転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1694話

 映像モニタに映し出された、トレーズ派の男……俺が以前助けたその男は、俺が何を言っているのか分からないといったように戸惑った様子を見せる。

 

『手柄? 手柄と言っても、もうムウの力で軍艦は動けなくなってるだろ? 今更何をしろと?』

「その軍艦の中だよ。財団派の方はともかく、バートン財団の方にはデキム・バートンが乗っている」

『それは分かる。だが、お前の手柄を横取りするような真似はしたくないさ』

「落ち着け。……そもそもの話、俺は別にトレーズ派でもなければ、OZに所属している訳でもない。そうである以上、デキムを捕らえても邪魔にこそなれ、何か有用に使える訳じゃない」

『それは……まぁ、分からないでもないが』

 

 向こうも俺の言いたい事は理解したのだろう。渋々ながら納得した様子を見せる。

 俺はそこに、ついでとばかりに取っておきの爆弾を放り込む。

 

「それに、あの軍艦の中にはお前達が心酔している、トレーズ・クシュリナーダの一人娘がいるんだぞ? トレーズ派として、それを助けないでどうする?」

『な……に……?』

 

 俺の口から出た言葉は、言葉を失う程の衝撃だったのだろう。

 映像モニタの向こうで、男は驚愕に大きく目を見開いていた。

 

「トレーズの一人娘、だ。……まぁ、実際には他にも子供がいる可能性は否定出来ないが」

『馬鹿な……トレーズ閣下の……?』

「ああ。だが、このままだとトレーズの娘はデキムにいいように利用される。……いや、今の時点でも利用されてるのか。そんな相手を助けなくてもいいのか?」

『いい訳があるか! だが……その話は本当なのか? 本当にトレーズ閣下のご息女が……』

「ああ。俺の情報網によると間違いない」

『何故トレーズ閣下のご息女がバートン財団にいる? そもそも、トレーズ閣下が誰かとご結婚なされたとは聞いた事がないぞ』

「色々と訳ありなんだろ。少なくてもDNA鑑定で証明されている事実ではあるらしいし」

 

 これもまた原作でマリーメイア自身が言っていた話なので、嘘ではないだろう。

 ……実は、そのDNA鑑定がデキムの作った出鱈目だって話だったらどうにもならないが。

 普通なら有り得ない事だと思いはするんだが、デキムの小物っぽい性格を考えると、普通にありそうなんだよな。

 まぁ、もしマリーメイアの口から出たDNA鑑定が疑わしければ、改めてトレーズとDNA鑑定すればいいだけの話ではあるか。

 このW世界、SEED世界程ではないにしろ、遺伝子とかの研究はかなり進んでいるから、DNA鑑定を誤魔化すような方法とかも普通にありそうだが。

 そうなったらそうなってからの事だ。

 この世界の問題に、俺が積極的に関わる必要もないだろう。

 ……ホワイトスターと繋がっていれば、レモンに依頼してもいいんだが。

 

「ともあれ、そんな訳だ。トレーズの娘、マリーメイア・クシュリナーダ……もしくはマリーメイア・バートンの救出はお前達がやった方がいい」

『それは……分かる。分かるが、こちらに余剰の戦力は殆ど存在しない。少なくても、どの軍艦にいるのかが分からなければ5隻全てを調べるような事に……』

 

 その気持ちも分からないではない。

 そもそもの話、トレーズ派はこれまでの財団派との戦いで多くの戦力を失っている。

 実際、この財団連合との一大決戦の場においても、集められた戦力は決して多くはない。

 そうである以上、この男の言ってる事も分かるし、何より向こうが何を期待しているのかというのも分かってしまう。

 だが……それをそう簡単に頷ける訳がないというのも、また事実だ。

 

「そっちが何を期待しているのか分かる。だが、生憎と俺は手を貸すような余裕はないぞ。何しろ、この機体は俺にとっての生命線だ。そしてトレーズ派に協力している……いや、財団派と敵対しているとはいえ、トレーズ派は明確なまでに俺の味方という訳ではない。俺がマリーメイアを探している間に、この機体を奪おうとする奴がいないとも限らないしな」

『それは……』

 

 俺の言葉に、向こうも言葉に詰まる。

 当然だろう。ミロンガ改がどれ程の性能を有するのかというのは、それこそ今まで何度も命を救われてきたトレーズ派が、一番良く理解しているのだ。

 そんな機体がポンと、誰でも奪えるような感じでその辺に置かれていた場合……機体を欲して妙な事を考えないとは絶対に言えないだろう。

 別にそれを責めるつもりはない。

 トレーズ派として、ミロンガ改のような機体を手に入れたいと思うのは、当然だろう。

 ただでさえ敵はMDなのだ。

 少しでも互角に戦えるように、性能の高い機体は何が何でも欲しいのだから。

 ……まぁ、ぶっちゃけ、もしこのW世界の人間がミロンガ改を手に入れたとしても……まともに操縦出来るとは思えないんだが。

 ミロンガ改の最大の特徴は、当然のようにその機動力と運動性だ。

 だが、それを最大限に活かすには、トールギス程度の加速力を操れないような奴にはどうあっても不可能だ。

 それこそ、原作のオットーのように機体に殺される事になるだろう。

 だが、ミロンガ改を直接使わなくても、技術的な情報という意味でもこの世界の人間にとってはお宝の山だろう。

 そもそも勘違いしている者が多いが、ミロンガ改はMSとは全く別の……より高度な技術で生み出された機体なのだから。

 核動力で動いているこの世界のMSとは比べものにならない程の高出力を生み出す、永久機関のブラックホールエンジン、S-11、エナジーウィング、テスラ・ドライブ……すぐに思いつくだけでも、これだけの重要機密がある。

 それ以外にも、それこそネジの一本からW世界の人間にとっては珍しいものだろう。

 その心配があるのを理解しているのに、このまま機体を放り出していく訳にはいかない。

 

『そこを何とか頼めないか? どうしてもこちらには人手が足りないんだ』

「……何でそこまで俺に拘る? それこそ、どうせなら俺が外で周囲の様子を見張っていればいいと思うが?」

『分からん。分からんが……ここはムウに頼った方がいいような気がするんだ』

「気がするって……それだけで俺に頼るのか? そもそも、お前は俺の何を知っている?」

 

 俺と通信している男は、それこそ以前の戦いで少しだけ関わった程度だ。

 まともに話もしていないのに、よくそんな状況で俺を信じる気になれるな。

 

『それでもだ。それでも、俺はお前に頼みたい。……お前の機体に関しては、決して誰にも……俺の仲間にも触れさせるような事はしない。もし触ろうとした相手がいたら、それが例え誰であっても止めるし、最悪の場合撃ち殺す』

 

 ふむ、そこまで俺に拘る理由が一向に分からないんだが……まぁ、こっちに利益がない訳でもない。

 軍艦の中には当然色々と持ち込まれているだろうし、MDやMS、それらの交換部品のような物もあるだろう。

 何より、デキムのような存在をここで確実に俺の手で仕留めることが出来るというのは大きいが……ミロンガ改を奪われる危険を冒してもとなると、正直微妙なところだ。

 俺の好奇心とミロンガ改の安全……どちらを取るかとなると……

 

「ふむ、そうだな。なら誰にも俺の機体を触らせない。これをトレーズの名前に誓えるか?」

『……誓おう』

 

 どうやら本気か。

 トレーズ派の、それもこの部隊の指揮を任されているだけに、この男はレディ・アン程ではないにしろ、トレーズ教の信徒と言ってもいい。

 その男がトレーズの名に誓って言ったのだから、間違いなく本物の覚悟だろう。

 ……宗教の信徒が、神の名に誓った事をあっさりと破るというのはよくある事だが、この男はそういう堕落した宗教家ではなく、心の底からトレーズを信奉しているのが分かる。

 

「……分かった。そこまで言うのなら、手伝おう」

 

 まぁ、実際にはミロンガ改を盗まれてもすぐに奪い返せるという自信があるからこその言葉なんだが。

 

『感謝する』

 

 そうして短く話を纏めると、俺は軍艦に突入する事になる。……そう、1人で。

 何でそこまで俺を引っ張り込もうとしていたかが疑問だったのだが、どうやら単純に人手不足だというのもあったらしい。

 考えてみれば、宇宙にいるOZ自体がそもそもそれ程多くなく、その上財団派とトレーズ派の2つに割れたのだ。

 そして財団派との戦いでもMDを相手に戦力を消耗していったのだから、トレーズ派の人数が少ないのは当然か。

 素直にそう言えばいいものを……まだ見栄を張るだけの余力はあるのか?

 それとも、武士は食わねど高楊枝って奴か? ……OZの場合は武士じゃなくて騎士だが。

 ともあれ、そんな訳で俺は1人で軍艦の1隻に潜入する事になる。

 

『本当にいいのか? 部下を何人か出してもいいが』

「いらない。こう言ってはなんだけど、足手纏いでしかないからな。それに俺が調べるのは5隻の中でも一番マリーメイアがいる可能性の少ない艦なんだろ? なら、1人でいいさ」

 

 足手纏いという言葉に少しだけ悔しそうな表情を浮かべたが……俺との実力差は、それこそこれまでの戦いで何度となく見せつけている。

 そうである以上、向こうは何も言い返す事は出来ないのだろう。

 操縦技術と生身の戦いは別だと言ってくるかとも思ったんだが、それ以上は口に出したりはしていなかったし。

 ともあれ、俺はそのまま1隻の軍艦の中にミロンガ改で突入していく。

 俺の後を追うのは、先程まで俺と話していたトレーズ派の指揮官。

 ……まぁ、中に突入する際に部下はいらないと言われても、機体を守る奴は必要だからな。

 そしてトレーズの名に誓った以上、こいつはそれを安易に人任せにすることは出来ない、と。

 格納庫の中に入ると、そこには整備員が大勢いるも……うん? 兵士の姿がいないな。

 てっきりマシンガンとかバズーカとかそういうのを持ってこっちを出迎えるかと思ってたんだが。

 突然格納庫の中に入ってきたミロンガ改に向け、どうしていいのか分からない様子の整備員達。

 

「俺は中に突入するから、機体を頼む」

『ああ、気をつけて』

 

 それだけの通信を交わすと、俺はミロンガ改から出る。

 そして格納庫で右往左往している整備兵の1人に手を伸ばし、強引に引っ張って尋ねる。

 

「兵士の姿が全く見えないようだが? どこに行ったんだ?」

「し、知らねえよ! 戦闘中はいたのに、気が付けばいなくなってたんだ!」

 

 慌てたように告げるその整備員の言葉に、周囲を見回しながら再び口を開く。

 

「一応聞くけど、もしかして脱出艇で逃げ出したって事はないよな?」

「逃げてはいねえよ! いや、もしかしたらこの格納庫以外にも脱出艇専用の場所があるかもしれないから確実じゃねえけど、少なくてもここからは脱出していねえ!」

「……そうか。お前は他の面子を集めて大人しくしていろ。そうすればトレーズ派も手荒な真似はしないだろう」

 

 そう告げ、この艦の中を調べようと格納庫を出ようとすると、整備員が再び口を開く。

 

「ちょっと待った! ……もしかして、仮面の兄ちゃんがエンデュミオンの鷹か?」

「ああ」

 

 ミロンガ改とエンデュミオンの鷹の名前は知っていても、仮面を付けている俺の事は知らなかったのだろう。

 恐らく情報封鎖……いや、そこまでする必要はないから、単純にこの男が情報に疎かっただけか?

 

「兄ちゃんみたいな子供が……あの動きをする機体を……嘘だろ……」

 

 技術者の性と言うべきか、整備員の男はじっと俺の方を見つめてくる。

 まぁ、ミロンガ改の動きを見ていれば、俺みたいな子供が乗ってるとは思わないか。

 仮面で顔は見えないが、背の高さから、まだ大人ではないというのは分かるのだろう。

 ムウの名前を名乗ってるんだから、20代のままにした方が良かったか?

 けど、そうなればムウ=俺といった風に考える奴が出て来てもおかしくないんだよな。

 そうならない為には、やっぱり10代の姿が良かっただろう。

 いっそ10歳の姿でも良かったか? ……いや、さすがにそれはやり過ぎだろう。

 

「とにかく、俺は中に向かうから、お前達は大人しくしていろ。あのトーラスに乗っているパイロットの命令に従え」

 

 これ以上話しても何だし……そんな訳で、それだけを告げて格納庫を出ていく。

 そして真っ先に向かうのは……監視カメラの類がない場所。

 わざわざ一部屋ずつ確認をするような真似はしない。

 コンピュータの類でどこに誰がいるのかを調べるのもいいかもしれないが……幸い、俺の場合はそれよりも有効な方法があった。

 そうして監視カメラも何もない部屋の中に入ると、スライムを艦の中に張り巡らせていく。

 色々と話している者が多いが、何故このような事になったのかを嘆いている者の声が多い。

 他人……恐らく部下だろうが、そちらに八つ当たりをしているような声も聞こえてくる。そして……

 

『マリーメイア様、もう少々お待ち下さい。すぐにこの状況を打破してみせますので』

『頼みました、デキム』

 

 そんな声がスライムを通して聞こえてきたのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1155
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1333

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