転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1762話

 男に頼るのは嫌……か。

 まぁ、ゆかりの過去に何かあったというのは、何となく理解出来ていた。

 男慣れしていないところなんかも、その辺に事情がある可能性は十分にあるだろうし。

 

「ゆかりの気持ちは分かった。……けど、俺をこの部屋に泊めるってのは、色々な意味で無理がないか?」

「無理? 何が?」

「あのな、ここは女子寮だろ? なら、俺はトイレとか風呂とかどうすればいいんだよ」

「……スケベ」

 

 俺が言ったのは正論だった筈なのだが、何故かゆかりから返ってきたのは、顔を真っ赤にしたその言葉だった。

 

「けど、事実だろ?」

「それはそうだけど……あ、そうだ。アクセルならさっきみたいに影を使って自由に出入り出来るんでしょ? なら、トイレはコンビニかどこかで済ませる事も出来るし、風呂だって銭湯か何かで……」

「それなら何とか出来そうだが、そうなると寧ろ俺がこの部屋に泊まる必要そのものがないんじゃないのか?」

 

 それこそ、どこかのアパートなり、ウィークリーマンションの類なり……もしくは金に余裕があるのだから、ホテルに泊まった方がいい。

 この世界にも、当然のようにヤクザだったり、テロリストだったりといった者達はいるんだろうから、俺が金に困るという事はない。

 いつまでもホテル暮らしをするのも、難しい話ではないのだ。

 そんな派手な真似をしていれば、目立ってしまう可能性は否定しきれないのだが。

 

「むぅ……いいから、アクセルはここに泊まってよ。それで、あの現象を解決するのに私も協力させて!」

「そう言ってもな。さっきも言ったが、あのスライムもどき程度に逃げてるんだろ? それで、どうしろって言うんだよ」

「それは……あの時は武器がなかったから。もし武器があれば、何とか対処するくらいは出来たわよ、きっと」

「武器、ね」

 

 身のこなしから、多少何か身体を動かす訓練を日常的にしているというのは分かっていた。

 それでも……いや、それだからこそと言うべきか、生兵法といった感じになりかねない。

 

「武器は?」

 

 それでも一応聞いたのは、そうでもしなければゆかりが納得しないと、そう思った為だ。

 そんな俺の様子に幾らかは満足したのか、ゆかりは笑みを浮かべて口を開く。

 

「弓よ。これでも、弓道部では結構腕がいいんだから」

「……なるほど、弓か」

 

 その言葉に、少しだけ安堵する。

 何故なら、少なくても弓であれば背後から矢を射るだけであり、近接戦闘をしなくてもいいからだ。

 勿論、実際には弓を使っていても敵に接近される事もあるし、矢を射るにしても前衛で戦っている相手の動きを読んでといった行為が必要になる。

 だが、幸い……この場合も幸いと言うべきか?

 ともあれ、俺の場合はどのみち物理攻撃の効果がない。

 であれば、それこそ矢の1本や2本当たったところで、全く効果はないだろう。

 問題なのは、あのスライムもどきに物理攻撃が効くかどうかだな。

 あの時はゲイ・ボルクを使ってあっさりと殺してしまったが、あれが魔力の籠もった宝具でなくても同じ結果になったのかどうか……その辺りの事情は分からない。

 もっとも、見た感じ恐らくあのスライムもどきは雑魚と言ってもいい存在だ。

 であれば、大丈夫なんじゃないか……とは思ってるんだけどな。

 ともあれ、もし本当にあのスライムもどきに弓が効果があるのであれば、ゆかりを連れていくのは俺にとっても利益になり得る。

 勿論最初は庇ったりなんだりとしないといけないだろうが、戦いを続けていけばそのうち慣れてくる、そして技術が上がってくるのは間違いない。

 

「ね、どう?」

 

 俺が考えている様子を見て、脈ありとみたのだろう。

 ゆかりが改めて俺に向かってそう尋ねてくる。

 どうするべきか……残念ながら、俺が現在持っている宝具の中には矢はない。

 そもそも、俺が金ぴかから奪った宝具の殆どは、現在技術班に預けられている。

 ……もっとも、その中には弓や矢といったものはなかったが。

 金ぴかが使ってきた宝具の投擲は、剣や槍といった物が大半で、他にはハンマーだとか大鎌だったりといった物も多少ではあるがあった。

 だが、考えてみれば当然なのだが、弓を投擲してダメージがあるか?

 いやまぁ、弓自体にそういう効果があるのであれば、話は分からないでもないが。

 それと、矢なら投擲するのに結構適してはいる、のか?

 ただ、結果として金ぴかは俺に対して弓や矢といった宝具を使ってはこなかった。

 それが何の意味があってのものなのかは分からないが、ともあれ俺に弓の宝具はない。

 

「ついてくるにしても、武器とか防具をもっとしっかりとしないといけないだろうな」

 

 俺の言葉に、ゆかりの顔に笑みが浮かぶ。

 乗り気だと、そう理解した為だろう。

 

「これでも使うか?」

 

 そう告げ、空間倉庫から取り出したのはシャドウミラー製のサブマシンガンだ。

 これならゆかりであっても、圧倒的な攻撃力を得られるだろう。

 そう思ったのだが……

 

「じゅ、銃!? ちょっと、それは駄目でしょ! 見つかったら捕まるわよ!?」

 

 俺の手の中にある物を見た瞬間、ゆかりは慌てて叫ぶ。

 まぁ、この世界は基本的に安全な世界であり、銃刀法の類もある。

 そう考えれば、ゆかりの反応も分からない訳ではないが……正直なところ、弓であのスライムもどきと戦うって言ってるのを考えれば、五十歩百歩といったところだと思うんだが。

 

「あのなぁ、ゆかり。お前は本当にあのスライムもどきと戦うつもりがあるのか?」

「それは……勿論あるわよ。当然でしょ」

「なら、弓よりも更に威力の高い銃があるんだから、それを使わないって手段はないんじゃないか?」

「それはそうかもしれないけど、銃を持っているのを誰かに見られたらどうするのよ? ここは日本なんだから、見つかったらどうしようもないわよ!?」

「あー……そうだな。なら、モデルガンとして誤魔化すとか」

 

 ここが日本でなければ……それこそ、アメリカとかの銃が普通に生活の中にあるような地域であれば、本物とモデルガンの区別がつくような者もいるだろう。

 勿論アメリカだからって、全員が全員、完全に銃についての深い知識があるという訳ではないが。

 それは、日本人なら誰でも空手をやっており、全員が瓦を纏めて割れる……そんな風に思っているのと一緒だ。

 ともあれ、アメリカならともかく日本でならモデルガンと誤魔化せば何とかなるだろう。

 ……ミリタリーマニア、ガンマニアといった類いの奴がいれば、ちょっと話は難しくなるのだが。

 あの手の輩は、普通の人なら何でそこまで知ってるんだ? と思ってしまうだけの深い知識を持っている。

 である以上、迂闊に本物の銃を見せでもしたら、嬉々としてその銃を調べ、本物の銃――正確にはサブマシンガンだが――であると確信を得るだろう。

 で、そいつらが騒いで……うん、間違いなく騒ぐな。

 特に俺が持っているのは、平行世界であっても有名どころの会社が作ったような銃ではない。

 それこそ、シャドウミラーの技術班が作った代物だ。

 つまり、この世界にとっては全く未知の銃となる。

 

「無茶言わないでよ。そういうのは私らしくないし、何より銃なんて撃った事もないんだから、きちんと使えるようになるまでどれくらい掛かると思ってるのよ」

 

 その問題があったな。

 俺の場合はステータスを自由に変更出来たり、士官学校を卒業していたり、何より数えるのも馬鹿らしくなるくらいの戦場を潜り抜けてきた。

 だからこそ、銃の腕前という点においては、容易く他を凌駕するだけの実力を持っているのだが……ゆかりは若干特別なところはあるが、基本的には普通の女子高生でしかない。そうである以上、銃を使うとなると最初から教える必要もある、か。

 それはちょっと面倒だな。

 あの妙な現象の中であれば、実践で慣れていくという方法もあるが。

 再度あの妙な現象に巻き込まれるかどうかというのは、全く分からない。

 それなら、ゆかりにサブマシンガンを持たせるよりは、やっぱり部活で使っているという弓を使わせた方がいい……か?

 

「あー……そうだな。取りあえず銃はやめて弓で様子を見るか。それで弓が効果あるようならそのまま使い続けてもいいし」

 

 こうして話している間に、いつの間にかゆかりが俺と一緒に行動する事になっているような気がするが……まぁ、この世界の原作の主要メンバーと接触する事を考えれば、決して悪い事だけじゃないと思う。

 敵がどの程度の強さなのかが問題になるんだが、正直今日戦ったスライムもどき程度であれば全く問題ない。

 勿論いつまでもあんな弱い敵だけしか出てこないという訳ではないだろう。

 それこそ、かなり強力なモンスター……うん? あれはモンスターと呼べばいいのか? それとも何か別の名称があるのか。

 ともあれ、そんな未知の存在でも、ここが何かの物語の世界の中であるのなら、間違いなくあのモンスターは強くなっていく筈だ。

 モンスター……うん、正確な名称が分かるまでは取りあえずモンスターとでも呼んでおけばいいか。

 

「じゃあ、次はあの妙な現象に巻き込まれたらどうするかだけど……どうするの?」

「どうするのって言われてもな。さっきも言ったように、あの現象の中でだけ存在する建物があるって言っただろ? 恐らくはそこに何らかのヒントがあると思う」

 

 月光館学園だったか。

 この世界が何らかの物語の世界であるのなら、学校に敵のボスがいるというのは珍しい話ではない。

 それどころか、学校が敵――なのかどうかはまだ今の時点では不明だが――の本拠地であっても、それはらしい展開だろう。

 何故か少しだけ嬉しそうになったゆかりを眺め、小さく溜息を吐く。

 

「改めて聞くぞ? 本当に俺と一緒に行動するつもりなのか? お前も知っての通り、あの現象の中は色々と危険だ。であれば、解決を俺に任せるって手段も……」

「嫌よ」

 

 俺に最後まで言わせず、ゆかりの口の中からは拒絶の言葉が漏れる。

 

「何度も言わせないで。私はアクセルに頼って、自分だけが安全な場所にいたくないの。だから……」

「分かった」

 

 これ以上は何を言っても無駄だろうと、そう判断して頷きを返す。

 

「じゃあ!」

「ああ。一緒に行動してくれ。俺にとっても決して悪い事ばかりじゃないしな」

 

 結局そういう事になるのだった。

 まぁ、あの現象がまた起きるとも限らないし……もしくは、起きても棺桶にならないとも限らない。

 本当に偶然、ゆかりがあの現象の中で動けていたという可能性もあるのだ。

 そう考えれば、そこまで悪い話じゃない……と、思う。

 それにまだ半信半疑の様子だが、俺が異世界の存在だというのは知っているのだ。

 この世界で何か活動するにしても、こういう協力者がいるのといないのとでは、大きな違いがある。

 ……出来れば、W世界で協力して貰ったマフィアのような、ある程度力のある協力者ならいいんだが。

 いや、その手の類の奴は利益さえ渡せばきちんとこっちの思い通りに動いてくれる。

 なら、いつでも……ああ、でもここは日本だったんだよな。

 だとすれば、ヤクザが堂々と看板を立てているのか。

 表立った存在だけに、マフィアと比べれば色々と影響力は小さそうだよな。

 警察とかそういう公的権力によって監視されてもいるだろうし。

 

「どうしたのよ?」

「いや、俺達があの奇妙な建物に挑むにしても、何かバックアップしてくれる存在があればいいなと思っただけだよ」

「……バックアップね。けど、私とアクセル以外はあの現象の中で動けないんでしょ? なら、バックアップって言っても……」

「別にバックアップってのは、あの現象の中だけでの話じゃないぞ。そもそも、そういう意味でのバックアップなら俺は必要としていない。勿論、いればそれで悪い事はないけど」

「じゃあ、どういう意味?」

「何をするにしても、物資の類は必要だろ? 情報を集めるとか、武器の手入れとか。それ以外にも様々にな」

 

 一応俺の空間倉庫があれば大体解決出来る内容ではあるんだが、それでも、出来ればどうにかした方がいいのは間違いない。

 

「うーん……けど、どうしろってのよ? 私達の立場でそんなバックアップ? してくれる人を探すのは大変なんじゃない?」

「そうだな、普通に探すのなら大変だ。……けど、普通じゃない手段なら?」

「普通じゃない手段?」

「ああ。金を支払って、その対価としてこっちのバックアップをして貰う」

「そんな事を言っても……どういう人に頼むのよ?」

 

 俺が何を言いたいのか、半ば分かっているのだろう。少しだけ嫌そうに尋ねるゆかりに対し、俺は笑みと共に口を開く。

 

「いわゆる、裏の存在だよ」




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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