転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1718話

「ドリアン!? おい、嘘だろアクセル!?」

 

 ホテルにある食堂……ではなく、俺達が泊まっている部屋のリビングで、デュオが叫ぶ。

 まぁ、無理もない。このホテルに泊まってからの食事は、レストランでしていたのだ。

 それが今日に限ってこのリビングでとなれば……それは驚くし、理由を尋ねてくるだろう。

 そして理由が、ドリアンを使った料理を食べるからとなれば、デュオが騒ぐのも当然だった。

 実際に食べた事がなくても、ドリアンというのが猛烈に臭い果実だというのは有名な話だ。

 ……俺も本物のドリアンというのは、食べたことがないしな。

 だが、それだけに興味深いのも確かだ。

 それに、大シャコ貝を使った料理を頼んだのは俺だ。

 何でもレストランの料理長が得意としている料理で、大シャコ貝、ドリアン……他にも椰子の実やパパイヤといった南国の果実を材料とした料理。

 名付けて、天国に一番近い料理とか何とか。

 幾ら何でも大袈裟なと思ったが、それでも興味を惹かれた俺は、その料理を頼むことにした。

 ただ、悪臭のするドリアンだけにレストランでは出せないらしい。

 いや、料理として完成すれば臭いは気にならなくなるらしいんだが、それでもドリアンというだけでレストランの方にも影響が出てくると言われれば、俺も納得するしか出来ない。

 他にも色々と特別な料理を出してくれるって事で、今日の料理はホテルの部屋で食べる事になった。

 

「安心しろ。ドリアンはドリアンでも、きちんと料理すれば臭いはしなくなる……どころか、かなり食欲を刺激する臭いになるらしいからな」

「……本当かよ? コロニーだと、その臭いから食べるのを禁止しているくらいなんだぜ?」

「冗談だろ?」

 

 デュオの口から出た言葉に思わずそう呟くが、視線を向けられた五飛は無言のまま黙って首を横に振る。

 その真面目な表情を見る限り、決して冗談という訳でもないらしい。

 まぁ、ドリアンは物凄い悪臭がするという話だし、空気や水が貴重なコロニーではそれを食べるのは禁止されてもおかしくない……のか?

 

「まぁ、このホテルの料理人の腕は超の付く一流らしいし……そういう意味では、ドリアンをどう料理するのか楽しみにしてろよ」

 

 実際、このホテルで出される料理は、絶品と呼ぶに相応しい。

 いや、元々俺はそこまで味覚が鋭い訳じゃないので、一流でも超一流でも大差はないように感じられるのかもしれないが。

 それでもとにかく、このホテルで出される料理が美味いのは事実だ。

 

「失礼します、料理をお持ちしました。……よろしいでしょうか?」

 

 ノックの音と共に、ホテルの従業員がそう尋ねてくる。

 

「ああ、構わない。……いいよな?」

 

 返事をしてから、改めて他の面々に視線を向けるが、綾子、デュオ、五飛、サリィの4人全員が頷きを返す。

 実際、ドリアンや大シャコ貝を使った料理という事で、どのような料理なのかは興味があるのだろう。

 綾子と戯れていたイルカではないが、好奇心というのは人間の中でも強い感情の1つなのだから。

 俺が頷いたのを見て、従業員が部屋を出て……やがて、巨大なカートを数人掛かりで押しながら姿を現す。

 その巨大なカートの上に乗っているのは、今日俺が獲った大シャコ貝。

 しっかりと口を閉じているが、既に料理済みだというのは貝の外側に焦げ目が付いているのを見れば明らかだし、何より微かに漂ってくる香りを俺の嗅覚が捉えている。

 綾子が安堵の表情を浮かべているのも、半サーヴァントとして嗅覚が普通の人間以上に鋭いからだろう。

 そして……いよいよ従業員が大シャコ貝の殻を開ける。

 すると次の瞬間、部屋の中一杯に甘い、食欲を刺激する香りが充満する。

 

「料理名、南海漁村です」

 

 従業員の言葉で我に返る。

 部屋の中に広がる香りは、ここがホテルの部屋の中でもあるにも関わらず、その言葉通り南の海の香り……ちょうどこのリゾート地の外を歩いていると嗅ぐ事の出来る臭いと化している。

 

「うお……マジか……」

 

 デュオにとっても、この料理は完全に予想外だったのだろう。

 ドリアンと聞いて想像していた悪臭ではなく、まさに絶品の料理を思わせる香り。

 

「本当にこれにドリアンが?」

 

 普段は無口な五飛も、ドリアンと聞かされては黙っていられなかったのか、従業員に尋ねていた。

 

「はい、この南国漁村には間違いなくドリアンが使われています。調理しているところを見ていたので、それは間違いありません。……実際、この料理が出来る前は相当に酷い匂いでした。ですが各種果実や果実酒、それに……」

「待て」

 

 五飛に説明していた従業員の言葉を遮る。

 今、この男は何を言った?

 何故急に話を遮られたのか分からないといった従業員だったが、その男に対して俺は改めて口を開く。

 

「今、果実酒と言ったのか? この料理には酒が使われていると?」

「はい」

「……ちょっと、本当に大丈夫?」

「あの、何か?」

 

 俺の方を見て呟く綾子に疑問を感じたのだろう。従業員が確認を求めるようにこちらに視線を向けてくる。

 

「いや、俺はアルコールがあまり得意じゃなくてな。美味いとも思わないし」

 

 本来は致命的なまでにアルコールに弱いのだが、連合軍から出向しているサリィやシャドウミラーを監視するのが目的の1つでもあるデュオがいる中でそんな事を口に出来る筈がない。

 

「ああ、その点は大丈夫です。熱を加える事によって、果実酒のアルコールは完全になくなってますので」

「……そうか」

 

 アルコールが完全に飛んでいるのなら、俺にとっても問題はないだろう。

 従業員の言葉に、安堵の息を吐く。

 実際問題、大シャコ貝の料理は非常に楽しみにしていた料理だ。

 ドリアンも、何気に初体験だしな。

 そう考えれば、この料理を食べる事が出来るというのは、俺にとって非常に嬉しい事だった。

 

「では……取り分けはどうしましょう? こちらでやっても構いませんが」

「ああ、頼む」

 

 従業員は俺の言葉に頷き、皿に料理を取り分けていく。

 南国漁村とは良く言ったもので、皿に取り分けられてテーブルの上にそれぞれ置かれると、より周囲に甘い香りが漂う。

 イメージ的な問題だろうが、南国の漁村ではこういう臭いがするんだろうなと思えるくらいには。

 にしても、料理名から考えるとこの料理はジャンル的に中華料理なのか?

 幾らか空間倉庫に収納して、後でピースミリオンにいる凛に食べさせてやるか。

 

「美味っ!」

 

 料理を口に運び、最初に賞賛の声を上げたのはデュオだった。

 これが中華料理なら、箸を使って食べるのが相応しいのかもしれないが、元々箸というのはあまり一般的ではない。

 結果として、この料理も食器としてナイフとフォークが用意されていた。

 美味い美味いと叫ぶデュオを横目に、俺もまたフォークで大シャコ貝の身を口に運ぶ。

 程良い歯応えは、火の通り具合が絶妙な証拠だろう。

 肉とか魚もそうだが、火を通し過ぎるとそれは非常に固くなってしまう。

 かといって、中途半端に生だと大シャコ貝の身の食感もまた今一つのものとなる。

 そう考えれば、やはりこのくらいの火の通し具合が最適なのだろう。

 ドリアンの臭いを消す……いや、変えるのも、火を通す必要があっただろうし。

 果物の女王とか王様とか言われてる通り、ペースト状になっているドリアンは物凄い存在感を持つ。

 それでいて大シャコ貝の身と競り合っているのは、調理した料理人の腕の良さの証か。

 ……何だか、料理は勝負だとか聞こえてきたような気もするが、これは恐らく俺の気のせいだろう。

 そんな風に考えながら、俺達は南国漁村と名付けられた料理を食べていく。

 確かに言われた通り、果実酒のアルコールは完全に飛んでいるらしい。

 いつもであれば、アルコールを一口飲んだ時点で自動的に意識がシャットダウンされるのだが、そんな事もないし。

 

「美味い、これ美味いぞ!」

 

 料理を食べながら再びデュオが叫び、俺を含めて他の面子もその言葉に頷きながら南海漁村を口に運ぶ。

 パパイヤは熟した物の他にも、若いパパイヤ……俗に言う青パパイヤも混ざっている。

 それが火を通されてもまだきちんと食感が残っており、大シャコ貝とはまた違ったアクセントとなっている。

 以前誰か……いや、料理に関してだし、四葉から聞いたのか? それとも凛か?

 ともあれ、聞いた話によると青パパイヤというのは沖縄では普通に食べられているらしい。

 しかも果実の類ではなく、野菜として料理されているとか。

 俺も食べるのは初めてだが……なるほど、こういう味なのか。

 俺の獲ってきたシャコ貝はかなりの大きさだったが、それでもこの人数で食べていればすぐになくなってしまう。

 ……いや、純粋に俺と綾子の食べる量が多かったんだけどな。

 混沌精霊と半サーヴァントなので、普通の人間とは食べられる量が違う。

 ちなみに南海漁村の方も、凛に食べさせる分を確保してこっそりと空間倉庫の中に入れておいた。

 

「他にも料理はありますが、まだ食べられますか?」

 

 南海漁村が綺麗になくなったのを見て、そう尋ねられる。

 これだけの大きさの料理だ。もう腹一杯になっていると思っても仕方がないだろう。

 だが、生憎俺の腹はまだまだ余裕だ。

 ……正確には、俺の場合は胃の中に入ればその時点で完全に魔力に分解されて身体に吸収されるので、純粋に食べる量という事で考えれば、俺の場合は幾らでも食べる事が出来る。

 大食い選手権とかに参加すれば、優勝……うーん、どうだろうな。

 食って即座に吸収出来るから、腹一杯にはならないだろうが……大食い選手権とかに参加するような奴はホットドッグを1本数秒で食うような奴もいる。

 そういう規格外に比べれば、俺の場合は腹一杯にはならなくても食う速度そのものは一般的だ。

 ああ、でも大食い選手権とかは無理でも、日本とかではよくある30分以内にお好み焼きを規定枚数食べきったら無料とか、そういうのはいいかも?

 そういうのでは寧ろ食べきれば賞金を提供している店もあるし……

 いや、そもそも俺の立場を考えれば、そういうのに出るのはちょっと難しいか。

 俺が巨大カレーを1時間で食い切ったら無料とか、そういうのに出てるのを連合軍や中東連合、サンクキングダム、トレーズ派……ましてや、俺をライバル視しているゼクス辺りがTVとかで見たら、一体どう思うのやら。

 ともあれ、南海漁村を運んできた従業員達は、俺のもっと料理を食べるという言葉に驚きながらも、すぐに料理を持ってくると言って部屋を出て行く。

 

「分かってたけど、アクセル……お前ってどんだけ食うんだよ」

 

 どこか呆れた様子のデュオだったが、それでも驚愕とまでいかないのは、俺という存在を分かっているからだろう。

 

「ここの料理は美味いしな」

 

 ピースミリオンの食堂で雇った料理人も、決して料理が下手だという訳ではない。

 だが、それでもこのホテルで働いているような料理人に比べれば、どうしても腕が落ちてしまう。

 実際、俺が食った南国漁村という料理は、とてつもなく美味かったのだから。

 

「それで、これからどうするんだよ?」

「どうするって、何がだ?」

 

 話のついでといった形で、デュオがそう尋ねてくる。

 

「だから、いつ宇宙に戻るんだ? 出来れば早いところ宇宙に戻りたいんだけど」

 

 正確には宇宙に戻りたいのではなく、ヒルデに会いたいのだろう。

 お土産も色々と買ってたみたいだったしな。

 結局俺が言っていた星の砂は見つからなかったみたいだったが、恐らく星の砂というのはある場所が限られていて、ここは違うのだろう。

 あるのなら、俺も凛にお土産として買っていきたかったんだが。

 取りあえず凛へのお土産は、南海漁村と……他にも何か適当に買っていく必要があるだろう。

 本来なら凛の水着姿とか見たいんだが、まさかピースミリオンの中で水着姿になる訳にもいかないし。

 ああ、でも夜に俺のベッドの上でとかならいいのか。

 何も着ていないより、寧ろ水着とか下着姿の方が色っぽいとか普通にあるし。

 ……勿論そういう水着や下着を身につけているという前提だが。

 

「そうだな、俺もそろそろピースミリオンに戻りたいんだけど……その辺はどうなんだ?」

 

 視線を向けた先にいるのは、当然のようにサリィ。

 食べていた料理を一度置き、改めて口を開く。

 

「正直、その辺はまだ知らされていません。ですが……その、近々ちょっとした交渉があるので、それにアクセル代表達も出席して欲しいと思っている可能性が高いです。あくまでも私の予想であって、まだ連合軍側からは何も言われてませんが」

 

 そう呟くサリィの言葉に、俺はまた一波乱……どころか、二波乱、三波乱は起きるのではないかと予想していた。

 何しろ、何だかんだで片付いたのはまだ財団派だけなのだ。

 勿論財団派は色々な意味でこのW世界で現在起こっている戦乱の理由ではあるのだが、全て財団派が悪いという訳ではないのだから。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1225
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1347

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