月光館学園の校舎から出てきたゆかりだったが、校門前で待っている俺を見ると目を大きく見開く。
既に午後5時近くであり、2月という事もあって夕日は完全に沈み、夜空と呼ぶのに相応しい空になっている。
それでもゆかりが俺の姿をしっかりと見る事が出来たのは、校門前に街灯があったからだろう。
「よう、遅かったな、ゆかり」
「ちょっ! ちょちょちょ! 何であんたがこんな場所にいるのよ! 今日はこっちから電話するって言ったでしょ!」
周囲にいる部活仲間達からどんな視線で見られているのかにも気が付かず、ゆかりは大きな声で叫ぶ。
「そう言ってもな。ちょっと暇だったし……」
そこで一旦言葉を切り、数秒の意味ありげな沈黙の後で再び口を開く。
「なるべく早くゆかりに会いたいと思ったからな」
『きゃーっ!』
「ちょ、いきなり何言ってるのよ! 馬鹿じゃない? てか馬鹿!」
いつもの2度繰り返すゆかりの言葉とは少し違う叫び。
何だかんだと、今のゆかりはかなり混乱しているのだろう。
まぁ、分からないでもない。
まさか昨日の今日で、再び俺が学校前にやってくるとは思わなかったのだろう。
「ちょっと暇だったんだよ。一緒に家電とか家具とかを選んでくれるんだろ?」
そう告げた瞬間、ゆかりの周囲にいた友人達の表情が驚きに染まる。
「ね、ねぇ。ゆかり。もしかしてあんた、寮を出て同棲を……」
「違うわよ! もうっ、ほら! アクセルさっさと行くわよ!」
ゆかりにとっては、ここで俺にこれ以上妙な事を言われないようにと思っての行動だったのだろうが……この状況で慌てたりすれば、それは余計に他の連中の疑惑を深めるだけだと思うんだが。
実際、他の連中はゆかりに驚愕の視線を向けていたが。
……その上、少し遅れて出てきた男の弓道部員達も、ゆかりに向かって驚愕の視線を向けている者がいる。
もっとも、中には本気で俺に鋭い視線を向けているような奴もいるのだが。
そういうのは、恐らく本気でゆかりに対して恋心を抱いている奴だろう。
「ほら、行くわよ!」
「お幸せにねー!」
「違うって言ってるでしょ!?」
俺の手を握って引っ張るゆかりが、背後から聞こえてくる友人の声に、そう叫ぶ。
幸い……と俺が言うのもどうかと思うが、もう5時近くで暗くなっている事もあって、周囲に弓道部員以外の姿はない。
こうして手を繋いでいる――正確には引っ張られているのだが――ところを誰かに見られる心配もないだろう。
そんな風に他の連中を置いて月光館学園から離れると、ようやくゆかりは手を離す。
その後、鋭い視線を……それこそ、影に狙いを付けているかの如き視線をこちらに向けてくる。
「それで、本当に何しに来たのよ? 言ったわよね? 部活が終わったらこっちから連絡するから、それまで待っててって」
「そうだな。そう聞いた。……けど、さっきも言った通りちょっと暇だったからな。それに、あの塔になる場所をしっかりと調べておきたかったというのもある」
ゆかりの怒り方が予想以上だったので、取りあえず建前としての方の説明をしておく。
「それは……それで、何か分かったの?」
「いや、残念ながらちょっと調べたくらいじゃな。それより、そっちはどうだった? ほら、宝箱で現金を見つけた件」
「ああ、その件ね。一応聞いた限りだとお金がなくなったって話は聞かなかったわ。ただ、まだ気が付いていないとか、もしくはなくなったのを秘密裏に調べているって可能性はあるから、正確にどうとは言えないけど」
取りあえずあの金が盗まれた金だという話にならないのであれば、こっちにとっても運がいいのは間違いない。
盗まれた訳ではない以上、何の気兼ねもなく自由に使えるという事なのだから。
まぁ、もしあの金が使えなくても、俺はある程度金を持っているし、いざとなれば宝石を処分する事も出来る。
そう考えれば、そこまで気にする必要はないだろう。
「そうか。なら、あの塔の中で入手した金は自由に使えるって訳だな」
「……あのね、話を聞いてた? もしかしたら裏で探してる人がいるかもしれないって言ったでしょ?」
「2500円程度でか? まぁ、これで100万円とかそのくらいの金額が出てきたのなら、こっちもその辺を疑うけど、特に気にしなくてもいいと思うがな」
「そう?」
「ああ。それに、ゆかりの場合は弓を使っている以上、矢はどうしても使い捨てになる。そうなると、やっぱり金は幾らあっても足りないだろ」
その言葉に、ゆかりは自分の持っている弓の入っているケースを見る。
弓道部で使っている弓だが、それを持ち帰っているのはゆかりだけだった。
さっきゆかりと一緒にいた弓道部の面々は、誰も弓を持っていなかった。
ゆかりが何故弓を持ち帰っているのかというのは、それこそ考えるまでもないだろう。
「そうね。でも、出来れば強力な矢とかも欲しいわね」
「強力な矢、ね。普通に考えれば鏃に毒とかを塗るとかか? もっともそんな真似をすると慎重に扱わないといけなくなるが」
「……随分と物騒ね」
正直な思いを口にしただけだというのに、何故かゆかりからはジト目を向けられる。
「そうかもな。けど、お前もそういう世界に足を踏み入れたって事を覚えておくといい」
「うん」
小さく頷くゆかりだったが、やがて気分を取り直したのだろう。すぐに俺の方に視線を向けてくる。
「それで、アパートを借りられたんだって?」
「ああ。幸い……って言い方はどうかと思うが、こっちで知り合った奴に身分証がなくてもアパートを貸すって知り合いがいてな。そっちから話を通して貰った」
「ふーん。じゃあ、まずはそのアパートに案内して貰える? 家具とか電化製品を買うにしても、どのくらいの広さなのかが分からないと」
「言っておくけど、かなり狭いぞ? 実際、寝る為だけの部屋だし」
「となると、布団に冷蔵庫、TV辺り? 台所は?」
「一応ガスコンロがあるけど、かなり狭いから料理をするのは面倒だな」
幸い……という言い方はどうかと思うが、俺は本来なら食事をしなくてもいい。実際に俺が食事をしているのは、単純に嗜好の為だ。そうである以上、栄養とかを気にして自炊とかもしなくて済む。
だが、俺が混沌精霊である事を知らないゆかりは、料理をするのが面倒だという話を聞き、ジト目を向けてくる。
「栄養ってのは大事なのよ?」
「そうだろうな。ただ、俺の場合は栄養とかを考えなくてもいいんだよ。スキル的な問題でな」
取りあえずそう誤魔化しておく。
「ほら、それより一旦俺の部屋に行くんだろ。人目につかない場所に移動するぞ」
「……その台詞だけ聞くと、微妙にいかがわしいわね」
呆れの言葉を発するゆかりと共に、近くにある建物の隙間に入ると、そのまま影のゲートを使って転移する。
「きゃっ!」
ゆかりも影に沈んでいく感触に悲鳴を上げていたのだが、それでも今まで影のゲートを初めて使った者のように取り乱したりはしなかった。
……何だかんだと、肝が据わっているのだろう。
まぁ、初めてじゃないってのもあるんだろうが。
ともあれ、影のゲートから抜け出すと、そこはアパートの中。
4畳程の小さな部屋だけに、当然のように玄関も小さい。
いや、玄関とすら呼べないだろう。部屋に直接続いているんだし。
「……ここ?」
「ああ。これから買い物に行くのに、荷物とかは邪魔だろうから、ここに置いていってくれ。それとも俺が預かるか?」
「ううん。置いていく」
そう言い、部屋の中に入って壁際に荷物を置くと、ゆかりは改めて部屋の中を見る。
「本当に狭いわね。これだと、家具とかは殆ど置く事は出来ないじゃない」
「だろうな。だから、基本的には眠る場所って感じだ」
「……くしゅんっ! 暖房用品は何か買った方がいいんじゃない? エアコンとかは取り付け工事とかで時間が掛かるだろうし、電気ストーブとか」
電気、電気か。そう言えば光熱費とかはどうなってるんだろうな?
俺の場合は言うまでもなくこの世界に対して戸籍がないし、身分証もない。
そんな俺が、口座引き落としとか出来る筈もないし。
というか、今日ここを借りる契約をしたばかりなのに、もう電気ガス水道といったライフラインが使えるようになっているのは、どういう事か。
荒垣の紹介という事で、最初から手続きはしてあったのか、それとも単純に前に使っていた人物が部屋を出ていった時に手続きをしなかったのか。
理由は分からないが、半ばアングラ、半ば違法、そんなアパートだけに、どのような理由があっても不思議ではない。
こっちにとっては、便利だからそれでいい。
ただ、光熱費についてはどうするべきか、後で荒垣経由ででも聞いておいた方がいいな。
「そうだな。俺は特に寒くないけど、これからはゆかりもこの部屋に来る事になるんだし、暖房は必要か」
「……魔法使いって……」
呆れた様子のゆかりだったが、別に俺が寒くなかったり暑くなかったりするのは、魔法使いだからじゃないんだけどな。
もっとも、魔法使いでも同じような事は出来るだろうから、その言葉も決して嘘って訳じゃないんだが。
「取りあえず買うのは、冷蔵庫、TV、布団、電気ストーブ……そんなところか?」
「ここで打ち合わせとかをするのなら、飲み物を入れるコップとかそういうのも用意した方がいいと思うし、他にも軽く料理は出来るようにした方がいいんじゃない?」
まぁ、その辺は買っておいた方がいいか。
「なら、買い物に行くか。場所はどこに行けばいい?」
「ポロニアンモールに結構いいお店があるらしいわよ」
「ポロニアンモールか。……まぁ、この時間ならまだ大丈夫だろ」
携帯で時間を確認すると、まだ午後6時前。
閉店するには、まだ早い時間だろう。
そんな訳で、俺は再び影のゲートを使ってゆかりと一緒にポロニアンモールに向かうのだった。
「こっちよ。品揃えのいい電気店らしいから、アクセルが欲しがるのもあると思う」
ゆかりに案内されて向かったのは、ポロニアンモールの中でも端の方にある店だった。
まぁ、電化製品を扱っている以上、どうしても店は広くならざるを得ない。
そう考えれば、ポロニアンモールど真ん中とか、そういう場所にこの店を建てる訳にもいかなかったのだろう。
午後6時くらいではあっても、店の中に客の姿はそれなりに多い。
「さて、まずは冷蔵庫からね。……どういうのが欲しい?」
「そうだな、特に希望はないけど、それなりに大きめの奴がいいな」
使うのは俺とゆかりくらいだろうが、飲み物とかを冷たい状態のままで保存しておくには、丁度いい。
料理の保存とかは……ぶっちゃけ、空間倉庫に保存した方がいいのは間違いないだろう。
料理というのは、出来たてが一番美味い。
勿論味が染みるとか味を落ち着かせる的な意味で時間が経った方が美味い料理もあるんだが、ともあれ基本的には出来たてが一番美味いのは間違いない。
そうである以上、冷蔵庫で一旦冷やしてしまえば、電子レンジを使っても基本的に味は落ちる。
その点、空間倉庫ならいつでも出来たての料理を収納しておける。
……勿論それを使うには空間倉庫を知っている面子、ゆかりくらいにしか使う事は出来ないんだが。
俺の部屋に来る奴は基本的にゆかりと……荒垣くらいだろう。
それを考えると、冷蔵庫をどうするかは悩んだんだが、この世界が何らかの原作の世界であるのは間違いない以上、もしかしたら原作の主人公とかその仲間が俺の部屋にやって来る可能性は十分にある。
そう考えれば、やはり冷蔵庫は大きい方がいい。
そもそも、俺の部屋に大勢集まるのかどうかといった事はあるんだが。
4畳程度の部屋なんだから、そんなに大勢集まっても、場所がなくなるし。
「冷蔵庫、ね。冷蔵庫はこっちよ」
ゆかりと一緒に店の中を移動していくと、やがて冷蔵庫が幾つも並んでいる場所に到着する。
大きいのから小さいのまで。
機能も様々。
「……どうする?」
「いや。どうするって言われても。私だって別に冷蔵庫とかに詳しい訳じゃないし。店員に聞くのが一番じゃない?」
そんなゆかりの説明に頷き、店員を呼ぶ。
「いらっしゃいませ」
そう言って頭を下げた店員の男だったが、ゆかりを見て、そして俺を見て一瞬羨ましそうな視線になったのを、見逃しはしない。
冷蔵庫の説明をして貰うも、微妙に高価な商品を勧めようとしてくるのは、嫉妬からだろう。
ともあれ、そんな風に店員の男とやり取りをしながら、ゆかりと話す。
「どうする? ゆかりも使うんだし、大きめの方がいいか?」
「……そうね。自炊もしないアクセルのことを考えると、料理をしまっておけるようなものも……」
ゆかりの言葉に、店員は更に嫉妬の視線を俺に向けてくるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389