転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1759話

 目の前にいる女は、さすがに呆れた表情で俺の方を見てくる。

 まぁ、スライムもどきを始めとして、色々と見ても……それで俺が実は他の世界からやって来た存在だと言っても、普通なら信じられないのは当然だろう。

 

「何よそれ、ジョークか何か? だとしたら、今の状況でそんなジョークは笑えないんだけど」

「残念ながら、ジョークでも何でもない。別に今は信じなくてもいいさ。ただ、俺がそう言っているって事だけを覚えておけばいい」

「ちょっと、そんな勝手な……」

 

 俺の言葉が気にくわなかったのか、女は不満そうに何か口を開こうとするが……俺はそれに構わず、女の手を取る。

 

「ちょっ、いきなり何を!?」

「いつまでもここにいる訳にはいかないだろ? 忘れたのか? ここは屋根の上だ」

「それは……」

 

 俺の言葉で女も自分がどこにいるのかを思い出したのか、渋々とではあるが俺に身体を任せてくる。

 2月という事もあって厚着をしているのだが、それでも女の柔らかな身体の感触が分かってしまう。

 

「……ちょっと、何か妙な事を考えてないでしょうね?」

「いや、別にそんな事はない。それよりもいいか。ここは高いんだから、落ちないようにしっかりと掴まってろよ」

「それって……きゃっ!」

 

 何か余計な事を言おうとした気配を察したので、取りあえずそのまま強引に屋根の上から空中に向かって踏み出す。

 それに女は小さく悲鳴を上げるものの、空を飛べる俺にとって、この程度の高さというのは全く問題にならない。

 女もそれは分かっていたのだろうが、それでもやはりこの高さからいきなり移動するというのは驚いてしまうのだろう。

 可愛らしい悲鳴を上げたことに照れたのか、空中で顔を上げると俺の方を苛立たしそうに睨み付ける。

 

「いや、あそこから降りるって言っただろ? なのに、何で俺が睨まれなきゃならないんだよ」

「……言って欲しい? なら、存分に言ってあげるけど」

「あー……そうだな、一応止めておくか」

 

 そんな風に言ってる間にも地面に向かって降りていき、やがてそのまま着地する事に成功する。

 

「アリガト」

 

 不満そうに、どこか片言でそう告げた女に苦笑を浮かべ、改めて周囲を見回す。

 

「……それで、これからどうする? いや、正確にはどうすればこの妙な状況が解決すると思う? というのが正しいんだが」

「そう言われても、私だってこんな状況になったのは今日が初めてなんだから、どうにも出来ない……わよ?」

 

 女の言葉が途中で途切れたのは、不意に周囲の空気が変わったからだ。

 それは当然俺も感じ取っており……やがて次の瞬間、気がつけば棺桶は人の姿に戻っていた。

 それこそ、まるで見ている映画やドラマの場面が唐突に変わったかのような……そんな印象すら受けてしまうような、光景だった。

 

「え? ちょっ、一体何!?」

 

 突然の光景に、女が戸惑ったように口を開く。

 まぁ、つい先程までスライムもどきと戦いを行っていたのが、気がつけば日常に戻ってきてるんだ。

 その突然の変化に認識が追いつかなくても当然だろう。だが……

 

「何だ、あの女。何を騒いでるんだ?」

「待て、待て。ちょっと可愛いし、俺が声を掛けてくるよ。こう見えてポートアイランド駅の路地裏でそれなりに顔なんだぜ」

「え? マジかよ。ジュンちゃん、いつの間にそんな場所に出入りしてたのさ」

「ふふん。ま、見てなよ」

 

 そんな風に言ってる声が聞こえてくる。

 そして、騒いでいる女というのは、俺の視線の先にいる女で間違いないだろう。

 このままだと、厄介な……それこそ非常に厄介な状況になりかねない。

 普段なら、別にこの程度の相手と揉めるくらいは何でもないんだが、今はこの世界の事を何も分かっておらず、ましてやあの奇妙な時間が終わったばかりなのだから。

 

「なあ、姉ちゃん。そんなに騒いでどうしたんだ? よかったら、落ち着くまで俺と一緒に休まないか? ほら、ここから白河通りも近いし」

 

 白河通り? と一瞬疑問に思ったが、話の流れから考えれば大体の想像は出来る。

 恐らく、繁華街の類いだろう。

 

「っ!? 馬鹿にしないでよね!」

 

 だが、その白河通りという言葉を聞いた瞬間、女は話し掛けてきた男に向かって思い切りビンタを放つ。

 いや、それは寧ろビンタではなく掌底と呼ぶに相応しい威力を持っていた。

 

「ぐおっ!」

 

 男の方も、まさかいきなり殴られるとは思っていなかったらしく、その一撃をまともに食らって吹き飛んでいく。

 

「ジュンちゃーん!」

 

 女に話し掛けたのとは別の男がそう叫ぶが、側にいた別の男は仲間を殴られた事で頭に血が上ったのか、女に向かって憤然と歩き出す。

 

「はぁ」

 

 まさかこのまま女を放っておく訳にもいかないだろう。

 見た感じ、男達の方は若干態度に問題があっても、そこまで酷いって訳じゃない。

 少なくても、レディ・アンやアハトと比べれば、大分マシだ。

 ……そう言えば、レディ・アンはともかく、アハトってどうなったんだろうな。

 何だかんだで、死んだって話は聞いてないし。

 だとすれば、あの戦場から逃げ延びたのか? メギロートやバッタ、シャドウがいたあの戦場で。

 まぁ、アハトの逃げ足を考えれば、そんなに不思議じゃないのかもしれないが。

 だが、D-120コロニーの一件でアハトはセプテムに目の敵にされている。

 俺がいなくなったとしても、連合軍や……ましてや、シャドウミラーも恐らくそちらに手を貸す筈だ。

 だとすれば、アハトにとってもそれは出来るだけ避けたい事だろう。

 そんな風に考えながら、女に向かって凄んでいる男達に向かって声を掛ける。

 

「おい兄ちゃん達。俺の女に手を出すなんて、随分と愉快な真似をしてくれるじゃないか」

 

 向こうに俺と女の関係を分からせる為には、この女を俺の女だと、そう言った方がいい。

 そう思っての言葉だったのだが……

 

「ちょっ、ちょっと! 誰があんたの女なのよ!」

 

 まさか、助けようと思っていた女の方から誤射の如き攻撃をされるとは思ってもいなかった。

 これはもう、1発だけなら誤射とは言えないなんて問題じゃない。

 また、女に絡んでいた男達も、今の女の口から出た言葉で俺が女と知り合いではあっても、別に付き合ってる訳じゃないというのは理解したのだろう。

 

「おいこら、坊主。これからこの姉ちゃんはちょっと俺達と用事があるんだよ。だから、悪いがお前はどこかに行け」

 

 うん? と、男の言葉に一瞬疑問を抱くが……ああ、なるほどと納得してしまう。

 今の俺は、10代半ばの姿だったな。

 それに比べると、女は間違いなく俺より年上に見えるだろうし、俺や女に絡んできている男達も女と同年代……もしくは年齢は上に見えた。

 そんな男達にとって、俺の存在は邪魔以外のなにものでもないのだろう。

 ましてや、今は既に夜中の12時を回っている。

 2月という、まさに真冬と呼ぶにふさわしい季節なのに、外にいるような奴なんだから色々と妙な奴なのは間違いない。

 ……まぁ、それを言うのであれば、俺や女も同様なのだろうが。

 ともあれ、今は少しでも女と話す必要があった。……別に色っぽい意味ではなく、さっきの妙な空間について情報交換したり、この世界についてもしかしたら昼間に俺が集めた以上の情報を持っている可能性もあるのだから。

 その為に、女を逃がさないようにしてる2人の男と、俺に向かって言葉とは裏腹に態度では思い切り威嚇している男には、早めに退場して貰うとしよう。

 人生という舞台からの退場を……な。

 ……とか言えば格好がつくのかもしれないが、まさかナンパを邪魔したからってだけで殺す訳にもいかないだろう。

 ましてや、今は2月の真夜中だ。

 意識を奪ってその辺に転がしておけば、凍死すらしかねない。

 となると、気絶させるんじゃなくて大人しく向こうの戦意を奪ってしまう方がいい。

 

「誰に向かって物を言ってるんだ?」

「ああ? お前が誰に向かってそんな口を利いてるつもりだよ」

 

 俺の言葉が男にとっては侮られていると考えたのだろう。

 苛立ちと共に俺の胸ぐらに手を伸ばし……だが、その手が俺の服に触るよりも前に、向こうの男の右手首は俺の右手によって掴まれる。

 

『……』

 

 そして数秒、お互いが黙り込む。

 ただし、向こうは俺を睨み付けているのだが。

 そんな視線を無視し、掴んでいる腕へ徐々に力を入れていく。

 そうして、相手の男は最初は生意気なとこちらを侮る嘲笑、だが次第に真剣な表情になり、やがて痛みに耐えるような顔へと変わる。

 男は俺の胸ぐらを掴もうとしていたので、当然のように俺の方を見ている。

 それはつまり、男の顔は仲間から見えないという事であり……今の必死に腕の痛みに耐えている顔は仲間達に見えていない事を意味している。

 男にとっては、自分が侮っていた俺に力で――正確には握力だが――負けているというのは、仲間に見られたくはなかっただろう。

 

「さて、俺が本気になる前に、そろそろ退散してくれると、こっちも嬉しいんだがな」

「……くそっ、離せ!」

 

 苛立ちと共に叫ぶ声が聞こえ、男の右腕を掴んでいた手を離す。

 そして男は痛みに耐えながら、俺を睨み付けてくる。

 だが……その男の瞳の中には、隠しきれない程の俺に対する恐怖が宿っていた。

 このまま戦う……いや、そこまで上等な代物じゃないか。喧嘩をしても、絶対に俺には勝てない。

 それが分かってしまったのだろう。

 そもそも、この男と戦うのであれば、さっきのスライムもどきと戦った方がまだ手応えはあった筈だ。

 いや、五十歩百歩か?

 そんな思いが顔に出たのか、俺の顔を見ていた男は忌々しげに口を開く。

 

「ちっ、行くぞ!」

 

 自らの中にある怯えを威勢のいい言葉で隠して吐き捨て、そのまま去っていく。

 

「え? ちょっ!」

「いいのかよ!」

 

 女を逃がさないようにしていた2人の男も、いきなりのその態度に驚きながらも後を追う。

 結果として、この場に残ったのは俺と女の2人だけ。

 

「……あのなぁ。咄嗟のアドリブくらい出来ないのかよ?」

 

 女に向かい、少しだけ呆れの混ざった声でそう告げる。

 あの時、俺の女と言った時にそれに頷いていれば、ここまで大きな騒動にはならなかったのだ。

 なのに、この女は思いきりそれを否定した。

 結果として、特に大きな騒動もないままに向こうが退いたが、出来ればあの時に素直にそれを受け入れていれば、もっと手っ取り早く話が済んだだろう。

 

「だって……しょうがないじゃない。まさか、いきなりあんな事を言われるなんて思ってなかったし」

「……もしかして、意外に男慣れしてないのか?」

 

 いかにも今風の女子高生らしい姿で、その外見もチョーカーを首につけていたり、2月の夜にも関わらず短めのスカートを履いてたり、何よりこの時間帯に家から外に出ていたのだ。

 更に言えば、その顔立ちはそれなりに……いや、かなり整っており、それこそ同学年の中でもトップクラスの美人と呼ばれていてもおかしくない外見だ。

 もしネギま世界に生まれていれば、確実に2-Aに所属していただろう外見。

 それだけに、てっきり男慣れはしてるのかと思っていたのだが……

 

「ばっ、馬鹿じゃない!? 何で私が男慣れしてると思ったのよ! てか、馬鹿じゃない!?」

 

 何故2回言った。

 そんな風に思いながら、女に向かって頭を下げる。

 

「悪いな、まさかそんなに男慣れしていない女だとは思わなかった。外見も……まぁ、整っているしな」

「……ふーん。そうなんだ」

 

 何故か、その言葉に女の俺を見る目が胡散臭そうなものに変わる。

 もしかして、俺もさっきの男達の同類と思われたのか?

 恋人が10人を超えている身としては、女好きと言われても既に否定出来る要素はないんだが……それでも、出来ればこれから協力関係を築こうとしている相手だけに、そんな風に思われたくはない。

 

「とにかく、何を話すにしても、ここでって訳にはいかないだろ。どこかゆっくり出来る場所を知らないか?」

「……そう言われても、この時間よ? それこそファミレスとかくらいしか」

 

 その言葉に、あの奇妙な空間が展開する直前にいたファミレスを思い出すが……すぐに首を横に振る。

 

「人が近くにいる前で、あの妙な空間の話をするのは避けたい。下手に人に聞かれれば、それこそ変人扱いされる可能性があるしな」

「……そう、ね」

 

 女も俺の言葉に少し考え、やがて不承不承といった様子で口を開く。

 

「分かったわよ。しょうがないから私の部屋で話しましょ。……ただし! 言っておくけど、妙な真似をしたら絶対に許さないからね!」

 

 女は念を押すように、そう告げる。

 俺が出来るのは、その言葉にただ頷く事だけだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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