転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1642話

 ウィナー家の屋敷から宇宙港に戻ってくると、俺達はそのままコロニーを出る。

 元々このコロニーに寄ったのは俺の我が儘からだったのだが、この軍艦を操縦している軍人達にとっては、出来るだけ早く自分達の本拠地に帰りたいのだろう。

 ……まぁ、軍人達も普通に昨日は街中に遊びに出ていたんだが。

 ともあれ、連合軍の基地に到着するまでは俺達にも特にやるべき事はない訳で……

 機体の整備も整備員達が既に完全に終わらせてくれている以上、軽い訓練以外は自由時間となっている。

 もっとも、ヒルデは凛によってシャドウミラーの事務官として色々と厳しくしごかれているし、シルビアは自分が尊敬する凛をヒルデに取られるのが面白くないらしく、一緒に勉強会に参加している。

 デュオは少しだけその勉強会に顔を出したみたいだが、凛にからかわれてすぐに撤退したらしい。

 五飛はサリィと色々話していたり、綾子に挑んでは負けたりとしていた。

 そんな中、俺はウィナー家のコンピュータから盗み出した設計データを眺める。

 サンドロックの件はどうでもいい。問題なのはウイングゼロだ。

 TV版と劇場版という2種類のプランがここに存在しているのだが、現状で両方を作る訳にはいかない。

 そもそも、作っても乗るパイロットがいないしな。

 そうするとどっちかしか作ることは出来ない。

 いや、別に作ってもいいんだが、ガンダニュウム合金を始めとした各種資材にそこまで余裕はない。

 ガンダニュウム合金は非常に性能の高い合金だけに、出来るだけ多くホワイトスターに持って帰りたいし。

 それにウイングゼロのような強力なMSを……それも使いもしない状態で持っているとなると、間違いなく色々なところからうるさく言われる。

 そうしない為には、やはりどちらか1機だけというのが正解だろう。

 で、その場合はやっぱりどちらを作るのかという事で問題になるんだよな。

 主武装のツインバスターライフルやマシンキャノン、ビームサーベルといった武装は両者とも共通だ。

 まぁ、この辺りはどちらかの性能が良ければそっちを移植する感じでやればいいだろう。

 最大の問題は、TV版は先端にバルカンのついたシールドがあり、飛行形態になれる事。

 それに対して劇場版は、シールドと飛行形態はないものの、あの鳥の羽のようなバインダーによりMS形態ではTV版よりも機動力が高い。

 戦闘は当然MSで行うのだから、純粋に戦闘だけを考えれば劇場版の方が有利なんだが、戦場に向かう際の移動速度という面に限ってはTV版の方が上だ。

 ……悩むな。

 そもそも、このMSをどこで建造するのかという問題もある。

 連合軍の技術者達にこの設計図を渡して作って貰うのが一番手っ取り早いんだが、そうなると連合軍にウイングゼロの技術が渡ってしまうしな。

 勿論無意味に連合軍と敵対するつもりはないが、ノベンタ達トップはともかく、その下にいる奴の中にはこっちに敵対的な奴も多い。

 何より、連合軍の中にはOZと繋がっている奴も多い事を考えると、ここで下手に情報を流すのは避けたい。

 今のところは原作と違って、OZにガンダムの開発者達が捕まっているという事はない。

 だが、ウイングゼロを連合軍で建造した場合、間違いなくスパイが嬉々として情報を流すだろう。

 OZは王侯貴族の集まりなだけに、そういう手合いを操るのも上手いし。

 そうなれば、折角今のところはトーラスだけのMDが、もしかしたらビルゴが出てくる可能性もある。

 一応レーザー兵器の開発をするように提言はしてはいるものの……それがしっかりと守られているとか言えば、微妙だろう。

 連合軍内部にはシャドウミラーを疎んでいる勢力もいるし、連合軍全体としてもレーザー兵器の研究よりも前にやるべき事が大量にあるのだから、その辺は仕方がない。

 ともあれ、攻撃が命中すればダメージを与えられるトーラスと違い、攻撃が命中しても無意味なバリアを持っているビルゴを作られれば、現在の連合軍とOZの状況が一変してしまう。

 ……そこまで考え、ふと思う。本当に一変するのか?

 そもそもの話、原作でビルゴがあれだけの性能を誇ったのは、ガンダニュウム合金をふんだんに使われていたからだ。

 それ以外にも資源を好きなだけ使い、それこそ量産型MSじゃねーだろそれって感じの機体に仕上がった。

 規模は明らかに違うが、シャドウミラーの主力量産機シャドウと通常のゲシュペンストとの関係を考えれば分かりやすいだろう。

 だが、OZがそのような真似を出来たのは、あくまでもOZが宇宙を制していたからだ。

 だからこそ宇宙にある資源や労働力を大量に投入し、ビルゴという強力なMDを開発する事が出来た。

 しかし……バルジの消失に伴い、今の宇宙は連合軍の勢力が強い。

 もしOZにガンダムのデータが渡り、そこからビルゴを作り出す事に成功したとしても、原作のような規模で大々的に量産する事は不可能だろう。

 そう考えれば、連合軍でウイングゼロを建造してもいい、のか?

 ……だが、何にしろ向こうの利益になるような事はするべきでもない。

 そうなると……

 

「ハワード、か」

 

 トールギスやウイングゼロの設計にも関わっていただけに、MSを建造するにしても問題なく出来るだろう。

 資材に関してもガンダニュウム合金を含めてこっちで用意するとなれば、どうとでも出来る筈だ。

 TV版と劇場版、どちらのウイングゼロにするのかは……実際にハワードと相談してから決めるとしよう。

 設計者の判断なら、こちらとしても頼れるし。

 

「うん? ハワードがどうしたんだ?」

 

 シャドウミラーに宛がわれている部屋……全員が集まるという意味では、リビングルームに近い――MS輸送機と違って家具とかは既製品だが――部屋の中で呟くと、丁度入ってきたデュオがその言葉を耳にしたのか、尋ねてくる。

 

「いや、地球に戻ったらハワードに会いに行こうと思ってな。ちょっと頼みたい事もあるし」

「おいおい、ハワードに何か妙な事をさせるつもりはないよな?」

「妙……って訳じゃないな。それより、凛の勉強会に顔を出してすぐに逃げ出したって話を聞いたが?」

「……何でアクセルまで知ってるんだよ」

 

 話を変えようとした俺の意図に気が付かなかったのか、それとも気が付いて話に乗ってきたのか。

 そのどちらかは分からなかったが、それでも話に乗ってきてくれるのであれば、こちらとしてはありがたい。

 

「凛が通信でデュオがいないか聞いてきたからな」

「うげぇ!?」

 

 デュオが苦いものでも食ったかのように、顔を顰める。

 まぁ、気持ちは分からないでもない。今まで、何度となくデュオは凛によって玩具にされてるのだから。

 ましてや、今はデュオにとっても憎からず思うヒルデがシャドウミラーにはいる。

 男として、自分の格好悪いところをヒルデに見せたいとは思わないだろう。

 

「そもそも、何で顔を出そうと思ったんだ? 凛がいるって分かってたんだろ? ましてや、デュオは書類仕事とか、そんなに好きじゃないだろうし」

「あー……いや、ヒルデが凛に妙なちょっかいを出されるんじゃないかと思ってな」

「へぇ。どんなちょっかいなのかしら? 良かったら聞かせて貰える?」

「そりゃあ、勿論男を見る……目……の……」

 

 最後まで口に出すことなく、デュオの動きが止まる。

 そして、ギギギという音がしそうな様子で声の聞こえてきた方……後ろを向くと、そこにいたのは満面の笑みを浮かべている凛。

 ただ、その目には笑みではなくいぢめっ子としての光が宿っていた。

 そして凛の後ろには、どう反応したらいいのか分からない様子のヒルデの姿。

 ……つくづくタイミングが悪いよな。

 いや、そのタイミングで聞いた俺にも色々と問題はあったんだろうが。

 

「ねーえ、デュオ? ちょーっとお話ししましょうか?」

「あー……いや、悪い。俺、実は機体の整備が……」

「ないわよね?」

 

 デュオに最後まで言わせず、満面の笑み……それこそネズミをいたぶる猫のような満面の笑みを浮かべて、そう尋ねる。

 何とかこの場を離脱しようとするデュオだったが、凛がそんな事を許す筈もない。

 そっと伸ばされた手が、デュオの耳を掴む。

 この時点でチェックメイトと言ってもいいだろう。

 今の状況から抜け出すには、それこそ耳を失う覚悟をする必要がある。

 だが、この程度の事で耳を失うような覚悟など出来る筈もない。

 あるいは、強引に手を外させる……という手段もあるのだが、それが出来るかどうかと言われれば、こちらもまた微妙。

 ガンダムのパイロットとして相応の訓練を受けているデュオだったが、それでも凛に敵う筈がない。

 お互いの実力の上下という意味では、既に生身の訓練で何度となく負けた事もあって、しっかりとその身体に染みついていた。

 結果として、デュオは凛に引っ張られる。

 

「私の男を見る目がどうこうって言ってたけど、その辺を詳しく聞かせて貰えると助かるわね。是非ともこれからの参考にしたいから」

「あ、嘘。ごめん。何でもないって。いやいや、痛い。痛いから、耳から手を離してくれよ。な? 頼むって。……アクセル! 何とかしてくれよ!」

 

 耳を引っ張られたまま部屋を出て行こうとしているデュオが助けを求めてくるが……

 

「そう言われてもな。俺は男を見る目のない凛が選んだ男だからな。どうしても今助ける気にはならないな」

「くそっ、こいつ根に持ってやがる! 覚えてろよー!」

 

 その言葉を最後に、凛に引っ張られたデュオは部屋の外へと連れていかれ……扉が閉まる。

 ……うん、見事なまでの負け犬の遠吠えだったな。

 

「えっと、その……アクセルさん、デュオと凛さんを放って置いていいんですか?」

 

 ヒルデは正式にシャドウミラーに所属する事になったからか、俺に対する口の利き方が丁寧なものになっていた。

 俺としては、公の場で気をつけてくれれば特に気にしたりしないんだけどな。

 それがやりやすいのなら、それ以上の無茶は口にしないが。

 

「ああ、気にするな。シャドウミラーではよくある事だからな。ああ見えて、あの2人もそれなりに楽しんでるんだよ」

「えっと……楽しんでるんですか? 本当に?」

「ああ。ああいうのも、あの2人のコミュニケーションなんだよ。……多分」

 

 最後だけポツリと小さく呟いたが、ヒルデにはどうやらその辺りは聞こえなかったらしい。

 このままあの2人について話されても面倒だし、話題を変えるか。

 

「そう言えば、シルビアはどうしたんだ? 一緒に凛の授業を受けてたんじゃないか?」

「え? ああ、はい。彼女はサリィさんが用事があるとかで呼びに来てましたけど」

「ふーん……だとすれば、連合軍の関係だろうな」

「その辺は分かりませんが……」

 

 サリィとシルビアの2人は、連合軍から派遣されているメンバーだ。

 そう考えると、直接話をせずに呼びに来たのは間違いなくそちらの関係だろう。

 もっとも、俺達にお呼びが掛からないところを考えると、そこまで重要な用件ではないんだろうが。

 

「それで、どうだ? 事務員としてやっていけそうか?」

「えっと……凛さんに教えて貰いながらなら、何とか……」

 

 少し自信なさげな様子のヒルデだったが、凛に教えて貰いながらであっても、やっていけるというのはそれなりに優秀だと言ってもいい。

 元々凛はこの手の作業が得意だし、W世界に来てから……いや、連合軍に傭兵として雇われてからは、一手に事務仕事を任されていた。

 それだけに、凛の事務処理能力は非常に高い。

 そんな凛には劣るものの、ある程度事務処理を任せる事が出来るというのは、非常に助かる。

 

「そうか。なら、これからも凛を助けてやってくれ。恐らく、これからも書類仕事は増える事はあっても、減る事はないだろうし」

 

 OZとの戦い、そして今回は逃げられたが、バートン財団との戦い。

 それらの戦いを考えると、書類仕事が減るという事はないだろう。

 寧ろ、宇宙の戦いが激しさを増せば、それに対応するようにシャドウミラーの出番も増える。

 今まではバルジのおかげでOZも大人しかったが、そこにバートン財団が加わったとなると、どんな動きになるのかは分からない。

 その辺りの事情を考えると、こっちの手札は多い方がいい。

 それこそ、事務処理の手札だろうとも。

 

「はい。頑張ります」

 

 そんな俺の思いが伝わったのか、取りあえず頷いておいた方がいいと判断したのか……ともあれ、ヒルデはその言葉に素直に頷く。

 

『待った待った待った! そっちに曲がらない! 曲がらないから! 頼むってば!』

『あら、見る目のない私から見ても、もう少し頑張れる筈よ? ほら、もう少し頑張りなさいな』

『ごめんってば! ああああ、やっぱりこの女根に持ってやがる!』

 

 そんな声が廊下の方から聞こえてきたが……説明を求める視線を向けてくるヒルデから、俺はそっと顔を背けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1125
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1327

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