転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1632話

『うわぁっ!』

 

 通信を通して、綾子の戸惑ったような声が聞こえてくる。

 宇宙空間で初めてMSを動かした綾子だったが、トーラスという空を飛ぶMSであっても、宇宙ではやはり色々と勝手が違うらしい。

 やっぱり重力とかがないのが大きいんだろうな。

 

「落ち着け、機体制御自体は地球にいる時とそう変わらない筈だ。宇宙用にセッティングが変更されてるんだから、まずはそれに慣れる事を考えろ」

『わ、分かってるけど……ちょっと地球と違い過ぎないか!? きゃっ!』

 

 綾子らしからぬ、可愛らしい悲鳴……と言えば、恐らく怒られるだろうな。

 ともあれ、3日後には出撃するという事が決まった以上、余分な時間を使っている暇はない。

 セプテム達との話を終えた後、すぐに俺達は……正確には俺と綾子はトールギスとトーラスを使って宇宙に出た。

 俺の方は今まで何度も宇宙で戦いを繰り広げてきたのもあって、特に問題はなかった。

 トールギスという、宇宙では初めて使うMSだったが、それこそ数分と経たずにトールギスで宇宙を移動するのにも慣れた。

 だが……綾子の方は、予想以上に戸惑っているようだった。

 無重力での訓練といえば深海で行うのが多いのだが、アレックスと思われる水中用MS部隊との戦いでも、トーラスは上空からの援護やMS輸送機の護衛に徹していたしな。

 それを考えれば無理もないのかもしれないが……一応シミュレータで宇宙空間でのMS戦闘も訓練をしていた筈なんだがな。

 整備員や技術者に無理を言って、シミュレータにトーラスのデータを入れて貰って。

 言うまでもなく、トーラスはOZの中でも最新鋭MSだ。

 綾子が貰った機体以外にも何機かはあった筈だが、その機体のシミュレーションはまだ出来ていなかったらしい。

 この辺り、連合軍の巨大さが仇となった形か。

 まぁ、実際には技術者や整備員は色々と忙しく、殆ど機数のないトーラスのシミュレータを作っているような暇はなかったというのが正しいんだろうが。

 

「機体を強引に動かすんじゃなくて、機体と一体化するような意識を持て。武道とかでも人馬一体とか言うだろ?」

『言わないよ! 今時の武道で馬に乗って戦う事なんか滅多にないんだから!』

 

 綾子の叫び声。

 ……言われてみればそうか。

 門世界であれば、普通に騎兵とかも運用されていたが、それ以外の世界で騎兵が運用されているような世界というのは存在しない。

 ただ、それでも武道でも流鏑馬だったか? そういうのはあるし、武芸百般に通じているという綾子なら、その感覚を分かっても無理はないかもしれないが。

 

『綾子、一応馬には乗った事があったでしょ? ほら、あのいけ好かない女に……』

『ああ、ルヴィアの』

『名前を出さないでちょうだい。出て来たらどうするのよ』

『いやいや、それはないだろ。……凛、ありがとな』

『何よ? 別に私は何もしてないわよ?』

『ふふっ、そういう事にしておくよ』

 

 通信に割り込んできた凛とのやり取りを終えた綾子は、見て分かる程に動きが良くなった。

 勿論すぐにMSでの戦闘を……ましてやMDとの戦闘を行える程ではないにしろ、間違いなく先程までよりは大分動きがいい。

 どうやら緊張していたらしいな。

 それを、さっきの凛の言葉で解され……ある程度の実力を発揮出来るようになった訳だ。

 

「いい調子だな。さっきよりは大分いいぞ」

『ふふん。そうだろう? これがあたしの実力だからね』

 

 綾子の方も、俺の言葉にそう返すだけの余裕は出来たらしい。

 多少ぎこちないながらも、純白のトーラスが宇宙空間を飛び回る。

 そして一度ある程度動けるようになれば、半サーヴァントの身体能力を持っている綾子にとって、見る間に宇宙へと慣れていく。

 この辺り、多分半サーヴァントってだけじゃなくて、元々の綾子の素質とかもあるんだろうな。

 

「よし、大分慣れてきたな。じゃあ、少し模擬戦やってみるか」

『うえ!? 本気か、アクセル!?』

 

 まさかこの時点で模擬戦をする事になるとは思わなかったのか、綾子から驚愕の声が返ってきた。

 映像モニタでは、パイロットスーツに身を包んだ綾子が、その声同様の驚愕の表情を俺に向けている。

 だが、俺がそれに返すのは、当然というべき頷きのみ。

 

「そうだ。知っての通り、今は色々と時間がないからな。少しでも早く綾子を戦力として使えるようにしないといけない。……綾子も、嫌だろう? 自分がシャドウミラーの中で足を引っ張るのは」

 

 その言葉が切っ掛けになったのだろう。綾子はその目に負けん気の強い反発心も露わに口を開く。

 

『いいさ、やってやろうじゃないか』

 

 計算通り……って程に計算通りな訳じゃないんだけどな。

 実際、綾子は基本的に負けず嫌いだ。

 そんな綾子が足を引っ張るのかと言われれば……それは、当然大人しく引き下がる訳がない。

 こうして自分から模擬戦を引き受け、少しでも自分の能力を上げようと考えるのは、当然だった。

 

「ビームの威力は最小限にな。マシンキャノンは……まぁ、使う事もないだろうけど、一応ペイント弾に変えて貰ってある」

 

 その言葉に手加減されていると少しだけ不満そうな綾子だったが、そもそも今回の模擬戦は、あくまでも綾子に宇宙での戦闘を体験して貰う為の模擬戦だ。

 どうしたって、こっちが手加減する必要があるのは間違いなかった。

 

『分かったよ。じゃあ、それで』

 

 こうして、俺達の模擬戦が始まるが……まぁ、その結果がどうなったのかは、考えるまでもない。

 元々MSの性能差がある以上、どうしたってこっちが有利なのだ。

 それに加えて、パイロットとしての技量差もあるのだから。

 それでも自慢ではないが、俺を相手に模擬戦が出来るというのは宇宙での戦闘に慣れるという意味ではかなり有利だ。

 そんな訳で、綾子には何度となくドーバーガンのビームに機体を呑み込まれるという経験をして貰った。

 勿論ドーバーガンの威力は最小限であり、綾子のトーラスに被害らしい被害はなかったのだが。

 敢えて被害を言えば、綾子が微妙に落ち込んだところか。

 

「ほら、落ち込むなって。俺が言うのも何だが、俺以上のパイロットなんて、多分この世界にいないんだから」

「……ふん。それが分かっていても、悔しいものは悔しいんだよ」

 

 模擬戦終了後、食堂で落ち込んだ綾子を慰める。

 落ち込むというか、悔しそうというのが正しいけど。

 だが、それでも負けん気をなくしたりせず卑屈になったりしないのは、綾子らしいよな。

 半サーヴァント云々という問題ではなく、あくまでも綾子本来の性格からのものだ。

 

「ほら、夕食を食べたらまたやるんだろ?」

「勿論だ。次こそアクセルに勝ってやる」

 

 宇宙に来て良かった事の1つに、時間によって外の明るさが変わらないというのがある。

 地上では朝、昼、夜と変わっていくが、宇宙ではそのようなものはない。

 ……まぁ、それでも外が宇宙空間で暗いままってのはあったりするんだが。

 ともあれ、時間に関係なく訓練が出来るというのはありがたい。

 勿論、普通なら宇宙軍の規則や生活時間に則って行動しなければならないのだが、俺達の場合はシャドウミラーとして独自行動を許されている。

 その辺りを考えれば、便利なのは間違いない。

 連合軍の中にはそんな俺達の行動を面白く思わない奴もいるのだが、現在の俺達はそんな状況に構っていられる程に余裕はなかった。

 やっぱり宇宙空間ってのが大きいんだよな。

 俺の場合は機体を撃破されても全く問題なく生身で生きてられるが、綾子の場合はそんな訳にはいかない。

 ……半サーヴァントではなく、しっかりとしたサーヴァントであれば話は別だったかもしれないが。

 これが地球なら、綾子も機体が撃破された時に死ぬという可能性はあまり考えなくてもいいんだが。

 やっぱり宇宙というのは、色々と大きい。

 

「おーおー、綾子もやっぱり人の子だね。苦手な戦場はあるのか」

 

 夕食を手に、デュオが俺の隣に座る。 

 

「仕方がないだろ。シミュレータとは色々と違うんだから。それより、デュオは1人か?」

「ん? ああ、五飛はちょっと用事があるとかって言ってたな。どんな用事かは分からないけど」

「五飛が用事、ね」

 

 その事に、少し疑問を抱く。

 これがデュオなら、そこまで不思議な訳じゃない。

 元々人当たりがいいデュオは、誰とでも仲良くなれるのだから。

 ……原作では、あの無愛想なヒイロとも仲良くやっているのだから、そのコミュ能力は脅威と言ってもいいだろう。

 だが、そんなデュオに比べると、五飛の人当たりの悪さはヒイロ並み……下手をしたらそれ以上に悪い。

 特に原作では正義に暴走し……最終的にはバートン財団に所属する有様なのだから。

 もっとも、この歴史ではそんな事にはならないようにと考えてはいるが。

 ともあれ、そんな五飛が何か用事があるというのが、ちょっと信じられなかった。

 

「五飛に用事……ねぇ。もしかして、五飛の知り合いでもいたのか?」

 

 地球にいる連合軍ならともかく、連合宇宙軍ともなればコロニーの出身者がいてもおかしくはない。

 コロニーに圧政をしていた連合軍だが、その全てを地球の出身者だけで賄うというのは、色々と無理がある。

 また、五飛の出身コロニーはかなり古いコロニーだった筈。

 そうなれば、当然そのコロニー出身者が多くなるのは当然だった。

 

「さぁ? ま、五飛だって男だし、色々とあるんじゃないの? もしかしたら、美人な軍人にハニートラップを仕掛けられているのかも?」

「おいおい、それはちょっと洒落にならないぞ」

 

 冗談っぽく告げるデュオだったが、五飛のようなガンダムのパイロットをハニートラップで自分達の味方にと考える者は多い。

 デュオを始めとして、ガンダムのパイロットは多少の差異があっても皆が10代半ば……女に興味のある思春期真っ盛りの時期だ。

 それだけに、ハニートラップは下手な買収よりも効果的……と考えてもおかしくはない。

 

「心配いらないだろ。五飛がどれだけ生真面目……いや、糞真面目なのかは、アクセルも分かってるだろ?」

 

 小さく肩を竦めるデュオ。

 

「それは分かってるけど、男と女だと万が一ってのがあるだろ。恋愛ってのは何が起こっても分かるものじゃないんだからな」

「……アクセルが言うと説得力あるわね」

 

 俺とデュオの話を聞いていた綾子が、小さな笑みと共にそう告げた。

 俺と恋愛関係になっているだけあって、その言葉にはかなりの重みがある。

 

「はいはい。全く、1人者は辛いね」

「デュオもそのうち恋人が出来ると思うぞ」

 

 具体的には、前髪が長くて思い込みが激しい恋人が。

 悲しい程に一途なその恋人は……さて、どこにいるのやら。

 原作だとOZに志願していたが、この歴史ではOZはそこまでの影響力を持っていない。

 いや、本拠地のある地球ならまだ相応の影響力はあるのだが、バルジを失った宇宙では影響力が極めて小さくなっている。

 そう言えば、ビルゴとかを作るにも宇宙の資源や労働力を使ってたんだよな。

 だとすれば、宇宙における本拠地が消えてしまい、残っているのは小さな基地だったり、幾つかのコロニーだったりする今のOZは……MDを作るにしても、新規設計でビルゴを作るのは無理じゃないのか?

 だとすれば、やっぱりトーラスが主力MSという事になりそうだな。

 

「俺に恋人、ねぇ。……出来れば嬉しいけど、いつになる事やら」

 

 俺の言葉を信じていないって訳ではなく、本当にいつ自分に恋人が出来るのかが全く分からないといった感じの言葉。

 その気持ちも分からないではないけど。

 そうして話をしながらも食事を進めていき……そして夕食を食べ終わって一段落すると、綾子が俺に視線を向けてくる。

 

「アクセル、そろそろいいか? 今日はたっぷりと付き合って貰うからな」

「はいはい、分かったよ」

 

 そう返事をし、立ち上がる。

 こういう時、半サーヴァントの体力とかは便利なのやら、不便なのやら。

 悪戯に体力があるからこそ、常人では無理な訓練も楽々とこなす事が出来る。

 その体力こそが、綾子の著しい成長を支えている要素の1つと言っても過言ではない。

 

「ふーん。ま、頑張ってくれよ。俺も明日には少し機体を動かすつもりだから、その時に模擬戦をやってもいいぜ?」

「言ったな? なら、明日の模擬戦でデュオを倒して下克上と行こうか」

「はっ、俺はこれでもガンダムのパイロットだぜ? そう簡単にやられるかよ」

 

 いつの間にかそんな風に話が決まるが……宇宙、トーラス、デスサイズ。これでフラグが建ったと思ってしまう俺は間違っているのだろうか?

 そんな風に考える俺の予想通り、翌日の模擬戦では綾子がデュオから勝利をもぎ取るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1120
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1326

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