転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1764話

 結局午前中一杯を図書館の中ですごしたものの、特にこれといった情報は見つからなかった。

 幾つか怪しいと思われるような情報はあったのだが、それでも決定的なものはなく……精々桐条グループというのが南条グループという財閥の分家筋であるというのは少し気になったが。

 ともあれ、これ以上は図書館で情報を探しても特に役に立つものはないと判断し、図書館を出てきた。

 いや、違うか。恐らくもっとこの世界についてや、あの現象についての知識があれば、色々と詳しい情報を調べる事が出来たのかもしれないが……今の俺の状況では、情報のピースが圧倒的に足りない。

 そうである以上、こちらとしては無為に時間をすごすよりは、街で何らかの情報を集めた方がいい。

 そう思っていたのだが……

 

「ああっ! んだこらぁっ! やるのか? ならやってやんよ。おら、ちょっとこっちに来い!」

「あーあーあーあーあー、サクちゃんを怒らせちゃって。もうボコられるまで止まらないぞー?」

「けっけっけ。この真冬の寒い中で真っ裸にしてその辺に放り出してやるよ」

 

 ……何がどうなってこうなったのかは分からないが、俺はポートアイランド駅前で3人の不良に絡まれながら連行されていた。

 見たところ、ゆかりと同年代が少し年上といったころか。

 恐らくまだ20歳にはなっていないだろう外見。

 それに比べると、俺の外見はゆかりより少し年下に見える15歳くらい。

 ……まぁ、向こうは大人数だし、絡む相手として考えれば決して悪い訳ではないんだろうが。

 そんな訳で、金だせおら、ブチ殺すぞおら、とかそんな風に言っている連中に連れられ、駅の裏側へと移動していた。

 へぇ。昨日ゆかりをナンパした奴が言ってたけど、ここがポートアイランドの駅裏か。

 確かにここに入ってしまえば、表とは全く違う光景を目にする事が出来る。

 周囲を見回せば、俺に絡んでいる3人と似たような不良が何人も路地裏に集まって話していた。

 2月の寒空の下で、よく外にいられるな。

 そう考えれば、寧ろこいつらって何気に根性あるんじゃないか?

 寒いから、こうして絡む相手を探しているという可能性もあるが。

 ともあれ、3人に連れられて大人しく俺がついて行ったのは、もしかしたら何か情報が得られるかも? と思った為だ。

 普通に考えれば、こんな連中が何か重要な情報を持っているとは思えない。

 だが、こういう奴等だからこそ、自分達の持っている情報が思いも寄らない程に重要なものであるという可能性は十分にあった。

 

「で、どこまで行くんだ? 下らない用事はさっさと済ませてしまいたいんだけどな。まだ昼も食べてないんだし」

 

 ヒクリ、と。

 俺の言葉を聞いた1人が、頬をひくつかせながら俺を睨んでくる。

 

「てめえ、何だってそんなに余裕ぶってやがんだ? てめえはこれからボコられるんだぞ?」

「さて、どうだろうな?」

 

 当然のように、俺がこんな程度の奴を相手に負けるというつもりは一切ない。

 だが、そんな俺の態度が余程気に障ったのだろう。

 もしくは、既にここが駅裏だというのも男達の行動を抑止する必要はなくなったのかもしれない。

 あるいは、周囲で様子を見ているこいつらの同類が囃し立てているのが関係している可能性もあった。

 そんな様々な理由……その中でも、自分達が俺に侮られているというのを理解している為か、男達はこれ以上俺を駅裏の奥に連れ込むのを止めると、いきなり殴り掛かってくる。

 その一撃を後ろに1歩下がって回避し、目の前を腕が通りすぎた次の瞬間には、その男の胴体に俺の靴が埋まっていた。

 当然手加減に手加減を重ねた上での一撃だったのだが、男にとってそれは十分に強力な一撃だったのだろう。

 数m程も吹き飛び、地面を転げ回りながら移動し、やがて止まる。

 ……気絶しているのは、間違いないだろう。

 

「なっ!?」

 

 まさか俺に反撃されるとは思ってなかったのか、男達は唖然とした視線を俺に向ける。

 いや、俺に絡んできた男達だけではない。それどころか、周囲で面白そうにこちらの様子を眺めていた者達までもが、同様に唖然としていた。

 ……俺って、そんなに弱そうに見えるのか?

 ともあれ、そんな様子に少しだけショックを受けつつ、呆然としている男達に向かって拳を振るう。

 さっきはちょっとだけ、それこそほんのちょっとだけ力を入れすぎたので、今度は更に優しく。

 床に置いてる荷物を1m動かすのは楽に出来ても、正確に1mm動かすのは難しい。

 それと似たようなものか。

 それでも戦いにおいて俺の勘というのは決して的外れなものではなく、残る2人は無事に意識を失ってその場に崩れ落ちる。……この場合、無事って表現はおかしいか?

 ともあれ、俺の予想通りの流れになってくれた以上、特に問題はないが。

 

「さて」

 

 呟き、先程から俺が殴られるのを楽しもうと、周囲で見ていた者達を一瞥する。

 そうして視線を向けられると、そっと視線をそらす者、その場からさっさと立ち去る者といった風に反応が2つに分かれる。

 少なくても、この場でこの気絶した男達の味方をするような者はいないらしい。

 そうなると、こっちも色々と次の行動に移る必要がある訳だが……

 まぁ、仲間がこいつらを助けない以上、周囲の様子を心配する必要はないか。

 そう考え、倒れた3人に向かって一歩を踏み出そうとすると、不意に地面を踏む音が聞こえてくる。

 それも、ただ地面を踏むのではなく、こちらに向かって近づいてきている音だ。

 面倒臭いという表情をしつつ、内心でこっちの狙い通りの行動を取ってくれた相手を確認する為、そちらに視線を向ける。

 すると俺の視線の先にいたのは、大柄な男だった。

 冬らしくコートに身を包んでおり、頭に帽子を被っている。

 それなりに大柄な男で、今の……10代半ばの俺の姿と比べると明らかに背が高い。

 

「もう、その辺にしておいたらどうだ? そいつ等も自分が馬鹿な真似をしたというのは分かっているだろうしな」

「……そうだな。用事も果たしたし、もうこいつらに用はない」

「何?」

 

 俺の言葉を疑問に思った男が、訝しげに目を細める。

 意外と強面な顔つきをしているな。

 だが、この状況でこの男が出てきたという事は、何気にこの男が面倒見のいい性格をしているという事も表している。

 そう、こういう男に用事があったのだ。

 面倒見がいいという事は、こっちにとっても接しやすい相手なのは間違いない。

 勿論、この男をあからさまに利用しようとすれば、向こうもこっちに相応の態度を取ってくるだろうが。

 それは逆に言えば、あからさまでなければいいという意味でもあるのだ。

 ましてや、周囲の者達の様子を見れば、この男が一目置かれているは確実だった。

 まさに俺が探していた……釣り出そうとしていた人物の条件にこれ以上ない程に合っている。

 そして何より、この男には他の連中にはない……そう、何か違和感のようなものがある。

 その違和感が何なのかは、俺にも分からない。だがそれでも、この男が何か重大な鍵を持っているのは間違いないように思えた。

 

「おい、荒垣だぜ?」

「……あいつが出て来たら、あの生意気な小僧も終わりだな」

「俺、以前荒垣が頭突きで人を吹き飛ばしているのを見たことがあるんだけどよ」

「うっそ、マジ?」

「格好いいわよね。今度誘ってみようかしら」

「止めておいた方がいいわよ? 彼、女からの誘いには乗らないって話だし」

 

 そんな風に聞こえてくるのを耳にすると、やはり俺の目の前にいるこの男……荒垣だったか? この辺りでもそれなりに高い影響力を持っている男らしい。

 

「へぇ、じゃあ、お前とちょっと話させて貰おうか」

「……俺と?」

「ああ。残念ながら、俺が話そうとしていた相手はこの有様だしな」

 

 俺に絡んできた男達を一瞥し、改めて荒垣に対してそう告げる。

 向こうはじっと俺の目を見返し、やがて頷く。

 こいつ、何だ?

 妙に鬱屈した目をしてるな。

 この平和な世界でこんな目をしている者がいるというのも珍しい。

 俺に絡んできたような奴等の、表面的な……言うなれば薄っぺらい感情とは違う、もっと深い部分にある鬱屈の感情。

 そんな思いの込められた視線が、俺の視線を見返している。

 勿論この世界が本当の意味で平和な世界だと思っている訳ではない。

 事実、俺とゆかりが関わった、あの妙な現象もある。

 それに日本は平和でも、世界そのものを見回せば必ず戦争をしているような地域はあるだろう。

 だが……それでもやはり、俺は目の前にいる男の視線が気になった。

 

「何だよ?」

 

 そんな俺の視線に、向こうも何か感じたのだろう。やがて訝しそうにそう尋ねてくる。

 

「いや、何でもない。……この件はお前の顔に免じてここで手打ちにしてやる。その代わり……そうだな、俺は昼飯がまだ何だが、奢って貰おうか」

「ふんっ、分かった。ラーメンくらいなら奢ってやる。ついてこい」

 

 そう言い、荒垣と周囲に呼ばれている男はその場を後にする。

 本来ならもう少し時間が掛かると思ったんだが……ここで一目置かれている奴と、こうも簡単に知り合えるとはな。

 W世界の時に知り合ったマフィアに比べれば、規模的には比べるまでもないが。

 それはこっちも織り込み済みだし。

 最後に周辺にいる奴等を一瞥すると、俺はそのまま荒垣の後を追う。

 

「巌戸台駅まで移動するが、構わねえな?」

「は? まぁ、別に構わないけど」

「そうか、じゃあ行くぞ」

 

 

 

 そう言い、駅で切符を買ってそのまま電車に乗る。

 日中という事もあり、朝の最も忙しい時間帯でもないので、電車の中はかなり空いていた。

 

「なぁ、お前。名前は何て言うんだ? 俺は荒垣真次郎ってんだけどよ」

 

 と、座席に座って巌戸台駅に到着するのを待っていると、不意に荒垣が声を掛けてくる。

 

「そう言えば自己紹介してなかったな。俺はアクセル。アクセル・アルマーだ」

「アルマー? それにその外見……外国人の割には、妙に日本語が上手いな。日本育ちか?」

「いや。日本じゃない場所で生まれ育ったよ。まぁ、これで色々と多才だからな」

 

 一応嘘は言っていない。

 日本じゃない場所で生まれ育ったのは事実だし、魔法が使えたり人型起動兵器の操縦が上手かったり、混沌精霊なんて存在になっていたりと、多才と言っても決して間違っている訳じゃない筈だ。

 ……勿論本当の事も言ってないんだが。

 

「多才、か。……降りるぞ」

 

 話している間に駅に到着し、やがて駅からそれ程離れていない商店街にある店に入る。

 

「親父、俺は坦々タン麺。こいつには……何にする?」

 

 そう言われ、メニューを見る。

 その中で一際目を引いたのは、トロ肉しょうゆラーメンだった。

 個人的には醤油より味噌派なんだが、それでも美味そうに見える。

 

「じゃあ、トロ肉しょうゆラーメンを大盛りで」

「おいおい、食い切れるんだろうな?」

 

 荒垣がどこか疑わしそうな視線を向けてくる。

 気のせいか、この店に入ってから荒垣の鬱屈した視線が幾らか和らいでいるように見えるが……それだけお気に入りの店って事なんだろうな。

 

「ああ、大丈夫だ。こう見えて結構食えるんだ。寧ろラーメンの二、三杯は楽勝だぜ?」

「……言っておくが、俺が奢るのはあくまでも一杯だけだからな。こっちだってそんなに余裕がある訳じゃねえんだし」

「分かってるよ」

 

 そもそも、あのような場所にいるような奴が金に余裕がある筈もないだろう。

 いや、もしかしたらどこぞの金持ちのボンボンとかがいる可能性は否定出来ないから、絶対って訳じゃないが。

 ともあれ、俺の注文はトロ肉しょうゆラーメンに決まって、早速調理に入る。

 

「で、お前は何だってあんな馬鹿な真似をしたんだ?」

「馬鹿な真似?」

 

 ラーメンが出来るまでの待ち時間、荒垣が水を一口飲みながら俺にそう告げてくる。

 

「そうだ。あいつ等が絡んできてたってのは、お前にも分かってただろ? なら、何でわざわざそれに乗ったんだ? まぁ、あのやり取りを見てれば、お前が負けるなんて事は考えなかったんだがな」

「そうだな。……率直に言えば、お前みたいな奴を釣り上げる為、というのが正しいのか?」

「……俺を?」

「ああ。正確にはお前をじゃなくて、多少非合法なものであっても、この辺りの事情に詳しい奴って意味だが」

 

 その言葉に、荒垣の視線が一瞬鋭くなる。

 

「それは、どういう意味だ? 何を探っている?」

「そうだな……」

 

 ここであの現象を口にしてもいいのか?

 いや、人間……それとも生き物全てか? ともあれ、棺桶になるような現象があるなんて言っても、まともに聞きはしないだろう。

 だが、この男には何か違和感のようなものがあるのも、また事実。

 ……さて、どうしたものか。

 そうして取りあえず口を開こうとした瞬間、カウンターにラーメンの丼が置かれるのだった。

 

「お待ち」




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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