転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1794話

 背後から聞こえてきた爆発。

 いや、本当に爆発なのか? 寧ろ、爆発に似た何かだという方が正しいような気がする。

 ともあれ、ゆかりを抱いたまま階段を降りても、安心は出来ない。

 一応炎獣がまだ頑張ってはいるだろうが、それでもあの死神が階段を降りて追ってくるという可能性は十分にある。

 幸いにも、この階層のターミナルは階段のすぐ隣に存在していた。

 階段を降り、そのままターミナルに向かって突っ込んでいく。

 すると次の瞬間、俺とゆかりの姿はタルタロスの1階……エントランスにあった。

 

「ん……」

 

 すると、ターミナルで転移した感覚からか、俺の腕の中でゆかりが目を覚ます。

 そして抱いている俺と目が合うと、一瞬何が起きているのか理解出来ないといった様子で俺と見つめ合うが……やがて次の瞬間には、自分が現在どんな状況にあるのか理解したのだろう。

 慌てたように口を開く。

 

「ちょっ、アクセル!? 一体、何がどうなってるのよ! その、いいからとにかく下ろして!」

「そう言われてもな。本当に大丈夫なのか? 下ろしても、動けなければ意味はないぞ? 今は、少しでも早くこのタルタロスから出たいんだ。少し待て」

「え? 一体何なの!?」

 

 腕の中で騒ぐゆかりだったが、俺はそれを無視してエントランスから出る。

 そうしてタルタロスから出ると、ようやく安堵してゆかりを地面に下ろす。

 

「ふぅ」

 

 ようやくあの死神から逃げ切った、と。安堵の息を吐く。

 死神と遭遇した場所から1階降りた程度では、まだ追ってくる可能性も十分にあった。

 いや、ターミナルを使ってエントランスに降りても、まだ追ってくるかもしれないと判断し、半ば強引にゆかりを連れてタルタロスから出たのだ。

 ……まぁ、影時間に街中でシャドウに遭遇する事を考えれば、必ずしもタルタロスから出る事が出来ないという訳ではないのだろうが……それでも、もっと頻繁にタルタロスから出る事が出来るのであれば、それこそもっと街中にシャドウがいてもおかしくはない。

 

「あの死神と遭遇した事、覚えているか?」

「死神……っ!?」

 

 死神という単語から意識を失う前の事を思い出したのだろう。

 自分の身体を抱きしめるようにしながら、ゆかりはしゃがみ込む。

 

「安心しろ。もうあの死神はいない。周りを見てみろ。ここはもう、タルタロスの外なんだからな」

「……」

 

 俺の言葉に、改めてゆかりは周囲を見回す。

 視線の先にあるのは、タルタロス。

 外側からタルタロスを見る事が出来るのだから、ここがタルタロスの外だというのは確実だった。

 

「もう、安全?」

「ああ。安全安心って奴だな」

「……ぷっ、何よそれ」

 

 俺の口から出た言葉に、ゆかりは思わずといった様子で吹き出す。

 どうやら、気分転換をさせる事は出来たらしい。

 寧ろ、緊張の糸が切れた影響が、数分の間笑い続ける。

 

「あはは。……何でこんな何でもない事が、こんなに面白いのかしら」

「命の危機を乗り越えた影響だろうな」

「命の危機……ね」

 

 しみじみと呟くゆかりの脳裏には、間違いなくあの死神の姿が映し出されているのだろう。

 

「凄かった……うん、何て表現すればいいのか分からないけど、凄かったわ」

「まあな。あの死神は、正直何であんな階層で出てきたのか分からないくらいに凄いやつだったな」

 

 普通であれば、それこそラスボスや隠しボスと呼ぶに相応しいだろう強さを持つシャドウ。

 ネギま世界のフェイトと同等……下手をしたら上かもしれないだけの実力を持つ。

 しかも、実際に戦った時間は短い。

 恐らく……いや、間違いなく向こうは本気にはなっていなかっただろう。

 にも関わらず、マハガルダインとかいう風の広範囲攻撃魔法を使おうとするし、実際にそれを見た訳ではないが、メギドラオンとかいう爆発……もしくはそれ以外の属性を持つ魔法も使った。

 俺が知っていた魔法は、アギ、ブフ、ガルの3系統のみ。

 あのメギドラオンとかいう魔法は、死神で初めて知った。

 もし何も知らない状況であの魔法を使われていた場合、それを防ぐのは難しかっただろう。

 ましてや、俺はともかくゆかりがどうなっていたのやら。

 

「あんなシャドウがいるなんて……ねぇ、アクセル。明日からどうするの?」

「どうするって言われてもな」

 

 この世界が何らかの物語の世界である場合、いきなり序盤であんなラスボスや隠しボスといった感じのシャドウが出てくるというのは、ちょっと納得出来ない。

 となると、恐らくは何らかの強制イベントで倒される相手だったり……もしくは、本来ならあのモンスターは狙ってあそこにいた訳ではなく、偶然、ランダムで、たまたま……あそこにいたとか?

 どちらの可能性も十分に有り得るが、個人的には後者であって欲しい。

 もし前者……何らかの強制イベントであそこにいたのなら、あの階層を突破するのはかなり難しくなってしまうからだ。

 もし突破するにしても、ゆかりを連れて行けば足手纏いになる事は確実なので、俺だけで行く事になるだろう。

 ともあれ、明日か明後日か……それは分からないが、次にタルタロスに向かう時は、一旦俺だけで行ってみる必要があるだろうな。

 問題は、ゆかりがそれを納得するかどうかといったところか。

 男に頼るという行為に対し、何故か嫌悪感のようなものすら抱いているゆかりだ。

 当然のように、今回も俺だけが動くと言えば、それに納得出来ないと口にするのは間違いないだろう。

 その辺りを話すより、まずはゆかりの機嫌を良くさせておくか。

 

「あの死神と遭遇したのは色々な意味で不運だったが……必ずしも不運だけって訳じゃなかったな」

「え? どういう事?」

 

 本気で分かっていないといった様子のゆかり。

 ……まぁ、普通に考えて、あの死神と遭遇したのが不運ではなかったと言われても、とてもではないが納得出来ないだろう。

 実際にあの死神を見たのであれば、尚更だ。

 だが、俺は別におべんちゃらとしてそのような事を口にしている訳ではなく、実際にそう思っている。

 

「忘れたのか? あの死神の攻撃を受けそうになった時、ゆかりはペルソナと思しき能力を発動させただろ?」

 

 俺自身、本当の意味でペルソナという能力を見た事がある訳じゃない。

 だからこそ、ゆかりが出した牛の頭蓋骨に鎖で縛られている女がペルソナなのかと言われれば、確実にそうだとは言えない。

 だが、あんな妙な現象を見せた以上、恐らくあれこそがペルソナなのだろうというのは、容易に想像出来る。

 

「ペルソナ……あの時のが、ペルソナ?」

「さて、どうだろうな。何しろ、俺は本物のペルソナってのがどんな能力なのか分からないし。……取りあえず、使えるかどうか試してみたらどうだ? あ、出せるのか? あの死神の攻撃を食らって霧散してたけど」

 

 ペルソナというのが、どういう性質を持つのかは、俺には分からない。

 だが、もし命があるのであれば……最悪、ゆかりのペルソナはあの死神によって殺されてしまったという可能性がある。

 だとすれば、ペルソナに目覚めた瞬間にペルソナを失ってしまった……って事になりかねない。

 しかし、ゆかりはそんな俺の心配を全くしていない様子で目を閉じる。

 自分の中にある何かと話をする、もしくは確認するようにしながら、やがて目を開いて、俺の方を見てくる。

 

「大丈夫、まだ私のペルソナ……イオはいるわ」

 

 どうやら大丈夫だったらしい。

 その事に安心していると、やがてゆかりは集中した様子で再び口を開く。

 

「イオ! ……あれ?」

 

 ゆかりのペルソナ……イオとかいう名前らしいが、ゆかりが出そうとしても出てくる様子がない。

 首を傾げ、更に繰り返すようにイオ、イオと何度も口にするゆかりだったが、相変わらずイオとかいう、あの牛の頭蓋骨の上に乗った女の姿が出てくる事はない。

 

「……なぁ、本当にそのイオ? とかいうペルソナ? は身につけたのか?」

「と、当然でしょ! 私の中にあるのが、しっかりと分かるもの。けど……え? 何で? 何で出てこないの?」

 

 分かっていた事ではあるが、どうやらゆかりが嘘を言っている訳ではないらしい。

 となると、考えられる可能性としては、イオが死神に殺された……いや、撃破された影響で出てくる事が出来ないとか、魔力……いわゆるMPが足りないとかか?

 もしくは、単純にゆかりがペルソナに覚醒したばかりで、まだ完全に使いこなせていないという可能性もあるだろう。

 幾つか考えられる可能性を口にすると、ゆかりは難しそうな表情を浮かべる。

 

「ペルソナに覚醒したのに、それを使いこなせないなんて……」

「いや、寧ろ今日覚醒したばかりで、それを自由に使いこなせると考える方がどうかと思うけどな」

「それは……」

「それがどのような力であれ、使いこなすのに時間が必要になるのは当然だろう? 勿論、持っている才能とかセンスによって、習熟するまでに必要な時間は大きく変わってくるけど」

「……そう、ね」

 

 ゆかりも俺の言いたい事は分かったのだろう。

 それ以上は不満を口にしない。

 そんなゆかりを見ながら……だが、ゆかりがペルソナを使いこなせるようになるまでは、独力だと難しいだろうというのは容易に想像出来てしまう。

 となると、やっぱりペルソナ使いから教えて貰う必要があるんだろうが……さて、そうなると。

 

「ゆかり、お前がペルソナを自由に使いこなせるようになるには、誰かから教えて貰う必要がある。そして、現在俺が知っているペルソナ使いは3人」

 

 その言葉に、ゆかりの表情は微妙に嫌そうなものに変わる。

 それが何を意味しているのかは、考えるまでもない。

 ゆかりは、何故か桐条グループを嫌っている。

 そしてペルソナ使い3人の中には、桐条美鶴の姿がある。

 

「まぁ、ゆかりが桐条嫌いなのは分かってるから……」

「別に、嫌いって訳じゃないわよ。ただ、ちょっと苦手なだけで」

 

 視線を逸らしながら告げるゆかりだったが、俺はそれをスルーしながら言葉を続ける。

 

「つまり、ゆかりがペルソナ使いとして頼る事が出来るのは、真田か荒垣のどちらかになる訳だ」

「……真田先輩は、ちょっと……」

「だろうな」

 

 ゆかりの言葉に、当然だろうと頷く。

 以前、ゆかりは真田が非常に人気のある男だと言っていた。

 そんな中で、ペルソナという人に言えない能力について真田と協力関係になれば、他の生徒達に疑いの視線を向けられる事になるだろう。

 ましてや、何故急に仲良くなったのかと言われても、まさかペルソナについての修行の為ですなんて言える筈もない。

 結果として、疑惑が疑惑を呼ぶ事になる。

 特にゆかりは月光館学園でも美人として有名だ。

 本人にそこまでの自覚があるのかどうかは分からないが、ともあれ、そんな状況を考えるとやっぱり色々と面倒な事になるのは間違いない。

 ただでさえ、学校の外に彼氏がいるという事で、色々と有名になっているのだから。

 ……まぁ、その辺りは俺が意図的に面白おかしく広めたりした結果なのだが。

 うん、今更ながらちょっと失敗したかも? と思わないでもない。

 ましてや、荒垣によると真田は桐条と親しいっぽい雰囲気だったので、そこもゆかりには忌避する原因となるだろう。

 ともあれ、そのような理由からゆかりがペルソナについて教えを請う相手は荒垣以外にいない訳だ。

 

「荒垣か。……じゃあ、俺の方から頼んでみるか?」

「ううん。私の事を頼むんだもの。私が直接頼みに行くわ」

 

 俺の言葉に、ゆかりは即座に首を振り、自分が行くと言ってくる。

 そっちの方がいいとは思うんだが……

 

「荒垣、俺が言うのも何だけど、結構強面だぞ?」

「あの死神とどっちが怖い?」

「あー……なるほど」

 

 あの死神と間近に接したゆかりにとって、それこそ普通の相手であれば特に怖いとも思えないだろう。

 そもそも、あの死神と同じだけの迫力を持っているような奴は、シャドウミラーでもそう多くない。

 フェイト並み……いや、『最低でも』フェイト並みの強さを持っているのを考えれば、そこまでおかしな話ではないか。

 ともあれ、ゆかりがその気なら俺は構わない。

 寧ろ、そうした方が荒垣もゆかりを気に入るだろう。

 ……唯一の難点としては、荒垣が自分の力に対して忌避感を覚えている事だが……その辺りをどうにか出来るかどうかは、正直なところ半々といったところだろう。

 

「分かった。じゃあ今日……は無理だから、明日学校が終わったら荒垣に会わせるって事でいいか? その時、ゆかりから話を通すって事で」

「ええ、お願い。……この力、絶対に使いこなしてみせるから」

 

 ゆかりは決意を固めたように、そう呟く。

 気負っているようにも思えるが、それもペルソナのことを考えればそうおかしな話でもないのか?

 そう考えつつ、今日のタルタロス攻略は諦め、ゆかりを女子寮まで送っていくのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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