転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1763話

 何かの音が聞こえ、俺の意識が急速に目覚めていく。

 そうして音のした方に視線を向けると、そこにいたのは着替えを持って部屋から出ていく女の姿があった。

 ここは? と自分が今いる場所が分からずに一瞬混乱するが、すぐに昨日の事を思い出す。

 ゲートの暴走……もしくはそれ以外の何らかの要素により、俺は全く未知のこの世界にやって来たんだったな。

 しかもこの世界に来て早々、人が棺桶になるなんて現象に巻き込まれるというおまけ付きだ。

 結局その時に知り合ったゆかりの部屋で色々と話をし……

 

「裏社会の人間も、色々なんだけどな」

 

 昨日ゆかりと話した内容を思い出し、床の上で上半身を起こしながら小さく呟く。

 結局ゆかりはバックアップの存在として裏社会の人間を使うという俺の意見に反対した。

 それを何とか説得しようとしたものの……時間も時間である以上、そろそろ寝ないと明日がつらいという事で、結局話は中断したままだったのだ。

 窓の外を見れば、白い雪が散らついているのが分かる。

 2月という真冬なんだから、雪が降っててもおかしくはないんだが……

 そんな風に考えながら、改めて部屋の中を見回す。

 昨日は色々とあったから適当に見る事しか出来なかったが……それなりに片付いているな。

 そんな風に部屋の中を見ていると、やがて部屋に近づいてくる足音が聞こえてくる。

 もしかしたら隣の部屋の人物じゃないか? とも思ったが、よく考えれば昨日……いや、今日はかなり遅くまで話してたんだよな。

 さすがに話の内容は聞こえていないだろうが、それでもうるさかったのは間違いないと思う。

 

「ちょっと、あまり部屋の中を見ないでよね」

 

 扉が開き、制服姿に着替えたゆかりが姿を現す。

 

「いや、見るなって言ってもな。お前は俺に宿としてこの部屋を提供しようって言ってたんだろ? なら、このくらいの事を気にするなよ」

「何よ、結局断ったんじゃない」

「まぁ、な」

 

 昨夜は遅かったし、どこかに泊まるにしてもこの辺りについては詳しくなかったからこの部屋で寝たが、出来れば今日はホテルとかに部屋を借りる……のは身分証の問題で無理だから、どこか夜に眠れる場所を探す必要があるな。

 漫画喫茶とかそういう場所はどうだ? 身分証が必要な店もあるらしいが、必要ない店もあるらしい。

 そう考えれば、探すのも結構楽か?

 

「それより、今日は学校なのか?」

「そうよ。まぁ、もう3学期だから、そんなに忙しくはないんだけど」

「学生は大変だな」

「……アクセルは楽そうでいいわね」

 

 ゆかりの呆れの混ざった視線が俺に向けられるが……そう言われてもな。

 一応俺はこれでも士官学校を主席で卒業しているし、それ以外にも麻帆良学園を卒業したという事になっている。……中等部だが。

 そんな訳で、おまけではあっても学校を卒業した経験があるのは間違いない。

 ゆかりの視線に、俺は満面の笑みを浮かべて口を開く。

 

「ふふん、いいだろ。お前も頑張って高校を卒業するんだな」

「……ふん。それで、アクセルは今日どうするの? あの現象について何か調べるとか?」

 

 これ以上俺と言い合っても意味はないと感じたのか、ゆかりがそんな質問をしてくる。

 どうするか、か。まだ決めてないんだよな。

 ただ、俺が最優先でやるべき事は既に決まっている。それは……

 

「取りあえず、寝床の確保は必要だろうな」

「そう」

 

 昨日とは違い、ゆかりも特に強引に俺にこの部屋を拠点にするように迫ってきたりはしない。

 昨日はあの棺桶の現象やら、俺の正体やらを話したりで、かなり混乱していたんだろう。

 それで一晩経って落ち着いた……と。

 

「ああ、そうそう。話は変わるけど、昨日結構遅くまでここで話してたけど、隣の部屋とかは大丈夫なのか?」

「え? ああ、それなら大丈夫よ。右の部屋の子は昨日は家に戻ってるし、左の子は一度寝ると何が起きても朝まで起きないから」

「あー、なるほど」

 

 言われて、改めて気配を察知してみれば、右の部屋からは何も感じないし、左の部屋からは微かにしか気配を感じられない。

 そう思えば、ゆかりの言う事も納得出来る。

 

「だから、昨日の件は心配しなくてもいいわよ。……まぁ、何日かすれば右の子は帰ってくるだろうから、そうなればアクセルと話す時も色々と気を使う必要があるんだけど」

「……誰にも聞かれないで話せる場所ってのは、重要だしな」

 

 特に俺とゆかりの場合、話す内容が色々とファンタジーじみている。

 何も知らない者がそれを聞けば、ゲームか何かの話だと思ってくれるのであればいいが、妙な勘違いをされないとも限らないのだ。

 それこそ、前世が光の戦士だったとか、ゲームの世界に没頭して現実が見えなくなっている者の集まりとか。

 ……よく考えたら、それって思い切り俺の現在の状況のような……

 ま、まぁ、取りあえず今はその事はスルーしておこう。

 色々と、本当に色々と危険だし。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くな。ゆかりも学校があるんだし、こうしてゆっくりはしていられないだろ?」

「そう、ね。私はまだ結構時間に余裕があるけど。……ああ、でも学校に行く前にコンビニに寄っていかなきゃ。昨日は結局あの妙な現象に巻き込まれたから、コンビニで買い物出来なかったし」

「そういえば、昨日はコンビニに買い物に行く途中であの現象に巻き込まれたんだったな。あの時間帯にコンビニに買い物に出掛けるなんて……不良め」

「ちょっ! 何よいきなり! 別に夜にコンビニに出掛けたからって、不良呼ばわりはないでしょ!」

「まぁ、これが午後7時とか8時ならそうだけど、12時近かったからな。……よく出る事が出来たな」

 

 改めて考えるまでもなく、ここは女子寮だ。

 ましてや、大学生の寮ではなく、高校生の寮。

 であれば、当然のように門限とかは決まっていてもおかしくはない。

 だというのに、ゆかりは日付が変わる頃にも関わらず、女子寮から出ていた。

 

「ちょっとした裏技があるのよ」

「だろうな」

 

 学生寮には、何らかの抜け道がある事が多いというのは、よくある話だ。

 恐らくゆかりも何かそういうのを使ったのだろう。

 

「ま、そのせいであんな現象に巻き込まれたのを考えれば、運が良かったのか、悪かったのか……」

「微妙なところだろうな」

 

 あの現象に巻き込まれなければ、スライムもどきに襲われる事もなかった。

 昨日、ゆかりが寝付けないで何度もベッドで寝返りをしていたのを、俺は知っている。

 ……まぁ、眠れなかった原因は、同じ部屋にその日にあったばかりの男がいたから、という事もあるのかもしれないが。

 何だかんだと、男慣れしていないゆかりの性格を考えれば当然なのだろう。

 

「とにかく、俺はそろそろ行く」

「あ、ちょっと待って。もし何かあった時、どうやって連絡を取ればいいの? アクセル、携帯とか持ってる?」

「携帯、か。昨日この世界に来た俺が携帯を持ってると思うか?」

 

 正確にはPDAや通信機の類は持っている。

 だが、それはあくまでも他の世界で使えたり、ゲートを中継点として使う為の物だ。

 それを、この世界で使える筈もない。

 ……だからといって、この世界で普通に携帯を買うにも、当然のように身分証が必要だ。

 裏社会の人間に依頼すればどうとでもなるかもしれないが、それを行うには、まずそういう奴と繋がりを作る必要がある。

 身分証の類がないというのは、やっぱり厄介だな。

 強い権力を持っている奴を味方に引き入れる事が出来れば、こちらとしても色々と楽になる。

 いっそ政治家辺りに接触するという手段もあるが……いや、駄目だな。

 迂闊にこの世界の政治家に接触した場合、それがこっちの足枷になる可能性は高い。

 それに妙な野心を抱いている政治家に接触した場合、ホワイトスターと連絡が取れた時に色々と面倒になる可能性は十分にある。

 そういう政治家とか、ましてや政治屋と呼ばれている相手なら、俺が金になるとか自分にとって有用な能力を持っていると知れば、手っ取り早く協力してくれるんだろうが。

 ギブアンドテイクで、1回だけであれば……まぁ、何とかなりそうではあるな。

 まぁ、どうしても手がない時くらいでしか使おうとは思わないが。

 

「そうよね、アクセルが携帯を持ってる訳ないか。……なら、私と連絡を取る時、どうするの?」

「無難な選択肢だと、俺が直接ここに来るとかだろうな」

 

 転移という移動手段がある俺にとって、この世界の警報装置は役に立たない。

 ……まぁ、転移した部屋が防犯カメラとかによって監視されていれば、あっさりと俺の事は分かるだろうが。

 

「でも、それだと普段私が連絡をしたい時にはどうしようもないじゃない」

「そう言われてもな。携帯がない以上、こっちだってどうしようも……うん? 待てよ?」

 

 携帯が買えないのは、あくまでも俺が身分証を持たないからだ。

 だとすれば、逆に考えれば身分証のある者なら買える訳だ。

 そして、俺の前にはポートアイランド駅の裏側だったか? そこまでいかなくても、身分証を持っているゆかりがいる。

 携帯を買うには親の承諾書とかが必要だという話も聞いた事があったが……その辺は、ゆかりにどうにかして貰うとしよう。

 

「……何よ?」

「ゆかり、俺と付き合え」

「なぁっ!? ばっ、ばばばばばばばば、馬鹿ぁっ! いきなり何を言ってるのよ!」

 

 顔を真っ赤にしながら叫ぶゆかりだったが、その様子を見て自分の失策に気が付く。

 

「ん? ああ、お前が思っているような恋愛的な意味で付き合えって訳じゃなくて、今日の放課後に俺に付き合えって話だ」

「な、なんだ。……全く、紛らわしい言い方しないでよね。馬鹿じゃない? てか、馬鹿じゃない?」

 

 何故2度言う。

 そう思ったが、今の状況で突っ込めば間違いなく更に怒らせてしまうだろう。

 そうならない為には、ここは大人しくしているに限る。

 

「それで、どうだ?」

「別にいいけど、何をするつもりよ?」

「お前の身分証を使って携帯を買って欲しい。ああ、勿論金は俺が払う」

「……なるほど。アクセルが携帯を持つのは、私にとっても色々と助かるけど、それだと私の名義になるわよ? それに料金の方は……アクセルの場合、心配する必要はないのか」

 

 昨日俺が見せたルビーを思い出しているのだろう。ゆかりがあっさりと納得したように頷く。

 こっちとしては助かるけど、思ったよりも俺の存在を簡単に受け入れてるよな。

 ……まぁ、昨日の人が棺桶になる現象とか、スライムもどきに襲われたりとか、俺の使う魔法をその目で見たりとか、そういうのに続けざまに遭遇すればおかしな話ではない。

 

「ああ。料金は毎月お前に払う。その携帯が使えなくなったら、解約してくれればいい」

「簡単に言ってくれるわね。未成年が携帯を契約するには色々と大変なのに。……まぁ、いいわ。取りあえずその辺は何とかしてくれる人がいるから、そっちに協力を頼むから」

 

 そうして待ち合わせ時間を決め、時間になったのかゆかりは急いで部屋を出る。

 ちなみに、当然ながら俺だけを部屋に残すような真似はせず、影に沈んでいくのを確認してからだが。

 そんな真似をしても、俺の場合いつでもこの部屋に戻ってくる事は出来るんだけどな。

 勿論そんな事を言えば、色々と妙な目で見られるので言わないが。

 ともあれ、俺は色々と情報を集める為に街中に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「……やっぱり特に何もない、か」

 

 現在俺がいるのは、図書館。

 あんな妙な現象が起きているのだから、もしかしたらこの地区には何かがあるのではないかと、そう思った為だ。

 いや、そもそもあの現象はこの地区だけ、日本だけで起きている訳ではない筈だ。

 もしそんな事になっていれば、間違いなく大きな騒動になっている筈だし。

 そうなると、この世界全体であの妙な現象は起きているという事になる。

 ……何らかの特殊能力を持っている奴とかが、解決する為に動き出していてもおかしくないんだけどな。

 ゆかりもそうだが、あの現象の中でも動ける奴がいるんだし。

 

「ん?」

 

 そんな事を考えながら資料を調べていると、ふと気になる新聞記事を見つけた。

 今から10年前の事故の記事だ。

 何でもこの近くでかなり大きな事故があったらしい。

 ……まぁ、普通ならふーん、それで? といった感じなのだが、何だかその事故の記事が妙に強く印象に残った。

 念動力が働いた……って訳じゃないが、それでも何らかの意味がある事なような気がしないでもない。

 もっとも、それと関連づけるような情報の類は何も出てこなかったが。

 他にも色々と調べているが、このポートアイランド一帯は桐条グループとかいう財閥が積極的に開発しているらしい。

 桐条グループ、ね。

 もしかして、あの現象について何か知っているのか?

 それとも、ただの偶然か。

 ともあれ、俺はもう暫く図書館の中で何らかの情報がないかを探すのだった。

 ……結局それらしいものは何も見つけられなかったが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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