苦笑を浮かべ、書類にサインをすると部屋の中にある通信装置を使ってニューエドワーズ基地に繋げる。

 

『はい、なんでしょうか?』

「シャドウミラーのアクセル・アルマーだ。ベンティと連絡を取りたい」

『ア、アクセル代表!? しょ、少々お待ち下さい!』

 

 オペレーターが慌てたように告げ……そして1分もしないうちに、映像モニタにはベンティの姿が映し出された。

 

『アクセル、どうかしたのかね? 私に連絡をしてくるとは珍しいが』

 

 いつものように穏やかな表情のベンティ。

 まぁ、現在の地球では小さな戦いはあっても、全体的には膠着状態に近い。

 ……アレックスらしい奴が起こした問題とか、連合軍のエアリーズ部隊が基地を陥落させたとか、完全な膠着という訳ではないが。

 勿論、地球の連合軍を率いている以上、本格的に厳しくなってもそれを顔に出すようであれば、軍を率いる人物として合格とは言えないが。

 

「海岸沿いの基地の件を聞いた」

『ああ、その件か』

 

 ベンティの口調に、苦々しい色が宿る。

 まぁ、基地にいた兵士のほぼ全てが殺されたとなれば、それは当然我慢出来る訳もないだろうが。

 

「その件だが、もしかしたらこれからも続く可能性がある」

『……何?』

 

 ピクリ、と。

 俺の言葉にベンティの動きが止まった。

 そして数秒の沈黙の後、再度口を開く。

 

『何か根拠があっての言葉かね?』

「幾つかの状況証拠からだな。まず、OZは現状に全く満足をしていない。……違うか?」

『だろうな』

 

 ベンティは、短くそれだけ答える。

 この辺りは打ち合わせるまでもなく当然お互い共通の認識だった。

 ガンダムを使ってノベンタやベンティを殺そうとするのが失敗し、それを皮切りに行われたオペレーション・デイブレイクも、本来であれば奇襲の効果も相まってOZが圧倒的に有利になる筈だったのに、実際にはOZに対する反撃の準備が整えられており、当初OZが予想していたのとは比べものにならない程に苦戦している。

 OZが本拠地とする筈だったこのルクセンブルク基地は、一時は占領したものの、シャドウミラーの力もあってすぐに奪い返された。

 自分達が利用しようとしたガンダムは、全機ではないがシャドウミラーに所属し、OZに対して牙を剥く。

 更には、宇宙におけるOZの本拠地のバルジが消滅し……と、ことごとくOZの希望するものとは反対の方向に突き進んでいる。

 そんなOZの不満は、当然現場の兵士も強く感じてるだろう。

 特に歪んだプライドや優越感を持っている兵士は、自分達が所属しているOZが負けているという事は我慢出来ない筈だ。

 

「だからこそ、暴発する可能性がある。あるいは……こっちはあまり考えたくないが、ガス抜き、とかな」

『……』

 

 俺の言葉に沈黙を返すベンティ。

 ベンティの方でも、当然のようにそこは考えていたのだろう。

 何か決定的な場所で暴発されるよりは、適度にガス抜きをした方がいいと。

 

「つまり、現状で何も大きな動きが起きない限り、また同じような事が起こる。そう考えても、不思議でも何でもないと思うが?」

『……それは否定出来ないな』

 

 ベンティも俺の意見に賛成なのか、あっさりとそう告げる。

 

『だが、問題なのは敵が最新型の水中用MSを使用しているところだ。勿論連合軍にもキャンサーやパイシーズはあるが、エアリーズよりも格段に数は少ない。どこが狙われるか分かっていれば戦力を集中も出来るが、海岸線沿いにある基地はどのくらいになると思う?』

「一応、連合軍が使っている水中用MSもあった筈だろ? 性能や操縦技術では負けてるかもしれないが、それを数の差で補えるんじゃないか?」

 

 パイシーズとキャンサーが有名だが、当然それが運用される前にも、連合軍には水中用MSというのは存在していた。

 キャンサーに似ているその機体は、俺も何度か見た事がある。

 それを使えば、性能や数の差は補えるのではないかと、そう思ったのだが……

 

『難しい、だろうな。同じ事を繰り返すが、世界中で海岸線沿いにある基地はどれだけの数になると思う? とてもではないが、全てに十分な護衛を付けることは出来ない』

「……となると、俺達の出番、か」

『正気かね?』

「そこはせめて、本気かと聞いて欲しかったところだけどな。本気だよ。幸い明日にはトールギスの改修も終わるらしいし」

 

 そう告げる俺に対し、ベンティは信じられないものを見るような目で、こちらに視線を向けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1035
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1309

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